大目乾連冥間救母變文(并)圖一卷(并□□□)
大目乾連冥間救母変文 図一卷
天為七月十五日者。天堂啟戶地獄門開。三塗棄消□□□□□眾僧咨下此日會福之神八部龍天盡來教□□□□現世福資為亡者轉生於勝慶於是盂蘭百味□□□三尊仰大眾之恩光救倒懸之窘急。昔佛在世時□□□目連在俗未出家時。名曰羅卜。深信三寶敬重大乘。□□□欲往他國興易。遂即支分財寶。令母在後設齋供佛□僧詵乞來者。及其羅卜去後。母生慳悋之心。所屬付資財並私隱匿。兒子不經旬日事了還家。母語子言。依汝齋作福。因茲欺誑凡聖。命終遂墮阿鼻地獄中受□□苦。羅卜三周禮畢。遂即投佛出家。丞宿習因聞法證□□□漢果。即以道眼訪不見慈親。六道生死都不見母。目連從□□□悲諮白。世尊慈母何方受於快樂。爾時世尊報目連曰。汝母已落阿鼻。見受諸苦。汝雖位登聖果。知欲何為。若非十方眾僧解下脫之日。已眾力乃可救之。故佛慈悲開此方便旬建。盂蘭盆者即是其事也。
天が七月十五日と定めたのは、天国の扉が開き、地獄の門が開かれる日だからです。三途の苦しみが消え去り、多くの僧侶がこの日に集い、福の神や八部龍天が皆、教えを説きに来られます。現世の福徳を積み、亡き者のために勝れた慶びの世界へ転生させるのです。そこで盂蘭盆の百味の供物を三宝に捧げ、大衆の恩光を仰ぎ、逆さ吊りのような苦しみから救うのです。
昔、仏が在世の時、目連はまだ在家で出家していませんでした。名を羅卜といい、三宝を深く信じ、大乗を敬っていました。ある時、他国へ商いに行くことになり、財宝を分けて母に言い付けました。「私が留守の間、仏と僧に斎食を施し、来る者には喜捨してください」と。しかし羅卜が去った後、母は慳貪の心を起こし、託された財産を全て隠してしまいました。息子が十日と経たずに帰ってくると、母は言いました。「お前の言う通りに斎食を施して福を積んだよ」と。このように凡夫も聖者も欺いたため、命終わって阿鼻地獄に堕ち、様々な苦しみを受けることになりました。
羅卜は三年の喪が明けると、すぐに仏のもとへ出家に行きました。宿世の因縁により法を聞いて証を得て、阿羅漢の果位に至りました。さっそく道眼をもって慈しみ深い母を探しましたが、六道の生死をくまなく探しても母を見つけることができません。目連は悲しみに暮れ、世尊に尋ねました。「世尊、私の慈母は今、どこで安楽を受けておりますか」と。その時、世尊は目連に答えられました。「汝の母はすでに阿鼻地獄に堕ち、様々な苦しみを受けている。汝は聖果に登ったとはいえ、どうすることができよう。十方の衆僧が結夏安居を解くこの日に、多くの力をもってこそ救うことができるのだ」と。こうして仏は慈悲をもってこの方便を開き、盂蘭盆の縁起を説かれたのです。
羅卜自從父母沒 禮拉三周復制畢
聞樂道不樂損形容 食旨不甘傷筋骨
聞道如來在鹿苑 一切人天皆無恤
我今學道覓如來 往詣雙林而問佛
爾時佛自便逡巡 稽首和尚兩足尊
左右磨詞釋梵□ 東西大將散支神
看前萬字頗黎色 項後圓光像月輪
欲知百寶千花上 恰似天邊五色雲
弟子凡愚居五□ 不能捨離去貪嗔
直為平生罪業重 殃及慈母入□□
只恐無常相逼迫 苦海沈淪生死津
願佛慈悲度弟子 學道專心報二親
世尊當聞羅卜說 知其正直不心邪
屈指先論口諦去 後聞應當沒七遮
縱令積寶陵雲漢 不及交人暫出家
恰似盲龜遇浮木 由如大水出蓮花
喪□火宅難逃避 滔滔苦海闊無邊
直為眾生分別故 如來所已立三車
佛喚阿難而剃髮 衣裳便化作袈裟
登時證得阿羅漢 後受波羅提木叉
羅卜當時在佛前 金爐怕怕起香煙
六種瓊林動天地 四花標樣葉清天
千般錦繡補床坐 萬道殊幡空裏玄
佛自稱言我弟□ 號曰神通大目連
羅卜は父母亡き後、三周忌の法要を終え、 音楽を聞いても楽しめず、体はやつれ、 美食も味わえず、骨身にこたえました。
「聞くところでは、如来様は鹿野苑におられ、 人も天も皆、救いを求めていると。 今こそ私も仏道を学び、如来様に会いに行こう。 双林の地へ赴き、仏に尋ねよう」
その時、仏はゆっくりと進み出て、 両足の尊(仏)に礼を尽くしました。 左右には梵天や帝釈が控え、 東西には大將や散支神が立ち並びます。
額には瑠璃色の卍字の光、 後頭部には月輪のような円光が輝き、 百宝の花々はまるで、 天辺に広がる五色の雲のようです。
「弟子は愚かで五欲に生き、 貪りと怒りを捨てられませんでした。 平生の罪業が重く、 慈母までもが地獄に落ちてしまいました。 無常の迫りに恐れ、 苦海の生死に沈んでいます。 どうか仏の慈悲で弟子をお救いください。 一心に道を学び、両親に報いたいのです」
世尊は羅卜の言葉を聞き、 その正直で邪心なき心を知りました。 まずは真実の教えを説き、 後に七つの過ちを滅ぼすべきと示されました。
「雲を凌ぐほどの宝を積むよりも、 人と共に一時でも出家する方が尊い。 まるで盲目の亀が浮木に出会うが如く、 濁流から蓮の花が咲くが如し。 燃える家屋から逃れ難く、 広大な苦海は果てしなく広がる。 衆生の分別の故に、 如来は三つの車(乗り物)を設けたのだ」
仏は阿難に命じて剃髪させ、 衣を袈裟に変えさせました。 たちまち阿羅漢の境地を証し、 後に波羅提木叉(戒律)を受けました。
羅卜は仏の前にて、 金炉からゆらゆらと香煙が立ち上り、 六種の瓊林は天地を震わせ、 四種の花は清らかな天を彩ります。 千種の錦繡が座を飾り、 万道の幡が虚空に翻りました。
仏は自ら宣言されました。 「我が弟子よ、その名は神通大目連」と。
當時目連於雙林樹下證得阿羅漢果。何為如此。准法華經云。窮子品。先受其價然後除糞。此即是也。先得阿羅漢果後當學道。看目連深山坐禪之處。
その時、目連は双林樹の下で阿羅漢の悟りを証得した。なぜこのようになったのか。法華経の「窮子品」に照らすと、「まず対価を受け取り、それから糞を除く」とある。これがそれである。まず阿羅漢の悟りを得て、その後、道を学ぶのである。目連が深山で坐禅した場所を見よ。
目連剃除須髮了 將身便即入深山
幽深地淨無人處 便即觀空而坐禪
坐禪觀空知善惡 降心住心無所著
對鏡澄澄不動遙 右脚還須押右脚
目連は髪を剃り落とすと、すぐに深山へと入っていった。 人気のない静かな清らかな地で、ただちに空を観じて坐禅を組んだ。 坐禅して空を観じ、善悪を知り、心を調え、心をとどめて執着なく。 鏡のような澄んだ心は動揺せず、右の足は左の足の上に静かに置かれた。
端身坐盤石 以舌著上蕚
白骨盡皆空 氣息無交錯
端坐して盤石に座り 舌を上顎につける 白骨すべて皆空しく 息の乱れもなく
當時群鹿止吟林 逼近清潭望海頭
明月庭前聽法眼 青山松下坐唯禪
天邊海氣無遐換 隴外青山望或樓
秋風瑟瑟林中度 黃葉飄零水上浮
目連宴坐虛無境 內外證心漸漸修
通達聲聞居望地 出入山間得自由
その時、鹿の群れは林に憩い 清らかな池のほとりに近づき、海の果てを眺める 明月が庭前に照らし、法の眼で聴き 青い山の松の下に坐して、ただ禅に在る
天の果ての海の気は遠くまで変わりなく 丘の外の青い山は、楼閣を望むかのよう 秋風がそよそよと林を渡り 黄色い葉が漂い、水の上に浮かぶ
目連は静かに坐し、虚無の境地にあり 内と外に心を証し、次第に修行を深める 声聞の道を極め、望む地に住み 山々を出入りし、自由を得る
目連從定出 迅速作神通
來如霹靂急 去似一團風
海鴈啼繒徹 鶬鷹脫網籠
譚中煙霞碧 天淨遠路紅
神通得自在 擲鉢便騰空
于時一向子 上至梵天宮
目連は禅定より出で、たちまち神通力を現す。 来るは霹靂の如く急なり、去るは一団の風の如し。 海雁は繒網を啼き徹し、鶬鷹は網籠を脱す。 譚中に煙霞碧く、天は澄みて遠路紅なり。 神通自在を得て、鉢を擲てば即ち空に騰がる。 この時、一たび向かえば、上は梵天宮に至る。
目連一向至天庭 耳裏唯聞鼓樂聲
紅樓半映黃金殿 碧牖渾論皇成
錫杖敲門三五下 胸前不覺淚𭰾
長者出來如共語 合掌先論中孝情
啟言長者相識否 頻道南閻浮提人
少小身遭父母喪 其家大富小兒孫
孤㝁更亦無途當 頻道慈母號清提
阿耶名輔相 一生多造福田因
亡過合生此天上 可連富責嫡奢地
望覩令人心悅暢 鍾鼓鏗鎗知雅音
鼓瑟也以聲遼亭 哀哀劬勞長不捨
乳哺之恩難可忘 別後安和好在否
比來此處相尋訪 長者聞語意以悲
心裏迴惶出語遲 弟子閻浮有一息
不省既有出家兒 和尚莫怪苦盤問
世上人倫有數般 乍觀出語將為異
收氣之時稍似難 俗間大有同名姓
相似顏容幾百般 形容大省繒相織
只竟思量沒處安 闍梨苦死來相認
更說家徒事意看
目連はただちに天界へと至り、耳にはただ鼓楽の音だけが聞こえる。 赤い楼閣は黄金の宮殿に半ば映え、碧い窓はまるで王城のようだ。 錫杖で三五度と門を叩くと、胸のうちに涙が溢れるのを覚える。 長者が出てきて語りかけるように、合掌してまずは親孝行の心を述べる。 「長者よ、私をご存知でしょうか。私は南閻浮提の者です。 幼くして父母に別れ、その家は大変裕福で小さな子供や孫がいました。 孤独で行く当てもなく、ただ慈母の清提を慕うばかり。 父の名は輔相、一生を通じて多くの福を積みました。 亡くなってこの天界に生まれるはず、富と栄華に満ちた地に連なることを願い、 見る者を心から喜ばせ、鐘や鼓の響きは雅やかな音を知らせます。 瑟を弾く音も遠くまで響き渡り、哀れな労苦はいつまでも消えません。 乳を飲ませ育ててくれた恩は忘れ難く、別れてからお元気でお過ごしでしょうか。 ここへ尋ねて参りました」と。 長者はこの話を聞いて悲しみに沈み、 心は揺れ動き言葉が出てこない。 「弟子は閻浮に一人の息子がおりましたが、 出家した子がいたとは知りませんでした。 和尚様、どうかお尋ねするのをお許しください。 この世の人には様々な縁があり、 突然の言葉に驚きを覚え、 気持ちを落ち着けるのも少し難しいのです。 俗世間には同じ名前の者が大勢おり、 似た容貌も幾百とあります。 姿形は大いに似通っているものの、 どう考えてもどこに当てはまるか分かりません。 闍梨が必死に訪ねてこられ、 さらに家のことを詳しくお話しください」
目連白言。長者。頻道小時名字羅卜。父母亡沒已後投佛出家。剃除須髮號曰大目乾連。神通第一。長者見說小時名字。即知是兒別久好在已否。羅卜目連認得慈父。起居問信已了。慈母今在何方。受於快樂。長者報言。羅卜。汝母生存在日。與我行業不同。我修十善五戒。死後神識得天上。汝母平生在白廣造諸罪。命終之後遂墮地獄。汝向閻浮提冥路之中。尋問阿孃即知去處。目連聞語便辭長者。頓身下降南閻浮提。向冥路之中尋覓阿孃不見。旦見八九箇男子女人閑閑無事。目連向前問。
目連が申し上げました。「長者様、私が幼い頃の名前は羅卜といいました。父母が亡くなった後、仏門に入り出家いたしました。髪を剃り落とし、大目乾連と名乗り、神通力において第一とされております。」
長者は幼い頃の名前を聞き、すぐにこれが我が子であるとわかり、久しぶりに会えた喜びと安否を確かめました。羅卜こと目連も慈父と認め合い、近況を尋ねる挨拶を交わした後、こう尋ねました。
「慈母は今どこにおられますか。安楽に過ごしておられますか?」
長者は答えました。「羅卜よ、お前の母は生前、私と行いが違っていた。私は十善五戒を修め、死後、魂は天上に生まれた。しかしお前の母は生前、様々な罪を重ねていたため、命終わった後、地獄に堕ちてしまった。お前は閻浮提(この世)の冥界の道へ行き、母を尋ねればその行方がわかるだろう。」
目連はこの言葉を聞くと、すぐに長者に別れを告げ、身を翻して南閻浮提へ降り立ちました。冥界の道へ向かい母を探しましたが見つからず、ただ八、九人の男女が何もせずにぶらぶらしているのを見かけました。目連が近づいて尋ねると、
其事由之處 但且莫禮拜
賢者是何人 此間都集會
閑閑無一事 遊城墎外來
その事の起こりしところは、ただ礼拝せずにいよう。 賢者は何者か、ここに皆集う。 のどかに何もなく、城の外から遊びに来た。
頻道今朝至此間 心中只手深相怪
諸人答言啟和尚 只為同名復同性
名字交錯被追來 勘當恰經三五日
無事得放却歸迴 早被妻兒送墳墓
獨自剋我在荒祁 四邊更無親伴侶
狐狼鵶鵲競分張 宅舍破壞無投處
王邊披訴語聲哀 判放作鬼閑無事
受其餘報更何哉 死生路今而已隔
一掩泉門不再開 塚上縱有千般食
何曾濟得腹中飢 號咷大哭終無益
徒煩攪紙作錢財 寄語家中男女道
勸令修福字冥灰 目連良久而言識
今朝この地に至るまで、心中ただ深く怪しむばかり。 皆が答えて和尚に申し上げる、ただ同名で同じ姓のためだと。 名前が交錯して連れて来られ、調べは丁度三五日を経て、 何事もなく放免され帰ろうとしたが、早くも妻子に墓場まで送られ、 独り荒れ野に取り残され、周りには親しい伴侶もなく、 狐や狼、烏や鵲が争って分け合い、家屋は壊れて身を寄せる場所もない。 王の前で訴える声は哀れに、判決は鬼となって閑居するも、 その余報を受けてどうしようもない。死生の道は今や隔たり、 一度閉じた泉門は再び開かず、墓の上に千種の供物があっても、 どうして腹の飢えを癒せようか、号泣しても終いに益なく、 ただ紙をかき集めて財とする煩わしさ。家の男女に伝えてくれ、 冥土の灰となる前に福を修めるよう勧めよと。目連はしばらくして言葉を続けた。
一青提夫人已否。諸人答言。盡皆不識。目連又問。閻羅大王住在何處。即諸人答言。和尚向北更行數步。遙見三重門樓。有千萬箇壯士皆持刀棒。即是閻羅大王門。目連聞語向北更行數步。即見三重門樓。有壯士驅無量罪人入來。目連向前尋問。阿娘不見。路傍大哭哭了前行。披所由將見於王。門官引入見大王問目連事之處。
一青提夫人はもうお見えになりましたか。皆が答えて言いました。「誰も知りません」。目連はまた尋ねました。「閻羅大王はどこにおられますか」。すると皆が答えて言いました。「和尚様、北へもう少し歩いて行くと、三重の門楼が見えてきます。そこには何千もの屈強な兵士が刀や棒を持っており、そこが閻羅大王の門です」。目連はその言葉を聞き、北へもう少し歩いて行くと、三重の門楼が見えました。屈強な兵士たちが無数の罪人を追い立てて入ってきます。目連は前に進んで尋ねましたが、母は見当たりません。道端で大声で泣き、泣きながら前へ進みました。案内役が彼を王に引き合わせるため、門番が目連を中へ案内し、大王に目連のことを尋ねる場面です。
大王既見目連入 合掌逡巡而欲立
和尚又沒事由事 連忙案後相祇色
暫愧闍梨至此間 弟子處在冥塗間
栲定罪人生死 雖然不識和尚
早箇知其名字 為當佛使至此間
別有家私事意 太山定罪卒難移
總是天曹地筆枇 罪人業報隨緣起
造此何人救得伊 腥血凝脂長夜臭
惡染闍梨清淨衣 冥塗不可多時住
伏願闍梨早去歸 目連啟言不得說
大王照知否 頻道生年有父母
日夜持齋常短午 據其行事在人間
亡過合坐於淨土 天堂獨有阿耶居
慈母諸天覓總無 計亦不應過地獄
只恐黃天橫被誅 追放縱由天地邊
悲嗟悔恨乃長噓 業報若來過此界
大王繒亦得知否
大王は目連が入って来るのを見ると、手を合わせて少し躊躇い、立ち上がろうとしました。
和尚はまた何の用事もなく、急いで机の後ろから恭しい態度を示しました。
「しばらくは和尚がここに来られるのが恥ずかしいです。弟子は暗い道の中におり、
罪人の生死を裁いております。和尚のことは存じ上げませんが、
早くからそのお名前は承知しておりました。もしかすると仏のお使いでいらっしゃったのでしょうか、
それとも他にご用件がおありなのでしょうか。泰山の裁きは容易には変えられず、
すべては天界の記録に基づいております。罪人の業報は縁によって生じ、
これを造った者を誰が救えるでしょうか。生臭い血が脂のように固まり、長い夜に臭いを放ち、
和尚の清らかな衣を汚してしまいます。この冥界に長く留まることはできません。
どうか和尚には早くお帰りいただきたいと願います。」
目連は言葉を発し、言いました。「申し上げることはできませんが、
大王はおわかりでしょうか。生前には父母がおり、
日夜、斎戒を守り、常に短い午の時を過ごしていました。その行いを人間界で見る限り、
亡くなった後は浄土に坐すべきでありました。天界には父上だけがおられ、
慈悲深い母上は諸天を探してもどこにも見当たりません。地獄を過ぎることもないはずでしたが、
ただ天の理不尽な誅伐を恐れております。追放され、天地の果てに放たれ、
悲しみ嘆き、悔恨のため息ばかりです。もし業報がこの世界に及ぶならば、
大王もどうかおわかりいただけますでしょうか。」
目連言訖。大王便喚上殿。乃見地獄菩薩便即禮拜。汝覓阿孃來。目連啟言。是覓阿孃來。汝母生存在日。廣造諸罪無量無邊。當墮地獄。汝且向前吾當即至。大王便喚業官。伺命司錄應時即至。和尚阿孃名青提夫人。亡後多少。時業官啟言。大王。青提夫人已經三載。配罪案總在天曹。錄事司太山都尉一本王喚善惡二童子。向太山檢青提夫人在何地獄。大王啟言。和尚共童子相隨問五道將軍。應知去處。目連聞語便辭大王。即出行經數步即至奈河之上。見無數罪人脫衣掛在樹上。大哭數聲欲過不過。迴迴惶惶五五三三。抱頭啼哭。目連問其事由之處。
目連が言い終えると、大王はすぐに彼を殿上に呼び寄せた。すると地獄の菩薩を見つけ、すぐに礼拝した。「お前は母を探しに来たのか。」目連は答えた。「はい、母を探しに来ました。」「お前の母は生前、数え切れないほどの罪を重ねていた。地獄に堕ちるはずだ。まず先に行け、私はすぐに追いつく。」大王はすぐに業官と伺命司録を呼んだ。彼らはすぐに現れた。「和尚の母、青提夫人は亡くなってどれくらいになるか。」業官が答えた。「大王、青提夫人はすでに三年になります。罪の記録はすべて天曹にあり、録事司の太山都尉が保管しております。」大王は善悪二童子を呼び、太山へ行って青提夫人がどの地獄にいるかを調べるよう命じた。大王は言った。「和尚よ、童子たちと共に五道将軍のもとへ行き、尋ねるがよい。行き先が分かるはずだ。」目連はその言葉を聞くと、大王に別れを告げて出発した。数歩進むと、すぐに奈河のほとりに着いた。そこには無数の罪人が、服を脱いで木に掛け、大声で泣き叫びながら、渡ろうとしても渡れずにいた。彼らは右往左往し、群れをなして、頭を抱えて泣いていた。目連はその様子を見て、事情を尋ねた。
柰河之水西流急 碎石讒巖行路澁
衣裳脫掛樹枝傍 被趁不交時向立
河畔問他點名字 兇前不覺沾衣濕
今日方知身死來 雙雙傍樹長悲泣
生時我舍事吾珍 今軒駟馬駕珠倫
為言萬古無千改 誰知早箇化惟塵
嗚呼哀哉心裏痛 徒理白骨為高塚
南槽龍子孫乘 北牖香車妻接雨
異口咸言不可論 長噓嘆息更何怨
造罪諸人落地獄 作善之者必人天
如今各自隨緣業 定是相逢迴難
握手丁寧須努力 迴頭拭淚飽相看
耳裏惟聞唱道急 萬眾千群驅向前
牛頭杷棒河南岸 獄卒擎叉水北邊
水裏之人眼盻盻 岸頭之者淚涓涓
早知到沒艱辛地 悔不生時作福田
奈河の水は西へ急に流れ 砕けた岩に道は険しく 衣は脱ぎ枝に掛け 追い立てられて立ち尽くす
河辺で名を尋ねられ 恐ろしさに衣はぬれ 今こそ知る身の死を 二つ並び木に寄りて悲しみ泣く
生きし時は我が家を宝とし 今は四頭立ての馬車に珠を飾れど 永遠に変わらぬと言いしが 早くも塵と化すとは
ああ哀れ、心の痛み ただ白骨を高き塚とす 南の槽には龍の子孫が乗り 北の窓には香車、妻は雨を迎う
口々に言いようもなく 長く嘆き、さらに何を怨まん 罪造る者は地獄に堕ち 善を行う者は必ず人天に
今はそれぞれ縁に従い 再び逢うことは難しからん 手を握りて努めよと 振り返り涙を拭い見交わす
耳にはただ急ぐ声が聞こえ 万の群れは前へ駆られる 牛頭は棒を河南に 獄卒は叉を水北に
水中の者は眼を凝らし 岸辺の者は涙を流す 早く知らばこの艱難の地 悔いし生時に福田を作らざりしを
目連問言柰河樹下。
目連が尋ねました。「その木の下はどうなっていますか。」
人日天堂地獄乃非虛。
人の世の天国も地獄も、決して虚構ではない。
行惡不論天所造罪 應時冥零亦共誅
貧道慈親不積善 亡魂亦復落三塗
聞道將來入地獄 但日知其道息否
罪人總見目連師 一切啼哭損雙眉
弟子死來年月近 和尚慈親實不知
我等生時多造罪 今日辛苦方始悔
縱令妻妾滿山川 誰肯死來相替代
何時更得別泉門 為報家中我子孫
不須白玉為棺槨 徒勞黃金葬墓墳
長悲怨歎終無益 皷樂絃歌我不聞
欲得亡人沒苦難 無過修福救冥魂
悪行は天の定めに従わず、罪は即時に闇に落ち、共に罰せられる。 貧しき道の慈しむ親は善を積まず、亡き魂もまた三途に落ちる。 聞くに、将来地獄に入ると、ただ日にその道の息絶えるを知るのみか。 罪人たちは総て目連師を見て、一切の者が泣き、双眉を損なう。 弟子の死は年月近く、和尚の慈しむ親は実に知らず。 我等は生きし時、多く罪を造り、今日の辛苦に初めて悔いる。 たとえ妻妾が山川に満ちようとも、誰が死に代わってくれるというのか。 いつか再び泉門を別れ、家の中の我が子孫に報いる時を得ん。 白玉を棺槨とすべからず、徒らに黄金を墓墳に葬るなかれ。 長く悲しみ怨み歎いても終に益なく、鼓楽絃歌は我聞かず。 亡き人の苦難を没せしめんと欲すれば、修福して冥魂を救うに過ぎるはなし。
和尚却歸為傳逍息。交令造福以救亡人。除佛一人無由救得。願和尚捕提涅槃尋常不沒運載一切眾生。智慧釵勤磨不煩惱林而誅威行普心於世界。而諸佛之大願儻若出離泥犁。是和尚慈親普降。目連問以更往前行。時向中間即至五道將軍坐所。問阿孃逍息處。
和尚は戻って、その消息を伝えよ。亡き人を救うために福を積むよう命じよ。仏以外には救いようがない。願わくは、和尚よ、涅槃をたずね、常に沈むことなく、一切の衆生を運び載せてくださるように。智慧は研ぎ澄まされ、煩悩の林を除き、世界に普く心を行き渡らせてくださるように。諸仏の大願がもし地獄から離れるなら、それは和尚の慈悲の親が普く降りてくださるからである。目連はさらに先へ進むことを尋ねた。その時、途中で五道将軍の座所に至り、母の消息のありかを尋ねた。
五道將軍性令惡 金甲明皛劍光交錯
左右百萬餘人 總是接飛手脚
叨譀似雷驚振動 怒目得電光耀鸖
或有劈腹開心 或有面皮生剝
目連雖是聖人 亦得魂驚瞻落
目連啼哭念慈親 神通急速若風雲
若聞冥途刑要處 無過此箇大將軍
左右攢槍當大道 東西立杖萬餘人
縱然舉目西南望 正見俄俄五道神
守此路來經幾劫 千軍萬眾定刑名
從頭各自隨緣業 貧道慈母傍行檀
魂魄漂流冥路間 若向三塗何處苦
咸言五道鬼門開 畜生惡道人偏遶
好道天堂朝暮閑 一切罪人於此過
伏願將軍為檢看 將軍合掌啟闍梨
不須啼哭損容儀 尋常此路垣沙眾
卒問青提知是誰 太山都要多名部
察會天曹并地府 文牒知司各有名
符弔下來過此處 今朝弟子是名官
暫而闍梨檢尋看 可中果報逢名字
放覓縱由亦不難
五道将軍は性質が悪く、金の甲冑は明るく輝き、剣の光が交錯している。 左右には百万人以上がおり、皆、素早い手足を持っている。 轟音は雷のように驚くほど響き渡り、怒った目は電光のように輝く。 ある者は腹を裂かれ心臓を開かれ、ある者は顔の皮を剥がれている。 目連は聖人であっても、魂が驚き落ちそうになる。 目連は泣きながら慈しみ深い母を思い、神通力は風雲のように急速である。 冥途の刑罰の場所を聞けば、この大将軍に勝るものはない。 左右には槍が大通りに並び、東西には一万人以上が杖を立てている。 目を上げて西南を望めば、まさにそびえ立つ五道の神が見える。 この道を守って幾劫を経たか、千軍万衆が刑罰の名を定める。 それぞれが縁と業に従って進み、貧道の慈母は傍らで行檀をしている。 魂は冥路の間に漂い、三塗のどこに苦しみがあるのか。 皆が言うには、五道の鬼門が開き、畜生や悪道には人が偏って集まる。 良い道である天堂は朝晩閑かで、全ての罪人はここを通る。 伏して願う、将軍が検分してくださることを。 将軍は合掌して闍梨に告げる。 「泣いて容姿を損なう必要はありません。 普段この道には多くの衆生がいますが、 突然青提が誰かと尋ねても分かりません。 太山には多くの名簿があり、 天曹と地府で照会されます。 文書にはそれぞれの担当が記されており、 符牒が下りてこの場所を通ります。 今朝、弟子は名官です。 暫く闍梨が探し求めれば、 もし果報に名前が逢えば、 見逃し許すことも難しくありません。」
將軍問左右曰。見一青提夫人以否。左邊有一都官啟言。持三年已前有一青提夫人。被阿鼻地獄牒上索將。見在阿鼻地獄受苦。目連聞語啟言。將軍報言。和尚。一切罪人皆從王邊斷決。然始下來目連頻道阿孃緣何不見王面。報言。和尚。世間兩眾人不得見王面。第一之人平生在日修於十善五戒。死後神識得生天上。第二之人生存在日不修善業廣造之罪。命終之後便入地獄亦不得見王面。唯有半惡半善之人將見王面斷決。然始託生隨緣受報。目連聞語便向諸地獄尋覓阿孃之處。
将軍は左右に問うた。 「青提夫人を見かけなかったか?」
左側の都官が申し上げた。 「三年ほど前に、青提夫人という方がいらっしゃいましたが、阿鼻地獄からの召喚状で連れていかれ、今は阿鼻地獄で苦しんでおられます。」
目連はこれを聞いて言った。 「将軍、どうかお教えください。」
将軍は答えた。 「和尚、すべての罪人はまず閻魔大王のもとで裁きを受けてから、ここに送られてくるのです。」
目連は繰り返し尋ねた。 「では、どうして私の母は大王にお会いできなかったのですか?」
将軍は答えた。 「和尚、この世には二種類の人がいて、大王にお目にかかることはありません。 第一は、生前に十善や五戒を守り、善行を積んだ人です。その魂は死後、天界に生まれ変わります。 第二は、生きている間に善行をせず、多くの罪を重ねた人です。その人は命終わるとすぐに地獄に落ち、大王にも会わずに苦しみを受けます。 ただ、善も悪も半ばほど行った人だけが、大王の前に出て裁きを受け、その後にそれぞれの縁に従って生まれ変わりの世界へと送られるのです。」
目連はこの言葉を聞くと、すぐに諸々の地獄へと向かい、母を探し求めました。
目連淚落憶逍逍 眾生業報似風飄
慈親到沒艱辛地 魂魄于時早已消
鐵倫往往從空入 猛火時時脚下燒
心腹到處皆零落 骨害尋時似爛燋
銅鳥萬道望心𪮮 鐵計千迴頂上澆
昔問前頭釰樹苦 何如剉磑斬人腰
不可論凝脂碎害似津 莽蕩周迴數百里
嵯峨向下一由旬 鐵鏘萬釰安其下
烟火千重遮四行 借問此中何物罪
只是閻浮殺罪人
目連は涙を流し、思いは遥か遠くに馳せる。 衆生の業報は、風に舞う塵のように定まらぬ。 母は苦しみの地に至り着き、 その魂はとっくに消え失せていた。
鉄の輪は虚空から降り注ぎ、 猛火は絶え間なく足元を焼く。 内臓は至る所で崩れ落ち、 骨は瞬く間に焦げ爛れる。
銅の鳥は千筋もの嘴で心臓を突き刺し、 鉄の汁は幾度も頭上から注がれる。 かつて聞いた剣の樹の苦しみは、 人の腰を挽き斬る苦しみに及ばない。
言い表せぬほど、凝った脂は砕け、 骨は汁のように溶ける。 広漠たる地は数百里にわたり、 切り立った崖は一由旬も下へ続く。
鉄の鋸と万の剣がその下に並び、 幾重もの煙と炎が四方を遮る。 「ここにいる者たちは何の罪を犯したのか」 ただ閻浮提で人を殺めた罪人たちである。
目連言訖更往前行。須臾之間至一地獄。目連啟言獄主。此箇地獄中有青提夫人已否。是頻道阿孃故來訪覓。獄主報言。和尚。此箇獄中總是男子並無女人。向前問有刀山地獄之中問必應得見。目連前行至地獄。左名刀山右名劍樹。地獄之中鋒劍相向涓涓血流。見獄主驅無量罪人。入此地獄目連問曰。此箇名何地獄。羅察答言。此是刀山劍樹地獄。目連問曰。獄中罪人作何罪業當墮此地獄。獄主報言。獄中罪人生存在日。侵損常住游泥伽藍好用常住水菓盜常住柴新。今日交伊手攀劍樹。支支節節皆零落處。
目連は言い終えると、さらに先へと歩を進めた。しばらくして、ある地獄にたどり着いた。目連は獄主に尋ねた。「この地獄の中に、青提夫人という者はおりますか。私の母を尋ねて参りました」
獄主は答えた。「和尚、この獄には男ばかりで、女は一人もおりません。先へ進み、刀山の地獄でお尋ねになれば、きっとおわかりになるでしょう」
目連は先へ進み、地獄に着いた。左には刀山、右には剣樹。地獄の中では鋭い剣が向き合い、血がさらさらと流れている。獄主が無数の罪人をこの地獄へ追い立てるのを目にした目連は尋ねた。「ここは何という地獄ですか」
羅刹が答えた。「ここは刀山剣樹の地獄です」
目連が「獄中の罪人は、どのような罪を犯してこの地獄に堕ちたのですか」と問うと、獄主は答えた。
「獄中の罪人たちは、生きていた頃、寺院の財産を侵し、伽藍を汚し、寺の水や果物を勝手に使い、寺の薪や野菜を盗みました。その報いで今、彼らは剣の木に手をかけ、体の節々がばらばらに砕け散っているのです」
刀山白骨亂縱橫 劍樹人頭千萬顆
欲得不攀刀山者 無過寺家填好土
椷接菓木入伽藍 布施種子倍常住
阿儞箇罪人不可說 累劫受罪度恒沙
從佛涅槃仍未出 此獄東西數百里
罪人亂走肩相棳 業風吹火向前燒
獄卒杷杈從後插 身手應是如瓦碎
手足當時如粉沫 沸鐵騰光向口顦
著者左穿如右穴 銅箭傍飛射眼精
劍輪直下空中割 為言千載不為人
鐵杷樓聚還交活
刀の山には白骨が乱れ横たわり、剣の樹には人の首が千万もぶら下がる。 刀の山を攀じ登らなくて済むには、寺に良き土を捧げるに過ぎない。 果樹を寺に植え、種を布施すれば、功徳は常住の倍にもなる。 ああ、この罪人は言うに及ばず、幾劫にも渡って恒河の砂の数ほどの罪を受ける。 仏が涅槃に入られてから今もなお抜け出せず、この地獄は東西数百里に及ぶ。 罪人たちは乱れ走り肩を押し合い、業の風が火を吹き前に進めば焼かれ、 獄卒たちは熊手で後から突き刺す。身も手足も瓦のように砕け、 粉々になってしまう。沸き立つ鉄の光が口に向かって飛び、 当たれば左も右も穴だらけ。銅の矢が横から飛び眼を射抜き、 剣の輪が真っ逆さまに空中を切り裂く。千年経っても人とはならぬと言われ、 鉄の熊手が集まり、またもや生き返らせる。
目連聞語啼哭咨嗟。向前問言。獄主。此箇獄中有一青提夫人已否。獄主啟言。和尚。是何親眷。目連啟言。是頻道慈母。獄主報言。和尚。此箇獄中無青提夫人。向前地獄之中總是女人。應得相見。目連聞以更往前行至一地獄。高下可有一由旬。黑煙蓬勃臭氣勳天。見一馬頭羅剎。手杷鐵杈意而立。目連問曰。此箇名何地獄。羅剎答言。此是銅柱鐵床地獄。目連問曰。獄中罪人生存在日有何罪業當墮此獄。獄主答言。在生之日女將男子。男將女人行婬欲。於叉母之床。弟子於師長之床。奴婢於曹主之床。當墮此獄之中。東西不可算。男子女人相和一半。
目連はその言葉を聞いて、泣き悲しみため息をつきました。そして前に進み出て尋ねました。「獄主よ、この地獄の中に青提夫人という者はいますか。」獄主が言いました。「和尚様、その方はどのようなご親族ですか。」目連が答えました。「私の慈母です。」獄主が告げました。「和尚様、この地獄の中には青提夫人はおりません。この先の地獄には皆、女がおります。きっとお会いになれましょう。」目連はそれを聞いて、さらに前へ進み、一つの地獄に着きました。高さはおよそ一由旬もあり、黒い煙が盛んに立ちのぼり、臭気が天に満ちていました。一匹の馬頭羅刹がいて、手に鉄の叉を握り、立っていました。目連が尋ねました。「ここは何という地獄ですか。」羅刹が答えました。「ここは銅柱鉄床地獄です。」目連が尋ねました。「地獄の罪人は、生きていた日にどんな罪業を犯して、この地獄に堕ちるのですか。」獄主が答えました。「生きていた日に、女が男を、男が女を連れて淫欲を行い、父母の床において、弟子が師長の床において、奴婢が主人の床において犯した者は、この地獄に堕ちます。その数は数えきれません。男と女は半分ずつです。」
女臥鐵床釘釘身 男抱銅柱兇壞爛
鐵鑽長交利鋒劍 鑱牙快似如錐鑽
腸空即以鐵丸充 唱渴還將鐵計灌
蒺蘺入腹如刀臂 空中劍戟跳星亂
刀剜骨肉斥斥破 劍割肝腸寸寸斷
女は鉄の床に臥し釘が体を貫き 男は銅柱を抱き焼け爛れ 鉄の錐は長く交差し鋭い剣の如く 牙は尖り錐の如く速やかに 腸が空けば鉄の玉で満たされ 喉が渇けば溶けた鉄を注がれ 茨が腹に入れば刀が巡るが如く 空中の剣戟は星の如く乱れ飛び 刀は骨肉を切り裂き 剣は肝腸を寸断に断つ
不可言地獄天堂相對疋。
地獄と極楽は、相対するものではない。
天堂曉夜樂轟轟。
天界は昼夜を問わず、歓喜の響きが轟々と鳴り響いています。
地獄無人相求出 父母見存為造福
七分之中而獲一 縱令東海變桑田
受罪之人仍未出
地獄には誰も出ようとせず 父母は生きている間に福を積む 七分の一を得るも たとえ東海が桑田に変わろうとも 罪を受ける者はなお出られず
目連言訖更往前行。須臾之間至一地獄。啟言獄主。此箇獄中有一青提夫人已否。獄主報言。青提夫人是和尚阿孃。目連啟言。是慈母。獄主報和尚曰。三年已前有一青提夫人。亦到此間獄中。被阿鼻地獄牒上索將。今見在阿鼻地獄中。目連悶絕僻良久氣通。漸漸前行即逢守道羅剎問處。
目連は言い終えると、さらに先へと歩みを進めました。ほんのしばらくして、一つの地獄にたどり着きます。獄主に尋ねました。「この獄の中に、青提という夫人はおられませんか」。獄主は答えました。「青提夫人は、和尚さまの母上でございますか」。目連が「はい、私の慈しむ母です」と告げると、獄主は和尚にこう申しました。「三年ほど前に、青提という夫人が確かにこの獄においでになりました。しかし、阿鼻地獄からの牒状によって召し上げられ、今は阿鼻地獄におられます」。目連は気を失い、倒れ伏しました。しばらくして息が通い、ようやく立ち上がると、少しずつ先へ進みました。すると、道を守る羅刹に出会い、尋ねました。
目連行步多愁惱 刀劍路傍如野草
側耳遙聞地獄間 風大一時聲號號
為憶慈親長欲斷 前路不婁行即到
忽然逢著夜叉王 桉劍坐蛇當大道
啟言貧道是釋迦 如來佛弟子
證見三明出生死 哀哀慈母號青提
亡過魂靈落於此 擿來巡曆諸餘獄
問者咸言稱不是 近云將母入阿鼻
大將亦應之此事 有無實說莫沈吟
人間乳哺寂恩深 聞說慈親骨髓痛
造此誰知貧道心 夜叉聞語心逷逷
直言更亦無刑迹 和尚孝順古今希
冥塗不憚親巡曆 青提夫人欲似有
影向不能全指的 灌鐵為城銅作壁
業風雷振一時吹 到者身骸似狼寂
勸諫闍梨早歸舍 徒煩此處相尋覓
不如早云見如來 槌胸懊惱知何益
目連は歩み進むも憂いに沈み 道端の刀剣は野草のごとく林立す 耳を澄ませば遥か地獄の彼方から 一陣の烈風、号泣の声響き渡る
慈しき母を思い胸は張り裂けんばかり 先へ進めば、やがてその地に到らん 突然、夜叉王と出会いしは 剣を構え、蛇を座に道を塞ぎて
「貧道は釈迦如来の弟子なり 三明を証し生死を超えたり 哀れなる我が母、青提夫人 亡き魂はここに堕ちたると聞く
諸々の獄を巡り尋ねしが 皆『違う』と答えるのみ 今は母を阿鼻地獄へと連れ行かんとす 大将よ、真実を告げよ、ためらうな
人の世の乳哺の恩は深く 母のことを聞けば骨髄まで痛む この思い、誰が知ろうか」 夜叉は聞きて心震え
「はっきり申せば、そのような者はおらぬ 和尚の孝心、古今に稀なり 冥界の道を厭わず尋ね来る 青提夫人らしき影はあるも 確かな姿とは言い難し
鉄を溶かし城とし、銅を壁と為す 業風雷鳴の如く吹き荒れ 到る者、身は狼藉のごとく散らばる 和尚よ、早く帰りたまえ ここで探すは無駄な労力
如来に会うことを急ぎたまえ 胸を捶ち懊悩するも何の益か」
目連見說地獄之難當即迴擲鉢騰空。須臾之間即至娑羅林所。遶佛三匝却坐一面。瞻尊顏目不暫舍白言。世尊處闕事。如來曰。已遠追放縱由天地遍。
目連は地獄の苦しみを聞き、すぐに鉢を投げ捨て空へと飛び立った。瞬く間に沙羅双樹の林にたどり着き、仏陀の周りを三度巡り、一歩下がって座についた。その目は尊いお顔から離れず、こう申し上げた。「世尊、おそばに仕える者がいませんが」如来は言われた。「すでに遠く追いやった。天地の果てまで放ち去ったのだ」
阿取惟得生天上 慈母不曾重會面
聞道阿鼻見受罪 思之不覺肝腸斷
猛大龍蛇難向前 造次無由作方便
如來神力移山海 一切眾生多受戀
臣急由來解告君 如何慈母重相見
世尊喚言大目連 且莫悲哀泣
世間之罪由如繩 不是他家尼碾來
火急將吾錫丈與 能除八難及三災
但知懃念吾名字 地獄應為如開
阿取はただ天上に生まれるのみ 慈母とは再び会うこと叶わず
阿鼻地獄の苦しみを聞けば 思わず肝腸が断たれる思い
猛り狂う龍蛇も前に進めず 急いで手立てを講じるすべもない
如来の神力は山をも海をも動かす すべての衆生は深く慕い求める
臣下の急ぎは君に訴え解くため いかにして慈母と再び会えようか
世尊は大目連に呼びかけて言われた 悲しみ泣くことはしばし留めよ
世の罪は縄のごとく自ら縛るもの 他人が挽き臼で挽いたものではない
急ぎ我が錫杖を取り給え 八難と三災を除くことができる
ただひたすら我が名を念じ続けよ 地獄もきっと開かれるであろう
目連丞佛威力騰身向下急如風箭。須臾之間即至阿鼻地獄。空中見五十箇牛頭馬腦羅剎夜叉。牙如劍樹口似血盆。聲如雷鳴眼如掣電。向天曹當直逢著目連遙報言。和尚莫來此間不是好道。此是地獄之路。西邊黑煙之中總是獄中毒氣。吸著和尚化為灰塵處。和尚不聞道阿鼻地獄鐵石過之皆得殃。
目連は仏の威神力によって、身を躍らせて下へと急降下した。その速さは風の矢のようであった。瞬く間に阿鼻地獄に到着した。
空中で、五十もの牛頭・馬脳の羅刹や夜叉を見た。牙は剣の樹のようで、口は血の盆のよう。声は雷鳴のごとく、目は電光のごとく光る。天曹の当直に当たる者に出会い、目連を見ると遠くから声をかけた。
「和尚、ここへは来られませぬ。この場所は良き道ではございません。ここは地獄への道でございます。西の方、黒煙の立ち込める中は、すべて獄中の毒気でございます。吸い込めば和尚も灰塵と化してしまうでしょう。和尚はお聞きになっていませんか、阿鼻地獄は鉄や石さえ通れば皆、災いに遭うと。」
地獄為言何處在 西邊怒那黑煙中
目連念佛若恒沙 地獄無來是我家
拭淚空中遙錫杖 鬼神當即倒如麻
白汗交流如雨濕 昏迷不覺自噓嗟
手中放却三慢棒 臂上遙拋六舌叉
如來遣我看慈母 阿鼻地獄救波吒
目連不往騰身過 獄卒相看不敢遮
地獄とはどこにあるのかと問えば、 西の果て、怒りの暗き煙の中にあり。
目連が念ずる仏の数は恒河の砂のごとく、 地獄こそが我が家とさえ思うほどに。
涙を拭い、虚空に錫杖を振るえば、 鬼神たちはたちまち麻のように倒れ伏す。
白き汗は雨のように流れ、 意識は朦朧とし、自ら嘆息を漏らす。
手からは三つの慢心の棒を放ち、 腕からは六つの舌の叉を遠く投げ捨てる。
如来は我に慈母を見よと遣わされ、 阿鼻地獄にて波吒を救えと。
目連は立ち止まらず身を躍らせて過ぎゆく、 獄卒たちは見つめつつも敢えて遮らぬ。
目連行前至一地獄。相去一百餘步。被大氣吸著而欲仰倒。其阿鼻地獄且鐵城高崚莽蕩連雲。劍戟森林刀槍重疊。劍樹千尋以芳撥針刺相楷。刀山萬仞橫連讒嵒亂倒。猛大犁淡似雲吼咷跟滿天。劍輪簇簇似星明灰塵模地 鐵蛇吐火四面張鱗。銅狗吸煙三邊振吠。蒺蘺空中亂下穿其男子之胸。錐鑽天上旁飛剜㓨女人背。鐵杷踔眼赤血西流。銅叉剉腰白䐧東引。於是刀山入爐炭髑髏碎骨肉爛筋皮折手瞻斷。碎肉迸殘於四門之外。凝血滂沛於獄壚之畔。聲號叫天岌岌汗汗。雷□地隱隱岸岸。向上雲煙散散漫漫。向下鐵鏘撩撩亂亂。箭毛鬼嘍嘍嘍竄竄。銅嘴鳥咤咤叫叫喚。獄卒數萬餘人總是牛頭馬面。饒君鐵石為心。亦得亡魂瞻戰處。
目連が先へ進むと、一つの地獄にたどり着いた。百歩ほど手前で、激しい熱風に吸い寄せられ、後ろに倒れそうになった。その阿鼻地獄は、鉄の城壁が高くそびえ立ち、果てしなく雲に連なり、剣や戟が森のように林立し、刀や槍が幾重にも重なっていた。剣の樹は千尋も伸び、鋭い針が互いに絡み合い、刀の山は万仞も横たわり、険しい岩が乱れ倒れている。激しい炎の奔流は雲のように渦巻き、轟音が天を満たしていた。剣の輪が群がる様は星のように明るく、灰塵が地面を覆っていた。鉄の蛇が火を吐き、四方に鱗を広げ、銅の犬が煙を吸い込み、三方で吠え立てる。空中からは茨が乱れ飛び、男たちの胸を貫き、天上からは錐が飛び交い、女たちの背中を刺した。鉄の熊手が目を抉り、赤い血が西へ流れ、銅の叉が腰を砕き、白い脂が東へ引き裂かれる。こうして刀山は炉の炭となり、髑髏は砕け、骨肉は爛れ、筋皮は裂け、手足は断たれた。砕けた肉は四方の門の外に飛び散り、凝り固まった血は地獄の炉のほとりに溢れた。叫び声は天を震わせ、地は雷のように轟き、岸は揺れ動いた。上へは雲煙が散り散りに広がり、下へは鉄の鎖が乱れ乱れに絡み合う。矢のように毛を逆立てた鬼がうろつき回り、銅の嘴を持つ鳥がけたたましく叫び喚く。獄卒は数万人、皆が牛頭馬面であった。たとえ心が鉄石のように堅くとも、この場に立てば魂も震え上がるほどの光景であった。
目連執錫向前聽 為念阿鼻意轉盈
一切獄中皆有息 此箇阿鼻不見得
恒沙之眾同時入 共變其身作一刑
忽若無入獨身入 其身亦滿鐵圍城
案難案難振鐵 吸岌雲空
轟轟鏘鏘栝地雄 長蛇晈晈三曾黑
大鳥崖柴兩翅青 萬道紅爐扇廣炭
千重赤炎迸流星 東西鐵鑽讒凶觔
左右銅鉸石眼精 金鏘亂下如風雨
鐵計空中似灌傾 哀哉苦哉難可忍
更交腹下長釘 目連見以唱其哉
專心念佛幾十迴 風吹毒氣遙呼吸
看著身為一聚灰 一振黑城關鎖落
再振明門兩扇開 目連那邊伋未喚
獄卒擎支便出來 和尚欲覓阿誰消息
其城闊廣萬由旬 卒倉沒人開閉得
刀劍皛光阿點點 受罪之人愁懺懺
大火終融滿地明 煙霧滿滿悵天黑
忽見闍梨於此立 又復從來不相識
縱由算當更無人 應是三寶慈悲力
獄主啟言和尚緣 何事開他地獄門
目連は錫杖を執りて前に進み、阿鼻地獄の様子を思うにつれ、心はいっそう痛む。 すべての地獄には救いがあるのに、この阿鼻地獄だけは救いが見えない。 恒河の砂のごとく多くの衆生が同時に堕ち、皆その身を一つに変えて責め苦を受ける。 たとえ一人だけが堕ちたとしても、その身は鉄囲山の城を満たすほどに膨れ上がるだろう。
ああ、恐ろしい、恐ろしい。鉄の鎖が振るわれ、雲を裂くように轟く音。 地を揺るがす轟音と金属音、長蛇は白く光り三層の暗闇を照らす。 大鳥は崖のように羽を広げ、両翼は青く光る。 無数の赤い炉が扇がれ、広く炭を燃やし、 千重の炎が流星のように迸る。 東西には鉄の鑚が凶暴に筋を穿ち、 左右には銅の鉸が石の目を光らせる。 金鏘が乱れ落ちることは風雨のごとく、 鉄の計りが空から注ぐことは水を灌ぐよう。 哀れなことよ、苦しいことよ、耐えがたきことよ。 さらに腹には長い釘が打たれる。
目連はこれを見て嘆き叫び、 一心に仏を念じること数十回。 風が毒気を吹き寄せ、遠くからでも吸い込めば、 見る間に体は一握りの灰となる。 一度振れば黒き城の関鎖は落ち、 再び振れば明るき門の両扉は開く。 目連がまだ呼ばぬうちに、 獄卒が支えを捧げて出てきた。 「和尚はどなたの消息をお尋ねでござるか。 この城は広さ万由旬、卒倉も人も開閉できませぬ。 刀剣の白き光は点々と輝き、 罪を受ける人々は愁い沈み。 大火はついに融けて地面を明るく照らし、 煙霧は満ちて天を暗くする。 ふと闍梨がここに立たれるのを見かけましたが、 またこれまでお会いしたことはございません。 たとえ計算しても他に人はおらず、 おそらくは三宝の慈悲の力でございましょう。」 獄主は言う、「和尚、どういうわけで 彼の地獄の門を開かれたのですか。」
報言。貧道不開阿誰開。和尚寄物來開。獄主問言。寄是沒物來開。目連啟獄主。寄十二環錫杖來開。獄卒又問。和尚緣何事來至此。目連啟言。貧道阿孃名青提夫人。故來訪覓看。獄主聞語却入獄中高樓之上。迢白幡打鐵鼓。第一隔中有青提夫人已否。第一隔中無。過到第二隔中。迢黑幡打鐵鼓。第二隔中有青提夫已否。第二隔中亦無。過到第三隔中。迢黃幡打鐵鼓。第三隔中有青提夫人已否。亦無。過到第四隔中亦無。即至第五隔中問亦道無。過到第六隔中亦道無青提夫人。獄卒行至第七隔中。迢碧幡打鐵鼓。第七隔中有青提夫人已否。其時青提第七隔中身上下四十九道長釘鼎在鐵床之上不敢應。更問第七隔中有青提夫人已否。若看覓青提夫人者。罪身即是早箇緣甚不應恐畏。獄主更將別處受苦所以不敢應。報言。門外有一三寶。剃除髭髮身披法服稱言是兒故來訪看。青提夫人人聞語良久思惟報言。獄主我無兒子出家不是莫錯。獄主聞語却迴行至高樓報言。和尚緣有何事詐認獄中罪人是阿孃緣沒事謾語。目連聞語悲泣雨淚啟言獄主。貧道解□傳語錯。頻道小時目羅卜。父母亡沒已後投佛出家剃除髭髮號曰大目乾連。獄主莫瞋更問一迴去。獄主聞語却迴至第七隔中報言罪人。門外三寶小時目羅卜。父母終沒已後投佛出家剃除髭髮號曰大目乾連。青提夫人聞語。門外三寶若小時字羅卜是也。罪身一寸腸嬌子。獄主聞語決起青提夫人□□却四十九道長釘鐵鎖腰生杖圍遶。驅出門外母子相見處。
申し上げます。「この貧道が開けずして、誰が開けましょうか。和尚が預けた物で開けます」と。獄主が尋ねます。「何を預けて開けるというのですか」。目連が獄主に申します。「十二環の錫杖を預けて開けます」と。獄卒がまた尋ねます。「和尚はどういうご用でここまでおいでになったのですか」。目連が申します。「この貧道の母は青提夫人と申します。それで訪ねて参りました」と。獄主はこの言葉を聞くと、獄の中の高楼の上に戻り、白幡を掲げて鉄の太鼓を打ち鳴らします。「第一の区画に青提夫人はいるか」。第一の区画にはいません。第二の区画へ行き、黒幡を掲げて鉄の太鼓を打ち鳴らします。「第二の区画に青提夫人はいるか」。第二の区画にもいません。第三の区画へ行き、黄幡を掲げて鉄の太鼓を打ち鳴らします。「第三の区画に青提夫人はいるか」。これもいません。第四の区画へ行ってもいません。第五の区画へ行って尋ねてもいないと言います。第六の区画へ行っても青提夫人はいないと言います。獄卒は第七の区画へ行き、碧幡を掲げて鉄の太鼓を打ち鳴らします。「第七の区画に青提夫人はいるか」。その時、青提夫人は第七の区画の中で、全身に四十九本の長い釘を打たれ、鉄の床の上に釘付けにされており、声を出すことができません。もう一度尋ねます。「第七の区画に青提夫人はいるか。もし青提夫人を探している者がいるなら、この罪人こそがそれです。どうして早く応えないのか、恐れているのですか」。獄主が別の場所で苦しめられるのではないかと恐れて、声を出せないのです。申し上げます。「門の外に三宝(僧侶)がおられます。髭や髪を剃り、法衣をまとって、あなたの息子だとおっしゃって訪ねて来られました」。青提夫人はこの言葉を聞き、しばらく考えてから申します。「獄主、私には出家した息子などいません。間違いです」。獄主はこの言葉を聞くと、戻って高楼に行き、申します。「和尚、どういうことですか。獄中の罪人を偽って自分の母だと言うとは、何のつもりで嘘をおっしゃるのですか」。目連はこの言葉を聞くと、悲しみの涙を流して獄主に申します。「この貧道が伝言を間違えました。私の幼い頃の名は目羅卜です。父母が亡くなった後、仏門に入り、髭や髪を剃り、大目乾連と号しました。獄主、どうかお怒りにならず、もう一度尋ねてください」。獄主はこの言葉を聞くと、第七の区画に戻り、罪人に申します。「門の外の三宝は、幼い頃の名が目羅卜で、父母が亡くなった後、仏門に入り、髭や髪を剃り、大目乾連と号した方です」。青提夫人はこの言葉を聞きます。「門の外の三宝が、もし幼い頃の名が羅卜であるなら、それは私のたった一人の愛しい息子です」。獄主はこの言葉を聞くと、青提夫人の四十九本の長い釘と鉄の鎖、腰に巻かれた杖を取り除き、門の外へと連れ出します。そこで母と子は対面するのでした。
生杖魚鱗似雲集 千年之罪未可知
七孔之中流血汁 猛火從孃口中出
蒺蘺步從空入 由如五百乘破車聲
腰脊豈能於管拾 獄卒擎叉左右遮
牛頭杷鎖東西立 一步一倒向前來
目連抱母號悲泣 哭曰由如不孝順
殃及慈母落三塗 積善之家有餘慶
皇天只沒殺無事 阿孃昔日勝潘安
如今燋悴頓摧濺 曾聞地獄多辛苦
今日方知行路難 一從遭禍取孃死
每日墳陵常祭祀 孃孃得食喫已否
一過容顏總燋悴 阿孃既得目連言
嗚呼怕搦淚交連 昨與我兒生死隔
誰知今日重團圓 阿孃生時不修福
十惡之愆皆具足 當時不用我兒言
受此阿鼻大地獄 阿孃昔日極芬榮
出入羅偉錦障行 那勘受此泥梨苦
變作千年餓鬼行 口裏千迴拔出舌
兇前百過鐵犁耕 骨節筋皮隨處斷
不勞刀劍自彫零 一向須臾千過死
于時唱道却迴生 入此獄中同受苦
一論貴賤與公卿 汝向家中懃祭祀
只得鄉閭孝順明 縱向墳中澆歷酒
不如抄寫一行經 目連哽噎啼如雨
便即迴頭諮獄主 頻道須是出家兒
力小那能救慈母 五服之中相容隱
此即古來賢聖語 惟願獄主放却孃
我身替孃長受苦 獄主為人情性剛
嗔心默默色蒼芒 弟子雖然為獄主
斷決皆由平等王 阿孃有罪阿孃受
阿師受罪阿師當 金牌土諫無揩洗
卒亦無人輒改張 受罪只金時以至
須將刑殿上刀槍 和尚欲得阿孃出
不如歸家燒寶香 目連慈母語聲哀
獄卒擎叉兩畔催 欲至獄前而欲到
便即長悲好住來 青提夫人一箇手
託著獄門迴顧眄
生杖は魚の鱗のごとく雲のごとく集まり、千年の罪も未だ知れず。 七つの穴からは血の汁が流れ出で、猛火は母の口より噴き出づ。 荊棘の道を空より踏み入れば、五百の破れし車の音の如し。 腰脊とても管に拾うことできず、獄卒は叉を掲げ左右に遮る。 牛頭は鎖を持ち東西に立ち、一歩ごとに倒れながら前に来る。 目連は母を抱きて悲しみ泣き、声をあげて曰く、これぞ孝行ならざる故、 災い慈母に及びて三塗に堕つ。善を積む家には余慶あり、 天もただ無事に殺すのみ。母は昔、潘安に勝る美しき人、 今は焦げ悴れ、たちまちに衰えたり。かねて地獄の辛苦多しと聞けど、 今日初めて行路の難きを知る。禍に遭い母を亡くしてより、 毎日、墓にて常に祭祀を営む。母よ、得たる食は食べたるか。 一たび過ぎれば顔色すっかり憔悴す。母は目連の言葉を得て、 嗚呼、恐れ慄きて涙交じり。昨日までは我が子と生死隔たり、 誰か知らん今日再び団らんせんとは。母の生きし時、福を修めず、 十悪の咎み皆具足せり。その時、我が子の言葉を用いざりし故、 この阿鼻の大地獄を受く。母の昔は極めて栄華に満ち、 出入りには絹の帷、錦の障り行けり。いかでかこの泥梨の苦しみを受け、 千年の餓鬼と変わり行かん。口より千度舌を抜き出だし、 胸の前には百度、鉄の鋤が耕す。骨節も筋皮も所々に断え、 刀剣を労せずして自ら凋落す。一たび向かえば須臾の間に千度死に、 その時唱え道えて却って生き返る。この獄に入りては同じく苦しみを受く、 貴賤も公卿も一様に論ず。汝、家に向かい勤めて祭祀をせよ、 ただ郷里に孝順の名を顕すのみ。たとえ墓に酒を注ぎて祭るとも、 一行の経を書き写すに如かず。目連は咽び噎びて雨の如く泣き、 すなわち振り返り獄主に尋ねる。しきりに言う、出家の者たるべきも、 力小さくてどうして慈母を救えよう。五服のうちには互いに罪を隠す、 これすなわち古来の賢聖の言葉。ただ願わくは獄主、母を放ちたまえ、 我が身替わりに母の長き苦しみを受けん。獄主は人として情性剛く、 瞋りの心黙々として色蒼茫。弟子といえども獄主として、 裁き決するは皆、平等王による。母の罪は母が受け、 阿師の罪は阿師が引き受く。金牌も土諫も改め洗うことなく、 卒といえども誰も軽々に改めず。受くる罪、ただ時至れば、 必ず刑殿の上に刀槍を将う。和尚、母を出ださんと欲せば、 いっそ帰りて宝香を焼くに如かず。目連の慈母、語り声哀しく、 獄卒は叉を掲げ両脇から促す。獄の前に至らんと欲すれば、 すなわち長く悲しみ、よく留まれと告ぐ。青提夫人、一つの手を、 獄門に託して振り返り見る。
言好住來罪身一寸長腸嬌子。
親しい人との付き合いも、罪深いこの身を少しずつ蝕んでいく。
孃孃昔日行慳姤 不具來生業報恩
言作天堂沒地獄 廣殺猪羊祭鬼神
但恍其身眼下樂 寧知冥路拷亡魂
如今既受泥梨苦 方知及悟悔自家身
悔時悔亦知何道 覆水難收大□云
何時出離波咤苦 豈敢承聖重作人
阿師子如來佛弟子 足斛知之父母恩
忽若一朝登聖覺 莫望孃孃地獄受艱辛
目連既見孃孃別 恨不將身而自滅
舉身自撲太山崩 七孔之中皆灑血
啟言孃孃且莫入 迴頭更聽兒一言
母子之情天生也 乳哺之恩是自然
兒與孃孃今日別 定知相見在何年
那堪聞此詖咤苦 其心楚痛鎮懸懸
地獄不容相替代 唯知號叫大稱怨
隔是不能相救濟
かつて母は物惜しみと嫉妬に生き 来世の報いの恩を知らず 天国を語り地獄を忘れ 鬼神に猪羊を捧げて殺生を重ねた 目先の楽しみに身を任せ 冥界で亡魂が責め苦を受けるとは知らなかった 今や地獄の苦しみを受け ようやく我が身の過ちを悔いる しかし悔いてもどうしようもない こぼれた水は再び集められぬという いつ地獄の苦しみから逃れられよう 再び人として生まれ変わることなど望めない 阿師よ、如来の弟子たちよ 父母の恩の深さをよく知れ もし一朝に悟りを開くことがあれば 母が地獄で苦しむのを忘れるな 目連は母との別れを見て 身を滅ぼさんばかりの思いに駆られた 全身を地に投げ出して山が崩れるように 七つの穴からは血が流れ出た 「母よ、どうかまだ入らないで 振り返って私の言葉を聞いてください 母子の情は天が与えたもの 乳を飲ませ育てた恩は自然の理 母と私は今日ここで別れるが 再び会えるのはいつの年か このような地獄の苦しみを聞けば 心は痛み、不安で張り裂けそう 地獄では身代わりになることも許されず ただ怨みを叫ぶことしかできない 隔てられて救うこともできず
兒亦隨孃孃身死獄門前。
子もまた母と共に獄門の前で死にました。
目連見母却入地獄切骨傷心哽噎聲嘶。遂乃舉身自撲由如五太山崩。七孔之皆流迸血流。良久而死復乃重甦。兩手按地起來政頓衣裳。騰空往至世尊之處。
目連は母が再び地獄に落ちるのを見て、骨身に沁むほどに心を痛め、声を詰まらせて泣き叫びました。ついには全身を地面に打ちつけ、まるで五つの大山が崩れ落ちるかのようでした。七つの穴からは血がほとばしり、長い間気を失い、やがて息を吹き返しました。両手で地面を押し、よろめきながら立ち上がり、衣を整えると、虚空を飛んで世尊のもとへと向かいました。
目連情地總昏昏 人語冥冥似不聞
良久沈吟而性悟 擲鉢騰空問世尊
目連對佛稱怨苦 且說刀山及劍樹
蒙佛神力借餘威 得向阿鼻見慈母
鐵城烟焰火騰騰 劍刃森林數萬層
人脂碎害和銅汁 迸肉含潭血裏凝
慈親容貌豈堪任 長夜遭他刀劍侵
白骨萬迴登劍樹 紅顏百過上刀林
天下之中何者重 父母之情恩最深
如來是眾生慈父母 願照愚迷方寸心
如來本自大慈悲 聞語慘地斂雙眉
眾生出沒於輪網 恰似䗧䀃兔望絲
汝母時多昔造罪 魂神一往落阿鼻
此罪劫移仍未出 非佛凡夫不可知
佛喚難徒眾等 五往冥途自救之
目連は心が暗くふさぎ込み、人々の声もかすかにしか聞こえぬ。 長く沈黙して思いを巡らせ、やがて悟りを得ると、鉢を投げて虚空へ飛び立ち、世尊に尋ねた。
目連は仏に苦しみを訴え、刀山や剣樹の恐ろしさを語った。 「仏の御力とお恵みにより、阿鼻地獄で慈母に会うことができました。
鉄の城には煙と炎が立ち上り、剣の刃が幾万にも重なっています。 人の脂が砕け、銅の汁と混じり、肉は裂け、血の池に凝り固まっていました。
慈しむ母の姿は、どうして耐えられましょう。 長い夜、彼女は刀剣に傷つけられ、 白骨は幾万回も剣の樹に登り、 紅顔は幾百回も刀の林を越えていました。
この世で最も重いものは何か、父母の情けと恩こそ最も深いものです。 如来は衆生の慈父慈母、どうかこの愚かで迷える心を照らしてください。」
如来は本来、大いなる慈悲をお持ちであり、その言葉を聞いて深く悲しまれ、両眉をひそめられた。 「衆生は輪廻の網に浮き沈みし、まるで蜘蛛の巣にかかった蝶や、罠にかかった兎のようだ。 汝の母はかつて多くの罪を造り、魂は一度阿鼻地獄に落ちてしまった。 この罪は劫を経てもまだ抜け出せず、仏でない凡夫には知り得ぬことである。」
そこで仏は難陀や他の弟子たちを呼び集め、五つの冥途へ赴き、自ら救いに行くように命じられた。
如來領八部龍天前後圍遶。放光動地救地獄苦。如來聚知本均平。
如来は八部衆と龍天を率い、前後に囲み従えて、光を放ち地を揺るがし、地獄の苦しみを救います。如来はすべての衆生を平等に慈しみ、その苦しみを知り尽くしています。
慈悲地獄救眾生 無數龍神八部眾
相隨一隊向前行
慈悲の地獄にて衆生を救う 数知れぬ龍神と八部衆 共に一隊を成し前へと進む
隱隱逸逸天上天下無如疋。
ひっそりと隠れ、ひっそりと現れ、天上天下に比べるものなし。
左邊沈右邊沒如山岌岌雲中出催催嵬嵬。
左は沈み、右は没す。山のごとく岌岌たり、雲中より出づ。
天堂地獄一時開 行如雨座如雷
似月圍圍海上來 獨自俄俄師子步
虎行偘偘象王迴 雲中天樂吹楊柳
空裏鑌芬下落梅 帝擇向前持玉寶
梵王從後奉金牌 不可論中不可論
如來神力救泉行 左右天人八部眾
東西持衛四方神 眉間豪相千般色
項後圓光五採雲 地獄沾光消散盡
劍樹刀林似碎塵 獄卒沾光皆䠒跪
合掌一心而頂禮 如來今日起慈悲
地獄摧賤悉破壞 鐵丸化作磨尼寶
刀山化作瑠璃地 銅汁變作功德水
清良屈由遶池流 鵝鴨鴛鴦扶淚淚
紅波夜夜碧煙生 錄樹朝朝紫雲氣
罪人總得生天上 唯有目連阿孃為餓鬼
天と地獄が同時に開く 歩みは雨の如く、座りは雷の如し
月が海から輪を描いて昇るように 師子の歩みは悠然と独り行く
虎は堂々と歩み、象王はゆったりと回る 雲の中から天楽が柳笛を吹き
虚空から芳しい梅の花が舞い落ちる 帝釈天は進み出て玉の宝を捧げ
梵天王は後に従い金牌を奉る 言葉では語り尽くせぬ境地
如来の神力が泉の流れを救う 左右には天人と八部衆
東西を護る四方の神々 眉間の白毫は千種の色を放ち
後頭の円光は五色の雲の如し 地獄までもが光に照らされ消え去る
剣の樹も刀の林も塵のように砕け 獄卒たちも光を浴びて平伏す
合掌し一心に頭を地に付けて礼拝する 如来が今日、慈悲を起こされ
地獄を打ち砕き悉く破壊される 鉄の丸は摩尼宝と化し
刀の山は瑠璃の大地と変じ 銅の汁は功徳の水となる
清らかな流れが池を巡り 鵞鳥や鴨、鴛鴦が涙を拭う
紅い波に夜毎碧き煙が立ち 緑の樹には朝毎に紫の雲がたなびく
罪人たちは皆、天上に生まれ変わる ただ目連の母だけが餓鬼のまま
目連蒙佛威力。得見慈母罪根深結業力難排。雖免地獄之酸墮在餓鬼之道。悲辛不等苦樂玄殊。若並前途感其百千萬倍。咽如針孔渧水不通。頭似太山三江難滿。無聞漿水之名。累月經年受飢羸之苦。遙見清源冷水。近著變作膿河。縱得美食香飡。便即化為猛火。孃孃見今飢困命若懸絲。汝若不去悲豈名孝順之子。生死路隔後會難期。欲救懸沙之危事亦不應遲曉。出家之法依信施而安存。縱有常住飲食恐難消化。而辭孃孃住向王舍城中取飯與孃孃相見。目連辭母擲鉢騰空。須臾之間即到王舍城中。次第乞飯行到長者門前。長者見目連非時乞食盤問逗留之處。和尚且齋已過食時已過乞飯將用何為。目連啟言。長者。貧道阿孃三過後魂神一往落阿鼻。
目連は仏の威神力によって、母の姿を見ることができましたが、母の罪の根は深く結ばれ、業の力は強く、地獄の苦しみは免れたものの、餓鬼道に堕ちてしまいました。悲しみと苦しみは並大抵ではなく、苦楽の差は天地ほどにも開いています。もし前世の苦しみと比べれば、その百千万倍にも感じられるほどです。喉は針の穴のように細く、一滴の水も通らず、頭は泰山のように大きく、三江の水でも満たすことはできません。水や食べ物の名さえ聞くことができず、長い月日を飢えと衰弱の苦しみの中で過ごしています。遠くに清らかな水が見えても、近づけば膿に変わり、たとえ美味しい食べ物を得ても、たちまち猛火と化してしまいます。母は今、飢えに苦しみ、命は糸のように細く危ういのです。あなたが行かなければ、悲しみを癒すこともできず、どうして孝順の子と言えましょうか。生死の道は隔たり、再会の機会も定かではありません。危機に瀕した母を救うためには、一刻も早く行動すべきです。出家の身は信者の施しによって生きています。常住の飲食があっても、それを消化するのは難しいかもしれません。私は母のもとを離れ、王舎城へ向かい、食事を取って母と再会いたします。目連は母に別れを告げ、鉢を投げて空へ舞い上がりました。瞬く間に王舎城に到着し、順に托鉢をして長者の家の前に立ちました。長者は目連が時ならぬ托鉢に来たのを見て、その理由を尋ねました。「和尚様、お斎の時間は過ぎ、食事の時も過ぎております。この食事は何に使われるのですか。」目連は答えました。「長者様、私の母は三度の審判を経て、魂は阿鼻地獄に落ちてしまいました。」
近得如來相救出 身如枯骨氣如絲
貧道肝腸寸寸斷 痛切傍人豈得知
計亦不合非時乞 為以慈親而食之
長者聞言大驚愕 思寸無常情不樂
金鞍永絕晶珠心 玉貌為由工莊閤
但且歌但且樂 人命由由如轉燭
何覓天堂受快樂 唯聞地獄罪人多
有時喫有時著 莫學愚人貯多積
不如廣造未來因 誰能保命存朝夕
兩兩相看不覺死 錢財必莫於身惜
一朝擗手入長棺 空澆塚上知何益
智者用錢多造福 愚人持金買田宅
平生辛苦覓錢財 死後總被他分柏
長者聞語忽驚疑 三寶福田難可遇
急催左右莫交遲 家中取飯以闍梨
地獄忽然消散盡 明知諸佛不思議
長者手中執得飯 過以闍梨發大願
非但和尚奉慈親 合獄罪人皆飽滿
目蓮乞得耕良飯 持鉢將來憲慈母
于時行至大荒交 手捉金匙而自哺
近頃、如来のご加護により救い出されましたが 身は枯れ木のよう、息はかすかな糸のよう 貧道の肝腸は寸寸に断たれ その痛み、傍らにいる人々に知られるでしょうか
時を外して乞うべきではないと分かっていても 慈しむ母のために食を乞うのです 長者はこれを聞き、大いに驚き 無常を思うと、心は晴れません
金の鞍は永遠に輝く珠の心を絶ち 玉のような美貌も、工房の飾りに過ぎない ただ歌い、ただ楽しもう 人の命は、まるで蝋燭の炎のように儚い
どこに天国を求め、楽しみを受けようか ただ地獄に罪人の多いことを聞くばかり 時に食べ、時に着る 愚か者のように多くを蓄えることを学ぶな
広く未来の因を造るに如かず 誰が命を保ち、朝夕を保てようか 互いに見つめ合ううちに、いつの間にか死が訪れる 財産を惜しんではならない
やがて手を離し、長い棺に入れば 墓の上に空しく水を注いでも、何の益があろう 智者は金を使って多く福を造り 愚者は金を持って田畑や屋敷を買う
平生、苦労して財を求めるも 死後はすべて他人に分け与えられる 長者はこの言葉を聞き、突然驚き疑う 三宝の福田は、めったに巡り会えない
急いで左右の者を促し、遅らせるな 家から飯を取って、阿闍梨に捧げよ 地獄は忽然と消え散り 諸仏の不思議な力を明らかに知る
長者の手に飯を得て 阿闍梨に過ごし、大願を発する 和尚だけでなく慈母にも捧げ 地獄の罪人たちも皆、満ち足りる
目連は良き飯を乞い得て 鉢を持ち、慈母のもとへと向かう その時、大いなる荒野の交わりに至り 金の匙を手に取り、自ら母に食事を与える
青提夫人雖遭地獄之苦慳貪之意未除。見兒將得飯鉢來。望風即生悋惜。來者三寶即是我兒。為我人間取飯。汝等令人息我今自尞況復更能相濟。目連持飯并鉢奉上。阿孃恐被侵奪。舉眼連看四伴左手障鉢右手團食。食來入口變為猛火。長者雖然願票不那慳部尤深。目連見母如斯肝膽猶如刀割。我今聲聞力劣智小人徵。唯有啟問世尊應知濟拔路具看母飯處。
青提夫人は地獄の苦しみを受けても、物惜しみの心はまだ消えていませんでした。息子が飯鉢を持ってくるのを見ると、すぐに惜しむ気持ちが湧き上がりました。「来たのは三宝(仏・法・僧)の使い、つまり私の息子だ。私のために人間界から飯を取ってきてくれた。お前たちは私を休ませてくれ、今は自分で食べる。それに、どうして人に分け与えられようか」。目連は飯と鉢を捧げて母に差し出しました。母は奪われるのを恐れ、周りを見回しながら、左手で鉢を隠し、右手でご飯を丸めて口に入れました。しかし、口に入ると、ご飯は猛火に変わりました。長者(目連)は母を助けたいと願いましたが、母の物惜しみの心はあまりにも深かったのです。目連は母がこのような姿を見て、肝心なところがまるで刀で切られるかのように痛みました。「私は今、声聞として力は弱く、知恵も浅く、人も微力です。ただ世尊(お釈迦様)にお尋ねするしかありません。救いの道を知っておられるはずです」。母の食事の様子を見て、目連
天人見願向前遞 慳貪未喫且空爭
我兒遠取人間飯 持來自擬療飢坑
獨喫猶看不飽足 諸人息意慢承忘
青提慳貪業力重 入口喉中猛火生
目連見母喫飯成猛火 渾搥自撲如山崩
耳鼻之中皆流血 哭言黃天我孃孃
南閻浮提施此飯 飯上有七尺往神光
將作是香美飲食 飯未入口成便火
口為慳貪心不改 所以連年受其罪
如今痛切更無方 業報不容相替代
世人須懷嫉妬 一落三塗罪未畢
香飲未及入咽喉 猛火從孃口中出
俗間之罪滿娑婆 唯有慳貪罪最多
火既無端從口出 明知業報不由他
一切常行平等意 亦復壽心念彌陀
但能捨却貪心者 淨土天堂隨意至
青提喚言孝順兒 罪業之身不自亡
不得阿行邪孝道 誰肯艱辛救耶孃
見飯未能抄入口 見火無端却損傷
慳貪去得將心貪 只應過有餘殃
阿師是孃孃孝順子 與我冷水濟虛腸
天人たちは願いを前に差し出すも、 貪り惜しむ心はまだ満たされず、空しく争うばかり。 我が子は遠く人間界から飯を取り寄せ、 持ってきては私の飢えを癒そうとする。 一人で食べてもまだ足りず、 人々は思いを静め、ゆっくりと受け入れようとする。 青提の貪り惜しむ業の力は重く、 口に入れば喉で猛火が燃え上がる。 目連は母が飯を食べて猛火となるのを見て、 自ら地に叩きつけ、山が崩れるように泣き伏す。 耳や鼻からは血が流れ、 「天よ、母よ」と泣き叫ぶ。 南閻浮提で施されたこの飯には、 七尺もの神々しい光が宿っていた。 香ばしく美味しい食事となるはずが、 口に入る前に火と化してしまう。 貪り惜しむ心が変わらぬため、 長年にわたり罪を受けることとなった。 今、痛切に思っても手立てはなく、 業の報いは誰にも代わってもらえない。 世の人々よ、嫉妬の心を抱いてはならない。 一度三途の苦しみに落ちれば、罪は終わらない。 香ばしい飲み物が喉に届く前に、 猛火が母の口から噴き出す。 俗世の罪は娑婆世界に満ちているが、 貪り惜しむ罪が最も多い。 火が理由もなく口から出るのは、 業の報いが他によるものではないと知るためだ。 常に平等の心を持ち行い、 また真心を込めて弥陀を念じよ。 貪りの心を捨て去る者だけが、 浄土や天国に自由に至ることができる。 青提は呼びかける、孝順なる子よ、 罪業の身は自ら滅びるものではない。 邪な孝道を行わなければ、 誰が苦労して親を救おうとするだろうか。 飯を見ても口に運べず、 火を見ては理由もなく傷つく。 貪り惜しむ心が去れば、心は貪るものとなり、 ただ過ちの余殃を受けるだけだ。 阿師は母の孝順なる子、 私に冷たい水を与え、虚しい腸を潤してくれ。
目連聞阿孃索水氣咽聲嘶。思寸中間忽憶王舍城南有大水。闊浪無邊名曰恒河之水。亦應救得阿孃火難之苦。南閻浮提眾生見水即是清涼冷水。諸天見水即是瑠璃寶池。鼈見此水即是潤澤。青提見水即是膿河猛火。行至水頭未見兒。呪願更即左手託岸。良由慳右手抄水。良由貪直為慳貪心不止。水未入口便成。目連見阿孃喫飯成猛火。喫水成猛火。□胸怕憶悲號啼哭。來向佛前遶佛三匝却住一面白言。世尊慈悲救得阿娘之苦。只今喫飯成火喫水成火。如今救得阿孃大難之苦。世尊喚言。目連汝阿孃如今未得飯喫。無過周匝一年七月十五日。廣造盂蘭盆始得飯喫。目連見阿孃飢白言。世尊每月十三十四日可不否。要須待一年之中七月十五日始得飯喫。世尊報言非。但汝阿孃當須此日廣造盂蘭盆。諸山坐禪戒下日。羅漢得道日。提婆達多罪滅日。閻羅王歡喜日。一切餓鬼總得普同飽滿。目連承佛明教。便向王舍城邊塔廟之前。轉讀大乘經典。廣罪盂蘭盆善根。阿娘就此盆中始得一頓飽飯喫。從得飯已來母子更不見。目連諸處尋覓阿娘不見。悲泣雨淚來向佛前遶佛三匝却住一面。合掌䠒跪白言。世尊阿孃喫飯成火喫水成火。蒙世尊慈悲救得阿娘火難之苦。從七月十五日得一頓飯。喫已來母子更不相見。為當墮地獄。為復向餓鬼之途。世尊報言。汝母亦不墮地獄餓鬼之途。汝轉經功德造盂蘭盆善根。汝母轉餓鬼之身向王舍城中作黑狗身去。汝欲得見阿娘者。心行平等次第乞貪。莫問貧富。行至大富長者家門前。有一黑狗出來捉汝袈裟。銜著作人語。即是汝阿孃也。目連蒙佛勅遂即託鉢持盂尋覓阿孃。不問貧富坊巷行衣匝合總不見阿娘。行至一長者家門前。見一黑狗身。從宅裏出來便捉目連袈裟。咸著即作人語語言。阿孃孝順子。忽是能向地獄冥路之中救阿孃來。因何不救狗身之苦。目連啟言。慈母由兒不孝順殃及慈母墮落三塗。寧作狗身於此儞作餓鬼之途。阿孃喚言。孝順兒受此狗身音啞報行住坐臥得存飢。即於坑中食人不淨渴飲長流以濟虛。朝聞長者念三寶。莫聞娘子誦尊經。寧作狗身受大地不淨。耳中不聞地獄之名。目連引得阿娘往於王舍城中佛塔之前。七日七夜轉誦大乘經典懺悔念戒。阿孃乘此功德轉却狗身。退却狗皮掛於樹上。還得女人身。全具人扶圓滿。目連啟言。阿孃人身難得中眾國難生。佛法難聞善心難發。喚言。阿孃今得人身便即修福。目連將母於娑羅雙樹下。遶佛三匝却住一面白言。世尊與弟子阿孃看業道已來從頭觀占更有何罪。世尊不違目連之語。從三業道觀看更率私之罪。目連見母罪滅心甚歡喜啟言。阿孃歸去來閻浮提世界不堪停。生住死本來無住處。西方佛國最為精。敢得能奉引其前。亦得天女來迎接。一往仰前受快樂。最初說偈度俱輪。當時此經時。有八萬涅槃八萬僧八萬優婆塞八萬姨。作禮圍遶歡喜信受奉行。
目連は母が水を求め、声がかすれて喉が詰まるのを聞いた。その瞬間、王舎城南に大河があることを思い出した。広々と波が広がり、果てしなく、その名を恒河という。その水でなら、母の火難の苦しみも救えるかもしれない。南閻浮提の衆生にとって水は清らかで冷たいもの。諸天にとって水は瑠璃の宝池。亀にとって水は潤い。しかし青提(母)にとって水は膿の河、激しい炎だった。水辺にたどり着いても、息子の姿は見えない。母は左手で岸を支え、右手で水をすくおうとした。右手がすくうのは、貪りの心ゆえ。貪りと吝嗇の心がやまないため、水は口に入る前に炎と化した。目連は母が飯を食べれば炎となり、水を飲めば炎となるのを見た。胸が張り裂け、恐ろしさと悲しみで号泣した。彼は仏のもとへ行き、三度仏を右繞し、一歩下がって言った。「世尊、どうか慈悲をもって母の苦しみをお救いください。今、飯も水も炎と化してしまいます。どうかこの大難から母を救ってください」
世尊は言われた。「目連よ、汝の母は今、まだ飯を食べることができぬ。一年と七ヶ月十五日を待たねばならぬ。広く盂蘭盆を設ければ、ようやく飯を食べられるであろう」
目連は母が飢えているのを見て言った。「世尊、毎月の十三日、十四日ではいけないのでしょうか。一年の中の七月十五日まで待たねばならないのでしょうか」
世尊は答えられた。「否。ただ汝の母のためだけでなく、この日に広く盂蘭盆を設けるべきである。諸山の坐禅戒の日、羅漢の得道の日、提婆達多の罪滅の日、閻魔王の歓喜の日。一切の餓鬼が皆、等しく満腹する日なのだ」
目連は仏の明らかな教えを受け、王舎城の辺り、塔廟の前で大乗経典を転読し、広く盂蘭盆の善根を積んだ。母はこの盆によって、ようやく一度だけ満腹の飯を食べることができた。しかし、飯を得て以来、母子は再び会うことがなかった。目連はあちこち母を探し求めたが見つからず、悲しみの涙を流して仏のもとへ行き、三度仏を右繞し、一歩下がって合掌し、跪いて言った。「世尊、母は飯を食べれば炎となり、水を飲めば炎となりましたが、世尊の慈悲によって火難の苦しみは救われました。七月十五日から一度だけ飯を食べましたが、それ以来、母子は会えません。地獄に堕ちたのでしょうか、それとも餓鬼の道へ向かったのでしょうか」
世尊は答えられた。「汝の母は地獄にも餓鬼の道にも堕ちてはいない。汝が経典を転読する功徳と盂蘭盆の善根を積んだため、汝の母は餓鬼の身を転じ、王舎城中で黒狗の身となっている。汝が母に会いたければ、心を平等に保ち、順序に従って托鉢せよ。貧富を問うてはならぬ。大富豪の長者の家の門前に至れば、一匹の黒狗が出てきて汝の袈裟をつかみ、人語を話すであろう。それが汝の母である」
目連は仏の命を受け、鉢と盂を携えて母を探し求めた。貧富や町並みを問わず、あちこち歩き回ったが、母には会えなかった。ある長者の家の門前に至ると、一匹の黒狗が家の中から出てきて、目連の袈裟をつかんだ。そして人語を話し始めた。「ああ、孝順な子よ。よくも地獄の冥途から母を救い出してくれた。なぜこの狗の身の苦しみは救ってくれぬのか」
目連は言った。「慈母よ、子の不孝のゆえに、慈母に災いが及び、三塗に堕ちてしまいました。ここで狗の身となるのも、餓鬼の道を行くよりはましでしょう」
母は言った。「孝順な子よ、この狗の身を受け、声は出ず、報いは行住坐臥に飢えを伴う。穴の中で人の不浄なものを食べ、渇けば長流の水を飲んで虚しさを癒す。朝に長者が三宝を念ずる声を聞くが、娘子が尊経を誦する声は聞こえぬ。寧ろ大地の不浄を身に受けながら狗の身となり、耳に地獄の名を聞かぬ方がましだ」
目連は母を導き、王舎城中の仏塔の前で七日七夜、大乗経典を転読し、懺悔して戒を念じた。母はこの功徳によって狗の身を転じ、狗の皮を脱いで木に掛け、再び女人の身を得た。人の姿は完全に整い、円満であった。目連は言った。「母よ、人身は得難く、衆の中に生まれることは難く、仏法を聞くことは難く、善心を発することは難しい。母よ、今人身を得たならば、今すぐに福を修めなさい」
目連は母を娑羅双樹の下に連れて行き、三度仏を右繞し、一歩下がって言った。「世尊、弟子の母の業道を、初めから観察し、占ってください。まだ何か罪があるでしょうか」
世尊は目連の言葉に背かず、三業道を観察され、さらに私の罪をも率いてご覧になった。目連は母の罪が滅びたのを見て、心から喜び、言った。「母よ、帰ろう。閻浮提の世界は留まるに堪えぬ。生も住も死も、本来とどまる所はない。西方の仏国こそ最も精妙である。どうかその前へ導くことができますように。天女も出迎えてくれるでしょう。一歩前へ進み、楽しみを受けるのです。最初に偈を説いて俱輪を度したように」
この経が説かれた時、八万の涅槃、八万の僧、八万の優婆塞、八万の優婆夷がいて、礼をし、周りを取り囲み、歓喜し、信受奉行した。
大目犍連變文一卷
大目犍連変文 一巻
貞明漆年辛巳歲四月十六日淨土寺學郎薛安俊寫 張保達文書
貞明漆年辛巳の歳四月十六日、浄土寺の学郎薛安俊が書き記す。 張保達の文書