降魔品第一
降魔品 第一
如是我聞:
私はこのように聞きました。
一時,婆伽婆住王舍城竹林迦蘭陀池邊,與大比丘眾一千人俱——皆阿羅漢,諸漏已盡,所作已辦,捨諸重檐,逮得己利,盡諸有結,皆得正知,心善解脫——及大菩薩一萬人俱,其名曰:持須彌頂童真、水智童真、地智童真、勝智童真、空智童真、明智童真、電智童真、文殊師利童真、降伏勝童真、水天童真、無垢童真、彌勒菩薩摩訶薩等而為上首,一切皆得羼提陀羅尼三摩提,具足一切法無障礙智,於一切眾生其心平等,過諸魔界,善入一切如來智境界,具足大慈大悲,善解方便智,皆隨佛住王舍大城竹林迦蘭陀池邊。
その時、婆伽婆は王舎城の竹林、迦蘭陀池のほとりに住んでおられました。大比丘衆一千人とともにあり、その者たちは皆、阿羅漢であり、諸漏はすでに尽き、なすべきことはすでになし終え、もろもろの重い担いを捨て、己の利を得、もろもろの有の結縛を尽くし、皆、正知を得て、心はよく解脱していました。また大菩薩一万人とともにあり、その名は、持須弥頂童真、水智童真、地智童真、勝智童真、空智童真、明智童真、電智童真、文殊師利童真、降伏勝童真、水天童真、無垢童真、弥勒菩薩摩訶薩などを上首とし、その者たちは皆、羼提陀羅尼三摩提を得て、すべての法に障礙なき智を具足し、すべての衆生に対してその心は平等であり、もろもろの魔界を超え、よくすべての如来の智の境界に入り、大慈大悲を具足し、よく方便の智を理解していました。皆、仏に従って王舎大城の竹林、迦蘭陀池のほとりに住んでいました。
爾時,王舍大城有二外道,聰慧明達過十八明處,與五百人俱,一名優波底沙、二名俱利多,而為上首,共相謂言,契同甘露。
そのとき、王舎大城に二人の外道がいました。聡明で賢く、十八明処に通じた者たちで、五百人の弟子を伴っていました。一人は優波底沙といい、もう一人は俱利多といい、この二人が上首となっていました。彼らは互いに語り合い、ともに甘露の法に契いました。
爾時,長老阿說示(唐言馬勝)於日初分著衣持鉢,入王舍大城乞食。時優波底沙見阿說示,生希有心:「我未曾見如此沙門威儀庠序,更無有人如彼比丘!我應往問,今此長老以誰為師?依誰出家?依誰求法?」
そのとき、長老アシュヴァジット(漢訳では馬勝)は、朝早くに衣を着けて鉢を持ち、王舎城の大きな町へ托鉢に入りました。ちょうどそのとき、優波底沙はアシュヴァジットを見て、珍しい思いを抱きました。「これほど整った威儀を備えた沙門を、私はこれまで見たことがありません。あの比丘に及ぶ人はほかに誰もいません。私は行って尋ねるべきです。この長老は誰を師としているのでしょうか。誰のもとで出家したのでしょうか。誰のもとで法を求めたのでしょうか。」
爾時,優波底沙即往彼所,到已問訊,種種語已,却住一面,白長老阿說示言:「以誰為師?依誰出家?依誰求法?」
そのとき、優波底沙はただちにそのもとへ赴き、到着して挨拶を交わし、さまざまに語り合った後、一方に退いて立ち、長老アッサジにこう申し上げました。「誰を師とされているのですか。誰に従って出家されたのですか。誰に従って法を求めているのですか。」
爾時,長老阿說示答優波底沙言:「有釋種子,勇猛精進能大苦行,於一切處最上自在。已度生死無邊大海,今以大悲欲度眾生,號名為佛,覺悟眾生乾竭苦海無與等者,我常歸依求無垢法。」
そのとき、長老アシュヴァジットはウパティッシュにこう答えました。「釈迦族の子がおられます。勇猛に精進し、大きな苦行をよく成し遂げ、あらゆる点で最もすぐれた自在を得ておられます。すでに生死の果てしない大海を渡り終え、今は大悲をもって衆生を済度しようとしておられ、仏と名づけられています。衆生を悟らせ、苦の海をからからに干上がらせるそのお方は、並ぶもののない方です。私はいつも帰依し、汚れなき法を求めています。」
優波底沙言:「彼師為汝說何等法?以何教示?」
優波底沙が言いました。「その師はあなたにどんな法を説いたのですか。どのように教え示したのですか。」
時,長老阿說示答優波底沙曰:「善哉!快哉!諦聽!諦聽!當為汝說。」便說偈言:
そのとき、長老アシュヴァジット(阿說示)は優波底沙(ウパティッサ)に答えました。「善いかな、素晴らしいかな。よく聞きなさい、よく聞きなさい。あなたのために説きましょう。」そうして偈を説きました。
「煩惱業因緣, 世間如是轉,
煩惱業不生, 導師如是說。
生老死定壞, 彼解脫無上,
如彼勇牛王, 如來自悟說。」
煩悩と業の因縁によって、世間はこのように巡っています。 煩悩と業が生じなければ、導師はそのように説かれます。 生・老・死は必ず壊れるものであり、それを解脱するのは無上です。 かの勇猛な牛王のように、如来は自ら悟って説かれました。
爾時,優波底沙聞此法已,遠塵離垢法眼清淨,得須陀洹果,而說偈言:
そのとき、優波底沙はこの法を聞いて、塵を遠く離れ、垢を離れて法眼が清らかになり、須陀洹果を得て、次の偈を唱えました。
「我證解實法, 永竭生死河,
所謂如來說, 難得甘露藏。
眾生得息苦, 智慧能斷除,
諸法種種修, 能作究竟道,
行此究竟道, 得無等涅槃。」
私は実法を証解し、永遠に生死の河を竭くします。 いわゆる如来の説かれた、得がたい甘露の蔵です。 衆生は苦しみを息めることができ、智慧によって断ち除くことができます。 諸法を種々に修めることによって、究竟の道をなすことができます。 この究竟の道を行ずるならば、無等の涅槃を得ることができます。
爾時,優波底沙說此偈已,白長老阿說示言:「長老!汝師如來、阿羅訶、三藐三佛陀,今在何處?」
そのとき、優波底沙はこの偈を説き終えると、長老阿説示に申し上げました。「長老よ、あなたの師である如来・阿羅訶・三藐三佛陀は、今どこにおられますか。」
阿說示答言:「長老!我師如來,今在王舍城竹林迦蘭陀池邊,與大比丘眾一千人俱,本是外道值佛出家。」
阿説示はお答えしました。「長老よ、わたしの師である如来は、今、王舎城の竹林、迦蘭陀池のほとりに、大比丘の僧一千人とともにおられます。もとは外道でしたが、仏に出会って出家されたのです。」
優波底沙言:「我今辭善知識及諸眷屬,詣佛出家。」
優波底沙は言いました。「私は今、善知識と多くの眷属に別れを告げて、仏のもとへ出家します。」
爾時,優波底沙禮阿說示足,右遶三匝辭已而去,往俱利多所。時俱利多見優波底沙從遠而來,見已白優波底沙言:「仁者!諸根清淨顏色怡悅,必得甘露。」
そのとき、優波底沙は阿説示の足を礼し、右に三匝してから別れを告げて去り、俱利多のもとへ向かいました。俱利多は優波底沙が遠くから来るのを見ると、優波底沙にこう言いました。「あなたは諸根が清浄で、顔色も和やかでうるわしい。きっと甘露を得られたのですね。」
優波底沙言:「如是,長老!我於今者得甘露法。諦聽!諦聽!今為汝說我所得法。」
優波底沙が言いました。「そのとおりです、長老。私は今、甘露の法を得ました。よく聞いてください、よく聞いてください。今、あなたのために私が得た法を説きましょう。」
爾時,俱利多即從坐起,偏袒右肩,右膝著地,合掌恭敬,便說偈請:
そのとき、俱利多は座から立ち上がり、右肩を露わにし、右膝を地につけ、合掌して恭敬の心をもって、偈を唱えて請いました。
「說此吉祥無憂道, 此道疾度三界海,
分別諸陰大怨賊, 乘此道已不還有。」
「この吉祥無憂の道を説きます。この道はすみやかに三界の海を渡ります。 もろもろの陰の大きな怨賊を見分けて、この道に乗ればもう戻ることはありません。」
爾時,優波底沙以所聞偈,即為說之:
そのとき、優波底沙は、聞いたその偈をそのまま説きました。
「煩惱業因緣, 世間如是轉,
煩惱業不生, 導師如是說。
生老死定壞, 彼解脫無上,
如彼勇牛王, 如來自悟說。」
煩悩と業の因縁によって、世間はこのように巡っています。 煩悩と業が生じなければ、導師はそのように説かれます。 生・老・死は必ず壊れるものであり、それを解脱するのは無上です。 かの勇猛な牛王のように、如来は自ら悟って説かれました。
爾時,俱利多聞此偈已,心大歡喜,重更讚歎請說前偈:
そのとき、俱利多はこの偈を聞いて、心に大いに喜び、改めて讃嘆して、先の偈を説くよう請いました。
「苦滅寂無垢, 牟尼說此法,
一切煩惱滅, 諸見無知斷。
穢惡有為空, 無我不可信,
重說無垢句, 我聞得涅槃。」
「苦滅は寂にして無垢なり、牟尼はこの法を説きたまいました。 一切の煩悩は滅し、諸々の見と無知は断たれます。 穢れた悪なる有為は空であり、無我は信じるに及ばず、 重ねて無垢の句を説きたまいました。私は聞いて涅槃を得ました。」
爾時,優波底沙即便重為說所聞偈:
そのとき、優波底沙はすぐに改めて、聞いた偈を説きました。
「煩惱業因緣, 世間如是轉,
煩惱業不生, 導師如是說。
生老死定壞, 彼解脫無上,
如彼勇牛王, 如來自悟說。」
煩悩と業の因縁によって、世間はこのように巡っています。 煩悩と業が生じなければ、導師はそのように説かれます。 生・老・死は必ず壊れるものであり、それを解脱するのは無上です。 かの勇猛な牛王のように、如来は自ら悟って説かれました。
爾時,俱利多聞此偈已,遠塵離垢法眼清淨,得須陀洹果,復以偈讚:
そのとき、俱利多はこの偈を聞き終えると、塵を遠く離れ垢を離れて法眼が清らかになり、須陀洹果を得て、さらに偈をもって讃えました。
「如此真行法, 度流之疾船,
此智息三苦, 能度於世間。
諸陰煩惱魔, 知此能調伏,
解脫離怨諍, 乾竭於苦海。」
このような真実の修行の法は、 流れを渡る速い舟であり、 この智慧は三つの苦しみを鎮め、 世間を渡ることができるものです。 もろもろの陰と煩悩の魔は、 これを知れば調伏でき、 解脱して怨みと争いを離れ、 苦の海を干上がらせるのです。
時俱利多言:「今佛世尊住在何所?」
時俱利多が言いました。「今、仏世尊はどこに住んでおられるのでしょうか。」
優波底沙言:「長老!我聞世尊在王舍大城竹林迦蘭陀池邊,與大比丘僧及菩薩眾俱,我今定當與汝俱往至世尊所,求佛出家。」
優波底沙が言いました。「長老よ、私は世尊が王舎大城の竹林迦蘭陀池のほとりで、大比丘僧と菩薩衆とともにいらっしゃると聞きました。私は今、必ずあなたと一緒に世尊のもとへ参り、仏のもとで出家を求めましょう。」
俱利多言:「如是,長老!可語弟子往世尊所相隨出家。」時,優波底沙與俱利多往自眾所。
倶利他は言いました。「そのとおりです、長老。弟子たちに、世尊のもとへ行き、従って出家するように伝えましょう。」そこで、優波底沙と倶利他は、自分たちの集団のもとへ向かいました。
爾時,惡魔於一念頃,聞中摩伽陀國有二外道,優波底沙共俱利多及諸眷屬,聰明具足名稱廣遠,是善丈夫,欲於沙門瞿曇法中出家學道。彼作是念:「呵!奇哉!若此二人於彼沙門瞿曇法中而出家者,空我境界,我應至彼二丈夫所,破其出家,令著惡見。」
そのとき、悪魔は一念のうちに、中摩伽陀国に二人の外道がいることを聞きました。優波底沙と俱利多、およびその眷属たちで、聡明で資質を備え、名声も広く遠くまで届いている善き丈夫たちです。彼らは沙門瞿曇の法の中で出家して道を学ぼうとしていました。悪魔はこう考えました。「ああ、不思議だ。もしこの二人がかの沙門瞿曇の法の中で出家するならば、わたしの境界は空になってしまう。わたしはあの二人の丈夫のもとへ行き、その出家を妨げて、悪い見解に執着させるべきだ。」
爾時,惡魔於一念頃,從自宮沒,作阿說示形相威儀,便於中道現二人前,作如是說:
そのとき、悪魔は一念のうちに自らの宮殿から消え去り、阿説示(アシュヴァジット)の姿形と威儀をとって、道の途中でこの二人の前に現れ、こう言いました。
「如我先所說, 試汝非決定,
如汝意所行, 宜速受欲樂。
一切黑白業, 因果悉皆無,
無生老病死, 亦無於後世。
福非福果業, 無有此因作,
釋子為利說, 汝莫信故去。」
「私が先に説いたように、あなたを試すのははっきりとしたことではありません。 あなたの心のままに行動し、速やかに欲の楽しみを受けるのがよい。 すべての黒業も白業も、その因果はまったくありません。 生も老も病も死もなく、後の世もありません。 福も福でない果も、そのような因によって作られることはありません。 釈迦の弟子たちは利益のために説いているのです。あなたはそれに信じ従ってはなりません。」
爾時,優波底沙、俱利多聞此說已,咸作是念:「此惡魔來,欲壞我等出家之事。」
その時、優波底沙と俱利多はこの話を聞いて、そろってこう思いました。「この悪魔が来て、私たちの出家のことを壊そうとしているのだ。」
爾時,優波底沙顧謂弟子,作如是言:「汝等今者當憶世間所有過患。」便說是偈:
そのとき、優波底沙(うはちしゃ)は弟子たちを振り返って、こう言いました。「あなたがたは今、世間のすべての過患を心に留めておくべきです。」そして、次の偈を述べました。
「眾生為老逼, 死苦之所纏,
應當斷彼二, 決定當出家。」
「衆生は老いに迫られ、 死の苦しみに纏われています。 彼の二つを断つべきです。 必ず出家しましょう。」
爾時,俱利多即以偈頌答魔王曰:
その時、俱利多はただちに偈頌をもって魔王に答えて言いました。
「知無上善智, 持法滅三苦,
汝說不斷貪, 我智終不動,
如是堅固心, 於餘人所無。
我等出苦輪, 正智所不惑,
勿假師子像, 而作野干聲。」
無上の善智を知り、法を持して三苦を滅し、 あなたは貪を断たないと言われますが、私の智慧は終に動きません。 このような堅固な心は、他の人にはないものです。 私たちは苦の輪を出で、正智によって惑わされません。 師子の像を借りて、野干の声を出すことはしないでください。
爾時,見諦諸天住虛空中讚二丈夫言:「善哉!善哉!汝二丈夫於一切眾生中最為上首,此道勝妙,於一切世間最為第一。此道息一切苦,此道入一切如來行處,此道一切諸佛所共稱揚,所謂依佛出家。」是時,惡魔心生憂苦便沒不現。
そのとき、真理を悟った諸天は虚空の中にとどまり、二人の修行者を讃えてこう言いました。「すばらしい、すばらしい。あなた方二人は、すべての生きとし生けるものの中で最もすぐれた者です。この道はすぐれて妙なるもので、すべての世間の中で最も第一です。この道はすべての苦しみを静め、この道はすべての如来の行いの境地に入り、この道はすべての仏がともに称賛されるところのものです。いわゆる、仏に従って出家するという道です。」このとき、悪魔は心に憂いと苦しみを生じ、そのまま姿を消しました。
爾時,優波底沙共俱利多,自觀己眾喚諸弟子,作如是言:「汝等應知,我等欲度老死苦海故依佛出家。汝等!若不樂佛出家,可於此住。」
そのとき、優波底沙は俱利多とともに、自らの弟子たちを呼び集めて、次のように言いました。「あなたがたちは知っておくべきです。私たちは老死の苦の海を渡るために、仏のもとで出家しようとしています。あなたがたちが、もし仏のもとでの出家を望まないなら、ここに留まってもよいのです。」
時,五百弟子咸作是言:「我等解法皆依師學,二師決定大處出家,二師所依出家處,我等隨師,亦依彼眾出家學道。」
そのとき、五百人の弟子たちは皆こう言いました。「私たちは法を理解するのに、すべて師に依って学んできました。二人の師が決心して大きなところで出家なさるのなら、二人の師が依って出家なさるその場所で、私たちも師に従い、その僧団に依って出家し、道を学びましょう。」
爾時,優波底沙及俱利多,與五百徒眾欲往佛所。是時,惡魔知彼事已,於王舍城外化作大坑,深百由旬,令彼二人不得往詣佛世尊所。是時如來以神通力,令彼二人不見大坑,直道而去。
その時、優波底沙と俱利多は、五百人の弟子たちとともに、仏のもとへ向かおうとしていました。悪魔はそのことを知ると、王舎城の外に大きな穴を現し、深さ百由旬にして、この二人が仏世尊のもとへ行くことができないようにしました。その時、如来は神通力によって、この二人が大きな穴を見ることがないようにし、まっすぐな道を通って行かせました。
是時,惡魔於二人前,復更化作高峻大山,高千由旬,峻嶮堅岨無有穿缺。於彼山中復更化作一千師子,威猛可畏。是時,世尊以神通力加彼二人,不見大山及彼師子,又無威猛可畏之聲,直道而往詣世尊所,及彼無量百千之眾,圍遶供養說法之處。
そのとき、悪魔は二人の前に、さらに高くそびえる大きな山を現しました。高さは千由旬もあり、険しく切り立って堅固で、どこにも穴や欠けはありませんでした。その山の中には、さらに千頭の獅子を現しました。威猛で恐ろしい姿でした。そのとき、世尊は神通力をもってその二人を導かれました。そのため、大きな山もその獅子も見えず、また威猛で恐ろしい声も聞こえませんでした。二人はまっすぐに道を進んで世尊のもとへ向かい、またその無量百千の大衆が取り囲み、供養し、説法が行われる場所へと向かいました。
爾時,世尊告諸比丘:「汝等見彼二善丈夫為眾上首,與諸徒眾來至我所。汝等見不?」
その時、世尊は比丘たちに告げました。「あなたがたちは、あの二人の善き丈夫が大衆の上首となり、多くの従者を連れて私のもとに来るのを見ましたか。あなたがたちは見ましたか。」
諸比丘答:「咸言我見。」
比丘たちは答えました。「私たちは皆、見ています」と。
佛言:「此善丈夫及諸徒眾我邊出家,一人於我一切聲聞弟子之中智慧第一,一人於我聲聞眾中神通第一。」
仏はおっしゃいました。「この善き夫とその弟子たちは、私のもとで出家しました。一人は私のすべての声聞の弟子たちの中で智慧第一であり、一人は私の声聞の集まりの中で神通第一です。」
是時,眾中有一比丘,以偈讚曰:
そのとき、大衆の中のある比丘が、偈をもって次のように讃えました。
「此二聰叡眷屬俱, 利益上者佛已記,
具智神通無所畏, 故我承迎二丈夫。」
この二人の聡明な眷属はそろって、 優れた者を利益する方々であり、仏はすでに記別を与えられました。 智慧と神通を具え、恐れるところがありません。 ですから私はこの二人の大丈夫を迎え入れます。
爾時,彼比丘說此偈已即從坐起,與無量比丘眾及出家優婆塞等迎彼二人,善言問訊。時彼二人往到佛所,到已頂禮佛足,右遶三匝,住立佛前,白佛言:「世尊!我等今者求佛出家,受比丘戒修行梵行。」
そのとき、かの比丘はこの偈を説き終えると、すぐに座から立ち上がり、無量の比丘たちや出家した優婆塞たちとともに、かの二人を迎えて、丁寧に言葉をかけて尋ねました。やがてかの二人は仏のもとへ参り、そこに着くと仏の足を頂礼し、右に三度巡り、仏の前に立って仏に申し上げました。「世尊、私たちは今、仏のもとで出家し、比丘戒を受けて梵行を修行したいと願っています。」
佛言:「善男子!汝二人名字何等?」
仏がおっしゃいました。「善男子よ、あなた方二人の名前は何といいますか。」
優波底沙言:「底沙是父,舍利是母,我今從母故名舍利弗;父母今者聽我出家。」
優波底沙が言いました。「底沙は父であり、舎利は母です。私は今、母に従うので舎利弗と名乗っています。父と母よ、どうか私の出家をお許しください。」
俱利多言:「憍陳如是父,目伽羅是母,我今從母故名目伽羅;父母今者聽我出家。」
倶利多是こう言いました。「憍陳如は父であり、目伽羅は母です。私は今、母に従うので目伽羅と名づけられています。父と母よ、どうか今、私が出家することをお許しください。」
佛言:「汝等二人及諸眷屬,可於我所出家具足修行梵行。」作是語已,時此二人成具足戒,五百徒眾未久之間,亦同二師得具足戒。
仏はおっしゃいました。「あなた方二人とその眷属たちは、私のもとで出家し、具足戒を受けて梵行を修行しなさい。」こう話されたとき、この二人は具足戒を得ました。五百人の弟子たちも、まもなく二人の師と同じように具足戒を得ました。
爾時,惡魔即自化身作摩醯首羅像,住立佛前,說如是偈:
そのとき、悪魔は自ら姿を変えて摩醯首羅の像となり、仏の前に立って、次のように偈を唱えました。
「世間利智能議論, 方便勝智到彼岸,
彼等悉來頂禮我, 我是彼等大導師。
瞿曇弟子并眷屬, 一切宜速歸依我,
我今為汝當廣說, 安隱寂滅善妙道。」
世間の利智はよく議論でき、 方便の勝智は彼岸に到ります。 彼らは皆、来たって私を礼拝します。 私は彼らの大いなる導師です。 瞿曇の弟子たちとその眷属は、 皆、速やかに私に帰依するのがよいのです。 私は今、あなたがために広く説きましょう。 安穏にして寂滅なる善き妙なる道を。
爾時,世尊以偈答曰:
そのとき、世尊は偈をもってお答えになりました。
「汝所說道趣惡道, 眾生行者沈苦海,
我道能令動不動, 世間苦海悉乾竭。
何故慠慢耐無恥, 復作矜高野干聲?
我今退破汝魔事, 不復於我能所作。」
「あなたが説く道は悪趣へと趣き、 衆生の行者を苦海に沈めます。 私の道は動・不動をも動かし、 世間の苦海をことごとく乾かし尽くします。 なぜ傲慢で無恥に耐え、 また矜高に野干の声をあげるのですか。 私は今あなたの魔事を退け破ります。 あなたはもはや私に対して何事もできません。」
爾時,惡魔變摩醯首羅像,即沒不現。復作梵天王像,住於佛前,說如是偈:
そのとき、悪魔は摩醯首羅の姿に変じましたが、すぐに姿を消しました。次に梵天王の姿となって、仏の前に立ち、次のように偈を説きました。
「煩惱業有芽, 智慧已斬除,
何故強於此, 勤苦利眾生?
於世無自在, 以無堪道器,
牟尼病已除, 宜速入涅槃。」
煩悩と業の芽は、 智慧によってすでに断ち切られています。 それなのに、なぜあなたはこのように無理をして、 苦労しながら衆生の利益のために働くのでしょうか。 世間において自在ではなく、 道の器となる力もない者たちです。 牟尼よ、病はすでに除かれました。 速やかに涅槃に入られるのがよいでしょう。
爾時,世尊即以偈頌報魔王曰:
そのとき、世尊は偈をもって魔王にお答えになりました。
「我觀諸眾生, 過彼恒沙量,
以大慈悲力, 教化令解脫。
上中下眾生, 令世間解脫,
眾生解脫已, 然後乃涅槃。
何故以惡惠, 詐諂請於我?」
私はすべての衆生を観察しますと、その数は恒河沙よりもはるかに多くあります。 大きな慈悲の力をもって、教化して解脱へと導きます。 上・中・下の衆生を、世間から解脱させます。 衆生が解脱したならば、その後に涅槃に入ります。 なぜ悪しき施しをもって、偽りへつらって私を招いたのでしょうか。
爾時,惡魔心生憂悔,於佛前沒,還自天宮,入憂惱室默然而坐。當於爾時,一剎那頃,魔諸眷屬互相推問:「今我大王以何因緣,入憂惱室無人知者?」
そのとき、悪魔は心に憂い悔いる気持ちを抱き、仏の前から姿を消して、自らの天宮へ戻り、憂悩の室に入って黙って座っていました。ちょうどそのとき、一刹那の間に、悪魔の眷属たちは互いに問いただし合いました。「われらの大王は、いったいどういうわけで、誰にも知られずに憂悩の室に入っておられるのだろうか。」
爾時,魔王五百妓女種種莊嚴,各持華鬘末香塗香,鼓天伎樂五百音聲,第一微妙歌舞戲樂,甚可愛樂集魔王前。
そのとき、魔王の五百人の妓女たちは、さまざまに飾り立てて、それぞれ花鬘・末香・塗香を持ち、五百の音声で天上の伎楽を奏で、この上なく微妙な歌舞や遊びの楽しみで、たいそう愛らしく楽しく、魔王の前に集まりました。
爾時,魔王悲啼握手抑止悲聲,如是作已,暫時默住。諸妓女等復更歌舞,作欣悅狀令魔歡喜。爾時,魔王舉手大叫,作如是語:「莫聲!莫聲!」乃至七返。諸伎女等默然而住。
そのとき、魔王は悲しみのあまり泣きながら相手の手を握り、悲しみの声を押し殺して、そうしてしばらくの間、黙ってとどまりました。妓女たちは再び歌い踊り、喜ばしい様子を見せて魔王を喜ばせようとしました。そのとき、魔王は手を挙げて大声を上げ、こう言いました。「声を出すな!声を出すな!」と、七度にわたって繰り返しました。伎女たちはみな黙ってとどまりました。
爾時,魔宮有一妓女名電可意聲,至魔王所曲躬合掌,說如是偈:
そのとき、魔宮に電可意声という名の一人の妓女がいて、魔王のもとへ行き、体をかがめて合掌し、次のような偈を唱えました。
「汝今居自在, 如見死相憂,
為是擔重擔, 今乃生怖懅。
誰有勝力怨, 而憂不歡悅?」
「あなたは今、自在に暮らしているのに、 まるで死の相を見たかのように憂えています。 それは重い荷を担っているためで、 今になって恐怖が生じたのです。 いったい誰に勝れた力の怨みがあるというので、 憂えて喜ばないのですか。」
是時,魔王說偈報曰:
そこで、魔王は偈を唱えて答えました。
「我有大怨調伏心, 善學幻術釋迦子,
我無方便能壞彼, 如是不久欲界空。」
「わたしには大きな怨みを調伏しようとする心があり、 幻術をよく学んだ釈迦の子です。 わたしには彼を打ち破る方便がありません。 このままでは、まもなく欲界は空しくなるでしょう。」
時,彼妓女便說偈曰:
そのとき、かの娼女は偈を唱えました。
「大家方便甚無量, 勤力壞彼必無餘;
三有長縛誰能解, 貪海沈沒誰能竭?」
偉大なる方便はきわめて無量であり、 勤めて力を尽くして彼を破れば、必ず余すところはありません。 三有の長き縛を、誰が解くことができるでしょうか。 貪りの海に沈む者を、誰が涸らすことができるでしょうか。
是時,魔王說偈報曰:
そこで、魔王は偈を唱えて答えました。
「檀那及苦行, 悲願為羂索,
持空無相弓, 器仗中第一,
能斷於生死, 諸有盡無餘。
以空為城林, 弟子居山谷,
精懃常修定, 盡諸有過患,
方便神通力, 慈悲為伴助。
優波俱利等, 牟尼悉降伏,
於彼三界中, 方便善調攝,
欲空我境界, 一切悉無餘。」
檀那と苦行、悲願を羂索とし、 空と無相の弓を持ち、これは武器の中で第一です。 生死を断ち切ることができ、もろもろの有を尽くして余すことがありません。 空を城や林とし、弟子たちは山谷に住み、 努め励んで常に定を修め、もろもろの有の過患を尽くし、 方便と神通の力、慈悲を伴助としています。 優波俱利なども、牟尼はことごとく降伏し、 かの三界の中で、方便をもってよく調え摂め、 我が境界を空にしようとし、一切をことごとく余すことがありません。
爾時,五百妓女於魔王邊,聞歎如來所有功德,即得菩薩三昧,名離一切相電光三昧。時彼五百妓女,即以天上諸莊嚴具,雨天香華及天伎樂,遙向佛所,供養世尊。於竹林上猶如雨下,以得如來神力加故,令彼天女遙見世尊及諸徒眾,見已歡喜,生清淨信第一愛敬。
そのとき、五百の妓女たちは魔王のもとで、如来のすべての功徳を讃える声を聞いて、ただちに菩薩の三昧を得ました。それは「離一切相電光三昧」と呼ばれるものです。そのとき、かの五百の妓女たちは、天上のさまざまな荘厳の具をもって、天の香華と天の伎楽を雨のように降らせ、はるか仏のもとに向かって世尊を供養しました。それは竹林の上にまるで雨が降るかのようでした。如来の神力の加護を得たため、かの天女たちははるか遠くに世尊と弟子たちの集いを拝見することができました。見て喜びを生じ、清らかな信とこの上ない敬愛の心を起こしました。
爾時,眾中諸比丘等,見竹林間有如是相,便生疑怪,白佛言:「世尊!我等昔來未曾見聞於竹林間如此瑞應香華等雨,將非舍利弗、目揵連等現此相耶!何因緣故覩斯希有?」
そのとき、集まった多くの比丘たちは、竹林の間にこのような姿を見て、疑いと不思議な思いを抱き、仏に申し上げました。「世尊、私たちはこれまで、竹林の間にこのような瑞祥の応えや、香や花などが降るのを見たことも聞いたこともありません。まさか舎利弗や目揵連などがこのような姿を現したのではないでしょうか。どのような因縁があって、この希有な光景を目にするのでしょうか。」
爾時,世尊告諸比丘:「非此二人現神通相,此乃天魔五百妓女,於彼魔宮雨此香華及莊嚴具,持供養我。不久來此,皆於我邊得受阿耨多羅三藐三菩提記。」
そのとき、世尊は比丘たちに告げられました。「この二人が神通の相を現したのではありません。これは天魔の五百人の妓女たちが、かの魔宮からこの香や花、そして荘厳の道具を雨のように降らせて、私に供養を捧げているのです。まもなくここに来て、皆が私のもとで阿耨多羅三藐三菩提の記別を受けるでしょう。」
時,彼魔王五百妓女遙聞佛記,轉復歡喜生清淨信,以淨信故即得不忘菩提心三昧。爾時,魔王五百妓女,著一肩衣,右膝著地,於魔宮中向佛方面,合掌恭敬,說如是偈:
そのとき、かの魔王の五百人の妓女たちは、遠くから仏の記別を聞いて、ますます歓喜し、清らかな信を生じました。清らかな信を得たために、その場で不忘菩提心三昧を得ました。そのとき、魔王の五百人の妓女たちは、片方の肩に衣を掛け、右の膝を地につけて、魔の宮殿の中から仏のみさかいへ向かい、合掌して恭敬し、次のような偈を説きました。
「一切世間盲無眼, 唯佛一人名見者,
能竭人天渴愛河, 如來自度及一切。
我等云何速成佛, 人天恭敬能說者,
女身可厭宜應捨, 速近牟尼聞正法,
如來最上神通智, 開示我等為勝導。
持彼無上覺支寶, 無垢妙說如淨燈,
勝力降魔無等倫, 覺悟我等當受記。」
一切世間は盲で眼がなく、 ただ仏お一人だけが真に見る者と呼ばれます。 人と天の渇愛の河を涸らすことができ、 如来は自らも一切も度されます。 私たちはどうすれば速やかに仏になれるのでしょうか。 人と天に敬われ、説くことのできるお方よ、 女の身は厭うべきものであり、捨てるのがふさわしいのです。 速やかに牟尼に近づき、正しい法を聞き、 如来の最上の神通と智慧が、 私たちのためにより勝れた導きとして示されます。 かの無上の覚支の宝を持し、 汚れのない妙なる説法は清らかな灯のようなものです。 勝れた力で魔を降し、並ぶものもないお方が、 私たちを覚悟させ、きっと授記を受けるでしょう。
爾時,魔宮五百妓女,從坐而起至魔王所,異口同音,而說是偈:
そのとき、魔宮の五百人の妓女たちは座から立ち上がり、魔王のもとへ参りまして、異口同音に次の偈を唱えました。
「如來勝德終不動, 云何於佛而生瞋?
此身眾苦之所逼, 更起醉慢而自塗,
應捨此瞋決定信, 拔彼生死憍慢泥,
眾生體性佛所知, 我等應往慈悲所。」
如来のすぐれた功徳は決して揺らぐことがありません。 どうして仏に対して怒りを起こすのでしょうか。 この身は多くの苦しみに迫られています。 それなのにさらに酔いと慢心を起こして自らを汚しています。 この怒りを捨て、揺るがない信を起こすべきです。 生死の憍慢の泥から抜け出させてくださいます。 衆生の本性を仏はよくご存じです。 私たちは慈悲のおられる所へ参りましょう。
爾時,魔王念彼諸女,生於如是增上惡意:「我今應以五種之縛,縛此五百諸妓女等,令住於此,不往佛邊。」此五百女以得如來念力加故,而彼魔王所不能制。
そのとき、魔王はそれら多くの女たちのことを思い、次のような強い悪意を起こしました。「私は今、五つの縛りでこの五百人の遊女たちを縛り、ここにとどめて、仏のもとへ行かせまい。」しかし、この五百人の女たちは如来の念力の加護を得ていたため、魔王は彼女たちを制することができませんでした。
爾時,五百諸妓女等,於彼魔宮欲往佛所。當發足時,魔甚瞋恨,便作是念:「我今自以境界之力制此諸女。」即起非時毘嵐大風遍滿虛空,欲令諸女迷失諸方,還住我宮不見瞿曇。以佛力故,尚不能起微細之風,乃至不能動一毛端,何況無量?
そのとき、五百人の踊り子たちが、その魔の宮殿から仏のもとへ行こうとしました。ちょうど出発しようとしたとき、魔は非常に怒り恨んで、こう思いました。「今こそ私は自分の境界の力でこの女たちを制してやろう。」そこで、時ならぬ毘嵐の大風を起こして虚空に満たし、女たちを方角を見失わせて、私の宮殿に戻らせ、瞿曇に会わせまいとしました。しかし仏の力によって、微細な風さえも起こすことができず、まして一根の毛の先さえ動かすことができないのに、どうして無量のものを動かせましょうか。
爾時,魔王轉增憂苦,心生悔惱悲泣高聲,喚其諸子及其眷屬。一切魔宮大聲遍滿,而說偈言:
そのとき、魔王はますます憂いに苦しみ、心に悔いと悩みを生じて、悲しみ泣きながら高声で、その多くの子らと眷属を呼び集めました。すべての魔宮に大きな声が満ちわたり、そこで偈を説きました。
「愛子眷屬悉皆集, 我心熱惱如毒樹,
壞我神通境界力, 美言諂幻釋師子。」
愛しい子や眷属がみな集まり、 私の心は毒樹のように熱く悩みます。 私の神通の境界の力を壊し、 美しい言葉で諂い、幻のように釈師子を欺きます。
爾時,魔王所有男女并諸眷屬,聞此音聲悉皆馳赴住魔王前。彼眷屬中有一魔子,名曰勝智,合掌住立說如是偈:
その時、魔王に属するすべての男女と諸々の眷属たちは、この音声を聞くと、皆すぐに駆け集まり、魔王の前に立ちました。その眷属の中に、勝智という名の一人の魔の子がいて、合掌して立ち、次のように偈を唱えました。
「此非劫燒非死相, 何故種種憂惱生?
此無大力能勝怨, 何故異智似愚癡?」
これは劫火に焼かれるのでもなく、死の相でもありません。 なぜさまざまな憂い悩みが生じるのでしょうか。 これは大きな力で怨敵に勝つのではありません。 なぜ異なる智慧が愚かであるかのように見えるのでしょうか。
爾時,魔王說偈報曰:
その時、魔王は偈を唱えて答えました。
「今此釋迦子, 坐彼林樹下,
現前有大怨, 云何汝說無?
彼諂有勝力, 令我心荒怖,
我軍並我子, 如炭入熾火。
名稱勝丈夫, 聰叡多才藝,
現集及未集, 今悉歸依彼。
我怨以詐親, 諂智力甚諍,
高名勝智人, 悉為法鉤牽。
今此諸侍女, 於我無悲心,
見捨昔所愛, 盡往沙門所。
指我以為證, 今日歸依彼,
一切三有地, 諂幻悉令空。
彼雖有大力, 我破令作灰,
我輩一切眾, 應當勤所作。」
今、この釈迦の弟子は、かの林の樹の下に坐っています。 目の前に大きな怨みの者がいるのに、どうしてあなたは「いない」と言うのでしょうか。 かの者はへつらい、強い力を持ち、私の心を荒み怖れさせます。 わが軍勢もわが子らも、炭が燃え盛る火に入るかのようです。 名高き勝れた丈夫は、聡明で叡智に富み、多くの才芸を備えています。 現に集まった者も、まだ集まらぬ者も、今は皆、かの者に帰依しています。 わが怨みの者は偽りの親しみをもって、へつらいの智と力はきわめて強く、 高い名を持ち勝れた智者であるため、すべてが法の鉤に引かれています。 今、これらの侍女たちは、私に悲しみの心もなく、 かつて愛した者を見捨てて、皆、沙門のもとへと向かっています。 私を証として指し示し、今日はかの者に帰依し、 一切の三有の地を、へつらいと幻ですべて空にしています。 かの者に大きな力があっても、私はそれを破って灰とします。 われら一切の衆は、努め励むべきです。
爾時,魔王一切諸子,並其內外所有眷屬,悉皆合掌,咸作是言:「我等一切悉皆嚴駕,以神通力而自加被,以此境界示彼令知,退彼釋子令碎如灰。若當勝者我等善好,若不勝者當歸依彼。我等往昔大軍圍遶詣菩提樹,面覩釋子獨一無侶,以神通力,我等軍眾盡皆退壞,況復今時無量徒眾悉皆成就?」
そのとき、魔王のすべての子たちは、その内外のすべての眷属とともに、みな合掌して、こう言いました。「私たちはすべて、すっかり支度を整え、神通力によって自らを護り、この境地を彼に示して知らせ、あの釈子を退けて灰のように砕いてしまいましょう。もし勝つことができれば、私たちにとって良いことです。もし勝てなければ、彼に帰依するでしょう。私たちは昔、大軍に囲まれて菩提樹へと向かいました。あの釈子がただ一人で連れもなく向き合うのを目の当たりにしましたが、神通力によって、私たちの軍勢はすっかり退き破られました。ましてや今、無量の徒衆がすべて成就しているのに、どうしてでしょうか。」
時,魔報言:「且去子輩!若能殺彼沙門瞿曇,當須迴還。若不能者,亦須還宮而自守護。」
その時、魔はこう告げました。「しばらく行け、お前たちよ。もしあの沙門瞿曇を殺すことができるなら、必ず戻ってくるがよい。もしできないなら、やはり宮殿に帰って自らを守るがよい。」
是時,魔王即以左右十二萬眾,復過此數乃至八萬四千由旬,所有兵眾悉皆遍滿,復以迅疾神通之力,現大黑風,吹大黑雲,雨大炬火,悉皆遍滿一切四洲。復以手擊須彌山王,一切四洲悉皆震動。復出最惡可畏之聲,須彌山王及諸山王,大地峯石一切驚動。由此震擊小大池河,及大海水悉皆波浪,一切諸龍、大龍、夜叉、大夜叉,見是事已,踊上虛空。此諸魔眾住須彌頂,復擲大石等由旬量,於中摩伽陀國如大暴雨振擊驚動。復雨刀杵撾鑱大石、月釤曲撩短槊鐵把虎牙大棒及大月箭,猶如雨下。
そのとき、魔王はただちに左右あわせて十二万の軍勢を従え、さらにこの数を超えて八万四千由旬に及ぶすべての兵たちをすっかり満たしました。また、すばやい神通の力によって、大きな黒い風を起こし、大きな黒い雲を吹き出し、大きな松明の火を雨のように降らせ、すべての四洲にすっかり満ちあふれさせました。さらに手で須弥山王を打ちたたき、すべての四洲をことごとく震動させました。また、最も悪しく恐ろしい声を発すると、須弥山王をはじめとするもろもろの山王、大地の峰や石がすべて驚き動きました。この震動と打撃によって、大小の池や川、および大海の水はことごとく波立ちました。すべてのもろもろの龍、大龍、夜叉、大夜叉たちは、この様子を見て、虚空へと躍り上がりました。このもろもろの魔の軍勢は須弥山の頂にとどまり、さらに由旬の大きさの大石を投げつけ、その中で摩伽陀国を大暴雨のように激しく打ち震動させました。さらに、刀、杵、撾、鑱、大石、月釤、曲撩、短槊、鉄把、虎牙、大棒、および大月箭を、まるで雨のように降らせました。
爾時,世尊即入碎魔軍場三昧,於虛空中所有兵仗及大炬火變成華雨,所謂優鉢羅華雨、波頭摩華雨、俱物頭華雨、分陀利華雨、曼陀羅華雨、摩訶曼陀羅華雨。雨中摩伽陀國,復變可畏驚動之聲,為彼種種微妙音聲,所謂佛聲、法聲、僧聲、波羅蜜聲、神通聲、阿毘跋致聲、受職聲、四魔退聲、往菩提道場聲,乃至取俱聲、不取俱聲。復變此四洲一切大地,所有藥草、叢林、山石、土地皆成七寶。是時,世界無有風塵一切恬靜。
そのとき、世尊はただちに碎魔軍場三昧に入られました。すると、虚空の中にあったすべての武器や大きな炬火は、花の雨に変わりました。すなわち、優鉢羅華の雨、波頭摩華の雨、俱物頭華の雨、分陀利華の雨、曼陀羅華の雨、摩訶曼陀羅華の雨です。その雨は摩伽陀国に降り注ぎました。また、恐ろしく驚かせる声は、さまざまな微妙な音声に変わりました。すなわち、仏の声、法の声、僧の声、波羅蜜の声、神通の声、阿毘跋致の声、受職の声、四魔が退く声、菩提道場へ向かう声、さらには取俱の声、不取俱の声です。また、この四洲のすべての大地にある薬草、叢林、山石、土地は、すべて七宝と成りました。そのとき、世界には風塵もなく、すべてが恬静でありました。
爾時,世尊現其身相,過於梵世自在而轉,從其身分一一諸相,乃至無見頂相,出大光明,遍照三千大千世界,普皆大明。是時,三千大千世界,所有天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、伽樓羅、緊那羅、摩睺羅伽、薜荔多、毘舍闍、鳩槃茶、人、非人等,地獄、畜生、閻羅世界,如是一切,悉見世尊及大光明。
その時、世尊はご自身の身体の姿を現されました。それは梵世自在よりもはるかに勝れて輝き、そのお体の一つ一つの相から、さらに無見頂相に至るまで、大きな光明を放たれました。その光は三千大千世界をあまねく照らし、すべてが大いに明るくなりました。この時、三千大千世界にいるすべての天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、伽楼羅、緊那羅、摩睺羅伽、薜茘多、毘舎闍、鳩槃荼、人、非人などの者たち、また地獄、畜生、閻羅の世界も、そのすべてが世尊と大きな光明をはっきりと見ることができました。
是時,天、龍、夜叉、人非人等,各與若干百千眷屬,地及虛空來詣佛所散華供養,到已,右繞讚嘆禮拜。是時,地獄及諸畜生閻羅世界,無量百千阿閦毘俱胝那由他等,各自憶念先種善根,稱南無佛陀,惡趣終已,生於天上。
そのとき、天、龍、夜叉、人非人などは、それぞれ幾百千もの眷属を伴い、地上や虚空から仏のもとへと参り、花を散らして供養しました。参ってからは、右に回って讃嘆し、礼拝しました。そのとき、地獄やもろもろの畜生、閻羅の世界の、無量百千阿閦毘倶胝那由他などの者たちも、それぞれが先に植えた善根を思い起こし、「南無仏陀」と唱えました。悪趣の命が終わると、天上に生まれました。
爾時,魔王所有諸子二萬二千并諸眷屬,見佛神變如是相已,各於佛所得希有信,共彼五百魔王妓女禮世尊足,合掌恭敬,以偈讚嘆:
そのとき、魔王のすべての子ら二万二千人とその眷属たちは、仏の神通変化がこのような姿であるのを見て、それぞれ仏のもとで希有の信を得て、あの五百の魔王の妓女たちとともに世尊の足を礼し、合掌して恭敬し、偈をもって讃嘆しました。
「妙色淨身映智海, 名稱高遠無不至,
金色光焰類須彌, 我等無怙歸依彼。
眾生失道無能見, 如來智日能明照,
養護眾生永不退, 親導我等歸依彼。
積集智藏富無量, 解脫心性如虛空,
慈悲潤澤隨機說, 一切成就歸依彼。
生死曠野難濟越, 如來解脫能開示,
巧說因果能顯了, 住第一慈歸依彼。
境界幻炎如水月, 無智翳闇著諸欲,
佛為醫王救世間, 是故我等歸依彼。
佛真法橋渡四流, 富有七財恒資給,
世尊正道示世間, 大悲我親應供養。
我等惡意向如來, 今悉懺悔第一覺,
所有諸惡能永斷, 願佛受我最上依。
我等悉捨魔部黨, 共發無上菩提心,
普請一切眾生類, 菩提大願至無餘。
佛能顯示我勝行, 如我所行波羅蜜,
如來所說無異說, 幾法具足到菩提。
所散佛華成華蓋, 示現無量諸剎土,
我今頂禮兩足尊, 願涅槃樂利世間。」
妙色浄身は智海に映え、名称は高く遠くして至らぬところがありません。 金色の光焰は須弥山のようであり、私たちは依り所のない者として彼に帰依します。 衆生は道を失い見ることができませんが、如来の智慧の日が明らかに照らします。 衆生を養い護りて永遠に退くことなく、自ら私たちを導かれます。帰依します。 智の蔵を積み集めて富は無量であり、解脱の心性は虚空のようです。 慈悲の潤いは機に随って説かれ、すべての成就は彼に帰依します。 生死の曠野は済い渡り難いのですが、如来の解脱はよく開き示します。 巧みに因果を説いて明らかに現し、第一の慈に住されます。帰依します。 境界は幻の炎のようで水の月のようであり、無智の翳りに覆われて諸の欲に執着します。 仏は医王となって世間を救われます。それゆえ私たちは彼に帰依します。 仏は真の法の橋となりて四流を渡り、七財に富みて常に施し与えます。 世尊は正しい道を世間に示されます。大悲なる私の親は応に供養されるべきです。 私たちは如来に対して悪意を抱きました。今すべてを忏悔し、第一の覚を願います。 すべての諸悪を永遠に断つことができますように。仏よ、私たちの最上の帰依をお受けください。 私たちはすべて魔の仲間を捨て、共に無上の菩提心を発します。 すべての衆生を普く招き、菩提の大願を余すところなく至らせます。 仏は私たちの勝れた行をよく示されます。私が行じた波羅蜜のように。 如来の説かれたことに異なる説はありません。いくつの法を具足すれば菩提に到るのでしょうか。 散じられた仏の華は華蓋となり、無量の諸の刹土を現します。 私は今、両足尊に頂礼します。涅槃の楽が世間を利しますように。
爾時,一切魔諸眷屬并魔妓女,各持天華遙散佛上,以佛世尊神力加故,變成華蓋,遍覆十方無量俱胝那由他百千恒河沙諸佛剎土。復過此數,變成華蓋,遍覆十方現在諸佛,於虛空中隣蓋佛頂。
そのとき、すべての魔とその眷属、および魔の妓女たちは、それぞれ天の華を持って遠くから仏の上に散らしました。仏である世尊の神力が加わったため、それらは華蓋となり、十方にある無量の俱胝那由他百千恒河沙の諸仏の刹土をすべて覆いました。さらにその数を超えるほどのものとなって華蓋に変じ、十方にいます現在の諸仏をすべて覆い、虚空の中で仏の頂に隣り合うように蓋をしました。
時,彼魔王五百妓女并諸眷屬,一切悉見十方無量阿僧祇諸佛剎土安隱說法,及見彼佛眷屬圍遶眾坐微妙威儀熾盛,及見華蓋住上虛空隣覆佛頂。彼彼諸佛皆同一色,形相示現悉皆同等,唯彼世尊在師子座,種種眷屬功德莊嚴所現不同。又聞諸佛音聲遍滿句義說法,此魔眷屬以佛世尊念所加故,得見如是神通變化。既見此已,第一愛樂生清淨信,禮佛足已,佛前聽法。
そのとき、かの魔王の五百人の妓女たちとすべての眷属は、十方の無量阿僧祇の諸仏の刹土で安隠に説法しておられるのをことごとく見ました。また、それらの仏が眷属に囲まれ、大衆が座して微妙な威儀が盛んであるのを見、また華蓋が上方の虚空にとどまり、隣り合って仏の頂を覆っているのを見ました。それぞれの諸仏はみな同じ一つの色で、形相の示現もすべて等しく、ただかの世尊だけが師子座にあって、種々の眷属や功徳の荘厳によって示されるものが異なっていました。また、諸仏の音声が遍く満ち、句義を説くのを聞きました。この魔王の眷属は、仏世尊の念によって加えられたために、このような神通変化を見ることができました。これを見終えると、第一の愛楽を生じて清らかな信を起こし、仏の足を礼してから、仏の前で説法を聞きました。
爾時,魔王所有諸子,并諸眷屬十二頻婆羅,退還魔宮,白魔王言:「我等廣作如此惡事,乃至不能毀壞瞿曇一毛孔等。」爾時,復有二萬諸魔歸依如來佛前聽法。
そのとき、魔王のすべての子らと、その眷属である十二頻婆羅は、魔宮に退いて魔王に申し上げました。「私たちはこれほど多くの悪事を働いてきましたが、瞿曇の一つの毛穴さえも壊すことができませんでした。」そのとき、また二万の魔たちが如来に帰依し、仏の前で法を聞きました。
爾時,魔王既失威德,復大瞋怒,發如是言:「我於今日無異覺意,乃至不能誅滅釋種所生之子令彼滅壞。云何此住?」便還魔宮,入憂惱室,默然而坐。
そのとき、魔王はすでに威徳を失い、さらに大いに怒って、こう言いました。「私は今日、特別な考えもなく、釈種から生まれた子を誅滅して滅ぼすことさえできなかった。どうしてここに留まっていられようか。」そして魔王の宮殿に戻り、憂い悩む部屋に入り、黙って座っていました。
寶星陀羅尼經卷第一
宝星陀羅尼経 巻第一