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仏説観仏三昧海経 (佛說觀佛三昧海經)

「佛說觀佛三昧海經」について

東晋 · 底本の訳者:佛陀跋陀羅

7.2 万字 · 約 239 分

仏陀が説かれた『観仏三昧海経』は、東晋時代の高僧、仏陀跋陀羅によって漢訳され、漢伝仏教における重要な経典の一つです。この経典は大乗仏教の禅観(瞑想観察)に分類され、主に仏陀の三十二相と八十種好を観想する修行法を詳説し、仏陀の姿を観想することで三昧の境地に至ることを強調しています。経文には観仏の具体的な手順と功徳利益が詳細に記され、念仏や懺悔などの修行法と結びつけながら、修行者に体系的な禅観の指導を提供しています。この経典は中国仏教史上において深遠な影響を与え、特に浄土宗や天台宗などにおける観想念仏の実践に重要な意義を持ち、大乗禅観修行の権威ある典籍の一つと見なされています。


佛說觀佛三昧海經卷第一

仏説観仏三昧海経 巻第一

東晉天竺三藏佛陀跋陀羅譯

東晉天竺三蔵仏陀跋陀羅訳

六譬品第一

第一品 六つの譬え

如是我聞:

このように私は聞きました。

一時佛住迦毘羅城尼拘樓陀精舍。爾時釋摩男請佛及僧供養三月,七月十五日僧自恣竟。

その時、仏陀はカピラ城のニグローダ精舎に滞在しておられた。そんな折、釈迦族のマハーナーマが仏陀と僧団を三か月間、供養したいと申し出た。そして七月十五日、僧団の自恣(戒を反省し合う儀式)が終わった後であった。

爾時父王閱頭檀,佛姨母憍曇彌,來詣僧房供養眾僧,禮拜既畢奉上楊枝及澡豆已,呼阿難言:「吾今欲往至世尊所,為可爾不?」

その時、父王である閲頭檀(えっとだん)と、仏の養母である憍曇彌(きょうどんみ)は、僧侶の住まいを訪れて、僧侶たちに供養をしました。礼拝を終えた後、楊枝(ようじ)と洗顔用の豆粉(とうふん)を捧げてから、阿難(あなん)に呼びかけました。「私は今、世尊のおられる所へ参りたいと思うのですが、それでもよろしいでしょうか?」と。

爾時阿難即宣此言以白世尊,佛告阿難:「父王來者必問妙法,汝行遍告諸比丘僧,及往林中命摩訶迦葉、舍利弗、目揵連、迦栴延、阿那律等,彌勒菩薩、跋陀婆羅十六賢士,一時來會。」如此音聲遍至諸方。

その時、阿難はこの言葉を世尊に伝えた。仏は阿難に告げられた:「父王が来られたならば、必ず妙法を問われるであろう。あなたは行って、すべての比丘たちに伝えなさい。また林に赴いて、摩訶迦葉、舎利弗、目揵連、迦栴延、阿那律らを呼びなさい。弥勒菩薩や跋陀婆羅をはじめとする十六人の賢者たちも、一堂に会するように。」この声は至る所に響き渡った。

爾時天主、夜叉主、乾闥婆主、阿修羅主、迦樓羅主、緊那羅主、摩睺羅伽主、龍主等及諸眷屬,皆悉已集。

その時、天の主、夜叉の主、乾闥婆の主、阿修羅の主、迦楼羅の主、緊那羅の主、摩睺羅伽の主、龍の主など、そしてその数多くの眷属たちも、皆すでに集まっていた。

爾時父王及釋摩男、三億諸釋入佛精舍。當入之時見佛精舍如頗梨山,為佛作禮,未舉頭頃,即見佛前有大蓮華眾寶所成,於蓮華上有大光臺。父王見已心生歡喜歎未曾有,遶佛三匝却坐一面。

その時、父王と釈摩男、そして三億の釈迦族の人々が仏陀の精舎に入りました。入る際、彼らは仏陀の精舎が玻璃の山のように輝いているのを見ました。仏陀に礼拝をしようと頭を下げた瞬間、仏陀の前に大きな蓮の花が現れ、それは多くの宝でできていました。その蓮の花の上には大きな光り輝く台がありました。父王はこれを見て、心に喜びが湧き、かつてないことに感動しました。仏陀の周りを三度回ってから、静かに片隅に座りました。

是時父王即從坐起白佛言:「世尊!佛是吾子,吾是佛父,今我在世見佛色身,但見其外不覩其內。悉達在宮,相師皆見三十二相,今者成佛光明益顯,過踰昔日百千萬倍。佛涅槃後後世眾生,當云何觀佛身色相,如佛光明常行尺度?惟願天尊!今當為我及後眾生分別解說。」

その時、父王はすぐに座を立って仏に申し上げた。「世尊よ、仏はわが子であり、わが身は仏の父でございます。今、私は在世の中で仏の色身を拝見しておりますが、ただその外見を見るだけで、その内側を拝見することはできません。悉達が宮中にいた時、相師たちは皆、三十二相を見ておりました。今や成仏されて光明はますます輝き、昔の百千万倍にも勝っております。仏が涅槃に入られた後の後世の衆生は、どのようにして仏の身の色相を観じ、仏の光明が常に歩む尺度のように保つべきなのでしょうか。どうか天尊よ、今、私と後の衆生のために、それぞれを分かち、解き明かしてくださいますように。」

爾時世尊入遍淨色身三昧,從三昧起即便微笑,諸佛笑法有五色光。時五色光化五百色,從佛口出照父王頂;從父王頂照光明臺;從光明臺照于精舍,遍娑婆界還入佛頂。

その時、世尊は遍浄色身三昧(あまねく清らかな身体の三昧)に入られた。三昧から起き上がると、すぐに微笑まれた。諸仏が微笑むときには、五色の光が放たれるのが常である。その五色の光は五百の色に変化し、仏の口から出て父王の頭頂を照らした。父王の頭頂から光明台を照らし、光明台から精舎を照らし、娑婆世界(この世界)全体に広がって、再び仏の頭頂に戻り入ったのである。

爾時世尊告父王言:「諦聽諦聽,善思念之!如來當說來世眾生得見佛法。」

その時、世尊は父王に告げられた。「よく聞きなさい、よく聞きなさい。そして心して考えるのです。如来はこれから、未来の世の衆生が仏法に出会うことができるようになる道についてお話しになるでしょう。」

父王白佛:「唯然世尊!我今願聽。」

父王が仏に向かって申し上げた。「はい、世尊よ。ただいま、私はお聞きいたします。」

佛告父王:「閻浮提中有師子王!名毘摩羅。其師子法,滿四十年牝牡乃會,一交會已跳踉鳴吼,婉轉自撲體無損傷。其師子子在胎之時,如父獸王等無有異。大王當知,欲使胎中便能鳴吼飛落走伏,未有斯事。」

仏は父王に告げられた。「閻浮提の中に獅子王がおります。名を毘摩羅といいます。その獅子の習わしでは、満四十年になって初めて雄と雌が出会います。一度交わった後は、跳ね回り、吼え、身をくねらせて地に身を投げても、体に傷をつけることはありません。その獅子の子は胎内にいるとき、すでに父なる獣王とまったく異なることがありません。大王よ、知っておきなさい。胎内にいながらにして吼え、飛び、走り、伏すことができるというようなことは、まだこの世にないことなのです。」

父王白佛:「獸王之子在母胎時,頭目牙爪與父相似?」

父王が仏に尋ねた。「獣王の子は母の胎内にいる時、頭や目、牙や爪は父と似ているのでしょうか?」

佛告大王:「與父無異,但其力能不及其父百千萬倍。」佛告父王:「如是如是!未來世中,諸善男子善女人等及與一切,若能至心繫念在內,端坐正受觀佛色身,當知是人心如佛心與佛無異。雖在煩惱,不為諸惡之所覆蔽,於未來世雨大法雨。

仏は大王に告げました。「父と異なることはありませんが、ただその力能は父に及ぶこと百千万倍の違いがあります。」

仏は父王に告げました。「そのとおりです、そのとおりです。未来世において、もろもろの善男子・善女人たち、およびすべての者たちが、もし至心に心を内に繋ぎ念じて、端坐し正受して仏の色身を観じるならば、この人の心は仏の心と同じであり、仏と異なることはないと知るべきです。煩悩の中にありながらも、もろもろの悪に覆い隠されることはなく、未来世において大いなる法の雨を降らせます。」

「復次父王!譬如伊蘭俱與栴檀生末利山,牛頭栴檀生伊蘭叢中,未及長大在地下時,芽莖枝葉如閻浮提竹筍,眾人不知,言此山中純是伊蘭無有栴檀。而伊蘭臭,臭若膖屍薰四十由旬,其華紅色甚可愛樂,若有食者發狂而死。牛頭栴檀雖生此林,未成就故不能發香。仲秋月滿卒從地出成栴檀樹,眾人皆聞牛頭栴檀上妙之香,永無伊蘭臭惡之氣。」

「また父王よ、譬えば、伊蘭樹(いらんじゅ)は栴檀(せんだん)とともに末利山に生じ、牛頭栴檀(ごずせんだん)は伊蘭の叢(くさむら)の中に生じるようなものがあります。まだ大きくならず、地下にあるうちは、その芽や茎、枝や葉は閻浮提(えんぶだい)の竹の筍(たけのこ)のようです。人々はこれを見て、『この山はまったく伊蘭ばかりで、栴檀などありはしない』と言います。そして、伊蘭の臭いは非常に強く、腐った死体のように四十由旬(ゆじゅん)にも熏(くん)じます。その花は紅色でまことに愛らしく、これを食べる者は発狂して死んでしまいます。牛頭栴檀はこの林の中に生じていても、まだ成長しきっていないために香りを発することができません。ところが、秋の半ば、月が満ちたときに、突然地から現れて栴檀の木となります。人々はみな、牛頭栴檀の最上の香りを嗅ぐことができ、もはや伊蘭の悪臭はまったくなくなってしまうのです。」

佛告父王:「念佛之心亦復如是!以是心故能得三種菩提之根。

仏は父王に告げられた。「念仏の心もまた、このようなものである。この心によって、三種の菩提の根を得ることができるのである。」

「復次父王!閻浮提中及四天下,有金翅鳥名正音迦樓羅王,於諸鳥中快得自在。此鳥業報應食諸龍,於閻浮提日食一龍王及五百小龍;明日復於弗婆提,食一龍王及五百小龍;第三日復於瞿耶尼,食一龍王及五百小龍;第四日復於欝單越,食一龍王及五百小龍。周而復始經八千歲。此鳥爾時死相已現,諸龍吐毒無由得食,彼鳥飢逼周慞求食了不能得,遊巡諸山永不得安,至金剛山然後暫住。從金剛山直下至大水際,從大水際至風輪際,為風所吹還至金剛山,如是七返然後命終。其命終已以其毒故,令十寶山同時火起。

「また父王よ、閻浮提および四天下に、正音迦樓羅王という名の金翅鳥がいます。すべての鳥の中で、この鳥は自在の力を得ています。この鳥はその業報によって、龍を食べることになっており、閻浮提では毎日一匹の龍王と五百匹の小龍を食べます。翌日は弗婆提で一匹の龍王と五百匹の小龍を食べ、三日目は瞿耶尼で一匹の龍王と五百匹の小龍を食べ、四日目は欝単越で一匹の龍王と五百匹の小龍を食べます。このように巡り巡って、八千年の間繰り返します。やがてこの鳥に死の兆しが現れると、龍たちが毒を吐くため、食べ物を得ることができなくなります。飢えに苛まれたこの鳥は、慌てふためいて餌を探しますが、何も得られません。山々を巡り歩いても、少しも安らぐことができず、金剛山に至ってようやく一時的に留まります。そして金剛山からまっすぐに下り、大水の際まで行き、さらに風輪の際まで至りますが、風に吹かれて再び金剛山に戻されます。このような行き来を七回繰り返して、ようやく命が尽きます。その命が終わると、その毒の力によって、十の宝山が同時に火を噴き出します。」

「爾時難陀龍王懼燒此山,即大降雨澍如車軸,鳥肉散盡惟有心在,其心直下如前七返,然後還住金剛山頂。難陀龍王取此鳥心以為明珠,轉輪王得為如意珠。」

その時、難陀龍王はこの山が焼き尽くされるのを恐れ、たちまち大雨を降らせた。その雨は車軸のように激しく降り注ぎ、鳥の肉はすっかり流れ去り、ただ心臓だけが残った。その心臓は、以前と同じように七度まっすぐに落ちていき、その後ついに金剛山の頂上に留まった。難陀龍王はこの鳥の心臓を手に取り、明珠とした。転輪王はこれを得て如意珠とした。

佛告父王:「諸善男子及善女人!若念佛者其心亦爾!

仏は父王に告げられた。「諸々の善き男子や善き女人よ。もし仏を念ずる者があれば、その心もまた同じようなものである。」

「復次大王,雪山有樹名殃伽陀,其果甚大其核甚小。推其本末從香山來,以風力故得至雪山。孟冬盛寒,羅剎、夜叉在山曲中屏㟪之處,糞穢不淨盈流于地,猛風吹雪以覆其上,漸漸成塹五十由旬,因糞力故此果得生,根莖枝葉華實滋茂,春陽三月八方同時皆悉風起,消融氷雪唯果樹在。其果形色,閻浮提果無以為譬。其形團圓滿半由旬,婆羅門食即得仙道五通具足,壽命一劫不老不死;凡夫食之向須陀洹、阿那含食成阿羅漢,三明六通罔不悉備。有人持種至閻浮提糞壤之地,然後乃生,高一多羅樹,樹名拘律陀,果名多勒,如五斗瓶,閻浮提人有食之者,能除熱病。」

「また、大王よ。雪山には殃伽陀という名の木があります。その果実は非常に大きく、核は非常に小さいものです。その由来をたどれば、香山から来たもので、風の力によって雪山に至りました。冬の初めの厳しい寒さのとき、羅刹や夜叉が山の曲がりくねった奧の隠れた場所で、汚れや不淨を流し、それが地に満ち溢れました。激しい風が雪を吹き寄せてその上を覆い、次第に五十由旬もの深さの堀のようになりました。その糞の力によってこの木が生まれ、根・茎・枝・葉・花・果実が盛んに育ちました。春の陽の三月、八方が同時に風を起こし、氷や雪は溶け去りましたが、ただこの果樹だけが殘りました。その果実の形や色は、閻浮提のどんな果実をもってしても例えることができません。その形は丸く満ちて半由旬ほどもあります。バラモンがこれを食べれば、即座に仙道を得て五通を具備し、壽命は一劫に及び、老いることも死ぬこともありません。凡夫が食べれば須陀洹に向かい、阿那含が食べれば阿羅漢を成し、三明六通、すべてを備えないことはありません。ある人が種を持って閻浮提の糞の混じった土地に植えると、そこに生えて、高さは一多羅樹ほどになります。その木を拘律陀といい、果実を多勒といいます。大きさは五斗の瓶のようです。閻浮提の人でこれを食べる者は、熱病を取り除くことができます。」

佛告大王:「諸善男子及善女人!正念思惟諸佛境界,亦復如是!

仏は王に告げられました。「善き男子、善き女人たちよ。諸仏の境地を正しく心に留めて思い巡らすことも、また同じである。」

「復次大王,如帝釋樹生歡喜園,名波利質多羅。天女見之身心喜悅不自勝持,帝釋見之即生欲想,八萬四千諸婇女等即得樂覺。此樹生時曲枝在地,即於地下華敷成果,其果金色光明赫奕,且其華葉終不萎落,十色具足開現光明有諸樂音,至秋八月從地踊出,高三百四十五萬由旬。諸天見之喜悅非恒。」佛告大王:「觀佛三昧在煩惱地,亦復如是!其出生時,如彼寶樹嚴顯可觀。

「また、大王よ。たとえば帝釈天の園である歓喜園に、波利質多羅という名の樹が生えています。天女たちはそれを見て、心も体も喜びに満ち、自分を抑えられません。帝釈天もそれを見ると愛欲の思いを起こし、八万四千の婇女たちはたちまち歓楽の感覚を得ます。この樹が生まれる時、その枝は地に垂れ、地の下で花が咲き果実がなります。その果実は金色に輝き、光りまばゆく、しかもその花や葉は決して萎むことがなく、十の色彩をそなえて光を放ち、様々な楽の音を奏でます。秋の八月になると地から湧き出て、その高さは三百四十五万由旬にもなります。諸天たちはそれを見て、言葉に尽くせないほどの喜びを抱きます。」

仏は大王に告げられました。「仏を観想する三昧は、煩悩の地にあっても、またこれと同じです。それが現れ出る時は、その宝樹のように荘厳で輝かしく、見るに値するものなのです。」

「復次大王,如劫初時,火起一劫、雨起一劫、風起一劫、地起一劫。

また、大王よ、この世の始まりの時のように、火が起こる劫、雨が起こる劫、風が起こる劫、地が起こる劫があるのです。

「地劫成時,光音諸天飛行世間在水澡浴,以澡浴故四大精氣即入身中,身觸樂故精流水中,八風吹去墮淤泥中,自然成卵。經八千歲其卵乃開,生一女人。其形青黑猶如淤泥,有九百九十九頭;頭有千眼,九百九十九口,一口四牙,牙上出火狀如霹靂;二十四手,手中皆捉一切武器;其身高大如須彌山,入大海中拍水自樂。有旋嵐風吹大海水,水精入體即便懷妊,經八千歲然後生男,其兒身體高大四倍倍勝於母。兒有九頭,頭有千眼,口中出火,有九百九十九手八脚,海中出聲,號毘摩質多羅阿修羅王。此鬼食法,惟噉淤泥及蕖藕根。其兒長大,見於諸天婇女圍遶,即白母言:『人皆伉儷,我何獨無?』其母告曰:『香山有神名乾闥婆,其神有女,容姿美妙色踰白玉,身諸毛孔出妙音聲,甚適我意。今為汝娉,適汝願不?』阿修羅言:『善哉善哉!願母往求。』

地劫が成る時、光音の諸天は世間を飛行し、水の中で澡浴しました。澡浴したために、四大の精気がただちに身中に入り、身が楽に触れるために精が水中に流れ出しました。八風が吹き去って淤泥の中に堕ち、自然に卵となりました。八千年を経て、その卵はようやく開き、一人の女が生まれました。その形は青黒く、淤泥のようであり、九百九十九の頭がありました。頭には千の目があり、九百九十九の口があり、一口には四つの牙があり、牙の上から火が霹靂のような姿で出ていました。二十四の手があり、手の中には皆、一切の武器を捉えていました。その身は高大で須彌山のようであり、大海の中に入って水を拍ち、自ら楽しみました。旋嵐風があり、大海の水を吹き、水精が体に入るとすぐに懐妊し、八千年を経てそれから男を生みました。その児の身体は高大で、母よりも四倍倍れて勝っていました。児には九つの頭があり、頭には千の目があり、口中から火が出て、九百九十九の手と八つの脚があり、海中から声を出し、毘摩質多羅阿修羅王と号しました。この鬼の食法は、ただ淤泥と蕖藕の根を噉うのみでした。その児が長大になると、諸天の婇女に囲繞されているのを見て、すぐに母に白して言いました。『人は皆伉儷であるのに、なぜ私だけがいないのですか。』その母は告げて言いました。『香山に神があり、名を乾闥婆と言います。その神には女があり、容姿は美妙で色は白玉に踰え、身の諸毛孔から妙なる音声が出て、非常に私の意に適っています。今、汝のために娉いましょう。汝の願に適いますか。』阿修羅は言いました。『善哉善哉。願わくは母よ、往いて求め給え。』

「爾時其母行詣香山,到香山已告彼樂神:『我有一子威力自在,於四天下而無等倫,汝有令女可適吾子?』其女聞已,願樂隨從適阿修羅。

その時、その母は香山へと向かい、香山に到着すると、その楽神に告げた。「私には一人の息子がおり、その力は自在にして、四天下において匹敵する者がおりません。あなたには娘がいると伺いましたが、私の息子の妻として差し出していただけないでしょうか。」その娘はこの話を聞いて、喜んで阿修羅に嫁ぐことを望んだ。

「時阿修羅納彼女已,心意泰然與女成禮,未久之間即便懷妊,經八千歲乃生一女,其女儀容端正挺特,天上天下無有其比,色中上色以自莊嚴,面上姿媚八萬四千,左邊亦有八萬四千,右邊亦有八萬四千,前亦八萬四千,後亦八萬四千。阿修羅見以為瓌異,如月處星甚為奇特。

そのとき阿修羅はその女を迎え入れ、心は安らかになり、その女と婚礼を交わしました。それから間もなくして身ごもり、八千年を経て一人の女の子を産みました。その娘の容姿は端正で際立っており、天上天下に比べるものはありません。色の中の最上の色で自らを飾り、顔の上の美しさは八万四千、左側にもまた八万四千、右側にもまた八万四千、前にもまた八万四千、後ろにもまた八万四千ありました。阿修羅はこれを見て不思議なことだと思い、月が星々の中にあるかのようで、たいへん奇特であると感じました。

「憍尸迦聞,即遣使下詣阿修羅而求此女。阿修羅言:『汝天福德,汝能令我乘七寶宮,以女妻汝。』帝釋聞此心生踊躍,即脫寶冠持用擬海,十善報故,令阿修羅坐勝殿上。時阿修羅踊躍歡喜以女妻之,帝釋即以六種寶臺,而往迎之。於宮闕中有大蓮華,自然化生八萬四千諸妙寶女,譬如壯士屈申臂頃,即至帝釋善法堂上,爾時天宮過踰於前百千萬倍,釋提桓因為其立字號曰悅意。諸天見之歎未曾有,視東忘西,視南忘北。三十二輔臣,亦見悅意身心歡喜,乃至毛髮皆生悅樂。

「憍尸迦(帝釈天)はこの話を聞くと、すぐに使いを阿修羅のもとへ送り、この娘を求めた。阿修羅は言った。『あなたは天の福徳をお持ちの方。私を七宝の宮殿に乗せてくれるなら、娘をあなたの妻として差し上げましょう。』帝釈天はこれを聞いて心が躍り、すぐに宝冠を脱いで海に向かって投げたところ、十善の報いによって、阿修羅は見事な宝殿の上に座ることができた。阿修羅は喜び勇んで娘を帝釈天の妻とした。帝釈天は六種の宝の台座を用意して、娘を迎えに行った。宮殿の中には大きな蓮の花が現れ、その中から八万四千の麗しい天女たちが自然に生まれ出た。それはまるで力持ちが腕を伸ばしたり曲げたりするほどの瞬きの間に、帝釈天の善法堂に到着した。その時、天宮は以前より百千万倍も美しく輝いた。帝釈天は娘に「悦意」という名を授けた。天女たちはこれを見て、かつてないほどの驚きと感動を覚え、東を見れば西を忘れ、南を見れば北を忘れるほどであった。三十二人の輔臣たちも悦意を見て、心身ともに喜びに満たされ、毛の一本一本に至るまで喜びが溢れた。」

「帝釋若至歡喜園時,共諸綵女入池遊戲。爾時悅意即生嫉妬,遣五夜叉往白父王:『今此帝釋不復見寵,與諸婇女自共遊戲。』父聞此語心生瞋恚,即興四兵往攻帝釋。立大海水踞須彌頂,九百九十九手同時俱作,撼喜見城、搖須彌山,四大海水一時波動。釋提桓因驚怖惶懼,靡知所趣。

帝釈天が歓喜園にやって来ると、采女たちと共に池に入って遊戯を楽しんでいた。その時、悦意はすぐに嫉妬の心を起こし、五人の夜叉を遣わして父王に告げた。「今、この帝釈天はもはや私に寵愛を示さず、采女たちと自ら遊興しております。」父王はこの言葉を聞いて怒りの心を生じ、ただちに四種の兵を率いて帝釈天を攻めに向かった。大海の水の上に立ち、須弥山の頂上に踞って、九百九十九の手を同時に振るい、歓喜城を揺るがし、須弥山を揺さぶり、四海の海水が一時に波立った。帝釈天は驚き怖れ、おののき恐れて、どこへ逃げればよいかわからなかった。

「時宮有神白天王言:『莫大驚怖,過去佛說《般若波羅蜜》,王當誦持,鬼兵自碎。』

時に、宮中に神が現れて天王に告げた。「大いに恐れることはありません。過去の仏が説かれた『般若波羅蜜経』を、王がお唱えになれば、鬼の軍は自然と打ち砕かれましょう。」

「是時帝釋坐善法堂,燒眾名香發大誓願:『般若波羅蜜是大明呪、是無上呪、無等等呪,審實不虛,我持此法當成佛道,令阿修羅自然退散。』作是語時,於虛空中有四刀輪,帝釋功德故自然而下,當阿修羅上時,阿修羅耳鼻手足一時盡落,令大海水赤如絳汁。

その時、帝釈天は善法堂に座し、多くの名高い香を焚いて大いなる誓いを立てた。「般若波羅蜜は大いなる光明の呪文であり、この上ない呪文であり、比べるもののない呪文である。確かに偽りがない。私はこの教えを保って仏道を成就し、阿修羅を自然に退散させよう。」この言葉を発した時、虚空の中で四つの刀の輪が、帝釈天の功徳の力によって自然に降りてきた。それらが阿修羅の上に達すると、阿修羅の耳・鼻・手足は一瞬にして全て落ち、大海の水は真紅の汁のように赤く染まった。

「時阿修羅即便驚怖,遁走無處入藕絲孔。彼以貪欲、瞋恚、愚癡鬼幻力故,尚能如是!豈況佛法不可思議?」

その時、阿修羅はたちまち恐れおののき、逃げ場を失って、蓮の茎の細い穴の中にまで遁れ入った。彼らでさえ、貪欲・瞋恚・愚癡という鬼の幻の力によって、このようなことを成し遂げられるのだ。ましてや、仏法の不可思議な力は、なおさらのことではないか。

佛告大王:「諸善男子及善女人!繫心思惟諸佛境界,亦能安住諸三昧海,其人功德不可稱計,譬如諸佛等無有異。

仏、王に告げたまわく、「諸の善男子よ、また善女人よ!心を集中して諸仏の境地を思惟し、また諸の三昧の海に安住することができれば、その人の功徳ははかり知れず、たとえば諸仏と等しくして異なることがないであろう。」


2 序觀地品(一)

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