佛說睒子經
仏説睒子経
姚秦三藏法師釋聖堅譯
姚秦三蔵法師釋聖堅訳
聞如是:
このように私は聞きました。
一時,佛在毘羅勒國,與千二百五十比丘,及眾菩薩、國王、大臣、長者、居士、清信、士女不可稱計,一時來會。
ある時、お釈迦様は毘羅勒国におられました。千二百五十人の比丘たち、数えきれないほどの菩薩、国王、大臣、長者、在家の信者、男女の善男善女が、共に集まっておられました。
佛告諸比丘:「皆處定意聽!我前世,初得菩薩道時,戒行普具,精進一心,修集智慧,善權方便,功德累積不可稱計,諸天龍、鬼神、帝王、人民無能行者。」
仏は諸比丘に告げた。「皆、心を静めてよく聞きなさい。私が前世において、初めて菩薩の道を得たとき、戒律の行いはあまねく備わり、一心に精進し、智慧を修め集め、巧みな方便を働かせた。その功徳は積み重ねて計り知れず、諸天、龍、鬼神、帝王、人民の誰一人として行うことのできないものであった。」
阿難聞佛言,更正衣服,長跪叉手,白佛言:「願欲所聞。」
阿難は仏の言葉を聞くと、衣を整え直し、ひざまずいて手を合わせ、仏に申し上げました。「お聞きしたいことがございます。」
佛告阿難:「乃往過去無數世,時有菩薩名曰一切妙行,慈仁惠施,救濟群生,常行四等心,度世危難,育養苦人。在兜率天上教授天人,常以晝夜各三時定意,思惟三昧,照觀十方天下、人民善惡之道。知有父子,孝順父母,奉事三尊,恭順師長修諸功德者,常以天眼遍觀五道。
仏陀は阿難に告げられた:「遥か過去の無数の世をさかのぼると、一切妙行という名の菩薩がおられた。慈しみ深く施しを行い、あらゆる生きとし生けるものを救い助け、常に四無量心を実践し、世の危難を超え渡り、苦しむ人々を養い育てられた。兜率天において天人を教え導き、常に昼夜それぞれ三時に定に入り、三昧を思惟し、十方世界の衆生の善悪の道を照らし観察された。親子の縁があり、父母に孝行し、三宝を敬い奉り、師長に恭順して様々な功徳を修める者があると、常に天眼をもって五道を遍く観られた。
「時,有迦夷國,中有一長者孤無兒子,夫婦兩目皆盲,心願入山求無上道決,修清淨志,信樂空閑。菩薩念言:『此人發意欲學妙道,而兩目皆盲,目無所覩,若入山中或墮溝坑,或逢毒蟲所見危害。若我壽終為其作子,供養父母終其年壽。』於是菩薩壽盡,即便下生盲父母家,為其作子。父母歡喜愛之甚重,本發道意欲行入山,以生子故便樂世間。
その時、迦夷国に一人の長者がいました。彼には子がなく、夫婦ともに目が見えませんでした。二人は心に願い、山に入って無上の道を求め、清らかな志を修め、静かな場所を信じて楽しもうとしていました。
菩薩はこう考えました。「この人は妙なる道を学ぼうと志していますが、両目が見えず、何も見ることができません。もし山に入れば、溝や穴に落ちたり、毒虫に遭って危害を受けるかもしれません。私が命を終えたら、彼らの子となって、父母を養い、その生涯を全うさせましょう。」
こうして菩薩は寿命が尽きると、すぐに盲目の父母の家に生まれ、彼らの子となりました。父母は喜び、彼をとても大切に愛しました。もともと道を求めて山に入ろうとしていたのですが、子が生まれたため、世間の楽しみに心を寄せるようになりました。
「子年十歲號曰睒子,至孝仁慈,奉行十善:不殺、不盜、不婬、不欺、不飲酒、不妄言、不綺語、不嫉妬、信道不疑、晝夜精進,奉事父母如人事天,言常含笑不傷人意,行則應法不望傾斜,於是父母即大喜悅,無復憂愁。
子は十歳にして、その名を睒子(せんし)といいました。彼は至孝で慈しみ深く、十の善行を実践しました。すなわち、殺さず、盗まず、淫らにせず、欺かず、酒を飲まず、偽りの言葉を語らず、飾った言葉を口にせず、妬まず、道を疑わず信じ、昼夜怠らず精進し、父母に仕えること、人が天に仕えるかのごとくでした。言葉には常に笑みを含み、人の心を傷つけず、行動は常に道にかなっており、傾くことのない正しさを持っていました。こうして父母は大いに喜び、もはや憂いのない身となりました。
「至年過十歲,睒自長跪,白父母言:『本發大意欲入深山,志求空寂無上之道,豈以子故而絕本願。人居世間無常百變,命非金石對至無期,願如本意宜本先志,自隨父母俱共入山侍養之,宜不失時節。』父母報睒言:『子之孝順天自知之,不違本誓,便當入山。』睒即以家中所有之物,皆施國中諸貧窮者,便與父母俱共入山。
十年が過ぎた頃、睒は両親の前にひざまずき、こう申し上げました。
「もともと私は、深い山に入り、空しい寂しい境地を求め、この上ない道を志すという大願を立てました。どうして子である私の都合で、その本願を絶ってしまってよいでしょうか。人は世に生きていても、常ならぬもの、百にも変わるものです。命は金石のように堅固なものではなく、死が訪れる時は定められていません。どうか、もとの志のままに、先に立てた願いを果たさせてください。私は両親に従って共に山に入り、お世話をさせていただきます。時節を失うことなく、それがふさわしいと思います」
両親は睒に答えました。
「子の孝順の心は、天がよく知っている。もとの誓いに背かないなら、さっそく山に入ろう」
睒はすぐに、家にあるすべての物を、国中の貧しい人々に施し、両親と共に山へと入っていきました。
「睒子至山中,以蒲草為父母作屋,施置床褥,不寒不熱恒得其宜。適入山一年眾果豐美,食之香甘,泉水涌出清而且涼;池中蓮華五色精明,栴檀雜香,樹木豐茂,香倍於常。風雨以時,不寒不熱,樹葉相接,以障雨露,蔭覆日光,其下常涼。飛鳥翔集,皆作妓樂之音,以娛樂盲父母;師子、熊羆、虎狼、毒蟲,皆自慈心相向,無驚害之心,皆飲水、噉果無復驚怖之心,麞鹿、眾鳥皆來附近,與睒音聲相和,以娛樂盲父母。睒至孝仁慈無有過,蹈地常恐地痛,天神、山神皆作人形,晝夜慰勞三道人,一心定意無復憂愁。
睒子は山中に至り、蒲草で両親のために小屋を作り、寝床を整え、寒すぎず暑すぎず、常に快適な環境を整えました。山に入って一年が経つと、果物は豊かに実り、食べれば香り高く甘く、泉の水は湧き出て清らかで涼しく、池の蓮の花は五色に輝き、栴檀の香りが漂い、木々は豊かに茂り、香りは普段より倍増しました。風雨は時宜を得て、寒すぎず暑すぎず、木の葉は重なり合って雨露を防ぎ、日差しを遮り、その下は常に涼しく過ごせました。飛ぶ鳥たちは集まり、音楽のような美しい音を奏でて、盲目の両親を楽しませました。獅子、熊、虎狼、毒虫たちも皆、慈しみの心で向き合い、驚かせたり害したりする心はなく、水を飲み、果実を食べ、もはや恐れることもありませんでした。鹿や多くの鳥たちも近くに寄り添い、睒子の声と調和して、盲目の両親を楽しませました。睒子は孝行と慈愛に満ち、過ちはなく、地を踏む時も常に大地を痛めないかと気遣い、天神や山の神々も人の姿となって、昼夜を問わず三人の修行者を慰め、心を定めて再び憂いや悲しみのない境地に至りました。
「睒常與父母取百種果蓏以食父母。父母時渴欲飲,睒著鹿皮衣提瓶行取水,麋鹿、飛鳥亦復往飲,不相畏難。時,迦夷國王入山射獵,王見水邊有麋鹿、飛鳥,引弓射之,箭誤中睒。睒被毒箭甚痛,便大呼言:『誰持一毒箭,射殺三道人?』王聞人聲,下馬往到睒前,睒謂王言:『象坐牙死,犀坐角死,翠坐毛死,麋鹿坐皮死,今我死無牙、無角、無毛、無皮肉、不可噉,今有何罪橫見射殺?』王言:『卿是何人?被鹿皮之衣與禽獸無異。』睒言:『我是王國中人,與盲父母俱來學道,二十餘年未曾為虎狼毒蟲所害,今便為王箭所射殺之。』
シャンはいつも両親のために百種類の果物や瓜を採ってきて、両親に食べさせていました。ある時、両親が喉の渇きを訴えて水を飲みたがったので、シャンは鹿の皮衣をまとい、水瓶を持って水を汲みに行きました。すると、鹿や鳥たちも水を飲みに集まってきて、互いに怖がることもありませんでした。
その時、迦夷国の王が山へ狩りに来ていました。王は水辺に鹿や鳥がいるのを見て、弓を引きしぼり射かけましたが、矢は誤ってシャンに当たってしまったのです。毒矢に当たったシャンは激痛に襲われ、大声で叫びました。「誰だ、たった一つの毒矢で三人の修行者を殺すとは!」
王は人の声を聞き、馬から降りてシャンのもとに駆け寄りました。シャンは王に言いました。「象は牙のために死に、犀は角のために死に、翡翠は羽根のために死に、鹿は皮のために死にます。しかし私は牙も角も羽根も皮もなく、食べられる肉もありません。いったいどんな罪があって、理由もなく射殺されなければならないのですか?」
王は尋ねました。「あなたはどなたですか?鹿の皮をまとっているので、獣と変わらないように見えました」 シャンは答えました。「私はこの国の者です。盲目の両親と共に山にこもり、二十余年もの間、道を求めて修行してきました。虎や狼、毒虫に害されることもなかったのに、今、王様の矢によって殺されてしまうのです」
「當爾之時,山中大風暴起,吹折樹木,飛鳥、禽獸、師子、熊羆、虎狼、毒獸皆號呼動一山中;日無精光,流泉為竭,眾華萎死,雷電動地。時,盲父母即自驚起曰:『是何變異?睒行取水經久不還,將無為毒蟲之所害耶?禽獸悲鳴,音聲號呼不如常時,風起四面樹木催折,必有災異。』王時怖懼大自悔責:『我本射鹿,箭誤傷中射殺道人,其罪甚重,坐貪少肉而受重殃;我今以一國財寶、宮殿、妓女、丘郭、城邑、以救子命。』
その時、山中に大風が吹き荒れ、樹木を折り、鳥や獣、獅子、熊、虎狼、毒獣などが一斉に山中で悲鳴をあげた。太陽は光を失い、泉は涸れ、花々は枯れ、雷鳴が大地を揺るがした。
その時、盲目の両親は驚いて立ち上がり、言った。「これは何という異変か。睒が水を汲みに行ったまま、長い間戻ってこない。毒虫に襲われたのではないか。鳥や獣の悲鳴が普段とは違う。四方から風が吹き、木々が折れている。きっと何か災いが起きたに違いない。」
王は恐れおののき、深く後悔して言った。「私は鹿を射ようとして、誤って修行者を射殺してしまった。その罪は重い。わずかな肉を求めたばかりに、大きな災いを受けることになる。今、私は国の財宝、宮殿、侍女、城郭、町々をすべて捧げて、この子の命を救おう。」
「時,王便前以手拔睒胸箭,箭深不可得出,飛鳥、禽獸四面雲集,悲鳴呼喚動一山中。王益怖懅,支節皆動,睒言:『非王之過!我自宿罪所致,我不惜身命,但憐我盲父母,年既衰老,目無所見,一旦無我亦當終歿,以此懊惱酷毒耳。』當爾之時,諸天、龍神皆為肅動。王便重言:『我寧入泥犁中,百劫受罪,使睒身活。』長跪向睒悔過:『若睒命終,我當不復還國,便住山中,供養卿盲父母,如卿在時,勿得為念,天龍、鬼神皆當證知,我不負此誓。』
その時、王は急いで手を伸ばし、睒の胸に刺さった矢を抜こうとしましたが、矢は深く刺さりすぎて抜けませんでした。飛ぶ鳥や野獣たちが四方から雲のように集まり、悲しげに鳴き叫ぶ声が山全体を揺るがしました。王はますます恐れおののき、手足も震えました。すると睒は言いました。「これは王の過ちではありません。私自身の過去の罪の報いです。私の命は惜しくありませんが、ただ盲目の年老いた両親が気がかりです。目が見えず、私がいなくなれば、きっと生きてはいけられないでしょう。そのことを思うと、心が張り裂けるほど苦しいのです」
その瞬間、天の神々や龍神たちも皆、深く心を動かされました。王は重ねて誓いました。「たとえ私が地獄に落ち、百年の苦しみを受けようとも、どうか睒の命をお助けください」そして睒の前にひざまずき、悔い改めて言いました。「もしも睒が命を落とすなら、私は国には戻らず、この山に住み、あなたの盲目の両親をあなたが生きていた時と同じようにお世話します。どうかご安心ください。天の神々、龍神、鬼神たちが皆、この誓いの証人となります。私は決してこの誓いを破りません」
「睒聞王此誓:『雖被毒箭,心喜意悅,雖死不恨,以我父母累王供養,王當罪滅,得福無量。』王言:『卿語我父母處,及子未絕吾欲知之。』睒即指示:『從此步徑去是不遠,自當見草屋,父母在其中止。王徐徐往,勿令我父母驚動怖懅,以善方便解語其意,王當為我上白父母,我無常今至,當就後世。我不惜身命,但憐我盲父母,年已衰老,目無所見,一旦無我無所依仰,以此懊惱自酷毒耳。我死自分宿罪所致,無可得脫,今自懺悔,從無數劫有身以來,所行眾惡,於此罪滅,願與父母世世相值,不相遠離,當令父母終保年壽,勿有憂患,天龍、鬼神常隨護助,災害消滅,所欲應意無為自然。』
王がこの誓いを聞くと、『たとえ毒矢に射られても、心は喜びに満ち、たとえ死んでも悔いはありません。私の年老いた両親を王にお任せして供養していただければ、王の罪は消え、無量の福を得られるでしょう』と言いました。
王は尋ねました、『あなたの両親の居場所を教えてください。息のあるうちに知りたいのです』。
睒は指さして教えました、『この小道を進んで行けば遠くはなく、草ぶきの小屋が見えるでしょう。両親はそこで暮らしています。王よ、ゆっくりと行ってください。私の両親を驚かせたり怖がらせたりしないでください。優しい言葉で事情を伝え、私の代わりに両親にこう申し上げてください。
「私は無常の時が来て、この世を去ります。自分の命を惜しむのではなく、ただ盲目の年老いた両親が哀れでなりません。目が見えず、私がいなくなれば頼る者もなく、この思いが私を苦しめています。私の死は過去の罪の報いであり、逃れることはできません。今、私は無数の過去世から積み重ねてきた悪行を悔い、この罪を滅したいと願います。どうか両親と世々に巡り会い、離れることなく、両親が天寿を全うし、憂いなく過ごせますように。天龍や鬼神が常に守り助け、災いが消え、望みが叶い、自然のままに安らかでありますように」』
「王將數人詣父母所,王去之後,睒奄死矣。百鳥、禽獸四面雲集,皆大號呼,繞睒屍上,舐是胸血。盲父母聞此音聲,益怖彷徉而住。王行駛疾,觸動草木,肅肅有聲,父母驚言:『此是何人?非我子行。』王言:『我是迦夷國王,聞盲道人在山學道,故來供養。』盲父母言:『枉屈大王來相慰勞,遠臨草野,王當疲極,體安隱不?宮殿夫人、太子、官屬皆安善不?風雨和調五穀豐不?隣國人民不相侵害耶?』王答道人:『得蒙尊恩,常自平安。』又更問訊:『在此山中勞大勤苦,樹木之間,甚難為止,自安隱不?』盲父母言:『蒙大王恩,常自安隱,我有孝子,名字曰睒,常取果蓏泉水無乏;我有草蓆,王可就坐,果蓏可食。睒行取水,正爾來還。』
王は数人の供を連れて両親のもとへ向かいました。王が去った後、睒は息絶えていました。百鳥や獣たちが四方から集まり、皆が大声で泣き叫び、睒の遺体の周りを巡り、その胸の血を舐めていました。
盲目の両親はこの声を聞き、ますます不安になり、足元がふらつきました。王が急ぎ足で来る際、草木を揺らしてサラサラと音を立てたので、両親は驚いて言いました。「これはどなたですか? 我が子の足音ではありません」
王は答えました。「私は迦夷国の王です。盲目の修行者が山で道を学んでおられると聞き、お供えに参りました」
盲目の両親は言いました。「大王様がわざわざお越しくださり、この草深い地までお慰めに来てくださるとは。さぞお疲れでしょう。お体はお安泰でしょうか? 宮殿の夫人や太子、役人たちも皆、お元気でしょうか? 風雨は順調で五穀は豊作でしょうか? 隣国の人々は侵害し合っていませんか?」
王は修行者に答えました。「お二人のご恩により、常に平穏に過ごしております」そしてさらに尋ねました。「この山中で、大変なご苦労をなさっていることでしょう。木々の間での生活は、とても難しいはずです。お二人はお安泰でしょうか?」
盲目の両親は言いました。「大王様のご恩により、常に安らかに暮らしております。私たちには孝行な息子がおり、名を睒と言います。いつも果物や水を取ってきてくれ、不自由はありません。粗末なござがございますので、王様、どうぞお座りください。果物もお召し上がりください。睒は水を汲みに行っており、まさに今帰ってくる頃です」
「王聞盲父母言,又大傷心,涕泣其言:『我罪實重,入山射獵,遙見水邊有諸群鹿,引弓射之,箭誤中睒;道人子睒已被毒箭,其痛甚酷,今故自來語道人耳。』父母聞之,舉身自撲,如太山崩地為大動,號哭仰天,自陳訴言:『我子睒者,天下至孝,無有能過,蹈地常恐地痛,有何罪故而射殺之?向者,大風卒起,吹折樹木,百鳥悲鳴,皆大號呼動一山中。我在山中二十餘年,未曾有此災異之變,而我子睒取水不還,恐當有故,諸神皆驚,肅肅而動。』母便涕哭,不肯復止,父言:『且止!人生世間,無有不死?無常對至,不可得却。』但問王:『睒為射何許,今為死活?』王以睒語向父母說,其盲父母聞王此語,又大感絕:『一旦無子,俱亦當死。大王!今者牽我二人往子尸上。』
王は盲目の両親の言葉を聞き、また深く心を痛め、涙を流しながらこう言いました。「私の罪は実に重い。山に入って狩りをし、遠く水辺に鹿の群れを見つけて弓を引いたところ、誤って睒に矢が当たってしまったのです。道人である子の睒は毒矢に当たり、その痛みは非常に激しい。だからこそ、自らあなた方にお伝えに来たのです」
両親はこれを聞くと、全身を地面に投げ出し、まるで泰山が崩れ大地が大きく揺れるかのように、天を仰いで号泣し、自ら訴えました。「我が子の睒は、天下で最も孝行な者であり、彼に勝る者はおりません。地を踏むときも常に地が痛まないかと気にかけていたほどです。いったいどんな罪があって、彼を射殺したのですか?さきほど、突然大風が吹き起こり、木々を折り、百鳥が悲しげに鳴き、山中全体が大きく叫び動揺しました。私たちがこの山に住んで二十余年、このような災いの変事は一度もありませんでした。それなのに我が子の睒が水を汲みに行ったまま戻らず、何かあったのではないかと恐れ、諸神も皆驚き、厳かに動揺したのです」
母はただ泣き続け、止めようとしませんでした。父は言いました。「まずは落ち着きなさい。人の世に生きるものに、死なない者などいるだろうか?無常が訪れれば、それを退けることはできないのだから」そして王に尋ねました。「睒はどこで射られたのですか?今、生きているのか死んでいるのか?」
王が睒の様子を両親に伝えると、盲目の両親はこの言葉を聞いてまたも激しく絶望し、「一たび子を失えば、私たちもまた死ぬほかありません。大王、どうか私たち二人を子の遺骸の元へ連れて行ってください」
「王即牽盲父母往到尸上,父抱其頭,母抱兩脚著膝上,各以兩手捫摸睒箭,仰天呼言:『諸天龍神、山神、樹神,我子睒者,天下至孝,是諸天龍神所知。我年已老,目無所見,身代子死,睒活不恨。』於是,父母俱共誓言:『若睒至孝天地所知,箭當拔出,毒痛當除,睒應更生。』
王はすぐに盲目の両親を連れて、死体のところへ行きました。父はその頭を抱き、母は両足を抱いて膝の上に置き、それぞれ両手で睒に刺さった矢を探りながら、天を仰いで叫びました。『諸天の龍神、山の神、木の神よ、我が子の睒は天下第一の孝行者です。これは諸天の龍神もご存じでしょう。我らは年老いて目が見えず、身代わりに死にたい。睒が生き返るなら、何の恨みもありません。』そこで、両親は共に誓いを立てました。『もし睒の孝行が天地に知られるならば、矢は抜け、毒の痛みは消え、睒は必ず生き返るでしょう。』
「於是,第二忉利天帝座即為動,以眼見此二盲道人抱子號呼,乃聞第四兜率天上,釋梵四王從天上來,如人屈伸之頃,來住睒前,以神妙藥灌睒口中,藥入睒口,箭拔毒出,更生如故。父母聞睒已死更生,兩目皆開,飛鳥、走獸皆大歡樂之音,風息雲消日為重光,流泉涌出清而且涼,池中蓮華五色精明,栴檀雜香,樹木光榮,香倍於常。時王歡喜不能自勝,禮天帝釋,還禮父母及子睒者:『願以一國所有財寶,俱上道人自相供養,令我罪滅永無有餘。』睒語王言:『欲興福者,王但還國,安慰人民,當令奉戒;王勿射獵,橫殺無辜,身不安隱,壽終當入泥犁之中。人居世間恩愛暫有,別離長久不得常在,王宿有福今得為王,莫憍自在,以自在故,造無量惡,後入惡道,悔之何益。』王答:『如教。』隨王獵者,見睒死已,得天神藥死而更生,父母眼開神變如是,悉奉五戒、修行十善,死得生天,無入惡道。」
その時、第二の忉利天の帝釈天の座がたちまち震動した。帝釈天は眼をもってこの二人の盲目の修行者が子を抱いて泣き叫ぶのを見、また第四の兜率天から、帝釈天や梵天、四天王たちが天より降りてくるのを聞いた。彼らは人が身をかがめるほどの短い間に、睒の前に来て立ち、神妙な薬を睒の口に注いだ。薬が睒の口に入ると、矢は抜け毒は出て、彼は以前のように生き返った。
両親は睒が死んでまた生き返ったと聞き、二人の目はともに開かれた。飛ぶ鳥も走る獣も皆、大きな喜びの声をあげ、風はやみ雲は消え、太陽は再び光を放った。泉は湧き出て清らかで涼しく、池の中の蓮の花は五色に輝き、栴檀の香りが混じり、木々は光り栄え、香りは普段の倍にもなった。
その時、王は喜びに耐えられず、帝釈天に礼をし、また両親と子の睒にも礼をして言った。「どうかこの国のすべての財宝を、道人の方々に差し上げてご供養させてください。私の罪が滅び、二度と悪い報いがありませんように。」
睒は王に言った。「福を積みたいとお思いなら、王はただ国にお帰りになり、民を慰め、戒めを守らせてください。王は狩りをしてはなりません。無実の者をむやみに殺せば、身の安らぎは得られず、命終われば必ず地獄に堕ちます。人がこの世にいる間の恩愛はほんの一時、別れは長く、いつまでも一緒にいることはできません。王は前世に福を積んだゆえに今、王となられたのです。その権勢を誇り、思いのままに振る舞ってはなりません。思いのままに振る舞うがゆえに、無量の悪を造り、後に悪道に堕ちて、後悔しても何の益もありません。」
王は答えた。「お教えのとおりにいたします。」
王とともに狩りをしていた者たちは、睒が死んで天神の薬によって生き返り、両親の目が開き、このような奇跡が起こったのを見て、皆、五戒を守り、十善を行い、死後は天に生まれ、悪道に堕ちることはなかった。
佛告阿難:「諸來會者!宿命睒者,吾身是也;盲父者,閱頭檀王是;盲母者,今王夫人摩耶是也;迦夷國王者,阿難是;天帝釋者,彌勒佛是。」
仏が阿難に告げられた。「この集まりに来ている者たちよ。前世で睒(せん)と呼ばれた者は、実はこの私である。盲目の父は、のちに閲頭檀王(えつずだんおう)となる者。盲目の母は、現在の王夫人マーヤーである。迦夷国(かやこく)の王は、あなた(阿難)である。天帝釈は、弥勒仏である。」
佛告阿難:「吾前世,為子仁孝、為君慈育、為民奉敬,自致得成為三界尊。」
仏は阿難に告げられた:「私は前世において、子として仁愛と孝行を尽くし、君主として慈悲をもって民を育て、民として敬虔に仕えた。それゆえに自ら三界の尊き者となることができたのです。」
佛說經已,時諸菩薩、比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷莫不歡喜,作禮而去。
お釈迦さまがお経を説き終えられると、その場にいた菩薩たち、比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷は皆、心から喜び、礼をしてその場を後にしました。
佛說睒子經
仏説睒子経