貞元新定釋教目錄卷第一
貞元新定釋教目録 巻第一
西京西明寺沙門圓照撰
西京西明寺の沙門円照が撰す
謹按舊錄云。夫目錄之興也。蓋所以別真偽明是非。記人代之古今。摽卷部之多小。摭拾遺漏刪夷駢贅。欲使正教合理金言有緒。提綱舉要歷然可觀也。但以法門幽邃化網恢弘。前後翻傳年移代謝。屢經散滅卷軸參差。復有異人時增偽妄。致令混雜難究蹤由。是以先德儒賢製斯條錄。今其存者殆六七家。然猶未極根源尚多疎闕。昇以庸淺久事披尋。參練異同指陳臧否。成茲部帙。庶免乖違。幸諸哲人俯共詳覽。今觀先賢所撰冠絕群英。伏從庚午以來增七十祀。三藏繼踵于今四朝。聖上欽明翻譯相次。一百餘部經律特明。累降。
古い記録にこうあります。そもそも目録を作る目的は、経典の真偽を区別し、正邪を明らかにするためです。また、人や時代の移り変わりを記し、巻や部の多い少ないを示し、漏れを拾い集め、重複を削り落とすことで、正しい教えが道理にかない、大切な言葉に筋道が通るようにするのです。要点をまとめ、大切なことを挙げれば、はっきりと見て取ることができます。
ただ、仏法の門は奥深く、教えの網は広大で、翻訳が前後し、時代が移り変わるにつれて、何度も失われ散逸し、巻物は長短まちまちとなりました。さらには、異なる人が時に偽りの教えを付け加えたため、混乱が生じ、由来をたどることが難しくなりました。そこで、先輩の優れた賢者たちが、これらの目録を作ったのです。今に残るものは六、七家ほどありますが、それでも根源にまで至らず、抜け落ちや不足が多くあります。
私は浅学非才でありながら、長い間これらの経典を調べ、異同を比較し、良い悪いを指摘して、この書物をまとめました。どうにか誤りを免れんことを願います。どうか、賢明な方々が共に詳しくご覧ください。今、先賢の撰んだものを見ると、多くの優れた人々の中で特に傑出しています。
庚午の年から七十年あまりが過ぎ、三蔵法師たちは次々と現れ、今や四代の天皇の時代となりました。聖上は賢明で、翻訳は次々と行われ、百余部の経や律が特に明らかにされました。そして、何度も勅命が下されました。
鴻私許令修述。圓照等才智短淺思不延文。祇奉。
鴻私の計らいにより、修行と著述を許されました。しかし、円照たちは才智も浅く、思慮も文章の域にまで及びません。ただ、謹んでお仕えするのみです。
皇恩俛仰恭命。今所譯者約以類分。隨三藏文相次附入。自惟以索繼組。以礫次金。疑則闕之。以俟來哲也。
謹んで天皇の大御恩に感謝し、仰せのままにこの訳業を進めます。 今回訳すものは、分類にしたがってまとめ、三蔵の経典の順序に沿って順次追加いたします。 私は、粗い糸で美しい織物をつなぎ、小石で金を飾るような心細さを感じております。疑わしい箇所はそのままにしておき、将来の賢者が解明されるのを待つことにいたします。
稽首善逝牟尼尊 無上丈夫調御士
亦禮三乘淨妙法 五部祕密總持門
并及八輩應真僧 普賢妙德諸菩薩
五眼三身咸照世 至誠歸命願加威
我撰經錄護法城 三寶垂慈幸冥祐
唯願法燈長夜照 迷徒因此得慧明
正法遐久住世間 依學速登無上地
至心に、善逝・牟尼尊に礼拝いたします 人の上に立つ、無上の調御士(調御丈夫)であられます
また、三乗の清らかで妙なる教えと 五部の秘密の総持の法門に礼を捧げます
さらに、八輩の応真の僧侶 普賢菩薩の妙徳を備えた諸々の菩薩にも礼します
五眼・三身はすべて世を照らし 至誠を込めて帰依し、その威光をお授けくださいますように
私は経録を編み、仏法の城を守ります 三宝よ、慈しみをもって、どうかひそかにご加護ください
願わくは、法の灯が長く夜を照らし 迷いの者たちが、ここで智慧の光を得られますように
正法が遠く永く世に住み続け それに従い学ぶ者たちが、速やかに無上の境地に達しますように
自後漢孝明皇帝永平十年歲次丁卯。至大唐聖神文武皇帝貞元十六年庚辰之歲。凡七百三十四載(內從開元十八年庚午至今庚辰加七十一歲也)中間傳譯緇素總一百八十七人。所出大小二乘三藏聖教。及賢聖集傳并及失譯。總二千四百四十七部(內新加一百三十九部矣)合七千三百九十九卷。其見行闕本並該前數(內新加三百四十二卷)。
後漢の孝明皇帝・永平十年(丁卯の年)から、大唐の聖神文武皇帝・貞観十六年(庚辰の年)まで、合わせて七百三十四年の間(ただし、開元十八年(庚午の年)から現在の庚辰の年まで、七十一年を加えたものです)に、翻訳に携わった僧侶と在家の方々は、全部で百八十七人におよびます。彼らによって訳されたものは、大小二乗の三蔵(経・律・論)の聖教、賢者や聖者たちの撰集や伝記、そして訳者不明のものも含め、総計二千四百四十七部(このうち新たに加わったものは百三十九部です)、合わせて七千三百九十九巻になります。現在流通しているものも、欠本となっているものも、すべてこの数に含まれています(このうち新たに加わった巻数は三百四十二巻です)。
新定目錄合三十卷。開為總別。總錄分二。初奉承恩制。次總集群經。別錄亦二。初分乘藏差殊。次明賢聖集傳。總中分為一十九卷。別中分成一十一卷。就別分乘藏中更有七門。今先敘科條餘。次編載。
新たに定めた目録は、合わせて三十巻からなります。これを「総録」と「別録」に分けます。総録は二つに分けられます。第一に、皇帝のご命令を尊んで記し、第二に、すべての経典をまとめます。別録もまた二つに分かれます。第一に、乗(教えの体系)と蔵(経典の分類)の違いを分け、第二に、聖者や賢者の著作(集・伝)を明らかにします。
総録は十九巻に分けられ、別録は十一巻に分けられます。別録の乗と蔵の区分の中には、さらに七つの門(項目)があります。まずここで、これらの項目の順序を説明し、その後に内容を列記します。
總錄二文上。
【総録二文 上】
初特承恩旨錄有三。
最初に特別に恩恵を受けて、三つのことを記録しております。
右新譯華嚴經一。
新しく翻訳された『華厳経』第一巻。
三朝翻譯經律論二。
三朝にわたって翻訳された経・律・論の二つ。
大佛名經一部等三。斯皆特降絲綸。許編目錄。具列如左。
大仏名経一部など三巻。これらはすべて特別に天皇の勅命を下され、目録に編纂することを許されたものである。その詳細は以下の通りに列挙する。
二總集群經錄。
二つの経典集をまとめた目録。
右從漢至唐所有翻述。具。
漢から唐に至るまでの、すべての翻訳と著述を備えている。
帝王年代并譯人本事所出教等。以人代先後為倫。不依三藏之次。兼敘目錄新舊同異。
## 帝王年代と翻訳者の事績、経典の出典などについて
人と時代の先後を基準として配列し、三蔵の順序には従わない。また、経典目録の新旧の異同についても併せて述べる。
別錄二文下。
以下は『別録』の二つの文章である。
初分乘藏差殊錄。
初乗と大乗の違いについての記録
右別錄之內典分為七。一有譯有本。二有譯無本。三支派別行。四刪略繁重。五拾遺補闕。六疑惑再詳。七偽邪亂正。就七門中。二乘區別。三藏殊科。具悉委曲。兼明部偶。
右の別録の内典は、七つに分けられます。 一、翻訳があり、現存するもの。 二、翻訳はあるが、現存しないもの。 三、支分・流派として別に伝わるもの。 四、煩雑で重複する部分を削除・省略したもの。 五、失われた部分を拾い、欠けた部分を補ったもの。 六、疑わしいものはさらに詳しく調べたもの。 七、偽りのもの、邪なもの、正しさを乱すもの。
この七つの分類の中で、声聞と縁覚の二乗は区別され、経・律・論の三蔵もそれぞれ異なる科目として扱われます。その詳細や事情をすべて明らかにし、またそれぞれの部類や編纂の概要についても述べます。
二明賢聖集傳錄。
賢者と聖者が集い、その教えを伝え記録したものを、第二に明らかにする。
右集傳之內有二不同。一梵本翻譯。謂集自西方流傳東夏。三藏碩德翻譯奉行。二此方撰述。謂此土高僧撰成傳記。三寶三藏悉以甄明。神異感通戒定慧行。備如文列詳而鏡諸。
右に集めた伝記の中には、二つの種類がある。一つは梵本の翻訳である。これは西方から伝わり東の国(中国)に流布したもので、三蔵(経・律・論)の優れた訳経僧たちが翻訳し、信奉し実践してきたものである。二つ目はこの地での撰述である。これは中国の高僧たちが書き著した伝記である。仏・法・僧の三宝と経・律・論の三蔵をすべて明らかにし、神異や感応、戒・定・慧の修行の様子を、文に列挙して詳しく映し出すように示している。