因果本起經卷第一
因果本起経 巻第一
如是我聞。
私はこのように聞きました。
一時佛在舍衛國祇樹給孤獨園尒時世尊與諸比丘住於竹林是諸比丘於晨朝時著衣持鉢入城乞食還歸所住食竟澡漱各攝衣鉢集在講堂𭜧欲共說過去因緣。
ある時、世尊はシャーラスティ国のギータ林、孤独園に滞在しておられました。その時、世尊は多くの修行者たちとともに竹林に住んでいました。修行者たちは早朝に衣を整え、鉢を持って町に托鉢に出かけました。戻って食事を終え、身を清めた後、それぞれ衣と鉢を片付け、講堂に集まりました。彼らは共に過去の因縁について話し合おうとしていたのです。
尒時世尊以淨天耳超於世間聞諸比丘語論之聲即從坐起到講堂上於眾中坐問諸比丘汝等共集欲說何法。
その時、世尊は清らかな天耳(超自然的な聴力)によって世間の声を超え、比丘たちの語り合う声をお聞きになりました。すると、直ちに座を立ち、講堂へと赴かれ、僧たちの中にお坐りになりました。そして比丘たちに問われました。「あなたたちは集まって、どのような法(教え)を語ろうとしていたのか。」
時諸比丘即白佛言世尊我等食竟澡漱已訖故共集此各欲聞說過去因緣。
その時、比丘たちは仏に申し上げました。「世尊よ、私たちは食事を終え、口をすすぎ終えましたので、ここに集まり、それぞれに過去の因縁についてのお話を伺いたいと望んでおります。」
是時世尊語諸比丘汝等樂聞過去因緣者諦聽諦聽善思念之今為汝說。
その時、世尊は比丘たちに告げられた。「あなたがたは、過去の因縁を聞きたいと思うならば、よくよく聞き、よくよく考え、心に留めなさい。今、あなたがたのために説こう。」
比丘白言唯然世尊願樂欲聞。
比丘が申し上げました。「はい、世尊よ。喜んでお聞きいたします。」
佛言比丘過去无數阿僧祇刧爾時有一仙人名曰善慧淨修梵行求一切種智為欲成就此大智故樂處生死周遍五道一身死壞復受一身生死无量譬盡天下草木斬以為籌數其故身不能窮盡夫極天地之始終謂之一刧而其經天地成壞者不可稱載也所以感傷羣生躭惑愛欲沉流苦海起慈悲心欲拔濟之又作此念今諸眾生沒於生死不能自出皆由貪欲瞋恚愚癡樂著色聲香味觸法故我當决定断其此病雖生諸趣不忘斯念於諸眾生怨親平等以布施攝貧窮持戒攝毀禁忍辱攝瞋恚精進攝懈怠禪定攝乱意智惠攝愚癡如是長夜增益眾生普為一切而作歸依於諸如来恭敬供養樂欲聽法亦為他說常以四事奉給眾僧於佛法眾尊重守護如是諸行不可稱數。
仏陀はこう語られた。
「比丘たちよ、遥か過去、数えきれないほどの劫の昔、一人の仙人がいた。その名を善慧といい、清らかな梵行を修め、一切智を求めて修行していた。この大いなる智慧を成就しようと願い、生と死の世界を喜んで巡り、五道にわたって生死を繰り返した。身体が壊れては次の身体を受け、生死は限りなく続く。たとえ世界中の草木を切り倒し、それを算木として使っても、その過去の身体の数を数え尽くすことはできない。天地の始まりと終わりを一劫とし、その天地が成り壊れる回数は、計り知ることも語ることもできない。
そんな中、人々が迷いや愛欲に溺れ、苦しみの海に沈んでいるのを哀れみ、大いなる慈悲の心を起こして、彼らを救おうと志した。そしてこう考えた。『今、あらゆる衆生は生死の世界に沈み、自ら抜け出ることができない。それはすべて、貪欲・怒り・無知によって、色・声・香・味・触・法に執着しているからだ。ならば私は、必ず彼らからこの病を取り除こう。』と。
こうして、善慧仙人はあらゆる生の世界に現れても、この思いを忘れなかった。全ての衆生に対して、怨みや親しみの区別なく平等に接した。すなわち、布施をもって貧しい者を導き、戒律を守って邪見を破る者を導き、忍辱をもって怒りを抑え、精進をもって怠け心を断ち、禅定をもって乱れた心を整え、智慧をもって無知を照らした。
このようにして、長い夜のような迷いの世界にあっても、善慧仙人は常に衆生の利益を増し、全ての者のよりどころとなった。また、諸々の如来を敬い、供養し、教えを喜んで聞き、それを人々にも説いた。常に四つの布施をもって僧団に仕え、仏・法・僧の三宝を敬い、守り、尊び続けた。そのような修行の数は、語り尽くせない
尒時有王名曰燈照城名提播婆底其國人民壽八萬嵗安隱豐樂極為熾盛所欲自在猶如諸天時彼國王正法治世不抂人民无有煞戮楚撻之苦視諸人民有如一子時燈照王始生太子端嚴无比威德具足有卅二相八十種好初生之日四方皆明日月珠火不復為用王見太子有如此瑞即𠮦諸臣共集議言太子初生有此奇特當為太子作何等名諸臣荅言應名太子以為普光又𠮦相師而占相之相師荅言今觀太子若在家者為轉輪王統四天下若出家者為天人尊成薩婆若王及夫人後宮婇女聞相師言於此太子深生愛念亦為天龍夜叉乹闥婆阿脩羅迦樓羅緊那羅摩睺羅伽人非人等供養恭敬尊重讚歎。
昔、ある国に、燈照という名の王がいました。都の名は提播婆底といいました。その国の人々の寿命は八万歳で、国は安らかで豊かであり、たいへん栄えていました。人々は欲しいままに暮らし、まるで天人のようでした。
その王は正しい道によって国を治め、人々を虐げず、殺害や拷問などの苦しみもなく、民をすべて我が子のごとく慈しみました。
ある時、燈照王のもとに太子が生まれました。その姿はこの上なく美しく、威厳と徳を備え、三十二相と八十種好を具えていました。太子が生まれたその日、四方が明るく照らされ、太陽や月、星、火も、その光の役には立ちませんでした。
王は太子にこのような瑞相があるのを見て、大臣たちを集めて相談しました。 「太子が生まれてすぐに、このような奇瑞がある。太子にどのような名をつけるべきか。」 大臣たちは答えました。 「太子の名を『普光』とおつけになるのがよろしいでしょう。」
さらに、王は相師を呼んで、太子の相を見させました。相師は答えました。 「この太子を拝見しますに、もし家にとどまれば、転輪聖王となって、天下を統べるでしょう。もし出家すれば、天人の尊となり、薩婆若(一切智)を成就されるでありましょう。」
王と王妃、そして後宮の女官たちは、相師のことばを聞いて、この太子に深い愛情を抱きました。また、天竜や夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽、人や人ならざる者たちも皆、太子を供養し、恭敬し、尊重し、讚嘆しました。
是時太子在於後宮為夫人婇女說種種法太子年至二萬九千嵗捨轉輪王位啟其父母求欲出家既不聽已乃至三請猶尚不許太子慈悲志存拯濟忍其小違以成大順即便往詣山林樹下剃除鬚髮披著法服勤脩苦行滿六千嵗成阿耨多羅三藐三菩提為諸天人及八部眾轉於法輪此輪微妙一切世間天人魔梵所不能轉以三乘法教化眾生所可利益不可稱數尒時父王及其夫人後宮綵女聞太子普光成阿耨多羅三藐三菩提心大歡喜踊躍无量尒時羣臣國內人民婆羅門等聞太子道成心各念言太子普光捨轉輪王位剃除鬚髮被著法服出家脩道得成正覺我等今者亦當出家作此念已𭜧皆往詣普光佛所尒時普光如来即觀其心隨其因緣而為說法大臣婆羅門等有四千人成阿羅漢國中人民及餘四方諸来會眾有八萬人亦得无著法忍。
時に太子は後宮においでになり、夫人や采女たちに様々な教えを説かれました。
太子が二万九千歳になられた時、転輪王の位を捨て、父母に出家の許可を求められましたが、聞き入れられませんでした。三度にわたり願われても、なお許されませんでした。しかし太子は慈悲深く、人々を救おうという志をお持ちだったので、小さな違背を忍んで大きな所業を成し遂げるため、そのまま山林の木の下へと向かわれました。そこで剃髪し、袈裟を身にまとって、六年間にわたり苦行に励まれました。そして満六千歳の時、無上正等覚(阿耨多羅三藐三菩提)を成就されました。
仏陀は天や人々、そして八部の衆のために法の輪を転じられました。この輪は極めて微妙であり、一切の世間の人々や天、悪魔、梵天といえども、これを転じることはできません。三乗の教えによって衆生を教化し、その利益は計り知れないものでした。
その時、父王と夫人、そして後宮の采女たちは、太子普光が無上正等覚を成就されたと聞き、心から大いに喜び、限りなく歓喜しました。
また、その時、群臣や国内の人民、バラモンたちは、太子が悟りを開かれたと聞き、それぞれこう思いました。「太子普光は転輪王の位を捨て、剃髪して袈裟をまとい、出家して修行し、ついに正覚を成就された。我々も今こそ出家しよう。」
こう思って、皆、普光仏のもとへと参集しました。
時に普光如来は、彼らの心を観察し、その因縁に応じて法を説かれました。大臣やバラモンたちの中から四千人が阿羅漢の果を得ました。また、国中の人民や、他の地方から来会した人々の中から、八万人が無著法忍を獲得しました。
尒時普光如来與八萬四千諸阿羅漢往詣國界遊行教化父王聞已心大歡喜即𠡠國中平治道路香水灑地懸諸繒綵寶幢幡盖散眾名華如是莊嚴滿十二踰闍那又復擊鼓唱令國內諸有華者不得私賣𭜧輸與王并𠡠人民不得先我供養於佛即遣大臣并作伎樂燒香散華而往請彼普光如来。
その時、普光如来は八万四千の阿羅漢たちと共に国中を巡り歩き、人々を教化されました。 これを聞いた父王はたいそう喜び、ただちに国中に命じて道路を整え平らにし、香りのよい水をまき、様々な色の絹や宝の幡・幢・蓋を飾り立て、多くの名高い花を散らしました。 このような飾りつけは、十二由旬もの間、美しく整えられました。 また、太鼓を打ち鳴らして国中に触れ回らせました。「この国にある花は、誰も勝手に売ってはならない。すべて王のもとに届けよ。そして民は、私よりも先に仏に供養してはならない」と命じたのです。 そして、大臣を遣わし、音楽を奏で、香を焚き、花を散らしながら、普光如来をお迎えするために伺わせました。
尒時善惠仙人在於山中得五奇特夢一者夢臥大海二者夢枕湏彌三者夢海中一切眾生入其身內四者夢手執日五者夢手執月得此夢已即大驚悟心自念言我今此夢非為小緣當以問誰宜入城內問諸智者作是念已披鹿皮衣手執水瓶及杖傘盖行入城邑路過外道所止住處有五百人而為上首善惠念言我今當以所夢問之并得觀其所修之業即共諸人講論道義破其異見時五百人即便受屈求為弟子於善惠所深生恭敬各以銀錢一枚而以上之復有五百外道既見善惠辯才聡明亦生隨喜時諸外道自共議言今普光如来出興于世善惠仙人聞斯語已舉體毛竪心大歡喜踊躍無量便與外道分別而去外道問言師何所趣荅言我今欲往普光佛所欲施供養外道白言師若去者願樂隨從善惠荅言我今有緣宜應先行尒時善惠賫五百銀錢隨路而去諸外道眾悲戀懊𢙉辭別而歸。
その時、善慧仙人は山中で五つの不思議な夢を見ました。第一に、大海に寝ている夢。第二に、須弥山を枕にしている夢。第三に、海中のすべての生きとし生けるものが自分の体内に入る夢。第四に、手に太陽を掲げる夢。第五に、手に月を掲げる夢です。これらの夢を見た後、善慧は大いに驚いて目を覚まし、心の中で考えました。「この夢は決して小さな因縁によるものではない。誰に尋ねるべきだろうか。町に入って賢者たちに問うのがよい」と。
そう考えて、彼は鹿の皮の衣をまとい、水瓶と杖、そして傘を手にして町へと入りました。途中、五百人の弟子を従える外道の修行者たちの拠点に立ち寄りました。善慧は思いました。「この夢について尋ねると共に、彼らの修行する道も見極めてみよう。」そして彼らと一緒に教えの道理を論じ合い、誤った見解を打ち破りました。すると五百人の外道たちはたちまち屈服し、弟子となることを願い出て、善慧に対して深い尊敬の念を抱き、それぞれ一枚の銀貨を捧げました。さらに別の五百人の外道も、善慧の優れた弁才と聡明さを見て、共に喜びの心を起こしました。
その時、外道たちは互いに話し合いました。「今、普光如来がこの世に現れておられるという。」善慧仙人はこの言葉を聞いて、身の毛がよだち、心は大きな喜びに満ちあふれ、この上ない歓喜の念に包まれました。そこで彼は外道たちと別れて立ち去ろうとしました。外道たちが尋ねました。「先生はどちらへ行かれるのですか。」答えて言いました。「私は今、普光仏のもとへ参り、供養を捧げようと思うのです。」外道たちが申しました。「先生がおいでになるなら、私たちも喜んでお供いたします。」善慧は答えました。「私には大切な因縁があり、先に行くべきです。」
その時、善慧は五百枚の銀貨を携えて道を進みました。外道たちは悲しみと未練に打ちひしがれながら、涙をぬぐって別れを告げ、それぞれ帰って行きました。
善慧至前見王家人平治道路香水灑地列幢幡盖種種莊嚴即便問言何因緣故而作是事王人荅言世有佛興名曰普光今燈照王請来入城所以怱怱莊嚴道路善惠即復問彼路人汝知何處有諸名華荅言道士燈照大王擊鼓唱令國內名花皆不得賣𭜧以輸王善惠聞已心大懊𢙉意猶不息苦訪華所。
善慧(スメーダ)が供養のための花を熱心に探し求めると、その前に王家の人々が道を整え、香の水をまき、旗や天蓋を掲げて様々に荘厳しているのを見ました。そこで、「どのような因縁でこのようなことをするのですか」と尋ねると、王の使いの者は答えました。「世に仏が出現され、その名を普光(ディーパンカラ)といいます。今、燈照王(ディーパンカラ王)がその仏を都にお迎えしようとしております。ですから、あわただしく道を荘厳しているのです。」
善慧はさらに道行く人に尋ねました。「あなたは何か名高い花があるのをご存じですか。」すると、「道士よ、燈照王が太鼓を打ち鳴らして国内に布告しました。『名高い花は一切売ってはならず、すべて王に納めよ』と」と答えました。この知らせを聞いた善慧は心に深い悲しみと悩みを
俄尒即遇王家青衣密持七莖青蓮華過畏王制令藏著瓶中善惠至誠感其蓮華踊出瓶外善惠遙見即追呼曰大姉且止此花賣不青衣聞已心大驚愕而自念言藏花甚密此何男子乃見我華求索買耶頋看其瓶果見華出生奇特想荅言男子此青蓮華當送宮內欲以上佛不可得也善惠又言請以五百銀錢買五莖耳青衣意疑復自念言此華所直不過數錢而今男子乃以銀錢五百求買五莖即問之言欲持此華用作何等善惠荅曰今有如来出興於世燈照大王請来入城故湏此華欲以供養大姉當知諸佛如来難可值遇如優曇鉢華時時乃現青衣又問供養如来為求何等善慧答曰為欲成就一切種智度脫無量苦眾生故尒時青衣得聞此語心自念言今此男子顏容端政披鹿皮衣纔𦿔形體乃尒至誠不惜錢寶即語之曰我今當以此華相與願我生生常為君妻善惠荅言我脩梵行求無為道不得相許生死之緣青衣即言若當不從我此願者花不可得善惠又曰汝若决定不與我華當從汝願我好布施不逆人意若使有来從我乞求頭目髓腦及與妻子汝莫生閡壞吾施心青衣荅言善哉善哉敬從来命今我女弱不能得前請寄二華以獻於佛使我生生不失此願好醜不離必置心中令佛知之。
そのとき、俄かに王家の青衣(召使いの女)が密かに七茎の青蓮華を持って通りかかりました。畏王の制令を恐れて、それを瓶の中に隠していました。善惠の至誠が感応して、その蓮華は瓶の外に踊り出ました。善惠は遥かにそれを見て、すぐに追いかけて呼びかけました。「大姉(お姉さん)、しばらくお待ちください。この花は売り物ではありませんか。」青衣はこれを聞いて、心に大いに驚き、自ら念じました。「花を隠すことは甚だ密かであった。この何者かが、よくも私の花を見て買い求めようとするのか。」振り返ってその瓶を見ると、果たして花が外に出ているのを見て、奇特な思いを生じました。そして答えました。「男子よ、この青蓮華は宮中に送り、仏に捧げようと思っているのです。手に入れることはできません。」善惠はまた言いました。「どうか五百の銀銭で五茎を買わせてください。」青衣は心に疑いを生じ、また自ら念じました。「この花の値は数銭に過ぎないのに、この男子は銀銭五百で五茎を求めようとしている。」そこで問いました。「この花を持って何に使おうというのですか。」善惠は答えました。「今、如来が世に出現され、燈照大王がお招きして城に入られようとしています。それゆえこの花が必要なのです。供養したいのです。大姉よ、知ってください。諸仏如来は値遇し難く、優曇鉢華のように時々しか現れないのです。」青衣はまた問いました。「如来を供養して何を求めるのですか。」善慧は答えました。「一切種智を成就し、無量の苦の衆生を度脱するためです。」そのとき、青衣はこの言葉を聞いて、心に自ら念じました。「この男子は顔容端正で、鹿皮の衣をまとい、わずかに体を覆っているだけなのに、かくも至誠で銭宝を惜しまない。」すぐに彼に言いました。「私は今この花をあなたに差し上げましょう。願わくは、私が生生において常にあなたの妻となれますように。」善惠は答えました。「私は梵行を修め、無為の道を求めています。生死の縁を許すことはできません。」青衣はすぐに言いました。「もし私のこの願いを拒むなら、花は得られません。」善惠はまた言いました。「あなたがどうしても私に花を与えないなら、あなたの願いを拒みましょう。私は布施を好み、人の意に逆らいません。もし来たる者が私に頭目髄脳や妻子を乞い求めるなら、あなたは妨げの心を生じて私の施心を壊してはなりません。」青衣は答えました。「善いかな、善いかな。敬って命に従います。今、私女弱にして前に進むことができません。どうか二華を託して仏に献じさせてください。私が生生においてこの願いを失わず、美醜にかかわらず離れず、必ず心に置き、仏に知らせたまわんことを。」
尒時燈照王與其諸子及眾官属婆羅門等持好香華種種供具而出奉迎普光如来舉國人民亦皆隨從是時善惠五百弟子共相謂言今日國王及諸臣民𭜧皆往詣普光佛所大師今者亦當已去我等宜應往彼礼敬作此言已即共俱行在道未遠逢見善惠師徒相遇喜恱无量即共同詣普光佛所見燈照王已到佛前㝡得在初供養礼拜如是次第至諸大臣亦各礼敬并散名華華𭜧墮地。
その時、燈照王は王子や家臣、バラモンたちと共に、美しい香りや花、様々な供物を携えて、普光如来を出迎えに参りました。国中の人々も皆、後に従いました。
ちょうどその時、善恵は五百人の弟子たちと共にありました。彼らは互いに言い合いました。「今日、国王は家臣や民と共に皆、普光仏のもとへ参られる。師もまた、もう出発されたことだろう。我々もまた、そこへ参り、敬礼すべきである。」
こう言い終えると、彼らは共に道を進みました。道中まだ遠くない場所で、彼らは善恵と出会いました。師弟は互いに会い、限りない喜びを覚えました。そして共に普光仏のもとへ向かいました。彼らは燈照王が既に仏の前に到り、最も先頭で供養と礼拝をしているのを目の当たりにしました。こうして順に、大臣たちも皆、それぞれ礼拝し、美しい花をまきましたが、花は皆、地面に落ちてしまいました。
于時善惠與五百弟子見諸人眾供養畢已諦觀如来相好之容又欲濟拔諸眾生故亦欲滿足一切種智故即散五華皆住空中化成華臺後散二莖亦止空中夾佛兩邊尒時國王及其眷属一切臣民天龍夜叉乹闥婆阿脩羅迦樓羅緊那羅摩睺羅伽人非人等見此奇特歎未曾有於是普光如来以無閡智讚善惠言善哉善哉善男子汝以是行過無量阿僧祇刧當得成佛号釋迦牟𡰱如来應正遍知明行足善逝世間觧無上士調御丈夫天人師佛世尊當於善惠受記之時無量天龍夜叉乹闥婆阿脩羅迦樓羅緊那羅摩睺羅伽人非人等散眾妙華滿虛空中而發誓言善惠將来成佛道時我等皆願為其眷属是時普光如来即記之曰汝等皆當得生其國。
その時、善惠は五百人の弟子と共に、大勢の人々が供養を終えたのを見届けた。そして、如来の相好の美しさをじっと観察し、さらにすべての衆生を救済し、一切種智を満たしたいと願った。そこで五本の花を散らすと、それらは空中にとどまって華台となった。続いて二本の茎を散らすと、それもまた空中にとどまり、仏の両側に位置した。
その時、国王とその眷属、すべての臣民、天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽、人々や人ならざる者たちは、この驚くべき光景を見て、かつてないことだと讚嘆した。
そこで普光如来は、障りのない智慧をもって善惠を讚えて言った。 「善きかな、善きかな。善男子よ、汝はこの行によって、無量の阿僧祇劫を経て、必ず仏となるであろう。その名は釈迦牟尼如来・応供・正遍知・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏世尊と号するであろう。」
善惠がこの授記を受けた時、無数の天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽、人々や人ならざる者たちが、様々な妙なる花を虚空いっぱいに散らして、こう誓った。 「善惠が将来、仏道を成就される時、私たちは皆、その眷属となりたいと願います。」
その時、普光如来は彼らに授記して言った。 「汝らは皆、必ずその国に生まれるであろう。」
尒時如来既授記已猶見善惠作仙人髻披鹿皮衣如来欲令捨此服儀即便化地以為淤泥善惠見佛應從此行而地濁濕心自念言云何乃令千輻輪足蹈此而過即脫皮衣以用布地不足掩泥仍又觧髮亦以䨱之如来即便踐之而度因記之曰汝後得佛當於五濁𢙣世度諸天人不以為難必如我也于時善惠聞斯記已歡喜踊躍喜不自勝即時便觧一切法空得无生忍身昇虛空去地七多羅樹以偈讚佛。
その時、如来はすでに授記を終えられたにもかかわらず、善恵(善慧)が仙人の髻(もとどり)を結い、鹿の皮衣をまとっているのをご覧になりました。如来はこの服装を捨てさせようとお考えになり、地面を泥に変えられました。善恵はこれを見て、如来がこの道をお通りになるのだと思い、地面がぬかるんでいるところを見て、心の中で考えました。「どうして千輻輪の御足で、このぬかるみを通らせることができようか」と。そしてすぐに皮衣を脱いで地面に敷きましたが、泥を覆いきれませんでした。そこでさらに髪を解いて、それも覆いました。すると如来はその上を踏んでお渡りになり、こうお授記されました。「あなたはのちに仏となり、五濁悪世において天や人々を救済すること、これを難としないであろう。必ずや我の如くなるであろう。」その時、善恵はこの授記を聞いて、歓喜のあまり、喜びを抑えることができませんでした。即座に一切の法は空であると悟り、無生法忍(むしょうほうにん)を得て、身は虚空に浮かび上がり、地上七多羅樹(たからじゅ)の高さに達し、偈頌(げじゅ)
今見世間導 令我開惠眼 為說清淨法 去離一切著 今遇天人尊 令我得無生 願將来獲果 亦如兩足尊
今、世を導く尊い方よ。 どうか私に智慧の眼を開かせてください。 清らかな教えを説き、あらゆる執着から離れさせてください。 今、天人の尊い方にお会いできました。 どうか私に無生の悟りを得させてください。 いつか必ず悟りの果てを得て、 尊い方のように成りたいと願います。
是時善惠說此偈已從空中下到於佛前五軆投地而白佛言唯願世尊哀愍我故聽我出家尒時普光如来荅言善哉善来比丘鬚髮自落袈裟著身即成沙門。
その時、善慧(ぜんね)はこの偈(げ)を唱え終えると、空中から降りて仏の前に進みました。そして五体投地(ごたいとうち)してお願いしました。「どうか世尊よ、私を哀れみ、出家することをお許しください。」
すると普光如来(ふこうにょらい)はお答えになりました。「善いかな、善いかな。よきかな、来たれ、比丘よ。」するとたちまち、善慧の髪は自然に落ち、袈裟(けさ)が身にまとわり、たちどころに沙門(しゃもん)となりました。
尒時有二貧窮老人各與親属一百人俱覩佛相好威德嚴顯自傷貧乏無以供養是時如来愍其心至即化前地生諸草穢令二貧人見地不淨發歡喜心而便灑掃普光如来而記之曰汝過無量阿僧祇刧釋迦牟𡰱佛出興於世汝等尒時當作第一聲聞弟子尒時普光如来記貧人已與八萬四千比丘及燈照王并婆羅門諸臣民等前後圍繞入提播婆底城。
その時、二人の貧しい老人がいました。彼らはそれぞれ百人の親族を連れて、仏の相好の荘厳さと威徳の輝きを見て、自らの貧しさのために何の供養もできないことを悲しみました。その時、如来はその真心に憐れみをかけ、前にあった地に雑草や汚れを生じさせました。これにより、二人の貧しい人が地の清らかでないのを見て喜びの心を起こし、すぐに掃除をしました。普光如来は彼らに告げて言いました。「あなたがたは無量阿僧祇劫を過ぎて、釈迦牟尼仏が世に現れる時、あなたがたはその時に第一の声聞の弟子となるであろう。」その時、普光如来が貧しい人々にこの記別を授け終えると、八万四千の比丘たちと燈照王、そしてバラモンや臣民たちと共に、前後に囲まれて提播婆底城に入られました。
時燈照王與其眷属以四事供養普光如来并及八萬四千比丘經四萬嵗王即捨位以付其子與其眷属及夫人眷属各八萬四千人同於佛法出家脩道得陁羅𡰱諸法三昧善惠比丘亦隨普光如来受王供養滿四萬嵗於諸法中得深三昧教化眾生不可稱數尒時善惠比丘白普光如来言世尊我於昔日在深山中得五奇特夢一者夢臥大海二者夢枕湏彌三者夢海中一切眾生入我身內四者夢手執日五者夢手執月唯願世尊為我觧說此夢之相尒時普光如来荅言善哉汝若欲知此夢義者當為汝說夢臥大海者汝身即時在於生死大海之中夢枕湏彌者出於生死得般涅槃相夢大海中一切眾生入身內者當於生死大海為諸眾生作歸依處夢手執日者智惠光明普照法界夢手執月者以方便智入於生死以清涼法化導眾生令離𢙉熱此夢因緣是汝將来成佛之相善惠聞已歡喜踊躍不能自勝礼佛而退。
時燈照王は、その眷属と共に、四種の供養をもって普光如来および八万四千の比丘を四万歳の間、支えました。王はその後、位をその子に譲り、自身の眷属および妃の眷属、それぞれ八万四千の人々と共に、仏法に従って出家して修行し、陀羅尼や諸法の三昧を得ました。
善惠比丘もまた、普光如来に従い、王の供養を四万歳の間受け、諸法の中において深い三昧を得て、数えきれないほどの衆生を教化しました。
その時、善惠比丘は普光如来に申し上げました。「世尊よ、私は昔、深い山の中で五つの奇妙な夢を見ました。一つ目は大海に臥す夢、二つ目は須弥山を枕とする夢、三つ目は海の中のすべての衆生が我が身の内に入る夢、四つ目は手に太陽を握る夢、五つ目は手に月を握る夢です。どうか世尊よ、この夢の意味を私にお説きください。」
その時、普光如来は答えられました。「善きかな。汝がこの夢の意味を知りたいならば、今から説こう。大海に臥す夢は、汝の身がまさに生死の大海の中にあることを示す。須弥山を枕とする夢は、生死を出て涅槃の相を得ることである。大海の中のすべての衆生が身内に入る夢は、生死の大海において、諸々の衆生の帰依処となることを意味する。手に太陽を握る夢は、智慧の光明が法界を遍く照らすことである。手に月を握る夢は、方便の智をもって生死に入り、清涼の法で衆生を導き、熱悩から離れさせることである。この夢の因縁は、汝がやがて成仏する相である。」
善恵はこれを聞いて、歓喜踊躍して自らを抑えきれず、仏に礼をして退きました。
尒時普光如来復經少時入般涅槃善惠比丘護持正法滿二萬嵗以三乘法教化眾生所利益者不可稱計尒時善惠比丘於彼命終即便上生為四天王以三乘法化諸天眾盡彼天壽下生人間為轉輪聖王王四天下七寶具足一金輪寶二白象寶三紺馬寶四神珠寶五玉女寶六主藏臣寶七主兵臣寶千子具足皆𭜧勇健能服𭜨𰚇以正法治無諸憂𢙉常以十善化諸人民於此壽終生忉利天為彼天主壽終下生為轉輪聖王終其壽命乃至生於第七梵天上為天王下為聖主各卅六反其間或為仙人或為外道六師或為婆羅門或為小王如是變現不可稱數。
その時、普光如来はしばらくして般涅槃(完全な涅槃)に入られました。善惠比丘は正法を護り、二万年もの間、三乗の教え(声聞・縁覚・菩薩の三つの道)によって人々を教化し、その利益を受けた者は計り知れませんでした。
やがて善惠比丘はその寿命を終え、四天王天に生まれました。そこでも三乗の教えで天の衆生を教化し、天の寿命を全うすると、人間界に降り立ち、転輪聖王(理想的な世界君主)となりました。この王は四大陸を統治し、七つの宝を備えていました。すなわち、金輪宝、白象宝、紺馬宝、神珠宝、玉女宝、主蔵臣宝、主兵臣宝です。また、千人の王子たちは皆、勇敢で強く、敵を打ち負かし、正しい法によって国を治めたため、憂いや悩みはなく、常に十善(十種類の善行)によって民を導きました。
この王は寿命を終えると、忉利天(三十三天)に生まれ、その天主となりました。さらに寿命を終えて再び人間界で転輪聖王となり、その生涯を終えると、第七の梵天に至るまで天上の王となり、また下っては地上の君主となりました。これをそれぞれ三十六回繰り返しました。その間、ある時は仙人となり、ある時は外道の六師となり、ある時はバラモンとなり、ある時は小国の王となるなど、その変化は数えきれないほどでした。
尒時善惠菩薩功行滿足位登十地在一生補處近一切種智生兜率天名聖善白為諸天主說於一生補處之行亦於十方國土現種種身為諸眾生隨應說法期運將至當下作佛即觀五事一者觀諸眾生熟與未熟二者觀時至與未至三者觀諸國土何國處中四者觀諸種族何族貴盛五者觀過去因緣誰㝡真正應為父母觀五事已即自思惟今諸眾生皆是我初發心以来所成熟者堪能受於清淨妙法於此三千大千世界此閻浮提迦毗羅斾兜國㝡為處中諸族種姓釋迦第一甘蔗苗𧜟聖王之後觀白淨王過去因緣夫妻真正堪為父母又觀摩耶夫人壽命脩短懷抱太子滿足十月太子便生生七日已其母命終。
その時、善慧菩薩は功徳行を満たし、位は十地に登り、一生補処の位にあって、一切種智に近づき、兜率天に生まれて「聖善白」と名付けられた。諸々の天主のために一生補処の行を説き、また十方の国土に様々な身を示し、衆生の機に応じて説法していた。その時期が来て、まさに下って仏となろうとしたので、五つの事を観察した。第一に、諸々の衆生が成熟しているか否かを観じた。第二に、その時が至ったか否かを観じた。第三に、諸々の国土のうち、どの国が適切かを観じた。第四に、諸々の種族のうち、どの種族が貴く盛んかを観じた。第五に、過去の因縁を観じて、誰が最も真実で父母となるにふさわしいかを観じた。五つの事を観じ終えて、自ら思惟した。「現在の諸々の衆生は、皆、私が最初に発心してから今日までに成熟させてきた者たちであり、清らかな素晴らしい法を受けるに堪えられる。この三千大千世界の中、この閻浮提の迦毘羅衛国が最も適切である。諸々の種族の中では、釈迦族が第一であり、甘蔗の苗裔、聖王の後裔である。白浄王の過去の因縁を見れば、夫妻とも真正で父母となるにふさわしい。」さらに摩耶夫人の寿命の長短を観じ、太子を胎内に宿して満十月、太子が生まれて七日後にその母は命を終えると観じた。
既作此觀又自思惟我今若便即下生者不能廣利諸天人眾仍於天宮現五種相令諸天子皆𭜧覺知菩薩期運應下作佛一者菩薩眼現瞬動二者頭上花萎三者衣受塵垢四者腋下汗出五者不樂本坐時諸天眾忽見菩薩有此異相心大驚怖身諸毛孔血流如雨自相謂言菩薩不久捨於我等。
この観想を終えた菩薩は、また自らこう考えました。「もし今すぐにこのまま降誕すれば、多くの天人の人々を広く利することができないだろう。」そこで、天宮において五つの相(しるし)を現わし、天子たちに菩薩の時節が到来し、仏となるために降誕すべきことを悟らせました。 一つ目は、菩薩の眼が瞬くこと。 二つ目は、頭上の花が萎れること。 三つ目は、衣に塵垢がつくこと。 四つ目は、腋の下から汗が出ること。 五つ目は、もとの座に安んじていないことです。 このとき、天の衆たちは菩薩にこの異変があるのを忽然と見て、心に大きな驚きと恐怖を覚え、身体の諸々の毛孔からは血が雨のように流れ出ました。そして互いに言い合いました。「菩薩はまもなく、私たちをお捨てになるのだ。」
尒時菩薩又現五瑞一者放大光明普照三千大千世界二者大地十八相動湏彌海水諸天宮殿皆𭜧震搖三者諸魔宮宅隱𦿔不現四者日月星辰無復光明五者天人八部身皆震動不能自禁是時兜率諸天見菩薩身已有五相又復覩外五希有事皆𭜧聚集到菩薩所頭面礼足白言尊者我等今日見此諸相舉身震動不能自安唯願為我釋此因緣菩薩即便荅諸天言善男子當知諸行皆𭜧無常我今不久捨此天宮生閻浮提。
その時、菩薩はさらに五つの瑞相を示された。第一に、大いなる光明を放ち、三千大千世界をあまねく照らした。第二に、大地に十八の相の動きがあり、須弥山や海水、諸天の宮殿がすべて震え動いた。第三に、諸々の魔の住む宮殿は隠れて姿を現さなくなった。第四に、太陽・月・星々はその光を失った。第五に、天・人・八部の衆は身に震えを覚え、自らを抑えることができなかった。
この時、兜率天の諸天は、菩薩の身にすでに五つの相があるのを見、さらに外にも五つの希有の出来事を目にして、みな集まって菩薩のところに至り、頭を菩薩の足に接して礼をし、こう申し上げた。「尊者よ、私たちは今日、これらの諸相を見て、全身震え上がり、どうしても心が落ち着きません。どうか、どうかこの因縁を私たちに説き明かしてください。」
そこで菩薩は、即座に諸天に答えられた。「善き男子たちよ、知るがよい。あらゆる営みはすべて無常である。私は今まさに、遠からずしてこの天宮を捨て、閻浮提に生まれようとしているのだ。」
于時諸天聞此
その時、天の神々はこれを聞いた。