佛說賴吒和羅經
吳月支優婆塞支謙譯
呉の月支優婆塞支謙訳
聞如是:
このように私は聞きました。
一時,佛與五百沙門俱遊拘留國,轉到黈羅歐吒國。國中人民婆羅門道人,皆聞佛轉遊到此國,聞佛功德妙達,無有貪婬瞋怒愚癡,人心所言者皆中正,但得佛道,自知所從來生,豫知去來現在之事;眼能徹視,知世間人民蚑行蠕動之類,所趣生死善惡之道;行即能飛能入地,出無間入無孔,自在變化所作;知世間人民及蚑行蠕動之類,心所念者皆豫知之;佛自制眼、自制耳、自制鼻、自制口、自制身、自制心;世間凡九十六種道,皆不及佛道;佛教天上天下人民,如父母教子,能使去惡就善。佛為天上天下人民作師,佛所教授諸天人民,皆得阿羅漢泥洹道。舉一國中人民皆言:「佛是吉祥之人,善說經戒,共往觀視其道德。」其國中人民,或有五十人為伴者,有百人為伴者,有五百人為伴者,共行到佛所,中有為佛跪者,中有繞佛三匝者,中有頭面著佛足者,中有叉手者,中有但說姓字者,人民皆坐。
ある時、仏は五百人の沙門と共に拘留国を遊行し、次いで黈羅歐吒国に至りました。国の人々、バラモン、修行者たちは皆、仏が遊行してこの国に来られたことを聞き、仏の功徳と優れた境地を耳にしました。仏には貪りや怒り、愚かさが一切なく、その言葉はすべて正しく中道を説き、ただ仏道を得て、自らの生まれ来たる因縁を知り、過去・未来・現在のことを予見されます。その眼は透徹して見通し、世の人々や、地を這う生き物、蠕動するものたちの、生死と善悪の道の行く末を知り尽くしています。歩めば飛び、地に入り、無間から出で、無孔に入り、自在に変化し、思いのままに事を成します。世の人々や、地を這う生き物、蠕動するものたちの心に思い浮かぶことを、すべて予め知っておられます。仏は自らの眼、耳、鼻、口、身、心を制御されています。世にある九十六種の道は、すべて仏道に及びません。仏は天界と地上のすべての人々を教え導き、まるで父母が子を教えるように、悪を去り善に就かせます。仏は天界と地上のすべての人々の師であり、仏が教え導かれる諸天と人々は、皆、阿羅漢の涅槃の道を得ています。国中の人々は皆、「仏は吉祥なる人であり、経と戒を善く説かれる。共にその道徳を見に行こう」と言いました。国中の人々は、五十人を伴う者もあり、百人を伴う者もあり、五百人を伴う者もあり、共に仏のもとへ行きました。中には仏に跪く者もあり、仏の周りを三匝する者もあり、頭面を仏の足に付ける者もあり、叉手する者もあり、ただ姓名を告げる者もあり、人々は皆、着座しました。
佛為人民說經戒,人民皆叉手向佛。眾座中有一長者子,名賴吒和羅,在座中聽佛說經以著心中。賴吒和羅自思惟:「如佛經戒者,不宜居家,居家者不能自淨學佛道也。」自思念:「不如除頭髮、被袈裟,行作沙門。」黈羅歐吒國人民聞經戒皆歡喜,繞佛三匝各自還歸。賴吒和羅中道屈還到佛所,前為佛作禮,叉手長跪白佛言:「我思念佛經戒不宜居家,居家者不能自淨學佛經道也。意欲除頭髮鬚、被袈裟,作沙門。願佛哀我,令我得作沙門。」
仏は人々のために経と戒律を説かれ、人々は皆、手を合わせて仏に向かいました。座席の中に一人の長者の息子がおり、名を頼吒和羅といいました。彼は座中で仏の説かれる経を聞き、心に深く刻みました。頼吒和羅は自ら思案しました。「仏の説かれる経と戒律に照らせば、在家にいるのはふさわしくない。在家にいる者は、仏の道を学び清らかになることができないのだ」と。彼は考えました。「髪を剃り、袈裟をまとって、沙門となるほうがよい」と。
黈羅歐吒国の人々は経と戒律を聞いて皆喜び、仏の周りを三度回ってそれぞれ帰っていきました。頼吒和羅は途中で引き返し、仏のもとに戻りました。仏の前に進み出て礼拝し、手を合わせてひざまずき、仏に申し上げました。「私は仏の説かれる経と戒律を思うにつけ、在家にいるのはふさわしくなく、在家にいる者は仏の道を学び清らかになることができないと存じます。髪とひげを剃り、袈裟をまとって沙門になりたいと願っています。どうか仏さま、お慈悲をもって私が沙門となることをお許しください」
佛言:「汝報父母未?」
お釈迦様は言われました。「あなたはご両親に恩返しをしましたか?」
賴吒和羅言:「未報父母也。」
賴吒和羅は言った。「まだ両親に恩返しをしていません。」
佛言:「諸佛法,父母不聽者不得作沙門,亦不得與戒。」
仏陀は言われました。「諸仏の教えにおいて、父母の許しがなければ、沙門(修行者)になることはできず、また戒をも受けることはできない。」
賴吒和羅言:「諾!請歸報父母。父母聽我作沙門者,我當來還。」
佛言:「大善!自思議之。」
賴吒和羅即為佛作禮,而歸到父母前,白言:「我所聞佛經戒不宜居家,居家者不能自淨學佛經道也。意欲除頭髮鬚、被袈裟,作沙門。」
ラッタパーラは仏に礼拝し、両親の前に戻って言いました。「私が仏の経典と戒めを聞いたところ、在家のままでいることは適しません。家にいると自らを清めて仏の教えを学ぶことができないからです。私は髪と鬚を剃り、袈裟をまとい、沙門となりたいと思います。」
父母聞子語聲,皆相對啼泣言:「我曹夫婦少子姓,禱祀諸天日月,四面叩頭,求哀子姓令續門戶後,常恐我卒死門戶滅絕。我從天得汝一子耳,舉家共重愛,見汝不知厭足,設汝終亡,我夫婦當共坐守汝屍至老,今反欲生棄我曹去耶?」
父母は、子どものその言葉を聞くと、顔を見合わせて泣きながら言いました。「私たち夫婦には幼い子どもがなく、天や太陽、月に祈りを捧げ、四方に向かってひれ伏して、家の後継ぎとなる子どもを授けてほしいと懇願してきたのです。そして常に、自分たちが死んで家系が絶えてしまうのではないかと恐れていました。やっとの思いで天から授かったあなたという一子を、家族みんなで大切に育て、愛しすぎてもっと欲しいと思うこともありませんでした。もしあなたが亡くなってしまったら、私たち夫婦は一緒にあなたの亡骸のそばに座り、老いていくまで見守るつもりでした。それなのに、今になって生きている私たちを捨てて行こうというのですか?」
賴吒和羅語父母言:「如今不聽我到佛所作沙門者,從今以去不復飲、不復食、不復沐浴。今聽我作沙門者善,不者當就死耳!」便却委臥空地不食,一日二日三日四日至五日不食。
ラージャカ王の両親に申し上げました。「もし今、私が仏のもとへ参り、修行者となることをお許しいただけないなら、私はこれより一切の飲食を断ち、沐浴もいたしません。私が修行者となることをお許しいただけるなら結構。お許しがなければ、命を絶つ覚悟でございます。」そう言って、彼は引き下がり、何も食べずに一日、二日、三日、四日、五日と絶食を続けました。
賴吒和羅宗親九族中外,聞賴吒和羅從父母求欲作沙門,父母不聽,委臥空地絕穀水漿五日不食。中外宗親九族皆到賴吒和羅所,曉語令起沐浴飲食。語賴吒和羅言:「汝父母未有汝時,禱祀諸天日月,四面叩頭,求子姓適得汝一子耳。汝當供養父母,為續門戶後。設汝終亡,父母常欲坐守汝屍至老,何況欲生別離去乎?」賴吒和羅亦不應。宗親九族皆復到父母前,啼泣謂言:「此兒終不受我諫也。」
ラッターパーラの親族や一族の人々が、彼が父母に出家を願い出て許されず、空き地に伏して飲食を絶ち、すでに五日間も何も食べていないと聞き、皆ラッターパーラのもとに集まりました。彼らは優しく言葉をかけて、起き上がって湯浴みをし、食事を取るように勧めました。こう言いました。「あなたの父母は、あなたが生まれる前、天や日月に祈り、四方に向かってひれ伏し、子宝を求めて、ようやくあなたという一人の子を得たのです。あなたは父母を養い、家の後を継ぐべきです。たとえあなたが亡くなっても、父母はその亡きがらを老いるまでそばに置いておこうと思うほどなのに、ましてや生きて別れ去ることをどうして許せるでしょうか?」
しかし、ラッターパーラは何も答えませんでした。すると親族や一族の人々は父母のもとへ行き、涙ながらに言いました。「この子は、私たちの忠告をどうしても受け入れそうにありません。」
賴吒和羅復有諸親厚知識,聞賴吒和羅欲到佛所作沙門,父母不聽委臥空地,不飲不食五日。親厚知識皆到賴吒和羅所,諫曉令起沐浴飲食,語言:「父母未有汝時,禱祀諸天日月,四面叩頭,求子姓,適得汝一子耳。汝當供養父母,為續門戶後。設汝終亡,父母常欲守汝屍至老,汝反欲生別離去耶?」賴吒和羅亦不應。親厚知識復到父母前,啼泣各自拭淚語父母言:「宜放是子聽令作沙門。所以者何?如使樂道作沙門者,後可生相見;設不樂道者,自當棄道來歸。當復如何乎?今反空使死亡,臭爛為虫蟻作食,用死人軀為?」今子大短氣沮欲死,父母家室妻子、妓人宗親知識,皆舉聲大哭。父母拭淚語賴吒和羅:「諸親厚知識與共約束,設放若作沙門以後,汝當復來歸,與我曹相見不?」
ラッタパーラ尊者には多くの親しい友人や知人たちがいました。 彼らは、ラッタパーラがブッダのもとへ赴き出家しようとしていること、そして両親がそれを許さず、彼が寝床についたまま水も飲まず食事もとらずに五日間が経ったことを聞きました。 そこで、親しい友人や知人たちは皆、ラッタパーラの許に集まり、彼を諭して起き上がらせ、沐浴し食事をとるよう勧めました。 彼らは言いました。 「あなたが生まれる前、あなたの両親は天や月日(神々)に祈り、四方にひれ伏して、子どもを授かるようにと願い続けました。そうしてようやく、たった一人の子どもであるあなたを得たのです。 あなたは父母に孝養を尽くし、家系を絶やさずに続けるべきです。 もしあなたが世を去ったとしても、父母はあなたの亡き骸を見守り続けて年老いることを望むのです。それなのに、あなたはむしろ生きて親元を離れ、別れようとするのですか?」 ラッタパーラは何も答えませんでした。 親しい人々は今度は両親のもとへ行き、涙を流しながらそれぞれが涙を拭い、両親にこう言いました。 「どうかこの子を許し、出家させるままにお任せください。 なぜかと申しますと、もし彼が出家して道を楽しむなら、後日に生きて再びお会いできるでしょう。 もし出家の道に喜びを見いだせなければ、自然と道を捨てて帰ってくるはずです。 それならば、どうなさいますか? 今、このまま彼を死なせてしまえば、彼の体は腐って臭いを放ち、虫や蟻の餌となってしまうのです。死んだ体(空っぽの器)に何の意味がありましょうか?」 今やこの子は息も絶え絶えで、死んでしまおうとしています。 両親、家族、妻、子供たち、女官たち、親戚一同、知人たちは皆、声を上げて泣き叫びました。 両親は涙を拭いて、ラッタパーラに言いました。 「諸々の親しい友人や知人たちも一緒に約束しよう。 もしお前を出家させるままにした後、お前は再び戻ってきて、私たちと会ってくれるか?」
賴吒和羅言:「放我去到佛所作沙門,使我生不死,會當來歸,與父母相見也。」父母聞子語聲便復大哭,即聽令去作沙門。賴吒和羅大歡喜自念:「我不食五日,身體大羸瘦。佛時從黈羅歐吒國至舍衛,相去五百里。且自養視,須我強健乃行。」
頼吒和羅が言った。「私を仏のもとへ行かせて、沙門(修行者)にしてください。そうすれば、私は死なない命を得ることができます。必ず帰ってきて、父母と再会いたします。」 父母は息子の言葉を聞いてまた大声で泣き、ついに彼を去らせて沙門にすることを許した。 頼吒和羅は大いに喜び、心の中で思った。「私は五日間も食事をとらず、体はひどくやせ細っている。仏はその時、黈羅歐吒国から舎衛へ向かわれているが、距離は五百里もある。しばらく自分の体を養い、元気になってから旅立とう。」
賴吒和羅自養視數日,有氣力,前報父母言:「自安,我去到佛所作沙門。」父母復舉聲大哭,父母拭淚言:「可去,自愛也。」賴吒和羅便以頭面著父母足,起繞父母三匝,便去。轉到舍衛祇洹,前到佛所,為佛作禮,白言:「父母已聽我,佛寧可持我作沙門。」佛即用作沙門,被袈裟、受沙門經戒。佛使諸阿羅漢,日共教授。不敢毀傷經戒,自思惟經道,便得四禪。得第一須陀洹、第二斯陀含、第三阿那含、第四阿羅漢,便得四神足飛行,能以天眼達視、天耳達聽,天上天下人民及蚑行蠕動之類,皆聞知所言所念,自知宿命所從來生。隨佛十歲,如影隨人。
十歲以後,意念:「我初去家時,與父母辭訣,期當復還相見。」賴吒和羅白佛言:「我初去家時,期當復還相見,願得行到父母所。」佛念賴吒和羅,不復能入愛欲中如在家時,已從愛欲得度脫。佛言:「大善。」即為佛作禮而去。轉行到黈羅歐吒國,晨起被袈裟、持應器,入父母里中,向家門乞食。舉家無肯應視者。所以者何?用沙門道故,生亡我大夫子,舉家惡見沙門,故不應視也。賴吒和羅到家門,無有乞者亦無應視者,無有白者但得罵詈,亦不憂不愁。適欲去家,有一婢欲出門棄臭豆羹滓,賴吒和羅還顧見婢,問言:「若用是臭豆羹為?」時婢言:「臭惡不可復食,故欲棄之。」賴吒和羅言:「如姉欲棄者,持用乞我。」婢便以著應器中。婢陰識賴吒和羅手足語聲,即念:「是我大夫子也。」即走入語其母:「大夫子已來在外。」母大喜語婢:「審如汝言者,今日即免汝為良民,便以我所著身上衣被珠環,悉賜與汝。」母便走至夫所,夫時適在中庭梳頭,語夫言:「婢見我子賴吒和羅來在是門。我語婢言:『汝審見賴吒和羅者,我悉脫身上衣被珠環,乞匄與汝,免汝為良民。』」母語夫言:「疾起分布行求索之。」夫即斂頭,走行於諸街曲里巷而求索之。見賴吒和羅於屏處仰頭視日,適得飯時,便止食臭豆羹滓。公便前言賴吒和羅:「汝不當來歸於家好坐食美飯耶?而反於是間止食臭豆羹滓為?」賴吒和羅語父言:「我棄家學道作沙門,無家,我當那所得家?」公呼共歸家,不肯隨去。公便宿請:「明日來,到家飯,行見汝母。」賴吒和羅言:「大善!」公歸語嫗言:「賴吒和羅審來在此,我已宿請,明日當來飯。子受請,所當具者便饒具之。」母即呼舍中奴婢皆著前,告言:「我初入門時,父母所送我,金銀白珠珍寶,悉出著中庭地,以物覆其上。」婢即受母教,悉出金銀白珠珍寶,積著庭中,物覆其上,高出人頭上。
十歳を過ぎてから、彼はこう思った。「私は初めて家を出た時、父母と別れを告げ、また戻って会いに行くと約束したのだ。」 頼吒和羅は仏に申し上げた。「私は家を出た時、再び父母に会いに行くと約束しました。どうか父母のもとへ行くことをお許しください。」
仏はお考えになった。頼吒和羅は、もはや家にいた時のような愛欲の世界に戻ることはできない。彼はすでに愛欲から解脱しているのだと。 仏は言われた。「大いに善い。」 頼吒和羅は仏に礼をして去った。
彼は旅を続けて、黈羅歐吒国に到着した。朝、袈裟をまとい、托鉢の器を持って、父母の住む町に入り、家の門のところで乞食をした。 しかし家中の者で、彼に目を向けようとする者は一人もいなかった。なぜなら、沙門(修行者)の道のせいで、大切な息子を失ったと思っていたからである。家の者たちは皆、沙門を見るのを嫌い、そのため彼に応じようとしなかった。
頼吒和羅が家の門に来ても、施しを求める者も、応じる者もなく、声をかける者もおらず、ただ罵られるだけであった。しかし彼は憂えもせず、悲しみもしなかった。
ちょうどその家を去ろうとした時、一人の女中が門から出て来て、腐った豆粥の滓を捨てようとしていた。頼吒和羅は振り返って女中を見、尋ねた。「その腐った豆粥をどうするつもりか。」 女中が言った。「腐って悪くなって食べられないので、捨てようと思っています。」 頼吒和羅は言った。「姉よ、もし捨てるのであれば、私に施していただきたい。」 女中はそれを彼の器に入れた。
女中はひそかに頼吒和羅の手足や話し声を覚えており、思った。「これは私の若様だ。」 彼女は走って中に入り、母親に告げた。「若様が外にいらっしゃいます。」 母親は大喜びで女中に言った。「もし本当にあなたの言う通りなら、今日あなたを自由の身にしてやりましょう。そして私が身に着けている衣類や宝玉もすべてあなたにあげよう。」 母親は走って夫のところへ行った。夫はちょうど中庭で髪を梳いていた。 母親は夫に言った。「女中が、私の子の頼吒和羅が門のところに来ているのを見ました。私が女中に言ったのです。『もし本当に頼吒和羅を見たなら、私が身に着けている衣類や宝玉をすべて施してやり、あなたを自由の身にしよう』と。」 母親はさらに言った。「急いで立ち上がり、方々を探しに行きなさい。」 夫はすぐに髪をまとめ、通りや路地を走り回って探した。
彼は頼吒和羅が物陰で、頭を上げて日を仰ぎ、ちょうど托鉢の時間にあたっていたところを見つけた。そして、腐った豆粥の滓を食べている最中であった。 父親は近づいて言った。「頼吒和羅よ、家に帰って美味しいご飯を座って食べるべきではないか。なぜこんな所で、腐った豆粥の滓を食べているのか。」 頼吒和羅は父に言った。「私は家を捨てて道を学び、沙門となりました。家はありません。どうして家がある所へ帰れましょうか。」 父は一緒に家に帰ろうと声をかけたが、彼は従わなかった。 そこで父は言った。「せめて明日、家に来て食事をし、あなたの母に会ってくれ。」 頼吒和羅は言った。「大いに善い。」 父は帰って妻に言った。「頼吒和羅が確かにここに来ている。私は明日の食事の約束をしてきた。子が受けた約束だ。必要なものは十分に用意しなさい。」
母はすぐに家の中の男女の召使いを皆呼び寄せて、こう言った。「私が初めてこの家に嫁いだ時、実家から持参した金、銀、白い珠、珍宝のすべてを、中庭に並べ、布で覆いなさい。」 召使いたちはその指示に従い、金、銀、白い珠、珍宝をすべて中庭に積み上げ、布で覆った。その山は人の頭上よりも高く積み上がった。
賴吒和羅,食時被袈裟、持應器,到父母家。父母遙見子來入門,母便取金銀積上覆去之,前以兩手把金銀散之。語賴吒和羅言:「見金銀珍寶,是汝母入門時所有也,汝父所有也,金銀珍寶無央數,汝可取,以布施飲食極自娛樂。用沙門作為?不如作白衣自在家也。」賴吒和羅語父母言:「如使大人用我言者,我欲誡大人一事。」父母言:「大佳!受教。」賴吒和羅言:「取寶物上覆皆用作囊,悉取珍寶盛著囊中,載著車上,持到恒水邊,視占深處以投其中。所以者何?畜財寶者,令人多憂,或恐縣官盜賊、或恐水火、或恐怨家。」
ラッタパーラよ、食事時に袈裟を着て、托鉢の鉢を持ち、両親の家に行った。父母は遠くから息子が門に入ってくるのを見ると、母は金銀の上にかぶせてあった覆いを取り去り、前に進み出て両手で金銀をまき散らした。そしてラッタパーラに言った。「この金銀財宝を見なさい。これらはあなたの母がこの家に入った時からあったもの、あなたの父の持ち物です。数えきれないほどの金銀財宝です。あなたはこれらを取り、布施を施し、飲食し、心ゆくまで楽しみなさい。どうして修行僧などになるのですか。在家のまま家にいるほうがよいではありませんか。」 ラッタパーラは父母に言った。「もしお二方が私の言葉に従ってくださるなら、一つだけ忠告したいことがあります。」父母は言った。「それは結構だ。教えてくれ。」ラッタパーラは言った。「宝物を覆っている布をすべて袋にして、その中に宝石を全部入れ、車に載せて、ガンジス川の岸に持って行き、深い所を選んでそこに投げ込みなさい。なぜなら、財宝を蓄えることは、人に多くの心配をもたらすからです。あるいは国の役人や盗賊を恐れ、あるいは水や火事を恐れ、あるいは怨敵を恐れることになるのです。」
父母便生意言:「賴吒和羅不可以財寶化也。試持故時諸美人妓女化還之耳。」母即到諸美人妓女所,教令悉沐浴莊嚴,著珠環服飾,如賴吒和羅在時所喜被服來出。母教諸美人妓女言:「汝出見賴吒和羅者,但言大家子!何所玉女勝我曹者,而棄我曹行學道,更求玉女乎?」諸美人妓女即受母教莊飾出,諸美人妓女語賴吒和羅言:「大家子!何所玉女勝我曹者?而棄我曹行學道,更求玉女乎?」賴吒和羅言:「我不用索玉女故,棄諸姉去也。」諸美人妓女聞之語即慚愧,長跪低頭以手覆面言:「以不用我曹作妻,反呼我曹為姉。」賴吒和羅語父母言:「何為致相嬈?欲作飯者善,不能者已。」父母即為出飯具著前,便飯食。父母欲久視其子,恐飯已便捨去,勅閉諸門戶皆令下門鑰。飯竟,為父母說經言:「諸野人畜獸不當拘閉,畜獸不得自在,且捨人走。飯已,當去耳。野獸得脫,便走入深山。梳頭著澤畫眉粉白黛黑,可以化愚人耳;已度世之人,不可以此化也。視子骸骨皮肉裹之,飾以金珠珥璫㻉瑤之人,向是曹人如入湯火中,火適無所愛。香熏塗身可以化愚人,不可化度世之人也。不能自知當所為而為之,亦不能別父母,亦不能別兄弟,人心有所愛,不能自絕也。婦女譬若眾水,水流入大海,愚人向女人,便流入泥犁中、禽獸中薜荔中,意欲脫於生死憂苦者,欲得泥洹道者,當遠離婦女。」賴吒和羅為父母說經竟,便飛從天窓中出去,如猛師子走得脫。
そこで父母はこう考えました。「頼吒和羅は財宝では導けない。試しに、昔の美しい妓女たちを使って連れ戻そう。」母はすぐに妓女たちのもとへ行き、全員に沐浴させ、身を飾らせ、珠の環や装身具を身につけさせ、頼吒和羅が在家だったころ好んで着ていた衣装を着けて連れて来させました。母は妓女たちにこう教えました。「お前たちが頼吒和羅に会ったなら、ただこう言いなさい。『若旦那様、私たちに勝るどんな玉女がいるというので、私たちを捨てて修行の道に入り、別の玉女を求めるのですか』と。」妓女たちは母の教えを受けて装いを整えて出て行き、頼吒和羅にこう言いました。「若旦那様、私たちに勝るどんな玉女がいるというので、私たちを捨てて修行の道に入り、別の玉女を求めるのですか。」頼吒和羅は言いました。「私は玉女を求めるためにあなたがたを捨てたのではありません。姉たちよ、私は去るのです。」妓女たちはこれを聞いて恥じ入り、ひざまずいて頭を垂れ、手で顔を覆って言いました。「私たちを妻にしないばかりか、かえって私たちを姉と呼ぶのですね。」頼吒和羅は父母に言いました。「なぜ私を煩わせるのですか。食事を出すなら出してください。できないならもう結構です。」父母はすぐに食事の支度を整えて前に置き、彼は食事をしました。父母は長くわが子を見ていたいと思いましたが、食事が終わればすぐに立ち去るのを恐れて、すべての門を閉ざし、かんぬきを下ろすよう命じました。食事が終わると、彼は父母のために経を説いて言いました。「野の獣や家畜は閉じ込めてはなりません。家畜は自由を得られず、人を捨てて逃げてしまいます。食事が終われば、私は去るのです。野獣は逃れられれば、すぐに深山へと走り入ります。髪を梳き、香油を塗り、眉を描き、白粉を塗り、眉墨で黒くすることは、愚かな者を導くことはできても、すでに世を超えた人をこれで導くことはできません。わが子の骸骨や皮肉が包まれ、金や珠、耳飾りや瓔珞で飾られた姿を見ても、そのような人にとっては、そうした人々に向き合うことは湯や火の中に入るようなもので、火には何の愛着もありません。香を焚いて身に塗ることは愚かな者を導くことはできても、世を超えた人を導くことはできません。自分がなすべきことを知らずになす者は、父母を見分けることもできず、兄弟を見分けることもできません。人の心には愛着があり、自ら断ち切ることができないのです。婦女はちょうど多くの水のようなものです。水が大海に流れ込むように、愚かな者は女に近づけば、地獄に流れ込み、畜生の中に流れ込み、餓鬼の中に流れ込みます。生死の憂いと苦しみから脱れたいと願い、涅槃の道を得たいと願う者は、婦女から遠く離れるべきです。」頼吒和羅は父母のために経を説き終えると、天窓から飛び出して行きました。まるで猛々しい獅子が逃れて去るかのように。
時國王名拘獵,與賴吒和羅少小親厚。王有一廬觀在城外,賴吒和羅飛往前入廬中,有樹名維醯勒,止坐其下。時王拘獵偶欲出到廬遊戲,勅廬監令豫掃除,廬監被勅即行掃除。見賴吒和羅在維醯勒廬樹下坐,廬監見之,即行白王:「掃除已淨。王常可道說親厚知識賴吒和羅,今在廬中樹下坐。王欲見者可孚行。」王聞之大歡喜,即嚴駕而出。到廬外,下車步入至賴吒和羅所前,作禮却坐。賴吒和羅言:「王來到,是大善!」王言:「雖我自來者,卿是我少小知識,意欲持財物極意相遺。」賴吒和羅報王言:「不宜持財物相遺也。今我以棄重擔牢獄解去也,王復欲持牢獄重擔著我上耶?不宜持是來相與也。」王言:「我當持何等相遺也?」賴吒和羅言:「王但當言:『令我國熾盛,五穀豐熟,人民眾多,乞匃易得,可止我國中,我不得令吏民侵抂卿。』」王言:「受教,當如所願賴吒和羅所言。」
昔々、拘獵という名の王がいました。彼は頼吒和羅と幼い頃から親しくしていました。王は城外に一つの楼閣を持っており、頼吒和羅は飛行してその楼閣の中に入り、維醯勒という名の木の下に座っていました。
ある時、王の拘獵が思い立って楼閣に遊びに行こうとしました。そこで楼閣の管理者に事前に掃除を命じました。管理者は命を受けてすぐに掃除を始めました。すると、頼吒和羅が維醯勒の木の下に座っているのを見つけました。管理者はこれを見てすぐに王に報告しました。「掃除はすでに終わりました。王様がよくおっしゃっていた親しい友人の頼吒和羅が、今楼閣の中の木の下に座っておられます。お会いになりましたら、どうぞお越しください。」
王はこれを聞いて大いに喜び、すぐに車を整えて出発しました。楼閣の外に着くと、車を降りて歩いて頼吒和羅の前に進み、礼をしてから座りました。頼吒和羅は言いました。「王様がおいでくださるとは、誠に喜ばしいことです。」王は言いました。「私が自ら来たのは、あなたが私の幼い頃からの友であり、ぜひとも財産を贈って十分にあなたのもてなしをしたいと思ったからです。」
頼吒和羅は王に答えました。「財産を贈っていただくのは適切ではありません。私はすでに重い荷物を捨て、牢獄から解き放たれた身です。王様は再びその牢獄の重荷を私の上にのせようとなさるのですか?そのようなものを私に与えるのはふさわしくありません。」王は言いました。「では、私は何をあなたに贈ればよいのでしょうか?」頼吒和羅は言いました。「王様はただこうおっしゃってください。『我が国を繁栄させ、穀物を豊かに実らせ、民を多くし、托鉢を容易にさせよう。どうか我が国にお留まりください。私が官吏や民にあなたを不当に扱わせることは決してありません。』」王は言いました。「お教えの通り、あなたの願いを叶えることにしましょう。」
王言:「我欲有所問,願聽我言。」賴吒和羅言:「大善!」王便言:「凡人作沙門有四苦事,乃行作沙門耳。何等為四?一者年耆,二者病瘦,三者孤獨,四者貧窮。人有是四苦者,乃行作沙門耳。今我視卿,了無是四事,用何等故作沙門乎?」王言:「所以年耆作沙門者,人老自念氣力薄少坐起苦難,不能遠行治生致錢財,正使有財產不能堅持,用是故除鬚髮作沙門;我視卿了無有是,頭鬚正黑身體完具,適是中年當自娛樂,時有父母啼泣,不樂卿作沙門。二者若人身被重病身體羸瘦,自念不能治生致錢財,正使有財產不能堅持,用是故除鬚髮作沙門;我視卿了無是,重病身體強健。三者人有孤獨一身,不能治生致錢財,正使有財產不能堅持,以是故作沙門;我視卿了無是,除王家宗親,視我國中尚無過卿者。四者人貧窮飢寒無以自給,自念貧窮無以治生,以是故除鬚髮作沙門,得乞匃以自活;我視卿了無是,我視國中富者,無過於卿者。人用是四苦故作沙門耳。」王問:「寧復有異是四事作沙門者不?」
王が言いました。「お尋ねしたいことがあります。お聞き届けください。」 頼吒和羅が答えました。「それは良いことでございます。」 王は言いました。「人は四つの苦しみがあるからこそ、出家して沙門となるのです。四つとは何か。第一に年老いること、第二に病にやせ細ること、第三に独り身であること、第四に貧しいことです。この四つの苦しみがあるからこそ、人は出家するのです。 ところが、私はあなたを拝見しても、これらの四つは全く見当たりません。いったい何のために出家されたのですか? 年を取って出家するのは、人は老いて体力が衰え、座ったり立ったりするのも難しく、遠くへ旅をして金を稼ぐこともできず、たとえ財産があっても維持できないからです。そのために髪を剃って沙門となるのです。しかしあなたにはそれが全く見られません。髪もひげも黒々として、体も完全で、まさに壮年、楽しむべき時です。それなのに、ご両親は泣いておられ、あなたの出家を喜んでいません。 第二に重い病にかかり、体がやせ細り、自分で金を稼げず、たとえ財産があっても保てないため、髪を剃って沙門となるのです。あなたにはそんなことは全くなく、体は丈夫です。 第三に独り身で、自ら生計を立てられず、財産もあっても保てないため、出家するのです。あなたにはそんなことはありません。王家や親族は別として、私の国の中であなたに優る者はおりません。 第四に貧しく飢え寒さに耐え、自活の道もなく、そのために髪を剃って沙門となり、物乞いで生きていくのです。あなたにはこれも全くありません。私の国の中では、あなたほど富んでいる者はいません。 人はこれらの四つの苦しみのために沙門となるのです。」 王はさらに問いました。「これら四つの理由以外に、沙門となることがあるのでしょうか。」
賴吒和羅言:「佛持是四事常自道說,皆更知之,用教誡人,我心中審如佛言,是故我除鬚髮被袈裟作沙門。何等為四?一者人生無有能避於老者,無有能止身使不老者。二者無有能避於病者,身無有代人死者。三者人死空身,不能齎持財產去。四者人至死,無有能厭於愛欲及財產者,人皆為財產愛欲作奴婢。佛為我說是四事,我心信之,故作沙門。」
賴吒和羅は言った。「仏はこの四つの事を常に自ら説かれ、それらをすべて知っておられ、教え戒めとして人々に示されました。私は心の内でまさに仏の言葉の通りだと思いました。ですから私は髪とひげを剃り、袈裟をまとい、沙門となりました。その四つとは何か。第一に、人は老いを避けられる者はなく、自らの体を老いさせないようにできる者はいない。第二に、病を避けられる者はなく、身に代わって死ぬ者はいない。第三に、人は死ぬときにはからっぽの身であり、財産を持っていくことはできない。第四に、人は死ぬまで愛欲や財産に飽き足りる者はなく、人は皆、財産や愛欲のために奴隷となる。仏は私にこの四つの事を説かれました。私はこれを心から信じたので、沙門となったのです。」
王言:「卿說是四事徵促,我意不解,願更為我廣說之。」
王が言いました。「あなたがおっしゃった四つのことの証明はあまりに簡潔で、私にはよく理解できません。どうかもう少し詳しく説明していただけないでしょうか。」
賴吒和羅言:「我自問王,王當以誠報我。王年二十三十至四十時,氣力射戲、上象騙馬、行步趍走,當爾時,自視寧有雙無?」
頼吒和羅(ラッタパーラ)は言いました。「私が王に質問いたしますので、王は真実をもってお答えください。王が二十歳、三十歳、四十歳の頃、体力があり、弓術や競技、象や馬に乗り、速く歩き走り回っていたあの頃、ご自身を誰にも負けない存在だとお思いでしたか?」
王言:「實如賴吒和羅言,我年二十三十至四十時,自視無雙,如我射戲、上象騙馬、行步趍走;今年長老,氣力衰微坐起苦難,意欲有所越蹈,不能越度。」
王が言いました。「まさにラッタパーラの言葉の通りです。私も二十歳、三十歳、四十歳の頃は、自分は誰にも負けないと思っていました。弓術や遊戯、象乗りや馬術、歩き方や走り方においてもそうです。しかし、年を重ね老いた今では、体力も衰え、座ったり立ったりするのも難しくなりました。心では何かを越えようと望んでも、もう越えることはできません。」
賴吒和羅言:「佛說是一事,我用是故,剃頭鬚作沙門。」
頼吒和羅(ラッタパーラ)は言いました。「仏様はこのことをお説きになりました。それゆえに、私は頭髪とひげを剃り、沙門(修行者)となったのです。」
王言:「佛說是事,實奇實善,入我心中。」
王は言った。「仏が説かれたことは、実に不思議で、実に素晴らしい。私の心に深く響いた。」
賴吒和羅問王言:「國中寧有傍臣百官仰王生活者不?」王言:「然,有是。」
ラッカホが王に問いました。「この国には、王の物により依りて生計を立てる家臣や百官がおりますか?」 王が答えました。「そうだ、いる。」
賴吒和羅言:「王曾被病困劣著床時不?」王言:「然,有是。」
ラッタパーラが言いました。「王様、かつて病に伏せられ、床に臥せられたことはおありですか?」
王は答えました。「そうだ、確かにあった。」
賴吒和羅言:「被病著床時,王呼傍臣百官仰王生活者,教勅言:『今我被病困劇,汝曹共分取我病去。』王雖有是教,臣下寧能共分王病持去不?」
頼吒和羅が言いました。「王が病に伏せって床についた時、王は側近の臣下や、王によって生計を立てている百官の人々を呼び寄せて、こう命じました。『今、私は病に深く苦しめられている。お前たち皆で、私のこの病を分け取ってくれ。』王がこのように命じたとしても、臣下たちが一緒に王の病を分け取ることができるでしょうか?」
王言:「不也。身會當自受之,傍臣不能代。」
王は言いました。「いいえ、違います。身体の報いは自らが受けるものであり、家来が代わりになることはできません。」
賴吒和羅言:「佛說是,是為二事,我用是故作沙門。」
頼吒和羅が言いました。「仏様がおっしゃる通りです。この二つのことが道理です。私はそのために、修行者となったのです。」
王言:「實奇實善,入我心中。」
王は言いました。「本当に素晴らしい。まさに私の心に響く教えだ。」
賴吒和羅問王言:「若人壽終欲盡且死時,人之意所不喜也,雖不喜亦不能得離於死。」賴吒和羅言:「人自知當死,何以故不豫持珍寶著當所生處?」
頼吒和羅が王に問うた:「人の寿命が尽きて死のうとする時、心はそれを喜ばないものだが、たとえ喜ばなくとも死から逃れることはできない。」 頼吒和羅は言う:「人は自ら死が来ることを知っているのに、なぜあらかじめ財宝を次に生まれ変わる場所に備えて送らないのか?」
王言:「不能持珍寶豫著當所生處也,皆當棄,空去耳。」
王様は言いました。「大切な財宝を持って、生まれ変わる場所にあらかじめ置いておくことはできません。すべてを捨てて、むなしく去っていくしかないのです。」
賴吒和羅言:「佛說是,是為三事,我用是故作沙門。」
ラッタパーラは言いました。「仏様がおっしゃる通り、これら三つのことがあるからです。私はこの理由で修行者(沙門)となりました。」
王言:「佛說是事,實奇實善,入我心中。」
王は言った。「仏が説かれたことは、実に不思議で、実に素晴らしい。私の心に深く響いた。」
賴吒和羅問王言:「王寧有國中安寧、人民熾盛、五穀豐熟?」
それに対し、頼吒和羅が王に尋ねました。「王よ、この国は平穏で、人々が増え、五穀は豊かに実っていますか?」
王言:「有是。」
王が言った、「その通りです」
賴吒和羅言:「若有人從東方來,至誠語王,王亦當信其所言:『我從東方來,見有大國,國中豐熟、人民熾盛。我識道徑,能持王兵往攻取其國。』王聞是語,寧欲使人往取其國不?」
ラジャーヴァルダナが言いました。「もし東方から来た者が、誠実な言葉で王に告げたとしましょう。『私は東方から来ました。大きな国を見ました。その国は豊かで実り多く、人民が非常に栄えています。私は道筋を知っています。王の兵を率いて、攻め取ることができます。』王はこの言葉を聞いて、人を遣わしてその国を攻略しようと思いますか?」
王言:「然,貪其利入,猶欲取之。」
王が言いました。「そうだ、その利益を得たいと思い、まだそれを手に入れたいと考えているのだ。」
賴吒和羅言:「若復有人從南方來、西方來、北方來者,道說有國如東方者,王寧欲取之不?」
頼吒和羅が言いました。「もしまた南方から、西方から、北方から人が来て、東方のような国があると告げたならば、王様はそれを欲しがられるでしょうか?」
王言:「然,貪其利入,猶欲取之。」
王が言った。「そうだ。利益をむさぼるからには、やはりそれを取ろうと思うものだ。」
賴吒和羅言:「若復有人從海一邊渡來,至誠語王,王亦信其所言:『言海一邊有大國,國中五穀豐熟、人民熾盛。我識道徑,能持王兵往攻其國。』王聞是語,寧欲使人取其國不?」
らいじゃわらが言った。「もしも、海の向こうから誰かが渡ってきて、誠実に王様に語りかけたとしましょう。王様はその言葉を信じて、『海の向こうには大きな国があり、その国では五穀が豊かに実り、人々が栄えている。私は道を知っているので、王様の兵を率いてその国を攻めることができます』と。王様はこの言葉を聞いて、その国を取らせたいと思うでしょうか?」
王言:「然,貪其利入,猶欲取之。」
王が言いました。「そうだ、その利益を得たいと思い、まだそれを手に入れたいと考えているのだ。」
賴吒和羅言:「佛見是事,知人苦貪無厭足也,是為四事,我用是故作沙門。佛見是四事,用教誡人。」
ラッタパーラは言いました。「仏様はこれらのことをご覧になり、人間の貪りの苦しみには限りがないことを知っておられます。これらが四つの事柄です。私はこの理由で沙門となったのです。仏様はこれら四つの事柄をご覧になり、人々を教え戒められるのです。」
王言:「佛說是事,實奇實善,入我心中。」王言:「佛豫知去來現在之事,善乃如是耶?」
王は言った。「仏が説かれたことは、実に不思議で、実に素晴らしく、私の心に深く響きました。」そしてさらにこう言った。「仏は、過去・未来・現在の出来事をあらかじめすべてご存知だったのですか。それほどまでに素晴らしいお方なのですね。」
賴吒和羅言:「王自有國及四方國,常不厭足,復悕望海外國。佛見世間人有財寶者,皆堅藏守之,不肯布施與人,慳貪藏之,更復求索。帝王及人民,皆不知厭足,至於死不棄愛欲,會當捨其死,所有財寶皆置空去,當趣所作善惡道。善惡隨人,如影隨人。人死後,家室宗親啼哭悲哀,棺斂葬埋,人生獨生、死亦獨死,身作善惡身獨當之,無有人代者。飲食金銀珍寶,不能令人得道,財富不能救護人命,令不老死。人之所思念多端,人之所愛樂也,人志意數轉,不能專一。佛言:『人坐恣意故,以致凶變怨偶恐懼,譬如穿盜者之所念也。人從後得之,身所作惡,自陷其死,如世間人作惡,死後當入泥犁、畜生、薜荔中。譬如樹木生華葉成實者,中有花時墮者,中有成果時墮者,中有大時墮者,中有熟時墮者。人亦如是,中有從腹中墮者,中有墮地死者,中有半年死者,中有老時死者,人命不可知。』」賴吒和羅言:「我用是故作沙門,凡人謂我不能治家故作沙門。雖有諸論議,要不如學道。」
賴吒和羅は言った。「王は自分の国と四方の国々を持ちながら、常に満足せず、さらに海外の国々を望んでおられます。仏は、世の中の財宝を持つ人々が、皆しっかりと隠して守り、人に施しをしようとせず、けちけちと蓄えてはさらに求めるのをご覧になります。帝王も民も、皆満足することを知らず、死に至るまで愛欲を捨てず、やがてはその死を受け入れなければなりません。持っている財宝はすべて空しく置き去りにし、自分の善悪の行為によって行くべき道へと向かうのです。善悪は人に従い、影が人に従うようにして付きまといます。人が死ねば、家族や親族は泣き悲しみ、棺に納めて葬りますが、人は独りで生まれ、独りで死にます。身が行った善悪はその身だけが受け、代わる者は誰もいません。飲食や金銀の宝は、人を悟りに導くことはできず、富は人の命を救い、老いや死を免れさせることはできません。人の思いは多岐にわたり、人の愛好するものも様々です。人の心は何度も変わり、一つのことに専念することができません。仏は言われました。『人は思いのままに振る舞うからこそ、凶事や変事、怨みや恐れを招くのである。それはちょうど、盗人が穿つことを考えるようなものだ。後に捕らえられ、自らの悪行によって自らの死に陥る。世の中の人が悪を行えば、死後、地獄・畜生・餓鬼の世界に入るのと同じである。例えば、木々に花や葉や実が生るように、その中には花の時に落ちるものもあれば、実の時に落ちるものもある。大きく育った時に落ちるものもあり、熟した時に落ちるものもある。人もまた同じで、胎内にいるときに落ちる者、生まれてすぐに死ぬ者、半年で死ぬ者、老いて死ぬ者など、人の命は予測できないのである。』」
頼吒和羅は言った。「私はこの理由で沙門となりました。世間の人は、私が家を治められないから沙門になったと言いますが、様々な議論もあるけれど、結局は道を学ぶに如くものはありません。」
賴吒和羅說經竟,王便得第一須陀洹道,便受五戒:一者不殺,二者不盜,三者不犯他人婦女,四者不妄語兩舌,五者不飲酒。王受戒已,即作禮而去。
頼吒和羅が説経を終えると、王はすぐに第一の須陀洹の道を得て、五戒を受けました。一つには殺さないこと、二つには盗まないこと、三つには他人の婦女を犯さないこと、四つには妄語や両舌をしないこと、五つには酒を飲まないことです。王は戒を受けた後、すぐに礼をして去りました。
佛說賴吒和羅經
仏説頼吒和羅経