その時、雪山に八万四千頭の白象がいて、毎日のように王の宮殿の前にやって来ていました。 そこで王は心の中で考えました。 「この白象たちがいつも私のところに来るが、その道中で多くの生き物を踏みつけてしまう。」 そこで王はすぐに軍司令官に命じました。 「今後は、これらの象を毎日私のところに来させる必要はない。一千年に一度来るようにし、四万二千頭で十分だ。必ずしも八万四千頭揃える必要はない。」 王の后の一人である、名を善賢という宝玉のような妃は、他の妃や女官たち八万四千人と共に、静かな部屋で坐禅を組み、想いを巡らせて四万年が過ぎました。 彼女たちは互いに言い合いました。 「私たちはここで坐禅を組み想いを巡らせて四万年になるが、大王にお目にかかっていない。今こそお目にかかり、ご機嫌を伺うべきだ。」 こう言うと、彼女たちはすぐに連れ立って王の御前に行きました。 他の宮人が王に告げました。 「善賢が八万四千人の女たちと共に、王のご機嫌を伺いに来ております。」 王はこれを聞くと、すぐに説法殿に向かい、獅子座に上がりました。 しばらくして、善賢たちが到着しました。王は彼女たちを呼び寄せました。 すると、善賢たちは連れ立って進み出て、王の御前に到り、頭を地につけて王の足に礼をし、順に座りました。そしてこう言いました。 「私たちは共に静かな部屋で坐禅を組み、想いを巡らせて四万年もの間、大王に長らくお目にかかっておりませんでしたので、ご機嫌を伺いに参りました。また、お話ししたいことがございますので、どうかお聞き届けください。」 王は答えました。 「よいでしょう。お好きなように述べなさい。」 そこで善賢は王に申し上げました。 「この閻浮提(南瞻部洲)、西の瞿耶尼(西牛貨洲)、北の欝単越(北倶盧洲)、東の弗婆提(東勝身洲)の四方の人民は、非常に栄えて富み、安らかに暮らし、皆が十善を実践しております。これは全て大王の徳による教化の力であります。 この閻浮提には、鳩尸婆帝城のような都が八万四千もあり、これらの都の王や臣民、バラモンたちが皆、ここに大王にお目にかかろうと参っております。しかし大王は長年にわたり坐禅を組まれ、拝謁に来る者たちは誰一人としてお会いできず、それはまるで孝行な子が慈しみ深い父に会えないような有様です。 また、四方の天下においても、大王がお出ましになられてから非常に長い月日が経っております。どうか大王よ、時宜に適った良い方法で、民を慰め導いてくださいませ。 私たち女は柔弱で、国にとって益がありませんので、心のままに長く坐禅を続けておりました。しかし大王は尊いお立場で内外を統べ治め、全ての人民が仰ぎ慕っております。どうして我々女のするような行いをなさってよろしいのでしょうか。 白象や車馬は、それぞれ八万四千の数がございます。大王はこれらに乗ってお出ましになり、ご遊覧なさるべきでございます。 大王はかつて、常にあらゆる人々に様々な法を説き、十善を授けられておりましたが、坐禅にふけられてからは、その大切な行いが途絶えてしまっております。」 このように、善賢は様々な事柄を用いて王を諫めました。 大善見王はこの言葉を聞いて、答えて言いました。 「お前は以前から、よく善い事柄で私を諫め勧めてきた。しかし、今のお前の言葉は、これまでの意図とは大きく異なっている。」 その時、善賢は王のこのお叱りを聞いて、心に悔いを生じ、涙を流して思いました。 「私がこれまで大王を諫めたのは、まさに自分の見解が適切であると思ったからに過ぎない。まさか、それによってかえって罪を犯すことになろうとは。」 彼女はすぐに座を立ち、頂いて王の足に礼をし、こう申し上げました。 「私は愚かで道理をわきまえず、このようなことを申し上げてしまいました。どうか大王よ、私の懺悔をお受け入れください。」
時に、大善見王は善賢に答えられた。「すべての行いはすべて無常であり、愛し合い集まる者もまた別れ離れる。この四大洲がたとえこれほど盛んであっても、私もまた長くは経たずにこれを捨て去るであろう。私は過去に、八万四千歳の間は幼子であり、八万四千歳の間は童子であり、八万四千歳の間は灌頂の太子であり、八万四千歳の間は灌頂の王となり、その後に転輪聖王となることができた。四大洲を治め、七宝を具え、八万四千歳の間は民の務めを統べ治め、八万四千歳の間は人々のために諸々の教えを説き、八万四千歳の間は坐禅し思惟した。その時から既に五十八万八千歳が過ぎたが、このように寿命が長くても、ついには尽きる時が来る。私はもはや老い、死の時が近づいている。昔の諸々の王の尊く貴く楽しかったことは、私と異なることなく、やはり移り変わり過ぎ去り、無常に帰するのである。鳩尸婆帝城や、他の八万四千の大きな城々もやがて滅び去るであろう。ここにのみ執着し、放逸な心を長く伸ばすべきではない。私が今、この尊く勝れた境涯を得たのは、すべて過去に諸々の善い行いを積んだからである。今こそ、広く善を植え、来世の因を造るべきである。そのために坐禅して年月を積んだのである。」
その時、善賢たちは王のこの言葉を聞いて、心から大いに喜び、王の足に礼拝し、退いてそれぞれの住まいに帰った。それから間もなく、王は重い病にかかり、自ら命の尽きることを知り、すぐに太子を立てて王とし、残りの大臣やバラモン、長者、居士たちを集め、四大海の水を太子の頭に灌いだ。これらのことが全て終わると、王は命終し、梵天に生まれた。
阿難よ、大善見王は世界中を治めていたが、実際に住んでいたのは閻浮提だけだった。 都は八万四千もあったが、王がいたのは鳩尸婆帝だけだった。 雪山には八万四千の白い象の宝がいたが、王が乗ったのは一頭だけだった。 八万四千の名馬がいたが、王が乗ったのは一頭だけだった。 八万四千の七宝の車があったが、王が常に使ったのは一両だけだった。 八万四千の妃がいたが、王が愛したのはただ一人だけだった。 飾り立てた宝殿が八万四千あったが、王がいたのは一部屋だけだった。 体に必要なものは、満たされればそれで十分だったのに、王は四方に心を配り、物事に心を煩わせ、ただ精神を疲れさせるだけで、体のためには何の役にも立たなかった。