銀色女經
銀色女経
元魏天竺三藏佛陀扇多譯
元魏天竺三蔵仏陀扇多訳
如是我聞:
このように、私はお聞きしました。
一時婆伽婆住舍衛國祇陀樹林給孤獨園,與大比丘眾千二百五十人俱。
あるとき、尊きお方は、シャーラワスティーのジェータ林にある孤独な人々の園に滞在しておられました。 そばには、千二百五十人の大いなる修行者たちがおられました。
爾時,世尊告諸比丘言:「諸比丘!若有眾生能知布施所有功德及施果報,如我所知,於食食時,若初食摶、若後食摶,若不捨施不應自食。」
その時、世尊は比丘たちに告げられました。「比丘たちよ、もし人々が、私が知る布施の功徳やその報いを本当に理解しているなら、食事の際に、最初の一口であれ最後の一口であれ、施しをせずに自分のために食べることはないであろう。」
爾時世尊而說偈言:
その時、世尊は偈を説かれた。
「若有諸眾生, 如佛之所說,
減食分而施, 成就大果報。
或以初食摶、 或以後食摶,
若不用布施, 則不應自食。」
もし仏陀が説かれるように、 多くの人々が食を減らして施せば、 大きな果報を得ることができる。 最初の一食や後の一食を、 もし布施しなければ、 自ら食べるべきではない。
爾時,世尊說是偈已,告諸比丘言:「諸比丘!乃往過去過無量劫,時有王都,王號蓮華。彼城有女,名曰銀色——端正殊妙,容相具足,成就最上勝妙色身。
その時、世尊はこの偈を説き終えられ、比丘たちに告げられました。「比丘たちよ、はるか昔、数えきれないほどの劫の昔、ある都がありました。その都の王は、蓮華王と申しました。その都に、銀色という名の娘がおりました。彼女は顔立ちがとても美しく、容姿は完全に整い、この上なく優れた見事な身体を備えておりました。」
「彼銀色女有所須故,從自家出往至他舍。入他舍已,見彼家內新產婦女生一童子,端正殊妙,身色成就。時產婦女以手擎子而欲食之。時銀色女即問之曰:『妹何所作?』
銀色の女が何かの用事で、自分の家を出て他人の家へ向かった。その家に入ると、家の中で一人の若い母親が、美しく整った姿の男の子を生んだばかりで、わが子を両手で抱き上げて、食べようとしているのを見た。そこで銀色の女は尋ねた。「妹よ、いったい何をしているのですか?」
「彼即答言:『我今甚飢,無有氣力,不知何食,故欲噉子。』
彼が答えて言った。「私は今、ひどく空腹で、体力もなく、何を食べればいいのかもわからない。それで子を食べようと思ったのです。」
「時銀色女即語之言:『妹今且止,此事不可。妹!此舍中豈更無食人所食者?』
その時、銀色の女が言った。「妹よ、ちょっと待ちなさい。そんなことはしてはいけません。この家の中には、人が食べるものは他にないのですか?」
「即答言:『姉!我久積集慳貪垢悋,是故於今無物可食。』
答えて言った。「お姉さん、私は長い間、けちで欲深い心を積み重ねてきたため、今では食べ物が何もありません。」
「銀色女言:『妹今且止,待我向家與妹取食。』
銀色の女が言った。「妹よ、ちょっと待っていなさい。家に帰ってあなたに食べ物を取ってくるから。」
「彼復言:『姉!我今二脇皆欲破壞,背復欲裂,心戰不安,諸方皆闇。姉適出舍,我命即斷。』
彼は続けて言いました。「姉さん!今、私の両脇が引き裂かれそうで、背中も割れそうだ。心は震えて落ち着かず、周りは真っ暗だ。姉さんが家を出たら、私はすぐに命を落としてしまう。」
「時銀色女作如是念:『若將子去,彼婦命終;若不將去,必食此子。以何方便救此二命?』
〈銀色の女はこう考えた。〉 「この子を連れて行けば、あの母親は命を落とす。連れて行かなければ、きっとこの子を食べてしまう。どうすれば、この二つの命を救えるだろうか?」
「即語之言:『妹!此室中有利刀不?我今須之。』
そこで、妹にこう言ったのです。「この部屋に鋭い刀はあるかい?今すぐそれが欲しいんだ。」
「彼答言:『有。』即便取刀授與銀色。
彼が答えた。「ある。」そしてすぐに刀を取り、銀色に渡した。
「銀色取刀自割二乳與彼令食,而語之言:『食我此乳,即令妹身離飢渴苦。』
銀色という者が刀を取って、自ら両方の乳房を切り落とし、それを妹に与えて食べさせながら、こう言った。「この私の乳を食べなさい。そうすれば、あなたの体から飢えと渇きの苦しみがなくなるだろう。」
「彼取食已,復問之言:『妹為飽不?』
彼が食べ終わって、また彼女に尋ねました。「妹よ、お腹いっぱいになったかい?」
「彼答言:『飽。』
彼が答えた。「もう十分です。」
「銀色女言:『妹今當知,此子乃是我自身肉之所贖得。今且寄妹,我須向家取諸飲食。』
銀色の女が言った。「妹よ、今、知っておきなさい。この子は、私の自らの身の肉をもって贖い得たものなのです。今はひとまず、妹に預けます。私は家に帰って、食べ物や飲み物を取ってまいりますので。」
「作是語已,流血遍身曳地而去。
この言葉を言い終えると、血が全身に流れ、それを地面に引きずりながら去っていった。
「往至家中,銀色眷屬諸親見已,皆共問言:『是誰所作?』
銀色の眷属たちが家に帰ってきたのを見て、親族たちは皆、「これは誰がやったのだ?」と尋ねました。
「銀色答言:『是我自作。』
銀色が答えた。「それは、私が自らやったことです。」
「彼復問言:『何以故爾?』
和上(和尚)がさらに問いました。「なぜそう落ち込んでいるのですか?」
「銀色答言:『我已起心不捨大悲,為求成就阿耨多羅三藐三菩提故。』
銀色が答えた。「私はすでに大いなる慈悲の心を起こし、それを捨てることなく、無上正等覚(あのくたらさんみゃくさんぼだい)を成就しようと求めております。」
「諸親皆言:『雖行布施而心悔者,乃可是檀,非波羅蜜。』
あらゆる親しい人々が言うには、「たとえ施しを行っても、心に後悔があれば、それはただの施し(檀)であって、波羅蜜(完成された智慧)ではない」と。
「作是語已,復問之言:『當割捨時為歡喜不?勿以苦痛至生悔惱。』
このように言った後、また尋ねました。「その切り離す時、喜んで行うことができましたか?苦しみのために後悔や悩みを生じさせてはいけません。」
「時銀色女即發誓言:『我割二乳不生悔心,心無異想。以是誓願,令我二乳還復如本。』作是誓已,即時二乳還復如本。
時に銀色の女は誓いを立てて言いました。 「私は自分の両乳を切り落としても、後悔せず、心に迷いもありません。 この誓いの力によって、どうか私の両乳が元通りになりますように。」 こう誓ったその瞬間、彼女の両乳は元通りになったのです。
「爾時,蓮華城中諸夜叉等發大聲言:『銀色女今自捨二乳。』爾時,地天聞已,復唱;虛空中天聞已,傳唱;如是傳聲,乃至梵天。
その時、蓮華の都にいた夜叉たちが大声で叫びました。「銀色の女が自らの乳房を差し出している!」これを地の神々が聞いて声をあげ、虚空の神々が聞いてさらに声を伝え、その声は梵天にまで届きました。
「時帝釋王作如是念:『是事希有!此銀色女愍眾生故,自捨二乳。我今當往,至彼試之。』作是念已,即自變身作婆羅門。於左手中執金澡罐及捉金鉢,於右手中捉一金杖,而便往詣蓮花王都。到已,漸漸至銀色女所居舍宅,在門外立,唱言乞食。
「時の帝釈天はこう思った。『これは稀有なことだ。この銀色の女は、生きとし生けるものを哀れんで、自ら両方の乳房を差し出した。私は今、彼女のもとへ行き、彼女を試してみよう。』こう思うと、帝釈天は自らの姿をバラモンに変えた。左手には金の水瓶と金の鉢を持ち、右手には金の杖を一本携えて、蓮華王の都へと向かった。到着すると、次第に銀色の女が住む家の前に進み、門の外に立って『施しをください』と乞うた。」
「時銀色女既聞門外乞食聲已,即便隨時以器盛食,出在門外。時婆羅門而語之言:『妹今且停,我不須食。』
その時、銀色の女は門の外から托鉢の声を聞き、すぐに器に食べ物を盛って門の外に出ました。するとバラモンが言いました。「妹よ、ちょっと待ってください。私は食べ物は必要ありません。」
「女言:『何故?』
女が言った。「なぜでしょうか?」
「婆羅門言:『我是帝釋。我於汝所甚生疑心,故來到此。如我所問,必當答我。』
バラモン(神官)が言いました。「私は帝釈天(インドラ神)です。私はあなたに対して強い疑いを抱き、そのためにここに来ました。私が尋ねることに対して、必ず答えてください。」
「女語之言:『大婆羅門!今者但問。隨意所問,我當答之,必令稱汝婆羅門心。』
老婆は言いました。「大婆羅門よ、どうぞお尋ねください。あなたがお尋ねになることには、何でもお答えします。必ずやあなたの心にかなうように致しましょう。」
「時婆羅門即問言:『妹實割二乳施他以不?』
その時、婆羅門が尋ねました。「妹よ、あなたは本当に自分の両方の乳房を切り取って、他の人に施したのですか?」
「答言:『實爾。大婆羅門!』
お答えします。「その通りです、大いなるバラモンよ。」
「婆羅門言:『何以故爾?』
婆羅門が尋ねました。「それは、なぜなのですか?」
「銀色女言:『大悲之心為取阿耨多羅三藐三菩提故。』
銀色女が言いました。「大悲の心は、阿耨多羅三藐三菩提を取るためのものです。」
「婆羅門言:『此事甚難。甚難事者,所謂阿耨多羅三藐三菩提。若布施已,而生悔心,彼乃是檀,非波羅蜜。汝當施時,歡喜以不?當割時苦生異念不?』
バラモンが言った。「それは実に難しいことだ。難しいこととは、すなわち無上正等覚(阿耨多羅三藐三菩提)である。もし布施をした後に後悔の心を起こすなら、それはただの施し(檀)であり、波羅蜜(完成された布施)ではない。あなたが布施をした時、喜んで行ったか? あなたの体を切り裂かれた時、苦しみのために異なる心を生じたか?」
「銀色即答言:『憍尸迦!我今立誓,我以求於一切智心、為求一切世間勝心、求救一切眾生之心,割此二乳實不生悔。若不悔者,令我女身變成男子。』時銀色女作是誓已,即成男子——彼見女身成男子已,心生歡喜,踊躍無量——至於餘處樹下睡眠。
銀色女が即座に答えた。「カウシカよ、私は今誓いを立てます。私は一切の智慧を求める心、一切の世間における最も優れた心を求める心、一切の衆生を救おうとする心をもって、この両乳を切り落としましたが、まったく後悔しません。もし後悔がないならば、私の女の身を男子に変えてください。」
銀色女がこの誓いを立てると、たちまち男子に変わった。彼女は自らの女の身が男子に変わったのを見て、心に喜びが生じ、この上なく踊り喜んだ。そして別の場所の木の下で眠りについた。
「時蓮華王忽然崩亡,其王無子。時甚大熱。當於是時,諸大臣等從樹至樹、從村至村、從城至城、從都至都,處處求覔有相之人應為王者。諸臣皆言:『我等今者云何而得如法治王?』
時に、蓮華王は突然崩御されました。王には子がありませんでした。その頃、非常に暑い日が続いておりました。そのような時、大臣たちは木々の間を、村から村へ、町から町へ、都から都へと巡り、王となるにふさわしい相を持つ人を探し求めました。そして大臣たちは口々に言いました。「今、いったいどうすれば、法に基づいて統治する王を得ることができるのだろうか。」
「當爾之時,有一大臣以熱困故,入華池中。
その時、一人の大臣が暑さに耐えかねて、蓮華の池の中に入りました。
「時彼大臣見樹下人色貌殊勝,具足眾相,睡臥不覺。日雖移去,然其樹影不捨彼人。時彼大臣彈指令覺。彼既覺已,將至王舍即與剃髮,令被王服首著寶冠,而語之言:『當治王事。』
時に、大臣が木の下にいる人を見ると、その顔立ちは優れ、すべての相を備えていたが、寝入っていて気づかない。日が動いても、その木陰はその人から離れなかった。そこで大臣が指を鳴らして彼を目覚めさせた。彼が目覚めると、王舎城に連れて行き、頭を剃り、王の服を着せ、宝冠をかぶせて言った。「あなたが国の政治を統治すべきです。」
「彼即答言:『我實不能治於王事。』
彼は答えた。「私は本当に王の務めを果たせません。」
「復語之言:『今者必須治於王事。』
そこで彼はこう言いました。「今こそ、王としての務めに専念しなさい。」
「彼復答言:『我若為王,如法治國。汝等諸人,若當悉受十善業道,我則為王。』
彼が答えました。「もし私が王となったなら、正しい法に従って国を治めるつもりだ。そこでお前たち皆が、十の善い行いの道(十善業道)をすべて受け入れて守るならば、私は王となろう。」
「彼皆答言:『臣等順行。』即時皆受十善業道。
彼らは皆答えた。「私たちは従い行います。」と。そこで即座に皆、十善業道を受けました。
「彼人如是十善業道勸眾生已,即治王事,名銀色王。爾時,國內諸人民等壽命七萬那由他歲。彼王於是無量百歲無量千歲治王事已,爾乃命終。
そのようにして、その人は十善業道をもって衆生を教え導き終えると、王の務めを行い、銀色王と名乗った。その時、その国の人々の寿命は七万那由他歳であった。その王は、無量の百歳、無量の千歳の間、王の務めを果たした後、ついに命終した。
「臨命終時作如是言:
「臨終の時に、このように言うのです。
「『一切皆無常, 必有敗壞事,
合會必有離, 有命皆必死。
隨所作事業, 若善若不善,
一切有生者, 命皆不久住。』
「すべては常に変わりゆくもの、 いずれは壊れてしまう運命にある。
出会いがあれば必ず別れがあり、 命あるものはすべて、いつか死ぬのだ。
自らが行う行いによって、 善であれ悪であれ、
この世に生を受けたすべてのものの命は、 永くは続かないのである。」
「彼王命終,還生彼處蓮華王都。於長者妻而便託生,可八九月便生童子,端正殊妙,具足眾色。然彼童子過八歲後,五百童子而圍遶之將詣學堂。彼學堂處,先有五百童子學書。
その王が命を終えると、同じ蓮華王都で長者の妻の胎内に宿りました。八、九ヶ月ほどで童子が生まれ、その容姿は見事で、あらゆる美しい姿をそなえていました。その童子が八歳を過ぎた頃、五百人の童子たちに囲まれて学堂へ向かいました。そこにはすでに五百人の童子が文字を学んでいました。
「時彼童子問舊者言:『汝等於此為何所作?』
時に、その童子は年長者に尋ねました。「あなた方は、ここで何をしているのですか?」
「舊者答言:『我等學書。』
古い者が答えた。「私たちは書を学んでいます。」
「又言:『學書得何義利?汝等何須學此書為?汝等但應發阿耨多羅三藐三菩提心。』
「また、こうも言っています。 『文字を学んで、いったい何の得があるのか。なぜお前たちはそんなことを学ぶ必要があるのか。 ただただ、無上正等覚(あのくたらさんみゃくさんぼだい)の心を起こしなさい。』」
「舊童子言:『發阿耨多羅三藐三菩提心,為何所作?』
昔の童子が言いました。「阿耨多羅三藐三菩提心(最高のさとりを求める心)を起こすことは、いったい何をするためなのでしょうか。」
「童子答言:『必須修行六波羅蜜。何等為六?所謂檀波羅蜜、尸波羅蜜、羼提波羅蜜、毘梨耶波羅蜜、禪波羅蜜、般若波羅蜜。』
童子が答えました。「必ず六つの波羅蜜(完全な修行)を実践しなければなりません。その六つとは、布施波羅蜜、持戒波羅蜜、忍辱波羅蜜、精進波羅蜜、禅定波羅蜜、智慧波羅蜜です。」
「彼既聞已,即言:『我發阿耨多羅三藐三菩提心。』
彼がそれを聞いて、すぐにこう言った。「私は無上正等覚(あのくたらさんみゃくさんぼだい)の心を起こします。」
「時彼童子既令諸人發阿耨多羅三藐三菩提心已,作如是念:『我今欲以微少物施。我今當為二足、四足、禽獸、鹿等而行布施。』作是念已,而便往至尸陀林中。即以利刀刺身出血,塗身令遍,復以油塗,臥彼林中,而自唱言:『諸有近遠二足、四足、鹿等禽獸,須食之者,願來至此,食我身肉。』
その時、その童子は人々に無上正等覚(あのくたらさんみゃくさんぼだい)の心を起こさせた後、こう思いました。 「私は今、わずかなものでも施しをしよう。今こそ、二足の者、四足の者、鳥獣や鹿たちのために布施を行おう。」 そう思ってから、尸陀林(しだりん)へと向かいました。そして鋭い刀で自分の体を刺して血を流し、全身に塗りつけ、さらに油を塗って、その林の中に横たわり、自らこう叫びました。 「遠く近くにいる、すべての二足の者、四足の者、鹿や鳥獣たちよ。もし食べ物を必要とするなら、どうかここへ来て、この身の肉を食べてください。」
「于時彼處飛鳥眾中有一鳥來,名曰有手,坐其額上挽其右眼,挽已還放。
その時、その場所にいた鳥の群れの中から、有手という名の一羽の鳥が飛んで来て、その額の上に止まり、その者の右の目をつつき、また放した。
「彼問鳥言:『汝今何故挽我右眼而復放耶?』
その鳥に尋ねた。「お前はなぜ、今、私の右目を引き抜き、また放したのか。」
「彼鳥答言:『我於人身餘分肉中,一切無有美於眼者。』
その鳥が答えて言った。「私にとって、人間の体の各部分の中で、目よりも美しいものは何一つありません。」
「彼語鳥言:『假使千遍挽我右眼而復放之,而我不生嫌恨之心。』
その鳥に彼が言いました。「たとえ千度、私の右目を引き抜いては放すことを繰り返そうとも、私は決して恨みの心を起こしはしません。」
「彼鳥於是噉其二眼。無量鳥眾集彼林中,彼鳥悉共食其肉盡,唯白骨在。
その鳥はそこで、その者の両目をついばみました。無数の鳥たちがその林に集まり、その鳥たちは皆でその肉を食べ尽くし、骨だけが残りました。
「彼捨身已,即復還生蓮華王都。託生彼處婆羅門婦,足滿十月生一童子,端正殊妙,最上無比,身色具足。
その身を捨てた後、すぐに蓮華王の都に再び生まれました。そこであるバラモンの婦人に宿り、満十月を経て一人の童子が生まれました。その姿は端正で殊妙、この上なく優れ、身の色も完璧に備わっていました。
「年二十後,于時父母而語之言:『摩那婆!當須造舍。』
20歳を過ぎた頃、両親が言いました。「摩那婆よ、家を建てなさい。」
「時彼童子報父母言:『為我造舍為有何義?我心今者不在於舍,惟願放我入於深山。』父母即聽。
その時、童子は父母に答えて言いました。「私のために家を建てることに、どんな意味があるのでしょう。私の心は今、家にあるのではありません。どうか私を放して、深い山の中に入らせてください。」父母はそれを聞き入れました。
「彼出自舍往詣山林,既往到已,見山林中於前先有二婆羅門舊住仙人在彼林中。時摩那婆至婆羅門二仙人所,問婆羅門二仙人言:『梵仙在此山林之中,為何所作?』
彼は自分の家を出て、山や林の中へと向かいました。そこに着くと、林の中に以前から住んでいた二人のバラモンの仙人がいるのを見つけました。そこで、その若者は二人のバラモン仙人のもとへ行き、尋ねました。「聖なる仙人方よ、あなたがたはこの山の中で、どのような修行をされているのですか?」
「二仙報言:『摩那婆!我等皆為利益眾生故,在此林行於苦行,作種種事。』
二仙が答えて言いました。「摩那婆よ。私たちは皆、衆生を利益するために、この林で苦行を修行し、様々な行いをしているのです。」
「彼復語言:『我於今者,亦為利益一切眾生故,來至此欲作苦行。』彼摩那婆即至餘處樹林之中,量地作屋。
彼はまた言った。「私もまた、全ての生きとし生けるものを利益するために、ここに来て苦行を行おうと思う。」
その摩那婆(まなば)は、他の場所の林の中へ行き、地面を測って小屋を作った。
「彼摩那婆以修善業福德力故,忽得天眼。即時,遙見於其住處相去不遠,有一母虎住在彼處,而彼母虎懷妊將產。時摩那婆見已,念言:『而此母虎將產不久,此虎產已,或容餓死、或時飢餓極受困苦、或食自子。』念已,即問彼婆羅門二仙人言:『誰能割身與此虎者?』
かの摩那婆は、善行の功徳力によって忽ち天眼を得ました。すると、自分の住まいから遠くない場所に一頭の雌虎がいるのを遠くに見つけ、その雌虎は妊娠してまもなく産気づいていました。摩那婆はそれを見て、こう考えました。「この雌虎は間もなく産むだろう。産んだ後、飢え死にするか、ひどい飢えに苦しむか、あるいは自分の子を食べてしまうかもしれない。」そう考えて、彼はその場にいた婆羅門の二人の仙人に問いました。「誰か、この虎のために自らの身を捧げられる者はいるだろうか?」
「彼即答言:『我等不能自割身施。』作是語已,復過七日,母虎便產。
彼は答えた。「私たちには自らの体を切って与えることはできません。」こう言ってからさらに七日が過ぎ、母虎は子を産んだ。
「虎既產已,口銜諸子,復置於地而復還取。時摩那婆見是事已,即便往到二仙人所語言:『大仙!母虎已產。若為利益諸眾生故行苦行者,今正是時,可割身肉與此母虎。』
虎は産み終えると、子を口にくわえては地面に置き、また取りに戻っていきました。 摩那婆はこれを見て、すぐにふたりの仙人のもとへ行き、こう言いました。 「大仙よ。母虎はすでに子を産みました。もしも、生きとし生けるものの利益のため、苦行をされているのでしたら、今こそその時です。どうか、自分の身の肉を切り取って、この母虎にお与えください。」
「時彼仙人二婆羅門,即便往至母虎左已,作是思惟:『誰能忍受如是苦事而行大施?誰能自割所愛身肉與此餓虎?』作是念已,彼產母虎即遠逐之。彼二仙人惜身命故,飛空而去。
時、その仙人と婆羅門の二人は、母虎の左側に来て、こう考えました。 「誰がこのような苦しい行いを耐え忍び、大いなる施しを行うことができるだろうか? 誰が自らの愛する身の肉を切り取って、この飢えた虎に与えることができるだろうか?」 こう考えたとき、その子を産んだ母虎が遠くから彼らを追いかけてきました。 その二人の仙人は命を惜しんだため、空を飛んで去ってしまいました。
「時摩那婆即便遙語彼婆羅門二仙人言:『此是汝等誓願事耶?』作是語已,即發誓言:『我今捨身以濟餓虎。願令我身以此因緣,必得阿耨多羅三藐三菩提。』作是願已,於彼地處得一利刀,自壞其身以施餓虎。
そこで摩那婆(まなば)は、遠くからその婆羅門(ばらもん)の二人の仙人に向かって言いました。「これはあなたがたの誓いの行いですか?」と。そう語り終えると、自ら誓いを立てました。「私は今、この身を捨てて飢えた虎を救います。この行いの縁によって、必ずや無上なる正しい悟り(阿耨多羅三藐三菩提)を得られますように。」この願いを立てたのち、その場所で鋭い刀を見つけ、自らの体を傷つけて飢えた虎に施しました。
「諸比丘!我愍汝等生於疑心,諸比丘!勿生異疑,莫作餘觀。何以故?汝等當知:爾時於彼蓮華王都銀色女人割二乳者豈異人乎?今我身是。
「比丘たちよ、私はあなたたちが疑問の心を抱くのを哀れむ。比丘たちよ、異なる疑いを起こしてはならない。他の見方をしてはならない。なぜならば、あなたたちは知るべきである。あの時、蓮華王の都で銀色の女が二つの乳房を切った者は、他人であろうか?今のこの私の身なのである。」
「諸比丘!勿生異疑,莫作餘觀。何以故?汝等當知:我是爾時蓮華王都銀色女也。
「比丘たちよ、疑いを抱いてはならない。他の考えを持ってはならない。なぜならば、あなたがたは知るべきだからである。私はその時、蓮華王の都にいた銀色の女であったのだ。」
「諸比丘!勿生異疑,莫作餘觀。何以故?汝等當知:我是爾時名銀色女,捨於二乳濟彼子者。
「比丘たちよ、疑いを抱いてはならない。他の考えを起こしてはならない。なぜならば、あなたがたは知るべきである。私はかつて銀色女と呼ばれ、自分の両方の乳を与えて幼子を救った者なのである。」
「諸比丘!勿生異疑,莫作餘觀。何以故?汝等當知:羅睺羅者豈異人乎?即是爾時彼童子也。
「比丘たちよ、疑いを抱いてはならない。違った見方をしてはならない。なぜか? あなたたちは知るべきである――羅睺羅は、決して他人ではない。まさに、その時の童子だったのだ。」
「諸比丘!勿生異疑,莫作異觀。何以故?汝等當知:爾時於彼蓮華王都尸陀林中,為諸鳥眾割捨身者豈異人乎?我身是也。
「比丘たちよ、疑いを抱いてはならない。違う見方をしてはならない。なぜか? あなたたちは知るべきである。あの時、蓮華王の都の尸陀林で、鳥たちのために自らの身を捧げて施した者は、一体だれか別人だっただろうか? いや、この私自身なのである。」
「諸比丘!勿生異疑,莫作餘觀。何以故?汝等當知:爾時二仙婆羅門者豈異人乎?即是汝等諸比丘也。
「比丘たちよ、疑いを抱いてはならない。他の見解を起こしてはならない。なぜならば、その道に二人の仙人バラモンがいたのは、他ならぬあなたがた比丘たちなのだから。」
「諸比丘!勿生異疑,莫作餘觀。何以故?汝等當知:我是爾時婆羅門子摩那婆也。
「比丘たちよ、疑いを抱いてはならない。別の見方をしてはならない。なぜか?あなたがたは知るがよい。私はその時のバラモンの子マナヴァだったのである。」
「諸比丘!是故我今為比丘說,若諸比丘知施功德及施果報,應施初摶、若施後摶,如是而食。」
「比丘たちよ、それゆえに、私は今あなたたちに説こう。 もし比丘たちが布施の功徳とその報いを知るならば、 最初の一口を施し、また後の一口をも施し、 そのようにして食事をしなさい。」
佛說此時,彼諸比丘皆大歡喜。
仏がこのように説かれると、その場にいた比丘たちは皆、大いに喜びました。
銀色女經
銀色女経