勝軍不動明王四十八使者祕密成就儀軌一卷
勝軍不動明王四十八使者秘密成就儀軌
大興善寺三藏沙門大廣智不空天竺國婆羅門僧遍智奉 詔集
大興善寺の三蔵沙門・大広智不空、天竺国のバラモン僧・遍智が詔
爾時般若菩薩入三摩地,名金剛等至,熾盛炎焰。其炎普照一切佛土,周遍焚燒三千大千世界。其中所有一切魔羅作難者,一切尾曩也迦、羅剎娑等,被是大火焚燒疫楚遍入,支體苦痛、絞結纏身,心迷悶絕,咸皆高聲,世人遇大苦逼,唱言密密,其聲滿三千大千世界。所有一切眾生聞此聲者,皆悉恐怖奔走投佛,咸作是言:「世尊!我等今歸命三寶。」時持金剛手菩薩從三昧起,告文殊師利言:「云何見諸天帝釋等來至於此?」文殊師利菩薩語金剛手言:「我不能知,唯如來了。」作是語已,二大士便無言說。時金剛手又告文殊師利威怒王,名聖者勝軍不動明王:「我今說是心及祕密印故,一切大眾金剛薩埵菩薩善男子諦聽,無邊功力勇健、無邊如來事,是無動大威怒王。又有八萬億恒河沙俱胝如來,皆蒙教勅事,得成無上菩提。復有無量天龍八部等,常恒供養恭敬承事。若纔憶念是威怒王,能令一切障難者皆悉斷壞。一切障難者不敢親近,常當遠離。是修行者所住之處,無有魔事及諸鬼難等。」時金剛薩埵菩薩從三摩地驚覺,召集一切聲聞、辟支佛,一切天、龍、藥叉、乾撻縛、阿修羅、蘖魯拏、緊那羅、摩護羅誐、人及非人等,一切群生類,皆來集會者。又抽撮彼群生眾差別之心,令同一體,等住三摩地。多俱胝世界焚火滅,唯成一大火聚,如七日光照大馬口等眾流,但𭲈吞納無餘,盡成猛焰。說是大威怒王勝軍不動明王微妙心,亦大馬口吞噉一切有情。一切眾生若干業煩惱心因等,成大火炎世界。爾時般若菩薩白佛言:「我一切如來、一切菩薩聲聞緣覺辟支佛,乃至天龍八部一切有情眾生界,為欲憐愍化度利益,勝軍明王現忿身,從摩訶毘盧遮那心五明王出生一切諸佛,如此是大日五明王五波羅蜜門。又出生其分身,一明王名曰勝軍不動,三千大千界中現自在炎明威德身。即自性輪身般若菩薩,為折伏攝受隨類眾生,為執金剛弟子杖,為加持眷屬摧破一切障故,如不馱大力開示忿怒金剛體,即住火生三昧,說摧大障者真言。此真言大威勢,能除一切摧真行者障難,從發菩提心守護增長,千全至成佛果,終不退失,不墮在非道中,乃至在佛道速疾證果。明王四弘願云:
その時、般若菩薩は三摩地に入り、その境地は「金剛等至」と呼ばれ、燃え盛る炎のようであった。その炎はすべての仏国土を照らし、三千大千世界に満ちて燃え広がった。その中にいるすべての魔羅や障害をもたらす者、一切の尾曩也迦、羅刹娑などは、この大火に焼かれ、苦痛に満ち、身体は痛み、心は混乱し、気を失うほどであった。彼らは皆、大きな苦しみに迫られた人が「密密」と叫ぶように、声を上げて叫んだ。その声は三千大千世界に満ちた。すべての衆生はこの声を聞いて恐怖し、走って仏のもとに逃げ込み、皆こう言った。「世尊よ、私たちは今、三宝に帰依いたします。」
その時、持金剛手菩薩は三昧から立ち上がり、文殊師利に告げた。「どうして諸天や帝釈などがここに来たのか、あなたは見ましたか?」文殊師利菩薩は金剛手に言った。「私は知りません。ただ如来のみがご存知です。」こう言い終えると、二人の大士は言葉を失った。
その時、金剛手はまた文殊師利威怒王、名を聖者勝軍不動明王という者に告げた。「私は今、この心と秘密の印を説くゆえに、すべての大衆、金剛薩埵菩薩、善男子よ、よく聞きなさい。無辺の功徳と勇気、無辺の如来の事業、これが無動大威怒王である。また八万億恒河沙の数の如来たちが、その教えを受け、無上菩提を成就した。さらに無量の天龍八部などが、常に供養し、恭敬し、仕えている。この威怒王をただ思い出すだけで、すべての障害を断ち壊すことができる。すべての障害をもたらす者は近づくことができず、常に遠ざかる。この修行者の住むところには、魔事や諸々の鬼難などはない。」
その時、金剛薩埵菩薩は三摩地から驚いて目覚め、一切の声聞、辟支仏、一切の天、龍、薬叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽、人及び非人など、すべての衆生の類を召集した。彼らは皆、集まって来た。さらに、彼らの衆生の様々な心を一つにまとめ、同じ境地に住まわせ、三摩地に安住させた。多くの俱胝の世界の燃える火は消え、ただ一つの大きな火の塊となった。それはまるで七日間の光が大河の流れを照らすように、すべてを飲み込み、残らず猛火となった。この大威怒王勝軍不動明王の微妙な心を説くことは、また大河が一切の有情を飲み込むようなものである。一切の衆生の様々な業や煩悩の心の原因などが、大火炎の世界となる。
その時、般若菩薩は仏に言った。「私は一切の如来、一切の菩薩、声聞、縁覚、辟支仏、さらには天龍八部、一切の有情衆生界のために、憐れみをもって化度し利益を与えるため、勝軍明王が忿怒の身を現し、大日如来の心から五明王が生まれ、一切の諸仏が生まれる。これが大日五明王、五波羅蜜門である。さらにその分身が生まれ、一つの明王、名を勝軍不動という者が、三千大千世界の中に自在な炎の明るい威徳の身を現す。すなわち自性輪身である般若菩薩は、様々な衆生を折伏し摂受するため、金剛の弟子の杖として、眷属を加持し一切の障害を摧破するため、不馱大力のように忿怒金剛の体を開示し、火生三昧に住して、大いなる障害を摧破する真言を説く。この真言は大いなる威勢を持ち、真の行者を阻む一切の障難を除き、菩提心を発してから守護し増長させ、完全に仏果に至るまで、終に退失せず、非道に堕ちることなく、仏道において速やかに証果を得させる。明王の四弘願はこうである:」
「見我身者, 發菩提心; 聞我名者,
斷惡修善; 聞我說者, 得大智慧;
知我心者, 即身成佛。」
我が身を見る者は、菩提心を発す。 我が名を聞く者は、悪を断ち善を修める。 我が説を聞く者は、大いなる智慧を得る。 我が心を知る者は、即身に仏となる。
「一持祕密呪,生生而加護。持念我者,不可至疑心,何況世間諸障哉唯有二種:一者內障,謂從自心生,其類甚多不可說;二者外障,從外事生,其類亦多。此真言皆能摧滅辟除,令身無垢清淨,依說即身成佛,是深祕之中極密教也。云何四種因緣?一者斷食、二者服氣食、三者菜食、四者節食,隨力所辦自約身已,誦根本陀羅尼一洛叉乃至三洛叉已,即已一日一夜水不飲,廣大供養莊嚴道場。於畫像前燒苦練木,如大指長十二指,兩頭搵著蘇蜜,誦呪一遍燒一枝木,滿一千八遍燒了,即少少世間事便如願滿。復次誦數滿已,入江河海深至頸處,面向東,每日念誦數滿三洛叉已,心中所受福田皆滿願。其水令致蛇龜之處,況呪力未成為他所損,常須結界。若常加功持誦不動根本真言,現身隨力能縛一切鬼神,亦能摧斫一切樹木,亦令空中飛鳥行者前墮墜,亦能執乾竭龍淀。若欲論議及破外道返惡人等,皆能降伏者。復次先候月欲食時,令誦呪滿數先飲。一日一夜不食,取祈牛糞:以未落地者,以器承取莫令至地;二者亦落地時塵土未污,取上令不著地。將壇取種種華散以供養,取大般若經安置中心著,取同色老犢棕牛乳作酪施。次取蘇與熟銅楾盛,以可里羅木作篦攪蘇。於月初飲即念誦,乃至見三種相,所謂焰等。暖相者,服之差一切病。得烟相者,以將塗己身可隱蔽,不令惡人得見也。得火炎相者,服之神通身能飛行,所謂身通也。老犢牛乳者,犢生經年已上,犢大如母而猶孤食乳。其犢毛色須與母同,如是牛乳湛作蘇用。復次行人山高頂之處,斷穀不食,更誦一洛叉,心心相續更莫異緣,天之伏藏自然出現。凡伏藏,有天、有神、有人。人所埋藏名人藏;鬼神所守名曰神伏藏,且名地伏藏;諸天等護者為天伏藏,尚能得見,悅地藏守、人藏乎。應作福事,隨意更用。復次一燒呪滿一千遍,能除國中大疫疾也。護摩法者,地作爐者,著火令熾。杓子法者,以堅木剋之,頭如杓,可受鷄子黃已下乳,其炳端其長二尺許。別以淨器盛乳,以此杓子酌而呪之。而國疫療,或以家一持達相染著皆死盡,令吳蜀嶺南有事作能除。復次取向草華和蘇蜜,一呪一燒,所求衣服如此華色,皆得稱意。若求緋者,當燒赤華,餘皆准此。䊒不思議神力滿行人願,可量分約事,而二札則無有志。若非分妄取,神亦慢人,雖得不貴。若燒蜜羅縛一洛叉,燒二呪,得國中第一官位。嚴所作者,求之必遂。蜜羅縛,外圓菓子也。復次燒畢養魚藏華,得一切人愛樂。燒松木,以三物點燒萬一遍,得無量眷屬。松木長七寸大如母指燒之。大麥呪之,得大丈夫富貴。其大麥,烏麥有皮是也。」
「一つの秘呪を保ち持てば、生々世々に加護あり。我を念じ持つ者は、疑いの心に至るべからず、ましてや世間の諸々の障りがあろうか。ただ二種あるのみ:一つは内なる障り、これは自心より生ずるもので、その種類は甚だ多く説くべからず;二つは外なる障り、外の事より生ずるもので、その種類もまた多い。この真言は皆これを摧滅し辟除し、身を垢なく清浄ならしめ、説くに依って即身成仏す。これは深秘の中の極めて密なる教えなり。四種の因縁とはいかん。一には断食、二には服気食、三には菜食、四には節食、力の及ぶところに従って自ら身を約し、根本陀羅尼を一洛叉乃至三洛叉誦し終わりて、すなわち一日一夜水を飲まず、広大なる供養を以て道場を荘厳す。画像の前にて苦練木を焼く、大指の長さ如く、十二指、両端に蘇蜜を塗り付け、呪を一遍誦して一枝の木を焼き、満一千八遍焼き終われば、すなわち少々の世間事も便ち願い満ちる。また誦数満ちて、江河海に入り深く頸に至る処にて、面を東に向け、毎日念誦数満三洛叉に至れば、心中に受くる福田皆願い満つ。その水を蛇亀の処に致すべし、況んや呪力未だ成らずして他に損ぜられんや、常に結界を須うべし。もし常に功を加えて不動根本真言を持誦すれば、現身に力に随って一切の鬼神を縛し、また一切の樹木を摧斫し、また空中の飛鳥を行者の前に堕墜せしめ、また乾竭龍淀を執すること能う。もし論議を欲し及び外道悪人等を破らんとせば、皆降伏すること能う。また先ず月の食まんと欲する時を候い、呪を誦し満数に先んじて飲むべし。一日一夜食せず、祈牛の糞を取る:未だ地に落ちざる者を以て、器に承け取りて地に至らしむる莫れ;二つにはまた落ちたる時の塵土未だ汚れざるを、上を取って地に着かざらしむ。壇を将ち種々の華を取り散らして供養とし、大般若経を取り中心に安置し著け、同じ色の老いた犢棕牛の乳を取りて酪を作り施す。次に蘇を取り熟銅の楾に盛り、可里羅木を以て篦を作り蘇を攪す。月初めに飲みて即ち念誦し、乃至三種の相を見るに至る、所謂焔等なり。暖相を得れば、服して一切の病を差す。烟相を得れば、以て己が身に塗れば隠蔽すべく、悪人に見えしめざるなり。火炎相を得れば、服して神通身となり飛行すること能う、所謂身通なり。老犢牛の乳とは、犢生まれて年を経たる以上、犢母の如く大にしてなお孤食乳するもの。その犢の毛色は須らく母と同じからしむべく、かくの如き牛の乳湛えて蘇を作るに用う。また行人山の高き頂の処にて、穀を断ち食せず、さらに一洛叉を誦し、心心相続してさらに異なる縁ある莫れ、天の伏蔵自然に出現す。凡そ伏蔵には、天のもの、神のもの、人のものあり。人の埋蔵するものは人蔵と名づく;鬼神の守るものは神伏蔵と名づけ、且つ地伏蔵と名づく;諸天等の護るものは天伏蔵と為し、尚よく見ることを得、況んや地蔵の守る、人蔵をや。福事を作すべく、意に随ってさらに用うべし。また一たび呪を焼き満一千遍すれば、能く国中の大疫疾を除く。護摩法とは、地に炉を作り、火を著けて熾ならしむ。杓子法とは、堅木を以てこれを剋ち、頭を杓の如くし、鶏子の黄以下の乳を受くべく、その柄の端その長さ二尺許り。別に浄き器を以て乳を盛り、この杓子を以て酌みてこれを呪す。而して国疫療、あるいは家一持達相染著して皆死に尽くす、呉蜀嶺南に事作有りて能く除く。また向草華を取り蘇蜜と和し、一呪一焼、求むる所の衣服この華の色の如く、皆意に称うことを得。もし緋を求むれば、当に赤き華を焼くべく、余は皆これに准ず。䊒不思議の神力行人の願いを満たし、量分を以て事を約すべく、而して二札は則ち志無し。もし分に非ずして妄りに取れば、神もまた人を慢じ、得ると雖も貴ばず。もし蜜羅縛を一洛叉焼き、二呪を得れば、国中第一の官位を得。厳に作す所のものは、求むれば必ず遂ぐ。蜜羅縛とは、外円なる菓子なり。また畢養魚蔵華を焼けば、一切の人に愛楽されることを得。松木を焼き、三物を以て点し万一遍を焼けば、無量の眷属を得。松木長さ七寸大さ母指の如くこれを焼く。大麦これを呪すれば、大丈夫富貴を得。その大麦とは、烏麦皮有るもの是れなり。」
「畫像法推伏。若欲作法,應對像前。心有所緣,應緣感。於好絹上畫不動明王,著赤色衣斜彼腰,褌子赤色,左邊一髮下垂至耳,左眼微斜看,左手把羂索、右手把劍直竪。劍首如蓮華葉狀,劍靴鈿。於寶石上,曲眉瞋,自身赤黃色怒狀,令一切眾生皆怕懼相。畫此像已,於海岸上清淨阿蘭若或淨屋中,行者清淨身著赤色衣,心想自身皆作赤色,不得散亂默然乞食,誦五洛叉滿已,長五寸刊之一萬莖,三物於此像前至心燒誦,勝軍不動明王自現身,令行人見。見已即得如來三摩地心,與諸菩薩當得一處。復次於此畫像前,每日三時念誦本呪,經六個月隨力供養一華香飲食,求種種願皆得滿足。若有賊來者,行人手執一種,誦一千遍,立若來處,彼怨賊等自然退走、怕邏而散。若值園佛法怨家惡人,以鹽土和作其形像,心上書其姓名,形長一肘,誦呪之一遍割取一枚燒之,乃至燒呪一誦惡人名字。燒盡,彼人不降伏尋即必死。又取曼陀葉燒,一呪一稱惡人名字,燒之滿一千遍,前人必定失心;取牛乳燒一千遍,還令平復。若燒鹽稱名,一呪一燒滿一千遍,千里之內受人皆至。燒安悉香,三時常不斷絕,得圓滿中上品位。右已上前法皆於此畫像下用之成就。道場觀壇中有須彌,上有赤蓮華,蓮華上有樓閣,其中有瑟石。瑟石中有憾字,字變即成勝軍不動尊,是轉法輪菩薩變身忿怒身也。勝軍者,自在義也。不動者,大寂定菩提義。尊者,大日差別智身。不動者,本佛毘盧遮那佛化身。一持祕密呪後,生生加護世間之人。世習未斷,雖千度觸犯種種世業,童子者皆許其懺悔,前後不即捨離。左垂一髮向下者,垂慈悲也。右手執劍者,是阿潔義。左手執索者,是繫縛義。坐盤上者,是不動義。自身出炎焰,是住大火智火生三昧。無邊如來奉事,是尊天龍八部恭敬承事。若纔憶念此威怒王,一切障者皆悉斷壞,世間出世所求悉地皆令成就。」
画像の作法と修法について。もし修法を行いたいなら、像の前で行うべきです。心に縁るべき対象があれば、その縁に応じて感応します。
良質の絹の上に不動明王を描きます。赤い衣をまとい、腰に斜めにかけ、袴も赤色とします。左側の一房の髪は耳まで垂らし、左目はわずかに斜めに見据えます。左手には羂索(けんさく)を持ち、右手には剣を真っ直ぐに立てます。剣の頭は蓮華の葉のような形で、剣のつばは装飾されています。宝石の上に座し、眉を曲げて瞋りの相を示し、自身は赤黄色の怒りの姿とし、一切の衆生を畏れさせる相とします。
この像を描き終えたら、海岸の清浄な阿蘭若(あらんにゃ)や清らかな部屋の中で、行者は清浄な身に赤い衣を着て、自身の体がすべて赤色になると想い、心を散乱させずに黙然と乞食し、五洛叉(ごらくしゃ)の数を満たすまで誦します。その後、長さ五寸の一万本の木札を用意し、三種の供物をこの像の前で心を込めて焼きながら誦すると、勝軍不動明王が自ら姿を現し、行者に見させてくださいます。それを見たならば、即座に如来の三摩地心を得て、諸菩薩と一処に在ることができるでしょう。
さらに、この画像の前で、毎日三時に本呪を念誦し、六ヶ月間にわたり力に応じて一華一香の飲食を供養すれば、種々の願いを求めることすべて満足を得られます。もし賊が来たならば、行者は一種の木札を手に持ち、千回誦して、賊が来る方向に立てれば、その怨敵や賊らは自然に退散し、恐れて逃げ散るでしょう。
もし仏法を妨げる怨家や悪人に遭遇したならば、塩と土を混ぜてその人の形像を作り、心臓の位置にその姓名を書き、形の長さを一肘(しゅ)とします。一呪誦するごとに一片を切り取り焼き、悪人の名前を誦しながら焼き尽くすまで続けます。そうすれば、その人は降伏しない限り、必ず死に至ります。
また、曼陀羅華の葉を取って焼き、一呪誦するごとに悪人の名前を称えて焼くことを千回満たせば、その者は必ず正気を失います。牛乳を取って千回焼けば、元の平穏な状態に戻すことができます。もし塩を焼きながら名前を称え、一呪一焼を千回満たせば、千里の内にある人々を皆、招き寄せることができます。安息香を焼き、三時に絶え間なく続ければ、中品から上品の位を円満に得られます。
右に述べた前法は、すべてこの画像の下で用いて成就します。道場観では、壇の中に須弥山があり、その上に赤い蓮華があります。蓮華の上には楼閣があり、その中には瑟石(しつせき)があります。瑟石の中に「憾」の字があり、その字が変じて勝軍不動尊となります。これは転法輪菩薩が変身した忿怒身です。
「勝軍」とは、自在なる義です。「不動」とは、大いなる寂定の菩提の義です。「尊者」とは、大日如来の差別智の身です。「不動」とは、根本仏である毘盧遮那仏の化身です。一度この秘密呪を授かれば、その後生々世々にわたり、世間の人々を加護します。世の習いがまだ断たれず、たとえ千度にわたり種々の世の業に触れ犯したとしても、童子(不動明王)は皆その懺悔を許し、前後しても即座に見捨てることはありません。
左に一房の髪を垂らすのは、慈悲を垂れるためです。右手に剣を執るのは、煩悩を断ち切る阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)の義です。左手に索を執るのは、煩悩を繋ぎ縛する義です。盤石の上に坐すのは、動かざる不動の義です。自身から炎焔を出すのは、大火智火生三昧に住することを表します。無辺の如来が奉仕し、この尊者を天龍八部が恭敬して承事します。
もしこの威怒王をわずかにでも憶念すれば、一切の障礙はことごとく断ち壊され、世間・出世間において求める悉地(しっち)はすべて成就させてくださいます。
「印相。二羽內相叉,輪輪各如環,二空住水側,火峯住空面,二風和合竪。真言曰:
印相。両手の指を内側に組み合わせ、それぞれの指輪は環のようにし、両手の親指は水指の側に置き、中指は親指の面に置き、両手の人差し指は和合して立てる。真言は次の通り:
「曩莫三曼馱縛日羅(二合)赦怛羅(二合)吒阿慕伽贊拏摩訶𮑗沙拏娑婆吒也吽怛羅(二合)摩也怛羅摩也吽怛羅(二合)吒憾𤚥」
「行者每日此真言持念,一切所求悉地成就。」
行者は毎日この真言を唱え続けると、あらゆる願いが成就します。
「次聖無動尊略布字法。唵(頂,其色如虛空);縛(眉間,其色如火);日羅(二合,兩肩,其色如火);阿左(二合,心上,其色如乳圓,目眸安於明,咽喉如肩法,月色如黃金)。已上五處布立修行人身上,於中有阿字遍含五字。此中布已遍體。故不動金剛身觀布已,即誦一字真言,用一切事。
次に、聖なる無動尊の略布字法について述べます。
唵(頂上に置く。その色は虚空の如し) 縛(眉間に置く。その色は火の如し) 日羅(二合。両肩に置く。その色は火の如し) 阿左(二合。心の上に置く。その色は乳の如く円く、目は瞳に明らかに安んじ、咽喉は肩の法の如く、月の色は黄金の如し)
以上の五箇所を修行者の身体に布き立てます。この中に阿の字があり、五字を遍く含んでいます。ここに布き終われば、全身に遍く行き渡ります。
ゆえに、不動金剛の身を観じ、布き終えたならば、ただちに一字の真言を誦し、一切の事に用いるのです。
「曩莫三曼多縛日羅(二合)赦憾(引)」
「次護身結界。以左手中指以下拄右手中指已下三指,各以兩手大指捻無名指相拄訖,直竪右手頭指,屈左手頭指捻右手頭指第二節文安口上,誦根本呪七遍,於頂上右旋三匝,隨心遠近法界即成,無能犯者。
次に護身結界の印を結びます。左手の中指から下の指を、右手の中指から下の三本の指の上に置きます。両手の親指でそれぞれの薬指をつまみ、互いにつなぎ合わせます。右手の人差し指をまっすぐ立て、左手の人差し指を曲げて、右手の人差し指の第二関節を軽く押さえます。この印を口の前に構え、根本呪を七回唱えます。その後、頭の上で右回りに三回円を描きます。これにより、心の届く範囲に法界が成立し、侵すことのできない守護が得られます。
「次入佛三摩耶印。二羽吝轉合掌,並遠於二大,以印當額、右左肩、心、喉。真言曰:
次に、仏の三昧耶印に入ります。両手を合わせて合掌し、親指を離し、印を額、右肩、左肩、心、喉に当てます。真言は次の通りです:
「曩莫三滿多沒馱南阿三迷怛哩三迷三摩曳娑婆賀」
南無一切仏よ。我は無我を悟り、三昧に住して、すべての願いを成就します。
「次法界生印。二手作金剛拳背相合,申二風頭相拄,以印向心。三遍。
次に、法界生印を結びます。両手を金剛拳にし、手の甲を合わせ、人差し指を伸ばして互いに触れ合わせ、印を心に向けます。これを三回繰り返します。
「曩莫三滿多沒馱喃達摩馱暏薩縛(二合)婆婆句含」
「次轉法輪。二手相背,地水火風相叉,以二空入掌中頭相合,即配心三遍舉之。真言曰:
次に法輪を転ずる印を結ぶ。両手の手の甲を外側に向けて組み合わせ、地・水・火・風の四指を互いに交差させ、両手の親指を掌の中に入れて先端を合わせ、これを心の位置で三度掲げる。真言は次の通り。
「曩莫三滿多縛日羅(二合)赦縛日羅(二合)怛摩(二合)句含」
「次無堪忍印。虛心合掌,二火相叉,二水二風各各立之,逆順三遍印天地,印身五處即頂散之,並四方結界。真言:
次は無堪忍印。虚心合掌し、二つの火指を交差させ、二つの水指と二つの風指をそれぞれ立てます。逆順に三度、天地を印し、体の五か所を印してから頂上で印を解き、四方を結界します。真言は:
「唵灑魯補哩尾履尾隷娑婆賀」
「總攝不動慈救真言:
総じて不動明王の慈しみを救う真言:
「曩莫三曼多縛日羅(二合)赦戰拏摩賀路灑儜娑破(二合)吒也吽怛羅(二合)吒悍𤚥(引)」
「次閼伽印。二手並仰,二大指入掌,以二頭指加二大指中節上,是尚佉印也。真言曰:
次に閼伽印を結びます。 両手を仰向けにし、両手の親指を掌の中に入れ、両手の人差し指で両親指の中節の上を押さえます。これが尚佉印です。 真言は次の通りです:
「曩莫三滿多沒馱喃誐誐那三摩三摩娑婆賀」
「次奉華座印。十輪開敷,以是當三所奉之。
次に華座印を奉じます。十の花弁が開き、これをもって三つの場所に捧げます。
「次塗香印真言:
次に、塗香印の真言を唱えます。
「曩莫三滿多沒馱喃尾輸馱獻度納婆(二合)縛娑縛(二合)賀」
「次華鬘印。以前塗香印,二空拄風側中節之下際,名華供養印。真言曰:
次に華鬘印を示します。まず前の塗香印を結び、両手の親指を人差し指の側面の中節の下に当てます。これを華供養印と呼びます。真言は次の通りです:
「曩莫三滿多沒馱喃(引)摩訶妹底哩夜毘庾(二合)娜蘖帝娑縛(二合)賀」
南無一切仏に帰命し、偉大なる智慧の光よ、我を守り給え、吉祥あれ。
「次燒香印。二羽三補吒,仰竪地水火,二風屈拄上節。真言曰:
次に香印を結びます。両手の親指と人差し指を立て、地・水・火の三指を表し、風指(薬指)を曲げて上節を支えます。真言は次の通りです。
「曩莫三滿多沒馱喃達麼馱怛縛弩蘖帝娑縛(二合)賀」
「次飲食印。二手虛心合掌,定慧入內。真言曰:
次に飲食の印。両手を虚心に合掌し、定と慧を内に収める。真言は次のように唱える。
「曩莫三滿多沒馱喃(引)(一)阿羅羅迦羅羅末隣捺娜彌沫隣捺禰摩訶沫歷娑婆(二合)賀」
次燈明印。
次に、燈明印。
「曩莫三滿多沒馱喃怛他蘖多羅脂娑叵(二合)羅儜縛婆娑曩誐誐𭫴娜里野娑縛(二合)賀(引)」
「次虛空普供養印真言:
次に、虚空普供養印真言:
「唵誐誐那三縛婆娑羅解」
「次不動尊讚:
次に不動明王を讃えて言います。
「稽首聖無動, 摩訶威怒王,
極大慈悲心, 愍念有情者。
本體盧舍那, 入遠成正覺,
法身遍法界, 智慧同虛空。
無聲而有聲, 聲聞塵剎土,
為護持佛法, 為利樂群生。
無邊相好海, 方便現此身,
變現嗔怒相, 故我稽首禮。
慈眼視眾生, 平等如一子,
方便垂一髮, 表示第一義,
故我稽首禮。 金剛智能斷,
難斷諸煩惱, 由此執利劍,
一斷無餘習, 故我稽首禮。
金剛定能縛, 難縛諸結業,
執持金羂索, 一縛無能動,
究竟能噉盡, 煩惱毒龍子,
現迦樓羅炎, 故我稽首禮。
焚燒業障海, 能護菩提心,
令行者堅住, 安住般石座,
故我稽首禮。 假使滿三界,
大力諸藥叉, 明王降伏盡,
故我稽首禮。 假使遍三界,
魔來嬈行者, 令入解脫道,
故我稽首禮。 一持祕密呪,
生生而加護, 令證大菩提,
故我稽首禮。 晝夜隨逐身,
明王不暫離, 必昇華藏界,
念念持明王, 世世不忘失,
故我稽首禮。 以此三業禮,
明王功德善, 平等施群生,
同證不動尊。 以我功德力,
明王加持力, 及以法界力,
同體不動地。 唯願遍法界,
金剛祕密呪, 加持我三密。
稽首明王力, 令我悉地滿。
稽首明王力, 令法久住世。
自界及他界, 無邊世界海,
滿中諸含識, 同證無上覺。」
聖なる不動尊よ、私は深く頭を垂れます。 大いなる威厳と怒りの王よ、 極まりなき慈悲の心で、 生きとし生けるものを憐れみお思いになる方。
その本体は毘盧遮那仏、 遠い昔に悟りを開かれ、 法身は法界に遍く満ち、 智慧は虚空と等しい。
声なくして声あり、 その声は塵のごとき国土に聞こえ、 仏法を護り、 多くの生き物の利益と安楽のため。
限りなき相好の海、 方便としてこの身を現し、 怒りの相に変現されるゆえ、 私は深く頭を垂れます。
慈しみの眼で衆生を見つめ、 平等に一人の子のごとく、 方便として一本の髪を垂れ、 第一義を示されるゆえ、 私は深く頭を垂れます。
金剛の智慧は断じ難き 諸々の煩悩を断ち切ることができ、 鋭利な剣を執り持ち、 一断して残る習気なく、 私は深く頭を垂れます。
金剛の禅定は縛り難き 諸々の悪業を縛ることができ、 金剛の羂索を執り持ち、 一縛して動かすものなく、 究極に喰い尽くすことができ、 煩悩という毒龍の子を、 迦楼羅の炎を現じて、 私は深く頭を垂れます。
業障の海を焼き払い、 菩提心を護ることができ、 行者を堅固に住させ、 安らかに金剛座に住まわせるゆえ、 私は深く頭を垂れます。
たとえ三界に満ちる 大力の夜叉たちであろうとも、 明王はことごとく降伏されるゆえ、 私は深く頭を垂れます。
たとえ三界に遍く 魔が行者を悩ますことがあろうとも、 解脱の道に入らしめられるゆえ、 私は深く頭を垂れます。
一度秘密の呪を唱え持てば、 生々世々に加護し、 大いなる菩提を証させられるゆえ、 私は深く頭を垂れます。
昼も夜も身に随い逐い、 明王は暫しも離れず、 必ず華蔵世界に昇らせ、 一瞬一瞬に明王を念じ持てば、 世々に忘れ失うことなく、 私は深く頭を垂れます。
この身口意の三業をもって礼拝し、 明王の功徳の善を、 平等に多くの生き物に施し、 共に不動尊を証せんことを。
わが功徳の力と、 明王の加持の力と、 および法界の力とをもって、 共に不動の地に至らんことを。
ただ願わくは、法界に遍く満ちる 金剛の秘密呪が、 わが三密を加持せんことを。
明王の力に頭を垂れ、 わが悉地(成就)を満たさせたまえ。
明王の力に頭を垂れ、 この法が久しく世に住まんことを。
自らの世界も他方の世界も、 無辺の世界の海も、 その中に満ちるすべての有情も、 共に無上の覚りを証せんことを。
「第一、俱哩迦羅龍王,不動明王變身,吞劍形也,立盤石上。真言曰:
第一、俱哩迦羅龍王は、不動明王の変身であり、剣を呑む形をしています。盤石の上に立っています。真言は次の通りです。
「唵俱哩迦耶迦羅惹銘伽扇曳娑婆賀」
「第二、健達藥叉王,是阿閦佛所變身(右手執獨古、左手押腰,眼忿怒,牙上下出,色青色。若人欲得求官位呼使者)。
第二、健達薬叉王は、阿閦仏の変化身である。右手に独古を持ち、左手は腰に当て、眼は忿怒の相をなし、牙は上下に突き出し、色は青色である。もし人が官位を求めたいならば、その使者を呼ぶ。
「第三、尸棄大梵王,是華開佛所變身(右手執鉾、左押腰,天王形,赤色也。若人欲得求富貴者呼使者)。
第三、尸棄大梵王は、華開仏の変化身なり。右手に鉾を執り、左手を腰に押し、天王の姿、赤色なり。もし人が富貴を求めんと欲する者は、この使者を呼ぶべし。
「第四、七天五母夜叉王,西方彌陀所變身(右左持鉢,恭敬形也,赤色形也。若人欲求得敬愛者呼使者)。
第四、七天五母夜叉王は、西方の阿弥陀如来の変化身であり(左右に鉢を持ち、恭敬の姿、赤色の形をしている。もし人が敬愛を得たいと願うならば、この使者を呼びなさい)。
「第五、初禪若干大梵王,北方不空所變身(右手持箭、左持弓,立石上,黑色形也,眼嗔怒形也。若人欲得求解脫智慧者呼使者)。
第五、初禅の大梵天王の一尊、北方不空成就如来の化身(右手に矢を持ち、左手に弓を持ち、岩の上に立ち、黒色の姿で、目は怒りの形相をしている。もし人が解脱の智慧を得ようと願うならば、この使者を呼び求める。)。
「第六、二三四禪大明王,是普賢菩薩所變身(右持杖、左押腰,赤色髮竪形。若人欲得求一切意願者是呼使者)。
第六、二三四禅の明王は、普賢菩薩の変化身である(右手に杖を持ち、左手は腰に当て、赤色の髪を逆立てた姿。もし人が一切の願いを成就させたいと願うならば、この使者を呼び出すべし)。
「第七、三十三天各各天王,是文殊所變身(右手用大刀、左手押腰,黑色形也。若人欲得大智者是呼使者)。
第七、三十三天の各々の天王は、文殊菩薩の変化身である(右手に大刀を持ち、左手を腰に当て、黒色の姿をしている。もし人が大いなる智慧を得たいと願うならば、この使者を呼びなさい)。
「第八、阿迦尼多天王,是觀音所變身(右手用錫杖、左押腰,赤色形也。若人欲得國王大臣愛念者是呼使者)。
第八、阿迦尼多天王は、観音の変化身である(右手に錫杖を持ち、左手は腰に当て、赤色の姿をしている。もし人が国王や大臣の愛顧を得たいと願うならば、この使者を呼び出す。)。
「第九、央俱將迦羅王,是彌勒所變身(右用索、左拳押腰,赤色形也。若人欲得王后采女者是呼使者)。
第九、央俱將迦羅王は、弥勒菩薩の化身なり(右手に索を持ち、左手は拳を腰に当て、赤色の姿なり。もし人が王の后や采女を得んと欲するならば、この使者を呼ぶべし)。
「第十、修羅金縛王,是𤘽樓孫佛所變身(黑色右執刀、左押腰。若人欲得大臣公卿愛者此呼使者)。
第十、修羅金縛王。これは迦樓孫仏の化身なり(黒色にして右手に刀を執り、左手は腰に当てる。もし人が大臣や公卿の寵愛を得んと欲するならば、この使者を呼び求めよ)。
「第十一、大鉢沙羅王,是𤘽那含牟尼佛所變身(右手用枚、左押腰,狗打形,赤色形也。若人欲得大福官者此呼使者)。
第十一、大鉢沙羅王は、𤘽那含牟尼仏の化身です。右手に杖を持ち、左手を腰に当て、犬を打つような姿で、赤い色をしています。もし人が大きな福や高い地位を得たいと願うなら、この使者を呼び出します。
「第十二、拔苦婆多羅王,是毘婆支佛所變身(右手用輪、左押腰,黑色形。若人欲得勝人者是呼使者)。
第十二、抜苦婆多羅王は、毘婆支仏の変化身なり(右手に輪を用い、左手は腰に当て、黒色の形なり。もし人が人に勝ち得んと欲する者は、この使者を呼べ)。
「第十三、多羅迦王,是發沙佛所變身(左右手合掌,赤色形。若人欲得遂一切所望世間者呼使者)。
第十三、多羅迦王は、発沙仏の変化身なり(左右の手を合わせて合掌し、赤色の姿なり。もし人が世において一切の望みを成就せんと欲するならば、この使者を呼べ)。
「第十四、牛頭密呪王,是迦葉佛所變身(右手持經、左手劍印押腰,赤色形。若人欲得示化人大靈驗者是呼使者)。
第十四、牛頭密呪王。これは迦葉仏の変化身である(右手に経典を持ち、左手は剣印で腰に当て、赤色の姿。もし人が人々を教化する大いなる霊験を得たいと願うならば、この使者を呼び出す)。
「第十五、光火炎摩王,是觀音所變身(左手押腰、右手持寶珠掌心居,黑色形。若人欲得驗利此呼使者)。
第十五、光火炎摩王は、観音の変化身なり(左手は腰に当て、右手に宝珠を持ち、手のひらは上に向け、黒色の姿なり。もし人が験力を得んと欲するならば、この使者を呼べ)。
「第十六、五天人散羅王,是毘沙門天所變身(右手持金剛杵、左手押腰,赤色形也。若人欲得一切人愛念者是呼使者)。
第十六、五天人散羅王は、毘沙門天の化身なり。右手に金剛杵を持ち、左手は腰に当て、赤色の姿をしている。もし人が一切の人々から愛され、慕われることを望むならば、この使者を呼びなさい。
「第十七、神母大小諸王是延命菩薩所變身(左持縛沙羅、右押腰,赤色形也。若人欲得勝論議者是呼使者)。
第十七、神母大小諸王は延命菩薩の変化身なり(左手に縛沙羅を持ち、右手は腰に当て、赤色の姿なり。もし人が優れた議論を得んと欲する者は、この使者を呼ぶべし)。
「第十八、搥鐘迦羅大王,是准提觀音所變身(右手持三古、左押腰,赤色形。若人欲得惡人降伏者此呼使者)。
第十八、搥鐘迦羅大王は、准提観音の化身です。右手に三古(武器)を持ち、左手は腰に当て、赤い姿をしています。もし悪人を打ち負かしたいと願う人がいれば、この使者を呼び出します。
「第十九、迦毘羅修法王,是千手觀音所變身(右持蓮華、左押腰,赤色形。若人欲得止熱病者此呼使者)。
第十九、迦毘羅修法王。これは千手観音の変化身であり、右手に蓮華を持ち、左手は腰に当て、赤い姿をしています。もし人が熱病を止めたいと願うなら、この使者を呼びなさい。
「第二十、藥叉諸天王,是妙見菩薩所變身(右持大刀、左押腰,赤色形也。若人欲得止疫病者是呼使者)。
第二十、薬叉の諸天王は、妙見菩薩の変化身なり(右手に大刀を持ち、左手は腰に当て、赤色の姿なり。もし人、疫病を止めんと欲する者は、この使者を呼ぶべし)。
「第二十一、三界授天大王,是藥王菩薩所變身(右持塔、左持大刀,赤色衣形也。若人欲得官位者此呼使者)。
第二十一、三界授天大王は、薬王菩薩の変化身です(右手に塔を、左手に大刀を持ち、赤い衣をまとった姿です。官位を得たい人はこの使者を呼びます)。
「第二十二、俱多遷化天王,是藥上菩薩所變身(右持弓、左持加利摩多,赤色形。若欲得成一切法師王者此呼使者)。
第二十二、俱多遷化天王。これは薬上菩薩の変化身です。右手に弓を持ち、左手に加利摩多を持ち、赤色の姿をしています。もし一切の法師王となりたいと願うなら、この使者を呼び出してください。
「第二十三、火羅諸天王,是地藏菩薩所變身(右持繩縛沙羅、左押腰,赤色形。若欲得諸富人者此呼使者)。
第二十三、火羅諸天王は、地蔵菩薩の変化身です(右手に縄を持って沙羅を縛り、左手は腰に当て、赤色の姿をしています。もし富める者を得たいと願うなら、この使者を呼び出します)。
「第二十四、皆攝持天王,是龍樹菩薩所變身(左右手金剛合掌印,忿怒形,二目嗔怒面赤狀黑色形。若欲得天狐結縛者此呼使者。已上左使者二十四人也,是發心修行義。右二十四人使者,烈呵立形也,是修果成佛義)。
第二十四、皆摂持天王。これは龍樹菩薩が姿を変えたものです(左右の手は金剛合掌の印を結び、忿怒の形相、二つの目は怒りに燃え、顔は赤く、体は黒い姿です。もし天狐を縛り付けたいならば、この使者を呼び出します。以上が左側の使者二十四名であり、これは発心して修行するという意味です。右側の二十四人の使者は、烈呵立の形であり、これは修行の結果、仏となるという意味です)。
「第一、金剛修羅王,是勢至菩薩所變身(左脇獨古用右左合掌印,黑色形也。欲得惡靈邪氣結縛者是呼使者)。
第一、金剛修羅王は、勢至菩薩が姿を変えたものです(左脇に独鈷、右左で合掌の印を結び、黒色の姿をしています。悪霊や邪気を縛りつけたい時は、この使者を呼びます)。
「第二、神王引攝大士王,是吉祥天女所變身(右持杖、左押腰,赤色形也。欲得除滅一切鬼神縛礙者是呼使者)。
第二に、神王を導き招き入れる大士王は、吉祥天女の化身であり(右手に杖を持ち、左手は腰に当て、赤色の姿である。あらゆる鬼神の束縛や障害を除き滅ぼそうとする者は、この使者を呼ぶ)。
「第三、二十八宿諸大王,是觀音所變身(右手持蓮華、左押腰,白色形也,或赤色形。欲得諸人決定業障除滅者是呼使者)。
第三、二十八宿の諸大王は、観音の変化身である。右手に蓮華を持ち、左手は腰に当て、白色の姿、あるいは赤色の姿をしている。諸人の決定業障を除滅させたい者は、この使者を呼ぶ。
「第四、一切諸法受用王,是尾盧舍那所變身(左持鈴、右執劍,黑色形也。欲得諸小兒短命央壽消除者是呼使者)。
第四、一切諸法受用王は、尾盧舎那の変化身なり(左手に鈴を、右手に剣を執り、黒色の形なり。諸小児の短命夭寿を消除せんと欲する者は、この使者を呼ぶ)。
「第五、迦葉大呪大士王,是無盡意菩薩所變身(右手用錫杖、左持袈裟形。欲得一切女人難產生者是呼使者)。
第五、迦葉大呪大士王は、無盡意菩薩の変化身である(右手に錫杖を持ち、左手に袈裟の形を持つ。全ての女性の難産を救うことを求める者は、この使者を呼ぶ)。
「第六、一一各有大士王。是妙音菩薩所變身(右手持杖逆、左押腰。赤色形也。欲得止一切惡魔鬼神顛狂者是呼使者)。
第六、一一のそれぞれに大士王あり。これ妙音菩薩の変身なり(右手に杖を逆に持ち、左手は腰に押し当てる。赤色の姿なり。一切の悪魔・鬼神・狂乱を止めんと欲する者は、この使者を呼ぶ)。
「第七、護持諸法王。是陀羅尼菩薩所變身(右持經卷、左手持念珠。赤色形也。若欲得一切人財物者是呼使者)。
第七、護持諸法王。これは陀羅尼菩薩が姿を変えたものです(右手には経巻を持ち、左手には数珠を持っています。赤い姿です。もしすべての人の財物を得たいと思うなら、この使者を呼びます)。
「第八、吽發多羅王。是虛空藏菩薩所變身(右執塔、左執大刀,赤色形也。欲得高貴婦人者是呼使者)。
第八、吽發多羅王。これは虚空蔵菩薩の変化身であり、右手に塔を持ち、左手に大刀を執る赤色の姿である。高貴な婦人を得ようとする者は、この使者を呼び求める。
「第九、蘇小拔苦王,是茶吉尼所變身(右執髑髏、左手拳押腰,眼瞋怒形也,黑色形。欲得返惡人呪咀者此呼使者)。
第九、蘇小抜苦王。これは荼吉尼の変化身である(右手には髑髏を持ち、左手は拳を腰に当て、目は怒りに燃える形相。全身は黒色。悪人の呪いを返し、災いを取り除きたい時は、この使者を呼び出す。)。
「第十、急急大小神天王,是奉教宮所變身(右左手金剛合掌印,赤色形也。欲得止一切災難者此呼使者)。
第十、急急大小神天王、これは教えを奉じる宮の変身なり(左右の手は金剛合掌の印を結び、赤色の姿なり。一切の災難を止め得んと欲する者は、この使者を呼ぶべし)。
「第十一、那縛迦羅王,是月天所變身(欲得勝軍陳者此呼使者)。
第十一、那縛迦羅王は、月天が姿を変えたものである(勝軍を得ようとする者は、この使者を呼ぶ)。
「第十二、悉底地大士王,是暗夜天所變身(右持獨古、左拳押腰,黑色也。欲得除病流行災者此呼使者)。
第十二、悉底地大士王は、暗夜天の変身なり。右手に独古を持ち、左手は腰に当て、その色は黒し。病を除き災いを流行らせんと欲する者は、この使者を呼ぶべし。
「第十三、神王眷屬大智王,是焰魔羅王所變身(右持杖、左押腰,赤色形也。欲得極樂往生上品上生者是呼使者)。
第十三、神王眷屬大智王、これは焰魔羅王の変化身なり(右手に杖を持ち、左手は腰に当て、赤き姿なり。極楽往生し上品上生を得んと欲する者は、この使者を呼ぶべし)。
「第十四、摩登迦羅天人王,是那羅延天所變身(右用三古杵、左持索,黑色形。欲得其七世父母者觀一切眾生地獄苦者是呼使者)。
第十四、摩登迦羅天人王。これは那羅延天の変化身であり(右手に三古杵を用い、左手に索を持ち、黒色の姿をしている。七世の父母を得ようとする者は、一切衆生の地獄の苦しみを観じるがよい。これが使者を呼ぶ方法である)。
「第十五、天地受用大明王,是廣目天所變身(右持劍、左押腰,赤色形。欲得夫婦愛相者是呼使者)。
第十五、天地受用大明王は、広目天の変化身である(右手に剣を持ち、左手は腰に当て、赤色の姿。夫婦の愛を望む者はこの使者を呼ぶ)。
「第十六、諸神皆得大王,是水天所變身(右執獨古、左押腰,黑色形。欲得止一切聾瘂病者是呼使者)。
第十六、諸神皆得大王。これは水天の変化身である(右手に独古を執り、左手は腰に押し当て、黒色の形なり。一切の聾瘂の病を止めんと欲する者は、この使者を呼ぶべし)。
「第十七、一一東西南北王,是辨才天所變身(右持念珠、左押腰,白色形。欲得令夫婦相離惡是呼使者)。
第十七、一一東西南北王。これは弁才天の変化身である(右手に念珠を持ち、左手は腰に当て、白色の姿。夫婦を離別させ、悪を退けるために使者を呼ぶ)。
「第十八、密呪受持王,是羅剎天所變身(右執如意珠、左押腰,赤色形。欲得一切物者是呼使者)。
第十八、密呪受持王。これは羅刹天の変化身なり(右手に如意珠を執り、左手は腰に押し当て、赤色の形なり。一切の物を得んと欲する者は、この使者を呼ぶ)。
「第十九、迦葉大王,是阿修羅王所變身(右執大刀、左手執索押腰,赤色,五須如天王。欲得除盜人難者是呼使者)。
第十九、迦葉大王。これは阿修羅王が変じた姿であり、右手に大刀を執り、左手に縄を執って腰に押し当て、赤色で、五本のひげを天王のようにたくわえている。盗難や人の災いを除き去りたい者は、この使者を呼ぶのである。
「第二十、沙羅仙大神王,是滿意天所變身(右手持鏡、左押腰,白色。欲得從者他所返者是呼使者)。
第二十、沙羅仙大神王は、満意天の化身であり(右手に鏡を持ち、左手は腰に置き、色は白。従者を得たい者や、他所から戻らせたい者は、この使者を呼ぶ)。
「第二十一、莫呪大呪大明王,是大日所變身(右手執劍、左持索,眼瞋怒,黑色形。欲得牛馬迯遊者是呼使者)。
第二十一、大呪大明王を呪うことなかれ。これは大日如来の変化身なり(右手に剣を執り、左手に縄を持つ。眼は怒りに満ち、姿は黒色。牛馬が逃げ去ることを欲する者は、この使者を呼ぶ)。
「第二十二、會集神王,是遍音天所變身(右持鉾、左押腰,赤色形。欲得田畠返者此呼使者)。
第二十二、神王を集める者。これは遍音天の変化した姿である(右手に矛を持ち、左手は腰に当て、赤色の姿。田畠を取り戻したい者はこの使者を呼ぶ)。
「第二十三、太一德王,是普世天所變身(右持三古杵、左作劍印押腰,黑色形。欲得師長愛敬者是呼使者)。
第二十三、太一徳王は、普世天の変化身である(右手に三古杵を持ち、左手は剣印を結んで腰に当て、黒色の姿をしている。師や長者から愛され敬われたい者は、この使者を呼び出す)。
「第二十四、一切諸神王,是火天所變身(右執五古鈴、左押腰,赤色衣,眼瞋怒形。欲得一切諸佛愛護者是呼使者必成就)。
第二十四、すべての神々の王は、火天の化身なり(右手に五古鈴を執り、左手は腰に置く。赤色の衣をまとい、眼は怒りの形相をなす。一切の諸仏の愛護を得んと欲する者は、この使者を呼べば必ず成就す)。
「四十八人使者,不動明王守護持法行者故,四十八入諸鬼王身也。一切如來一切菩薩天等,為佛法護持,以權身明王持念行者,成種種鬼王身,晝夜守護也。是諸佛菩薩天等方便身也。」爾時般若菩薩告一切諸鬼王言:「若三千大千世界魔王,不順一切如來勅命,能令降伏善道,我住三昧地而令無驚畏。云何不住?即其諸佛所於大曼陀羅中而得法利。」時勝軍大動明王白佛言:「此大自在天當甦云何?」佛言:「汝應甦之。」時不動明王即說法界生真言,爾時大自在者即復蘇息,生大歡喜白佛言:「甚希有也。我初各至已問佛:此夜叉是何等類?我所不解。佛言:『是諸佛之主。』我作是念:『諸佛一切之尊,云何以此而更為主耶?』是所不解,今乃知之。由此大王力故,令我現前得記作佛,當知是諸佛之尊也。所以然者,大自在天三千世界之主,即是眾生自心,所謂無始無明住地,於諸惑中而得自在,唯除大菩提心無能伏者。斷其命已,即是於寂然世界作證,所謂生者即是起佛慧門。是故真言行者,應一一思惟諸佛密語也。
四十八人の使者は、不動明王が法を行じる者を守護するゆえに、四十八の諸鬼王の身となったのです。一切如来や一切菩薩、天部などは、仏法を護持するために、権(かり)の身として明王となり、念誦する行者を守護し、種々の鬼王の身となって昼夜を問わず守護するのです。これは諸仏菩薩や天部などの方便の姿なのです。
その時、般若菩薩はすべての鬼王に告げられました。「もし三千大千世界の魔王が、一切如来の勅命に従わず、善道に降伏させることができるならば、私は三昧の境地に住して、何の恐れもないようにしましょう。どうして住まないことがありましょうか。すなわち、諸仏のいらっしゃる大曼陀羅の中で法の利益を得るのです。」
その時、勝軍大動明王が仏に申し上げました。「この大自在天をどのように甦らせればよいでしょうか。」仏は言われました。「汝、甦らせるがよい。」その時、不動明王は即座に法界生の真言を唱えられました。すると、大自在天は息を吹き返し、大いなる歓喜をもって仏に申し上げました。「まことに稀有なことです。私は初め、それぞれに至って仏に尋ねました。『この夜叉はどのような類いでしょうか。私には理解できません。』と。仏は言われました。『これは諸仏の主である。』と。私はこう思いました。『諸仏は一切の尊い方々であるのに、どうしてこれがさらに主となるのでしょうか。』と。それが理解できずにいましたが、今ようやく知ることができました。この大王の力によって、私は目の前で記別を受け、仏となることを得たのです。まさに知るべきです、これが諸仏の尊い方であることを。なぜならば、大自在天は三千世界の主であり、それはすなわち衆生の自心なのです。いわゆる無始無明住地であり、あらゆる煩悩の中で自在を得ているが、ただ大菩提心のみがこれを伏せることはできません。その命を断つことは、すなわち寂然たる世界において証を得ることです。いわゆる生ずるということは、すなわち仏の智慧の門を起こすことです。それゆえに、真言行者は、一つひとつ諸仏の密語を思惟すべきなのです。」
「若有凶宅恐懼之處,或有宮事逼惱者,當一心誦根本呪,亦可書呪釘於庭中,令火地中萬姓不敢動作。亦釘此慈救呪,亦清淨室中結界護身,繫心不動使者,專念不絕。多日誦彌往乃至十洛叉,每食出一分,恭敬供養不動使者。自想過去諸佛,為化度利益一切眾生,現一切鬼王大身忿怒王、一切魔王,為結縛一切鬼王現大身,皆令入佛果。似各各形狀,以形為彼降伏,故示現身心也。魔者是菩薩義,鬼者涅槃義,王者自在通義,是一切世間成就義。此法報應三身,以三如來。魔王身可云魔王。如來是大事因緣,善知識也。一切眾生所得三種懺悔也。貪嗔癡是一切眾生根本也,成佛是懺悔不盡。又成佛後為化度一切眾生,貪嗔癡是根本懺悔也。念念勤勤莫間,此最根本真言誦。誦速得成就驗功。我為持念行者無餘念,行住坐臥致念誦不散亂,心為法成就故。所誓願也。懈怠之弟子,不信之故,法不成就。依之發邪執,自知莫向人說。一洛叉,十萬遍也。勝軍明王法略要盡此。信受奉行(二種印口傳可聞者)。」
勝軍不動祕密儀軌一卷
勝軍不動秘密儀軌
西院宏教律師甫文抄九不動記云:勝軍儀軌中云:一持祕密呪,生生加護。求覓其本,然不得既久。今歲夏六月,幸得此軌小池坊寶庫,是信恕僧正傳持之本也。享和改元辛酉冬,共二三之同志挍點之,命工壽𭡄弘明王及四十八使者之威德。
西院の宏教律師甫文の抄録『九不動記』にこうある。 「勝軍儀軌の中に云う。一には秘密の呪をたもち、生々に加護を加う。その本を求め探すも、久しく得られず。今年の夏六月、幸いにもこの儀軌を小池坊の宝庫にて得たり。これは信恕僧正が伝え持たれた本である。享和改元の辛酉の冬、二、三の同志とともに校点を加え、工人に命じて弘明王及び四十八使者の威徳を刻ませた。」
豐山總持院快道誌
(墨筆)
此軌未得他本,不得對校,以故披閱使者法等數部,稍加筆削耳。重得校本,可決烏焉也。享和癸亥四月二十一日正午。
慈順
(朱筆)
文化元年甲子七月十日,以高山寺寫本遂一校畢。 慈順