過去現在因果經卷第一
過去現在因果経 巻第一
宋天竺三藏求那跋陀羅譯
宋・天竺三蔵求那跋陀羅訳
如是我聞:
私はこのように聞きました。
一時佛在舍衛國,祇樹給孤獨園。爾時世尊,與諸比丘住於竹林。是諸比丘,於晨朝時,著衣持鉢,入城乞食;還歸所住,食竟澡漱,各攝衣鉢,集在講堂,悉欲共說過去因緣。爾時世尊,以淨天耳超於世間,聞諸比丘語論之聲。即從座起,到講堂上,於眾中坐。問諸比丘:「汝等共集,欲說何法?」
ある時、お釈迦さまは舎衛国にある祇園精舎におられました。そのとき、世尊は多くの比丘たちと竹林に住んでおられました。比丘たちは朝早く、衣を整え鉢を持って、町に入り托鉢をし、住まいに戻って食事を済ませ、口をすすぎ、それぞれ衣と鉢を整え、講堂に集まって、皆で過去の因縁について語り合おうとしていました。そのとき世尊は、清らかな天耳通によって世間を超えて、比丘たちの語り合う声をお聞きになりました。そして座から立ち上がり、講堂へ行かれ、皆の中にお座りになりました。そして比丘たちにお尋ねになりました。「あなたがたが集まって、どのような法を語ろうとしているのか?」
時諸比丘,即白佛言:「世尊!我等食竟澡漱已訖,故共集此各欲聞說過去因緣。」
その時、比丘たちは仏に申し上げました。「世尊よ、私たちは食事を終え、口をすすぎ、身を清めました。それでここに集まり、それぞれ過去の因縁についてお話を聞きたいと思っているのです。」
是時世尊語諸比丘:「汝等樂聞過去因緣者,諦聽!諦聽!善思念之,今為汝說。」
その時、世尊は比丘たちに告げられた。「あなたがたが過去の因縁を聞くことを喜ぶならば、よく聞きなさい。よく聞き、善く思念して、今、あなたがたのために説き明かしましょう。」
比丘白言:「唯然,世尊!願樂欲聞。」
比丘は申し上げました:「はい、世尊よ。どうかお聞かせください。」
佛言:「比丘!過去無數阿僧祇劫,爾時有一仙人,名曰善慧,淨修梵行,求一切種智,為欲成就此大智故,樂處生死,周遍五道;一身死壞,復受一身,生死無量。譬盡天下草木,斬以為籌,數其故身,不能窮盡。夫極天地之始終,謂之一劫,而其經天地成壞者,不可稱載也。所以感傷群生耽惑愛欲沈流苦海,起慈悲心,欲拔濟之。又作此念:『今諸眾生,沒於生死,不能自出;皆由貪欲、瞋恚、愚癡,樂著色、聲、香、味、觸、法故,我當決定斷其此病。』雖生諸趣,不忘斯念。於諸眾生怨親平等,以布施攝貧窮,持戒攝毀禁,忍辱攝瞋恚,精進攝懈怠,禪定攝亂意,智慧攝愚癡;如是長夜增益眾生,普為一切而作歸依。於諸如來,恭敬供養,樂欲聽法,亦為他說。常以四事,奉給眾僧,於佛法眾,尊重守護,如是諸行,不可稱數。
仏は言われた。「比丘よ、過去の数え切れない阿僧祇劫に、善慧という名の仙人がいた。彼は清らかな梵行を修め、一切種智を求めていた。この大いなる智慧を成就するために、彼は生死の中に留まることを厭わず、五道を遍く巡った。一つの身体が死んで壊れれば、また別の身体を受ける。その生死は量り知れない。たとえば、天下の草木をすべて切り取って算木にし、彼の過去の身体を数えようとしても、尽きることはない。天地の始まりから終わりまでを一劫というが、その間に天地が成っては壊れることは、言葉では言い表せないほどだ。彼は、群生が愛欲に耽り、惑い、苦海に沈み流れているのを悲しみ、慈しみの心を起こし、彼らを救い上げようとした。また、こう思った。『今、多くの衆生は生死の中に沈み、自ら出ることができない。それはすべて、貪欲・瞋恚・愚癡に起因し、色・声・香・味・触・法に執着して楽しむからだ。私は必ずこの病を断ち切ろう。』 たとえ様々な生まれ変わりの世界に生まれても、この思いを忘れることはなかった。すべての衆生に対して、怨みも親しみもなく平等に接し、布施をもって貧しい者を救い、持戒をもって戒律を破る者を導き、忍辱をもって怒りを鎮め、精進をもって怠惰を励まし、禅定をもって乱れた心を静め、智慧をもって愚かさを照らした。このように長い夜のように続く時を、衆生を益するために過ごし、あまねくすべてのもののよりどころとなった。諸仏如来を敬い供養し、法を聞くことを喜び、また他者にも説いた。常に四事(衣・食・臥具・薬)をもって衆僧を支え、仏・法・僧を尊重し守り続けた。このような数々の行いは、言葉で数え尽くせるものではない。」
「爾時有王,名曰燈照;城名提播婆底;其國人民,壽八萬歲,安隱豐樂,極為熾盛,所欲自在,猶如諸天。時彼國王,正法治世,不抂人民,無有殺戮楚撻之苦,視諸人民,有如一子。時燈照王,始生太子,端嚴無比,威德具足,有三十二相八十種好。初生之日,四方皆明,日月珠火,不復為用。王見太子有如此瑞,即召諸臣,共集議言:『太子初生,有此奇特,當為太子,作何等名?』諸臣答言:『應名太子以為普光。』又召相師而占相之。相師答言:『今觀太子,若在家者,為轉輪王,統四天下;若出家者,為天人尊,成薩婆若。』王及夫人後宮婇女,聞相師言,於此太子,深生愛念;亦為天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦樓羅、緊那羅、摩睺羅伽,人非人等,供養恭敬,尊重讚歎。
その時、燈照という名の王がいた。都は提播婆底といい、その国の人々の寿命は八万歳で、安らかで豊かであり、非常に栄えていた。望むものは何でも得られ、まるで天界の神々のようであった。その王は正しい法で国を治め、人々を不当に扱うこともなく、殺害や鞭打ちなどの苦しみもなく、すべての人々をわが子のように慈しんでいた。
時に燈照王に太子が誕生した。その姿は端正で比類なく、威厳と徳を備え、三十二相八十種好を具えていた。生まれたその日、四方が明るく輝き、太陽や月、宝珠や灯火の光も用をなさなかった。王は太子にこのような瑞兆があるのを見て、すぐに臣下たちを集めて相談した。「太子が生まれた時、このような不思議なことがあった。太子にどんな名をつけるべきだろうか。」臣下たちは答えた。「太子を普光と名づけるのがよいでしょう。」
さらに占い師を呼んで太子の相を占わせた。占い師は答えた。「今、太子を見るに、もし在家にとどまれば転輪王となり、四天下を統べるでしょう。もし出家すれば、天と人の尊き師となり、一切智を成就するでしょう。」王と夫人、後宮の侍女たちは占い師の言葉を聞き、この太子を深く慈しんだ。また、天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽、人と人ならざる者たちも、太子を供養し、敬い、尊重し、讃嘆した。
「是時太子,在於後宮,為夫人婇女,說種種法。太子年至二萬九千歲,捨轉輪王位,啟其父母,求欲出家;既不聽已,乃至三請,猶尚不許。太子慈悲,志存拯濟,忍其小違,以成大順。即便往詣山林樹下,剃除鬚髮,被著法服,勤修苦行,滿六千歲,成阿耨多羅三藐三菩提。為諸天人及八部眾,轉於法輪;此輪微妙,一切世間,天人魔梵,所不能轉。以三乘法教化眾生,所可利益,不可稱數。爾時父王及其夫人後宮婇女,聞太子普光成阿耨多羅三藐三菩提,心大歡喜,踊躍無量。爾時群臣國內人民,婆羅門等,聞太子道成,心各念言:『太子普光,捨轉輪王位,剃除鬚髮,被著法服,出家修道,得成正覺;我等今者,亦當出家。』作此念已,悉皆往詣普光佛所。爾時普光如來,即觀其心,隨其因緣,而為說法;大臣婆羅門等,有四千人,成阿羅漢;國中人民及餘四方諸來會眾,有八萬人,亦得無著法忍。
その時、太子は後宮におられ、妃や侍女たちにさまざまな教えを説いておられました。太子が二万九千歳になられると、転輪王の位を捨て、両親に出家の願いを申し出られました。一度目は許されず、二度、三度と願い出られましたが、やはり許されませんでした。
しかし太子は慈悲深く、衆生を救おうという志を抱き、小さな不承諾に耐え、大きな順縁を成就されました。そしてすぐに山林の樹下へ赴き、髪と髭を剃り落とし、法衣を身にまとって、厳しい修行に励まれました。六千歳の修行を満たされた時、ついに阿耨多羅三藐三菩提(無上正等覚)を成就されました。
それから諸天や八部衆のために法輪を転じられました。この法輪は微妙であり、一切の世間において、天・人・魔・梵天も転ずることのできないものでした。三乗の教えをもって衆生を教化され、その利益は数えきれないほどでした。
その時、父王と妃、後宮の侍女たちは、太子・普光が阿耨多羅三藐三菩提を成じられたと聞き、大いに歓喜し、限りなく踊り上がって喜びました。また、群臣や国内の人民、婆羅門たちも太子が悟りを開かれたと聞き、心の中でこう思いました。
「太子・普光は転輪王の位を捨て、髪と髭を剃り、法衣を着て出家し、正覚を得られた。私たちも今、出家しよう」
その思いを抱くと、一同は皆、普光仏のもとへ赴きました。その時、普光如来は彼らの心を観察し、それぞれの因縁に応じて法を説かれました。大臣や婆羅門など四千人は阿羅漢となり、国中の人民と四方から集まった会衆八万人も、無著法忍を得ることができました。
「爾時普光如來與八萬四千諸阿羅漢,往詣國界,遊行教化。父王聞已,心大歡喜,即勅國中,平治道路,香水灑地,懸諸繒綵寶幢幡蓋,散眾名華,如是莊嚴,滿十二踰闍那。又復擊鼓唱令國內諸有華者,不得私賣,悉輸與王;并勅人民,不得先我供養於佛;即遣大臣,并作伎樂,燒香散華,而往請彼普光如來。
その時、普光如来は八万四千の阿羅漢たちと共に、国境を越えて訪れ、各地を巡りながら教えを説き導かれました。父王はこのことを聞き、大いに喜び、直ちに国中に命じて道を整えさせ、香水を地面に撒き、様々な色とりどりの旗や幡、宝の天蓋を掲げ、多くの名高い花を散らしました。このように荘厳された行列は、十二由旬にも及びました。
さらに、太鼓を打ち鳴らして国中に触れを出し、「花を持つ者はすべて、私的に売ってはならず、すべて王に献上せよ」と命じ、また「誰も私より先に仏を供養してはならない」と人民に伝えました。そして大臣たちを遣わし、音楽を奏で、香を焚き、花を散らしながら、普光如来をお迎えに参りました。
「爾時善慧仙人,在於山中,得五奇特夢:一者,夢臥大海;二者,夢枕須彌;三者,夢海中一切眾生入其身內;四者,夢手執日;五者,夢手執月。得此夢已,即大驚悟,心自念言:『我今此夢,非為小緣,當以問誰?宜入城內,問諸智者。』作是念已,披鹿皮衣,手執水瓶及杖繖蓋,行入城邑;路過外道所止住處,有五百人,而為上首。善慧念言:『我今當以所夢問之,并得觀其所修之業。』即共諸人,講論道義,破其異見。時五百人,即便受屈,求為弟子,於善慧所深生恭敬,各以銀錢一枚而以上之。復有五百外道,既見善慧辯才聰明,亦生隨喜。時諸外道自共議言:『今普光如來出興于世。』善慧仙人,聞斯語已,舉體毛竪,心大歡喜,踊躍無量,便與外道,分別而去。外道問言:『師何所趣?』答言:『我今當往普光佛所,欲施供養。』外道白言:『師若去者,願樂隨從。』善慧答曰:『我今有緣,宜應先行。』爾時善慧,齎五百銀錢,隨路而去。諸外道眾,悲戀懊惱,辭別而歸。
その時、善慧仙人は山中におり、五つの不思議な夢を見ました。 一つ目は、大海原に横たわる夢。 二つ目は、須弥山を枕にする夢。 三つ目は、海のすべての生き物が自分の体の中に入ってくる夢。 四つ目は、手で太陽をつかむ夢。 五つ目は、手で月をつかむ夢。
この夢を見た後、彼は大いに驚き、心の中でこう考えました。 「今見たこの夢は、小さな縁によるものではない。誰に尋ねるべきか? 町に入って、知恵ある者たちに尋ねるのがよいだろう。」 そう考えた彼は、鹿の皮衣をまとい、水瓶と杖、傘を持って、町へと向かいました。
道すがら、外道たちが住む場所を通りかかると、五百人の弟子を従えた指導者がいました。 善慧は考えました。 「今、この夢について彼らに尋ね、彼らの修行のあり方も見てみよう。」 そして、彼らと道の義について議論し、彼らの異なる見解を論破しました。 すると、五百人の外道たちはすぐに屈服し、弟子になりたいと願い、善慧に深く敬意を抱きました。彼らはそれぞれ銀貨一枚を善慧に捧げました。 さらに別の五百人の外道たちも、善慧の弁才と聡明さを見て、喜びに共感しました。
その時、外道たちは互いに話し合いました。 「今、普光如来が世に現れたそうだ。」 善慧仙人はこの言葉を聞くと、全身の毛が逆立ち、心は大いに喜び、限りなく躍り上がりました。そして、外道たちと別れを告げて去ろうとしました。 外道たちが尋ねました。 「師はどちらへ向かわれるのですか?」 善慧は答えました。 「私は今、普光仏のもとへ行き、供養を捧げようと思う。」 外道たちは言いました。 「師が行かれるなら、私たちも喜んでお供します。」 善慧は答えました。 「私は今、縁があるので、先に行くべきだ。」 その時、善慧は五百枚の銀貨を持ち、道を進んで行きました。 外道たちは、悲しみと恋しさ、後悔にかられ、別れを告げて帰って行きました。
「善慧至前,見王家人,平治道路,香水灑地,列幢幡蓋,種種莊嚴。即便問言:『何因緣故,而作是事?』王人答言:『世有佛興,名曰普光,今燈照王,請來入城,所以怱怱莊嚴道路。』善慧即復問彼路人:『汝知何處有諸名花?』答言:『道士!燈照大王,擊鼓唱令國內,名花皆不得賣,悉以輸王。』善慧聞已,心大懊惱,意猶不息,苦訪花所。
善慧が進んで行くと、王の家来たちが道を整え、香水をまき、旗や幡を立て、さまざまに飾りつけをしているのを見かけました。そこで尋ねました。「どういうわけで、こんなことをしているのですか?」王の家来は答えました。「世に普光という名の仏が現れられました。今、燈照王がその仏をお城にお招きするので、急いで道を飾っているのです。」善慧はさらにその人に尋ねました。「どこに良い花があるかご存じですか?」答えて言いました。「道士よ、燈照大王は太鼓を鳴らして国中にお触れを出し、良い花はすべて売ってはならず、すべて王に献上するようにと命じました。」善慧はこれを聞いて、とてもがっかりし、それでも諦めず、必死に花を探し求めました。
「俄爾即遇王家青衣,密持七莖青蓮花過,畏王制令,藏著瓶中。善慧至誠,感其蓮花踊出瓶外,善慧遙見,即追呼曰:『大姊,且止!此花賣不?』青衣聞已,心大驚愕,而自念言:『藏花甚密,此何男子,乃見我花,求索買耶?』顧看其瓶,果見花出,生奇特想,答言:『男子!此青蓮花當送宮內,欲以上佛,不可得也。』善慧又言:『請以五百銀錢,雇五莖耳。』青衣意疑,復自念言:『此花所直不過數錢,而今男子,乃以銀錢五百求買五莖。』即問之言:『欲持此花用作何等?』善慧答言:『今有如來,出興於世,燈照大王,請來入城,故須此花,欲以供養。大姊當知,諸佛如來,難可值遇,如優曇鉢花時乃一現。』青衣又問:『供養如來,為求何等?』善慧答曰:『為欲成就一切種智,度脫無量苦眾生故。』爾時青衣,得聞此語,心自念言:『今此男子,顏容端正,披鹿皮衣,纔蔽形體,乃爾至誠,不惜錢寶。』即語之曰:『我今當以此花相與,願我生生常為君妻。』善慧答言:『我修梵行,求無為道,不得相許生死之緣。』青衣即言:『若當不從我此願者,花不可得。』善慧又曰:『汝若決定不與我花,當從汝願。我好布施,不逆人意,若使有來從我乞求頭目髓腦,及與妻子,汝莫生閡,壞吾施心。』青衣答言:『善哉!善哉!敬從來命。今我女弱不能得前,請寄二花以獻於佛,使我生生不失此願,好醜不離,必置心中,令佛知之。』
その時、ちょうど王宮の侍女が、七本の青蓮華を密かに持って通りかかりました。王の禁令を恐れて、瓶の中に隠していたのです。善慧の誠実な心に感じて、その蓮華が瓶の外に飛び出しました。善慧は遠くからそれを見て、すぐに追いかけて呼びかけました。「お姉さま、ちょっとお待ちください。この花は売り物ですか?」
侍女はこれを聞いて、心の中で大いに驚き、こう思いました。「花はとても隠していたのに、この男はどうして私の花を見つけ、買おうとするのだろうか。」瓶を見ると、確かに花が飛び出しているのを見て、不思議に思い、答えました。「男の方、この青蓮華は宮中へお届けするもので、仏様に捧げるものですから、お譲りできません。」
善慧はまた言いました。「どうか五百銀貨で、五本だけ譲ってください。」侍女は疑いを抱き、また考えました。「この花の値段はわずか数銭なのに、この男は五百銀貨で五本を買おうとしている。」そして尋ねました。「この花をどうなさるおつもりですか?」
善慧は答えました。「今、如来が世にお出ましになり、燈照大王がお招きして都へお入りになります。それでこの花が必要で、供養に使いたいのです。お姉さま、ご存じのように、諸仏如来にお会いできるのは、優曇鉢華が時折咲くように、とても稀なことです。」
侍女はまた尋ねました。「如来を供養なさるのは、何を求めてですか?」善慧は答えました。「一切種智を成就し、無量の苦しむ衆生を救うためです。」
その時、侍女はこの言葉を聞いて、心の中でこう考えました。「この男は顔立ちも端正で、鹿の皮衣をまとっているが、それは形を隠すだけのもの。それなのにこれほど誠実で、財宝を惜しみません。」そして言いました。「今、この花を差し上げます。どうか私が生まれ変わるたびに、常にあなたの妻となれますように。」
善慧は答えました。「私は梵行を修め、無為の道を求めています。生死の縁を約束することはできません。」侍女は即座に言いました。「もし私のこの願いをお聞き入れくださらないなら、花は差し上げられません。」
善慧はまた言いました。「もしあなたがどうしても花をくれないというなら、あなたの願い通りにしましょう。私は喜んで布施を行い、人の意に逆らいません。もし誰かが私に頭や目、髄や脳、そして妻子を乞うてきても、あなたは邪魔をせず、私の施しの心を壊さないでください。」
侍女は答えました。「善きかな、善きかな。お言葉に従います。今、私は女で力が弱く、前に進むことができません。どうか二本の花を託して仏様に捧げてください。私が生まれ変わるたびにこの願いを失わず、美醜にかかわらず、必ず心に留め、仏様に知っていただけますように。」
「爾時,燈照王與其諸子,及眾官屬、婆羅門等,持好香花種種供具,而出奉迎普光如來,舉國人民,亦皆隨從。是時善慧五百弟子,共相謂言:『今日國王及諸臣民,悉皆往詣普光佛所,大師今者亦當已去,我等宜應往彼禮敬。』作此言已,即共俱行;在道未遠,逢見善慧,師徒相遇,喜悅無量,即共同詣普光佛所。見燈照王,已到佛前,最得在初供養禮拜,如是次第,至諸大臣,亦各禮敬,并散名花,花悉墮地。
その時、燈照王は王子たちや家臣たち、バラモンたちと共に、良い香や花など様々な供え物を持って出迎え、普光如来を迎えました。国の人々も皆、その後について行きました。その時、善慧の五百人の弟子たちは互いに言いました。「今日は王様も家臣たちも民衆も皆、普光仏のもとへ行っている。大師もきっと行かれたに違いない。我々も行って礼拝すべきだ」と。そう言って、彼らは一緒に出かけました。道を少し行ったところで、善慧に出会いました。師と弟子が再会し、喜びに満ち溢れ、共に普光仏のもとへ向かいました。燈照王は既に仏の前に到着し、最初に供養と礼拝を行っていました。次々と家臣たちも順番に礼拝し、名高い花を散らしましたが、花は全て地面に落ちました。
「于時善慧,與五百弟子,見諸人眾供養畢已,諦觀如來相好之容,又欲濟拔諸苦眾生,亦欲滿足一切種智故,即散五莖,皆住空中,化成花臺;後散二莖,亦止空中,夾佛兩邊。爾時國王及其眷屬,一切臣民,天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦樓羅、緊那羅、摩睺羅伽,人非人等,見此奇特,歎未曾有。於是普光如來,以無礙智,讚善慧言:『善哉,善哉!善男子!汝以是行,過無量阿僧祇劫,當得成佛,號釋迦牟尼如來、應供、正遍知、明行足、善逝、世間解、無上士、調御丈夫、天人師、佛、世尊。』當於善慧受記之時,無量天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、伽樓羅、緊那羅、摩睺羅伽,人非人等,散眾妙花,滿虛空中,而發誓言:『善慧將來成佛道時,我等皆願為其眷屬。』是時普光如來,即記之曰:『汝等皆當得生其國。』
その時、善慧は五百人の弟子たちと共に、多くの人々が供養を終えたのを見て、如来の優れた相好の姿をじっと観察しました。また、苦しむすべての衆生を救い、一切種智を満たしたいという願いから、五本の蓮の茎を散らすと、それらは空中に留まり、花の台となりました。後に二本の茎を散らすと、それらも空中に止まり、仏の両脇に寄り添いました。
その時、国王とその眷属、すべての臣民、天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽、人々やそれ以外の者たちは、この不思議な光景を見て、かつてないことを嘆じました。
すると普光如来は、妨げのない智慧をもって善慧を称え、こう言われました。 「善きかな、善きかな。善男子よ。あなたはこの行いによって、無量の阿僧祇劫を経て、仏となり、釈迦牟尼如来、応供、正遍知、明行足、善逝、世間解、無上士、調御丈夫、天人師、仏、世尊と号されるであろう。」
善慧が記別を受けたその時、無量の天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽、人々やそれ以外の者たちは、多くの妙なる花を散らし、虚空に満ちて、このように誓いを発しました。 「善慧が将来、仏道を成じられる時、私たちは皆、その眷属となることを願います。」
その時、普光如来はすぐに彼らに記別を与え、言われました。 「あなたがたは皆、その国に生まれることができるであろう。」
「爾時如來,既授記已,猶見善慧,作仙人髻,披鹿皮衣;如來欲令捨此服儀,即便化地,以為淤泥。善慧見佛應從此行而地濁濕,心自念言:『云何乃令千輻輪足蹈此而過?』即脫皮衣,以用布地,不足掩泥,仍又解髮,亦以覆之。如來即便踐之而度,因記之曰:『汝後得佛當於五濁惡世,度諸天人,不以為難,必如我也。』于時善慧,聞斯記已,歡欣踊躍,喜不自勝;即時便解一切法空,得無生忍,身昇虛空,去地七多羅樹,以偈讚佛:
その時、如来は授記を終えた後も、善慧が仙人の髷を結い、鹿の皮衣をまとっているのをご覧になりました。如来は彼にこの服装を捨てさせたいと思い、すぐに地面を泥沼に変えました。善慧は仏がこの道を通られるべきなのに地面がぬかるんでいるのを見て、心の中で考えました。「どうして千輻の輪を持つ尊い足をこの上に踏ませることができようか」と。そこで彼は皮衣を脱ぎ、地面に敷きましたが、泥を覆うには足りませんでした。さらに髪を解き、それでも覆いました。如来はその上を踏んで通り過ぎられ、こう記されました。「あなたは後に仏となって五濁悪世において、多くの人々や天を救うことになるが、それは難しくはない。必ず私のようになるだろう」と。その時、善慧はこの記を聞き、歓喜して躍り上がり、喜びを抑えきれませんでした。すぐに一切の法が空であることを理解し、無生忍を得て、体は虚空に昇り、地面から七本の多羅樹ほどの高さまで上がり、偈をもって仏を讃えました。
「『今見世間導, 令我開慧眼;
為說清淨法, 去離一切著。
今遇天人尊, 令我得無生;
願將來獲果, 亦如兩足尊。』
「今、世の導き手を見るが、 我に慧眼を開かせたもう。 清浄の法を説き給い、 一切の執着を離れ去らしむ。 今、天人の尊き方に遇い、 我に無生を得させたもう。 願わくは将来、果を得んことを、 両足の尊き方のごとくならん。」
「是時善慧,說此讚已,從空中下,到於佛前,五體投地,而白佛言:『唯願世尊,哀愍我故,聽我出家。』爾時普光如來答言:『善哉!善來比丘。』鬚髮自落,袈裟著身,即成沙門。
その時、善慧はこの讃嘆を唱え終えると、空中から降り立ち、仏陀の御前に進み出て、五体を地に投げ出し、こう申し上げました。「どうか世尊、私を哀れみ、出家を許してください。」すると、普光如来は答えられました。「善きかな、よく来たれ、比丘よ。」すると、髪と髭は自然に落ち、袈裟は身にまとわりつき、その場で沙門となりました。
「爾時有二貧窮老人,各與親屬一百人俱,覩佛相好,威德嚴顯,自傷貧乏無以供養。是時如來,愍其心至,即化前地,生諸草穢,令二貧人,見地不淨,發歡喜心,而便灑掃。普光如來,而記之曰:『汝過無量阿僧祇劫,釋迦牟尼佛出興於世,汝等爾時當作第一聲聞弟子。』爾時普光如來,記貧人已,與八萬四千比丘及燈照王,并婆羅門,諸臣民等,前後圍繞,入提播婆底城。
その時、二人の貧しい老人がおり、それぞれ親族百人を連れて、仏の相好の威厳と徳の輝きを目にし、自分たちの貧しさゆえに供養するものがないことを悲しんでいました。その時、如来は彼らの真心を憐れみ、すぐに目の前の地面を変えて雑草や汚れを生じさせ、二人の貧しい人にその不浄な場所を見せ、喜びの心を起こさせて掃除をさせました。普光如来は彼らにこう記別されました:『あなた方は無量阿僧祇劫を経た後、釈迦牟尼仏が世に現れる時、あなた方はその時、第一の声聞弟子となるであろう。』その時、普光如来は貧しい人々に記別を授けた後、八万四千の比丘たちや燈照王、そしてバラモンや諸臣、民衆たちと共に前後を囲まれ、提播婆底城に入られました。
「時燈照王與其眷屬,以四事供養普光如來并及八萬四千比丘,經四萬歲,王即捨位,以付其子;與其眷屬,及夫人眷屬,各八萬四千人,同於佛法,出家修道,得陀羅尼諸法三昧。善慧比丘,亦隨普光如來,受王供養,滿四萬歲,於諸法中,得深三昧,教化眾生不可稱數。爾時善慧比丘白普光如來言:『世尊!我於昔日,在深山中,得五奇特夢:一者、夢臥大海;二者、夢枕須彌;三者、夢海中一切眾生,入我身內;四者、夢手執日;五者、夢手執月。唯願世尊,為我解說此夢之相。』爾時普光如來答言:『善哉!汝若欲知此夢義者,當為汝說。夢臥大海者,汝身即時在於生死大海之中;夢枕須彌者,出於生死得般涅槃相;夢大海中一切眾生入身內者,當於生死大海,為諸眾生作歸依處;夢手執日者,智慧光明,普照法界;夢手執月者,以方便智,入於生死,以清涼法,化導眾生,令離惱熱。此夢因緣,是汝將來成佛之相。』善慧聞已,歡喜踊躍,不能自勝,禮佛而退。
その時、燈照王はその眷属と共に、四つの供養をもって普光如来と八万四千の比丘たちを四万年にわたって供養しました。王はその後、位を捨てて子に譲り、自らは眷属八万四千人、夫人もまた眷属八万四千人と共に、仏法に帰依して出家し、陀羅尼と諸法の三昧を得ました。善慧比丘もまた普光如来に従い、王の供養を受けて四万年を満たし、諸法において深い三昧を得て、数え切れないほどの衆生を教化しました。
その時、善慧比丘は普光如来に申し上げました。「世尊よ、私はかつて深い山中で五つの不思議な夢を見ました。一つは、大海に横たわる夢。二つは、須弥山を枕にする夢。三つは、海の中のすべての衆生が私の身の中に入ってくる夢。四つは、手に太陽を持つ夢。五つは、手に月を持つ夢です。どうか世尊、この夢の意味を解き明かしてください。」
すると普光如来は答えられました。「善きかな。汝がこの夢の意味を知りたいなら、説いてやろう。大海に横たわる夢は、汝の身が今まさに生死の大海の中にあることを示す。須弥山を枕にする夢は、生死を超えて涅槃に入る相である。海の中のすべての衆生が身に入る夢は、汝が生死の大海において、すべての衆生のよりどころとなることを意味する。手に太陽を持つ夢は、智慧の光明が法界をあまねく照らすこと。手に月を持つ夢は、方便の智慧をもって生死に入り、清涼の法で衆生を導き、悩みの熱から離れさせることである。この夢の因縁は、汝が将来、仏となる相なのだ。」
善慧はこれを聞き、歓喜して踊り上がり、抑えきれぬほどの喜びに包まれ、礼をして退きました。
「爾時普光如來,復經少時,入般涅槃。善慧比丘,護持正法,滿二萬歲,以三乘法,教化眾生,所利益者,不可稱計。爾時善慧比丘,於彼命終,即便上生,為四天王,以三乘法,化諸天眾;盡彼天壽,下生人間,為轉輪聖王,王四天下,七寶具足:一、金輪寶,二、白象寶,三、紺馬寶,四、神珠寶,五、玉女寶,六、主藏臣寶,七、主兵臣寶;千子具足,皆悉勇健,能伏怨敵;以正法治,無諸憂惱;常以十善,化諸人民。於此壽終,生忉利天,為彼天主;壽終下生,為轉輪聖王;終其壽命,乃至生於第七梵天;上為天王,下為聖主,各三十六反;其間或為仙人,或為外道六師,或為婆羅門,或為小王;如是變現,不可稱數。
その時、普光如来は、さらにしばらく時を経て、涅槃に入られた。善慧比丘は正法を護り、二万年の間、三乗の教えをもって衆生を教化し、利益を得た者は数え切れなかった。
やがて善慧比丘はその生涯を終え、四天王の一尊として生まれ変わった。三乗の教えで天界の衆生を教化し、天寿を全うした後、人間界に下り、転輪聖王となった。四天下を治め、七つの宝に恵まれた。それは、金輪宝、白象宝、紺馬宝、神珠宝、玉女宝、主蔵臣宝、主兵臣宝である。千人の王子に恵まれ、皆勇ましく健やかで、敵を打ち伏せることができた。正法をもって国を治め、憂いや悩みはなく、常に十善をもって民を教化した。
この生涯を終えると、忉利天に生まれ、その天主となった。天寿を終えて下生し、再び転輪聖王となった。その寿命を終え、ついには第七梵天にまで生まれ変わった。天界では天王として、下界では聖主として、それぞれ三十六回生まれ変わった。その間には仙人となったり、外道の六師となったり、バラモンとなったり、小国の王となったりと、様々に姿を変え、その数は計り知れないほどであった。
「爾時善慧菩薩,功行滿足,位登十地,在一生補處,近一切種智,生兜率天,名聖善白;為諸天主,說於一生補處之行;亦於十方國土,現種種身,為諸眾生,隨應說法;期運將至,當下作佛,即觀五事:一者、觀諸眾生熟與未熟;二者、觀時至與未至;三者、觀諸國土何國處中;四者、觀諸種族何族貴盛;五者、觀過去因緣,誰最真正應為父母。觀五事已,即自思惟:『今諸眾生,皆是我初發心以來所成熟者,堪能受於清淨妙法,於此三千大千世界,此閻浮提迦毘羅斾兜國最為處中,諸族種姓釋迦第一甘蔗苗裔聖王之後:觀白淨王過去因緣,夫妻真正堪為父母;又觀摩耶夫人,壽命脩短,懷抱太子,滿足十月,太子便生,生七日已,其母命終。』
その時、善慧菩薩は、修行の功徳が満ち足り、十地の位に登り、一生補処の境地に達し、一切種智に近づき、兜率天に生まれ、聖善白と名乗られた。諸天の主として、一生補処の行いを説き、また十方の国土にさまざまな姿を現し、衆生に応じて法を説かれた。時が満ちて仏となろうとする時が近づき、五つのことを観察された。
第一に、衆生が教えを受ける機が熟しているかどうか。 第二に、時が到来しているかどうか。 第三に、どの国土が中心としてふさわしいか。 第四に、どの一族が最も尊く盛んであるか。 第五に、過去の因縁から、誰が真に父母としてふさわしいか。
五つのことを観察し終えると、自ら思惟された。 「今、衆生は皆、私が初発心して以来、教化を積み重ねてきた者たちであり、清浄な妙法を受けるに堪える。この三千大千世界において、この閻浮提の迦毘羅衛城の国が最も中心としてふさわしい。諸族の種姓の中では、釈迦族が第一であり、甘蔗王の末裔として聖王の血筋を引いている。白浄王の過去の因縁を観れば、夫妻ともに真実であり、父母としてふさわしい。また摩耶夫人の寿命は長くはないが、太子を懐妊し、十月満ちて太子は生まれ、生まれて七日後にその母は命を終えるであろう。」
「既作此觀,又自思惟:『我今若便即下生者,不能廣利諸天人眾,仍於天宮,現五種相,令諸天子,皆悉覺知菩薩期運應下作佛:一者、菩薩眼現瞬動;二者、頭上花萎;三者、衣受塵垢;四者、腋下汗出;五者、不樂本座。』時諸天眾,忽見菩薩有此異相,心大驚怖,身諸毛孔,血流如雨,自相謂言:『菩薩不久捨於我等。』
この観想を成し遂げると、また自ら考えました。 「今すぐに下生すれば、天界や人界の衆生を広く利益することができません。 それゆえ、天宮において五つの相を現し、諸天子たちに菩薩が期運を迎え、下生して仏となることを知らせましょう。 一、菩薩の目が瞬き動くこと。 二、頭上にある花が萎れること。 三、衣に塵や垢がつくこと。 四、腋の下に汗が出ること。 五、本来の座を好まなくなること。」 その時、天界の衆生たちは突然、菩薩にこのような異相があるのを見て、心に大きな驚きと恐れを抱き、全身の毛穴からは雨のように血が流れ出ました。 互いに言い合いました。 「菩薩はまもなく、私たちを見捨てられるのです。」
「爾時菩薩,又現五瑞:一者,放大光明,普照三千大千世界;二者、大地十八相動,須彌海水,諸天宮殿,皆悉震搖;三者、諸魔宮宅隱蔽不現;四者、日月星辰無復光明;五者、天龍八部身皆震動,不能自禁。是時兜率諸天,見菩薩身,已有五相,又復覩外五希有事,皆悉聚集,到菩薩所,頭面禮足白言:『尊者!我等今日見此諸相,舉身震動,不能自安,唯願為我釋此因緣。』菩薩即便答諸天言:『善男子!當知諸行皆悉無常,我今不久,捨此天宮,生閻浮提。』
その時、菩薩はさらに五つの瑞相を現されました。
第一に、大いなる光明を放ち、三千大千世界をあまねく照らされました。 第二に、大地が十八種の相で揺れ動き、須弥山の海や水、諸天の宮殿までもがことごとく震動しました。 第三に、諸々の魔の宮殿や住処が隠れて見えなくなりました。 第四に、日月星辰の光が失われました。 第五に、天龍八部衆の身が震え、自らを制することができませんでした。
その時、兜率天の諸天たちは、菩薩の御身にすでに五つの相が現れているのを見、さらに外にも五つの稀有な出来事が起こっているのを目にし、皆集まって菩薩のもとに赴き、頭面を地に付けて礼拝し、こう申し上げました。 「尊者よ。私どもは今日、これらの相を見て、全身が震え、心安らぐことができません。どうか、この因縁を私どものために解き明かしてください。」
菩薩はすぐに諸天たちに答えられました。 「善男子よ。知るがよい。諸行はすべて無常である。私はまもなくこの天宮を捨て、閻浮提に生まれよう。」
「于時諸天,聞此語已,悲號涕泣,心大憂惱,舉身血現,如波羅奢花;或有不復樂於本座;或有棄其莊嚴之具;或有宛轉迷悶於地;或有深歎無常苦者。爾時有一天子即說偈言:
その時、諸天たちはこの言葉を聞くと、悲しみの声をあげて涙を流し、心は大きな憂いに沈み、全身から血が現れるほどに──それはまるで波羅奢の花のようであった。ある者はもはや自らの座を楽しむこともなく、ある者は身に着けた荘厳な飾りを投げ捨て、ある者は地に転がりもだえ苦しみ、ある者は深く無常の苦しみを嘆いた。その時、一人の天子が即座に偈を唱えた。
「『菩薩在於此, 開我等法眼;
今者遠我去, 如盲離導師。
又如欲渡水, 忽然失橋船;
亦似嬰孩兒, 喪亡其慈母。
我等亦如是, 失所歸依處,
方漂生死流, 了無有出緣。
我等於長夜, 為癡箭所射,
既失大醫王, 誰當救我者?
滯臥無明床, 長沒愛欲海,
永絕尊者訓, 未見超出期。』
「菩薩がここにおられるときは、私たちに法の眼を開いてくださいました。
今、遠くへ去られてしまい、まるで盲人が導き手を失ったかのようです。
また、水を渡ろうとして、突然に橋や船を失ったかのようでもあります。
幼い子どもが慈愛深い母を亡くしたようにも感じられます。
私たちも同じです。頼りとする拠り所を失い、
生死の流れに漂い、脱する道筋がまったく見えません。
私たちは長い夜のなか、愚かさの矢に射られています。
偉大な医王を失ってしまい、いったい誰が私たちを救ってくれるのでしょうか?
無明の床に臥せたまま、愛欲の海に深く沈み、
尊き方の教えが絶えてしまい、超え出る時が訪れる見込みもありません。」
「爾時菩薩,見諸天子悲泣懊惱,又復聞說戀慕之偈,即以慈音而告之曰:『善男子!凡人受生無不死者;恩愛合會,必有別離;上至阿迦膩吒天,下至阿鼻地獄,其中一切諸眾生等,無有不為無常大火之所煎炙。是故汝等不應於我獨生戀慕;我今與汝皆悉未離生死熾火,乃至一切貧富貴賤,皆不免脫。』於是菩薩即說偈言:
その時、菩薩は諸々の天子たちが悲しみ嘆き苦しむ様子を見、また彼らの慕い偈を聞くと、慈愛に満ちた声でこう告げられた。 「善き男子よ、人は生を受ければ必ず死ぬもの。愛し合う者も必ず別れる時が来る。天の頂きから地獄の底まで、すべての生きとし生けるものは、無常という激しい炎に焼かれることを免れない。だから、私だけを慕い悲しむのはよしなさい。今の私も、あなた方も、まだ生死の炎から離れられてはいないのだ。貧しい者も富める者も、身分の高い者も低い者も、誰一人としてこの炎から逃れることはできないのだ。」 そして菩薩は次の偈を説かれた。
「『諸行無常, 是生滅法;
生滅滅已, 寂滅為樂。』
「すべてのものは移り変わり、常なるものはない。これが生滅の理法である。
生滅の理法を超え、静かなる滅に至ってこそ、真の安楽が得られる。」
「爾時菩薩語天子言:『此偈乃是過去諸佛之所共說,諸行性相法皆如是;汝等今者勿生憂惱,我於生死無量劫來,今者唯有此一生在,不久當得離於諸行。汝等當知,今是度脫眾生之時,我應下生閻浮提中,迦毘羅斾兜國,甘蔗苗裔,釋姓種族,白淨王家。我生於彼,遠離父母,棄捨妻子及轉輪王位,出家學道,勤修苦行,降伏魔怨,成一切種智,轉於法輪。一切世間天人魔梵,所不能轉,亦依過去諸佛所行法式,廣利一切諸天人眾,建大法幢,傾倒魔幢,竭煩惱海,淨八正路,以諸法印,印眾生心;設大法會,請諸天人。汝等爾時亦當皆同在於此會,飡受法食;以是因緣,不應憂惱。』爾時菩薩,以偈頌曰:
その時、菩薩は天子たちに言われた。
「この偈は、過去の諸仏が共に説かれたものです。すべての現象の本質は、このように移り変わるもの。どうか皆さん、今、憂い悩むことなくしてください。私は無量の劫にわたって生死を繰り返してきましたが、今はただこの最後の一生を残すのみ。まもなく、あらゆる移り変わる現象から離れることができるでしょう。どうか覚えておいてください。今こそ、衆生を救い渡す時です。私は下って閻浮提の中、迦毘羅衛の都、甘蔗の末裔、釈迦族の種族、浄飯王の家に生まれなければなりません。私はそこに生まれ、父母を離れ、妻子と転輪聖王の位を捨てて出家し、道を学び、苦行を勤め修め、魔の怨敵を降伏させ、一切種智を成就し、法輪を転じましょう。それは、一切の世間の天・人・魔・梵天さえも転じることのできないものであり、また過去の諸仏が歩まれた法の様式に依って、広く一切の天・人たちを利益し、大いなる法の幢を建て、魔の幢を倒し、煩悩の海を枯渇させ、八正道の路を清め、諸々の法印をもって衆生の心に印を押し、大法会を設けて諸々の天・人たちを招きましょう。あなたがたもその時、必ずやこの会に共に在って、法の食を味わい受けることでしょう。この因縁によって、憂い悩むべきではありません」
その時、菩薩は偈をもって次のように述べられた。
「『我於此不久, 當下閻浮提,
迦毘羅斾兜, 白淨王宮生;
辭父母親屬, 捨轉輪王位;
出家行學道, 成一切種智。
建立正法幢, 能竭煩惱海,
閉塞惡趣門, 淨開八正道。
廣利諸天人, 其數不可計;
以是因緣故, 不應生憂惱。』
「私はまもなく、閻浮提に降り立ち、 カピラヴァストゥの、白浄王の宮殿に生まれよう。 父母や親族に別れを告げ、転輪聖王の位を捨て、 出家して修行し、一切種智を完成させる。 正法の旗を立て、煩悩の海を枯れ果てさせ、 悪しき道の門を閉ざし、八正道を清らかに開く。 多くの天と人々を広く利益し、その数は計り知れない。 このような因縁ゆえに、憂い悩むべきではない。」
「爾時菩薩舉身毛孔皆放光明;諸天子等聞菩薩言,又復見身出大光明,歡喜踴躍,離諸憂苦。各心念言:『菩薩不久當成正覺。』
その時、菩薩は全身の毛穴から光を放たれた。諸天の天子たちは菩薩の言葉を聞き、また菩薩の身から大いなる光明が放たれるのを見て、歓喜に湧き立ち、あらゆる憂いと苦しみから離れた。彼らは心の中でこう思った。「菩薩は間もなく正覚を成し遂げられるであろう。」
「爾時菩薩觀降胎時至,即乘六牙白象,發兜率宮;無量諸天,作諸伎樂,燒眾名香,散天妙花;隨從菩薩,滿虛空中,放大光明,普照十方;以四月八日明星出時,降神母胎。于時摩耶夫人,於眠寤之際,見菩薩乘六牙白象騰虛而來,從右脇入,影現於外如處琉璃;夫人體安快樂,如服甘露,顧見自身,如日月照,心大歡喜,踊躍無量。見此相已,豁然而覺,生希有心,即便往至白淨王所,而白王言:『我於向者眠寤之際,其狀如夢,見諸瑞相,極為奇特。』王即答言:『我向亦見有大光明,又復覺汝顏貌異常,汝可為說所見瑞相。』夫人即便具說上事,以偈頌曰:
その時、菩薩は降誕の時が来たのを観じ、六牙の白象に乗って、兜率天の宮殿を出発された。無数の天部たちが、さまざまな音楽を奏で、多くの名香を焚き、天界の妙なる花を散らし、菩薩に随従して虚空に満ち、大いなる光明を放って十方をあまねく照らした。四月八日、明けの明星が出る時に、神聖な魂が母の胎内に降りた。
その時、摩耶夫人は、まどろみと目覚めの間に、菩薩が六牙の白象に乗って虚空から飛来し、右脇から入って来られるのを見た。その姿は外から透けて見え、あたかも瑠璃の中にいるようであった。夫人の体は安らかで快く、甘露をいただいたかのようであり、自身を見回すと、まるで日月に照らされているようで、心は大いに歓喜し、限りなく踊り上がる思いであった。
この相を見た後、はっと目覚め、稀有な心が生じ、すぐに浄飯王のもとに行き、王にこう申し上げた。「私はさきほど、まどろみと目覚めの間に、夢のようなありさまを見ました。それは極めて奇特な瑞相でした。」王はすぐに答えて言った。「私もさきほど、大いなる光明を見た。また、あなたの顔貌が普段と違っているのを感じた。どうか、見た瑞相について話してほしい。」夫人はすぐに、上の出来事を詳しく述べ、次の偈頌をもって言った。
「『見有乘白象, 皎淨如日月;
釋梵諸天眾, 皆悉執寶幢,
燒香散天花, 并作眾伎樂;
充滿虛空中, 圍繞而來下。
來入我右脇, 猶如處琉璃;
今以現大王, 此為何瑞相?』
「白い象に乗った姿が見えました。それは月や太陽のように清らかで輝いていました。
帝釈天や梵天をはじめ、多くの天の神々が皆、宝の幢を持ち、
香を焚き、天の花を散らし、さまざまな音楽を奏でながら、
虚空に満ちあふれ、取り囲んで降りてきました。
そして、私の右脇に入りました。まるで瑠璃の中にいるかのように。
今、大王にお見せしますが、これはどのような吉兆なのでしょうか?」
「爾時白淨王,見摩耶夫人諸瑞相已,歡喜踊躍,不能自勝;即便遣請善相婆羅門,以妙香花種種飲食而供養之。供養畢已,示夫人右脇并說瑞相,白婆羅門言:『願為占之,有何等異?』時婆羅門,即占之曰:『大王!夫人所懷太子,諸善妙相,不可具說,今當為王略言之耳。大王當知,今此夫人胎中之子,必能光顯釋迦種族,降胎之時,放大光明,諸天釋梵,執侍圍繞,此相必是正覺之瑞,若不出家,為轉輪聖王,王四天下,七寶自至,千子具足。』時王聞此婆羅門言,深自慶幸,踊躍無量;即以金銀雜寶象馬車乘,及以村邑,而用供給此婆羅門。時摩耶夫人,以其婇女,并及珍寶,亦以奉施。
その時、白浄王は摩耶夫人に現れた様々な吉祥の相を見て、喜びに胸を踊らせ、抑えきれぬほどであった。すぐに占いに優れたバラモンを招き、良い香りのする花や様々な食べ物を供えておもてなしした。供養が終わると、夫人の右脇を示し、吉祥の相について話し、バラモンに言った。「どうか占ってください。これはどのような特別なことなのでしょうか?」
その時、バラモンは占って言った。「大王よ、夫人がお腹におられる太子は、数えきれないほどの優れた吉祥の相をお持ちです。全てを申し上げることはできませんが、今、大王のために簡単に申し上げましょう。大王よ、今、夫人の胎内におられるお子様は、必ずや釈迦族を輝かせ、世に知らしめるお方です。胎内にお入りになる時には、大いなる光明を放ち、諸天や帝釈天、梵天がお仕えし、取り囲まれるでしょう。この相は、まさに正覚(悟り)を開かれる方の吉兆です。もし出家されなければ、転輪聖王となって四天下を治め、七宝が自然に現れ、千人の子供に恵まれるでしょう。」
王はこのバラモンの言葉を聞き、深く喜び、計り知れないほどの歓喜に包まれた。そして、金銀や様々な宝物、象や馬、車、さらに村々をも、このバラモンに与えておもてなしした。摩耶夫人もまた、侍女たちと共に、珍宝を捧げて施した。
「自從菩薩處胎以來,摩耶夫人,日更修行六波羅蜜;天獻飲食,自然而至,不復樂於人間之味;三千大千世界,常皆大明,其界中間幽冥之處,日月威光所不能照,亦皆朗然。其中眾生各得相見,共相謂言:『此中云何忽生眾生?』菩薩降胎之時,三千大千世界十八相動,清涼香風起於四方,諸抱疾者皆悉除愈,貪欲瞋癡亦皆休息。
菩薩が母胎にお宿りになって以来、摩耶夫人は日々六波羅蜜の修行に励まれました。天から飲食が捧げられ、自然と手元に届くので、もはや人間界の味には興味を失われました。三千大千世界は常に大いなる光明に満ち、世界の間にある暗く深い場所でさえ、太陽や月の威光さえ届かなかったその場所も、すべて明るく照らされました。そこに住む衆生たちは互いに顔を見合わせ、こう言い合いました。「ここにどうして突然、衆生が現れたのだろうか?」
菩薩が胎内に降臨された時、三千大千世界は十八種の相で揺れ動き、四方から清らかで涼やかな香りの風が起こりました。病を抱えていた者は皆、その病が癒え、貪りや怒り、愚かさの心も、すべて静まりました。
「爾時兜率天宮,有一天子,作是念言:『菩薩已生白淨王宮,我亦當復下生人間,菩薩成佛,我得在先為其眷屬,供養聽法。』作此念已,即便下生王舍城中,明月種姓,旃陀羅及多王家。復有天子,生舍衛國王家;復有天子,生偷羅厥叉國王家;復有天子,生犢子國王家;復有天子,生跋羅國王家;復有天子,生盧羅國王家;復有天子,生德叉尸羅國王家;復有天子,生拘羅婆國王家;復有天子,生婆羅門家;復有天子,生長者居士毘舍首陀羅家;復有五百天子,生釋種姓家;有如是等諸天子眾,其數凡有九十九億,下生人間。又從他化自在天,乃至四天王所下生者,不可稱計。復有色界天王與其眷屬亦皆下生,而作仙人。
その時、兜率天の宮殿に、一人の天子がいて、このように思いを巡らせた。「菩薩はすでに白浄王の宮殿に生まれられた。私もまた人間界に下って生まれ変わろう。菩薩が仏となられた時、真っ先にその眷属となり、供養し、説法を聞く者となろう。」この思いを抱くと、すぐに王舎城に下生し、明月種姓の旃陀羅及多王家に生まれた。
また別の天子は、舎衛国の王家に生まれ、 また別の天子は、偷羅厥叉国の王家に生まれ、 また別の天子は、犢子国の王家に生まれ、 また別の天子は、跋羅国の王家に生まれ、 また別の天子は、盧羅国の王家に生まれ、 また別の天子は、徳叉尸羅国の王家に生まれ、 また別の天子は、拘羅婆国の王家に生まれ、 また別の天子は、バラモンの家に生まれ、 また別の天子は、長者や居士、毘舎、首陀羅の家に生まれた。
さらに五百人の天子は、釈迦族の家に生まれた。 このような天子たちの数は、合わせて九十九億にのぼり、人間界に下生したのである。
また、他化自在天から四天王天に至るまで、下生した者は数えきれないほどであった。 さらに、色界の天王とその眷属たちもまた、すべて下生して仙人となった。
「菩薩在胎,行、住、坐、臥,無所妨礙,又不令母有諸苦患。菩薩晨朝於母胎中,為色界諸天,說種種法。至日中時,為欲界諸天,亦說諸法。於日晡時,又復為諸鬼神說法。於夜三時,亦復如是,成熟利益無量眾生。菩薩在胎,夫人婇女有來禮拜而供養者;或復有來作是願言:『當令得成轉輪聖王。』菩薩聞已,心不喜樂。或復有來作是願言:『當令得成一切種智。』菩薩聞已,心大歡喜。
菩薩が母の胎内におられる間、歩くこと、立つこと、座ること、寝ること、いずれも妨げられることはなく、また母に苦しみや患いが起こることもありませんでした。菩薩は朝には母の胎内から色界の諸天のために様々な法を説き、昼には欲界の諸天のためにも法を説かれました。夕方にはさらに諸鬼神のために法を説き、夜の三つの時も同様に、無量の衆生を成熟させ利益を与えられたのです。
菩薩が胎内におられる時、夫人や侍女たちが礼拝に訪れ供養する者もいれば、またある者はこう願って訪れました:『どうか転輪聖王となられますように。』菩薩はこれを聞いても、心に喜びは感じられませんでした。また別の者がこう願って訪れました:『どうか一切種智を得られますように。』菩薩はこれを聞くと、心に大きな喜びを感じられたのです。
「菩薩處胎,垂滿十月,身諸支節及以相好,皆悉具足,亦使其母諸根寂定,樂處園林,不喜憒鬧。時白淨王,心自思惟:『夫人懷妊,日月將滿,而不見其有生產相。』作此念時,會遇夫人遣信白王:『我今欲出園林遊觀。』時王聞此益懷歡喜;即勅於外,令淨掃灑藍毘尼園,更使栽植諸妙花果;流泉浴池,悉令清潔;欄楯階陛,皆以七寶而為莊嚴。翡翠鴛鴦,鸞鳳凰鷖,異類眾鳥,鳴集其中;懸繒幡蓋,散花燒香,作諸伎樂,猶如帝釋歡喜之園。又勅中間所經行處,皆令嚴淨種種莊嚴。又勅嚴辦十萬七寶車輦,一一車輦,雕玩殊絕;又復勅外,嚴辦四軍,象兵、馬兵、車兵、步兵;又復選取後宮婇女,容顏端正,不老不少,氣性調和,聰慧明了,其數凡有八萬四千,以用給侍摩耶夫人。又復擇取八萬四千端正童女,著妙瓔珞嚴身之具,齎持香花,先往住彼藍毘尼園。王又勅諸群臣百官,夫人去者,皆悉侍從。於是夫人,即昇寶輿,與諸官屬并及婇女,前後導從,往藍毘尼園。爾時復有天龍八部,亦皆隨從,充滿虛空。
菩薩が母の胎内におられて、十月が満ちようとしていた時、その身のあらゆる部分や相好は、ことごとく具わっており、また母である摩耶夫人の諸根も静かに定まり、園林を楽しみ、喧騒を好まれませんでした。
その時、浄飯王は心の中で考えられました。 「夫人が懐妊されてから、月日が満ちようとしているのに、出産の兆しが見えない。」
このように思われた時、ちょうど夫人から使いが来て、王に申し上げました。 「私は今、園林に出て遊覧したいと思います。」
王はこれを聞いて、ますます喜びを抱かれました。すぐに外に命じて、藍毘尼園を清く掃き清めさせ、さらにさまざまな妙なる花や果物を植えさせました。流れる泉や浴池も、すべて清らかにさせました。欄干や階段も、七宝で荘厳させました。
翡翠や鴛鴦、鸞や鳳凰、鷖など、さまざまな種類の多くの鳥たちが、その中で鳴き集まりました。絹の幡や蓋を掛け、花を散らし、香を焚き、さまざまな音楽を奏で、それはまるで帝釈天の歓喜園のようでした。
また、途中の通り道もすべて、厳かに清浄にし、種々に荘厳させよと命じました。 さらに、十万の七宝の車輦を厳かに整えさせ、一々の車輦は、彫刻や装飾がこの上なく優れたものでした。
また外には、四軍──象兵、馬兵、車兵、歩兵──を厳かに整えさせました。 さらに、後宮の侍女たちの中から、容貌が端正で、老いも若きもなく、気性が調和し、聡明で物事に明るい者を選び取りました。その数は八万四千に及び、摩耶夫人にお仕えさせるためでした。
また、八万四千の端正な童女を選び取り、美しい瓔珞などの身を飾る具を着け、香や花を持たせて、先に藍毘尼園に行かせました。
王はまた、諸々の群臣や百官に命じ、夫人が行かれる時は、皆が侍従するようにとされました。
そこで夫人は、宝輿に昇られ、諸々の官属や侍女たちと共に、前後を導かれ護られて、藍毘尼園へと向かわれました。
その時、天龍八部もまた皆、随従し、虚空に満ちていました。
「爾時夫人,既入園已,諸根寂靜;十月滿足,於二月八日日初出時,夫人見彼園中,有一大樹,名曰無憂,花色香鮮,枝葉分布,極為茂盛;即舉右手,欲牽摘之;菩薩漸漸從右脇出。于時樹下,亦生七寶七莖蓮花,大如車輪;菩薩即便墮蓮花上,無扶侍者,自行七步,舉其右手而師子吼:『我於一切天人之中最尊最勝,無量生死於今盡矣,此生利益一切人天。』說是言已,時四天王,即以天繒接太子身,置寶机上;釋提桓因手執寶蓋,大梵天王又持白拂,侍立左右;難陀龍王、優波難陀龍王,於虛空中,吐清淨水,一溫一涼,灌太子身——身黃金色有三十二相,放大光明,普照三千大千世界——天龍八部亦於空中作天伎樂,歌唄讚頌,燒眾名香,散諸妙花,又雨天衣及以瓔珞,繽紛亂墜不可稱數。
その時、夫人は園に入ると、心身は静まり、十月の満ちた二月八日の日の出の頃、園の中に一本の大きな樹があるのをご覧になりました。その樹は「無憂樹」と呼ばれ、花の色は鮮やかで香り高く、枝葉は広がり、大変に茂っていました。夫人は右手を挙げてその枝を引こうとされると、菩薩は徐々に右脇からお生まれになりました。
その時、樹の下には七宝でできた七本の蓮の花が、車輪ほどの大きさで生じました。菩薩はその蓮の花の上に降り立ち、誰の助けも借りずに七歩歩まれ、右手を挙げて獅子吼のように宣言されました。
「私はすべての天と人の中で最も尊く勝れた者である。無量の生死は今ここで終わり、この生は一切の天と人を利益するであろう」
この言葉を語り終えられると、四天王が天の絹で太子のお体を受け止め、宝の机の上に安置されました。帝釈天は宝蓋を手に持ち、大梵天王は白い払子を持って左右に侍りました。難陀龍王と優波難陀龍王は虚空の中で清浄な水を吐き出し、一温一涼で太子のお体を灌ぎました。
太子のお体は黄金色に輝き、三十二相を備え、大いなる光明を放って三千大千世界を遍く照らしました。天龍八部もまた空中で天の伎楽を奏で、歌い讃嘆し、さまざまな名香を焚き、妙なる花を散らし、天の衣や瓔珞を雨のように降らせ、数え切れないほどに乱れ落ちました。
「爾時摩耶夫人生太子已,身安快樂,無有苦患,歡喜踊躍,止於樹下,前後自然忽生四井,其水香潔具八功德。爾時摩耶夫人與其眷屬,隨所欲須,自恣洗漱。復有諸夜叉王,皆悉圍繞,守護太子及摩耶夫人。當爾之時,閻浮提人,乃至阿迦膩吒天,雖離喜樂,皆亦於此歡喜讚歎:『一切種智,今出於世,無量眾生,皆得利益;唯願速成正覺之道,轉於法輪,廣度眾生。』唯有魔王,獨懷愁惱,不安本座。
その時、摩耶夫人は太子をお産みになった後、心身ともに安らかで喜びに満ち、苦しみや悩みはなく、歓喜のあまり踊り出したいほどの気持ちで、樹の下にお休みになりました。すると、前後に突然四つの井戸が自然に湧き出し、その水は清らかで香り高く、八つの功徳を備えていました。摩耶夫人はご眷属と共に、思いのままにその水で洗い清められました。
また、多くの夜叉王たちも集まり、太子と摩耶夫人を守り囲みました。その時、閻浮提の人々から阿迦膩吒天に至るまで、喜びを超えた境地にあっても、皆この出来事を喜び称えて言いました。
「一切種智が今、この世に現れました。無量の衆生が利益を得るでしょう。どうか速やかに正覚の道を成し、法輪を転じ、広く衆生を救ってください。」
ただ魔王だけは、一人で憂い悩み、その座に安らぐことができませんでした。
「當爾之時,所感瑞應,三十有四:一者、十方世界,皆悉大明;二者、三千大千世界,十八相動丘墟平坦;三者、一切枯木悉更敷榮,國界自然生奇特樹;四者、園苑生異甘果;五者、陸地生寶蓮花大如車輪;六者、地中伏藏悉自發出;七者、諸藏珍寶放大光明;八者、諸天妙服自然來降;九者、眾川萬流恬靜澄清;十者、風止雲除空中明淨;十一者、香風芬芳從四方來,細雨潤澤以𣫍飛塵;十二者、國中疾病皆悉除愈;十三者、國內宮舍無不明曜,燈燭之光不復為用;十四者、日月星辰停住不行;十五者、毘舍佉星下現人間,待太子生;十六者、諸梵天王執素寶蓋,列覆宮上;十七者、八方諸仙人師奉寶來獻;十八者、天百味食自然在前;十九者、無數寶瓶盛諸甘露;二十者、諸天妙車載寶而至;二十一者、無數白象子首戴蓮花,列住殿前;二十二者、天紺馬寶自然而來;二十三者、五百白師子王從雪山出,息其惡情,心懷歡喜,羅住城門;二十四者、諸天伎女於虛空中作妙音樂;二十五者、諸天玉女執孔雀拂,現宮牆上;二十六者、諸天玉女各持金瓶盛滿香汁,列住空中;二十七者、諸天歌頌讚太子德;二十八者、地獄休息毒痛不行;二十九者、毒蟲隱伏,惡鳥善心;三十者、諸惡律儀一時慈悲;三十一者、國內孕婦產者悉男,其有百病自然除愈;三十二者、一切樹神化作人形,悉來禮侍;三十三者、諸餘國王各齎名寶同來臣伏;三十四者、一切人天無非時語。
その時、三十四もの瑞兆が現れました。
一、十方世界がすべて明るく輝いた。 二、三千大千世界が十八種の震動を起こし、丘や窪地が平らになった。 三、すべての枯れ木が再び繁り、国中に自然と珍しい木が生えた。 四、庭園に珍しい甘い果実がなった。 五、大地に車輪ほどの大きさの宝の蓮華が咲いた。 六、地中に埋もれていた宝物がすべて現れた。 七、あらゆる宝が輝きを放った。 八、天人の美しい衣が自然と降りてきた。 九、すべての川や流れが静かで澄み切った。 十、風が止み雲が晴れ、空が明るく清らかになった。 十一、四方から芳しい香風が吹き、細雨が塵を潤して鎮めた。 十二、国中の病気がすべて癒えた。 十三、国内の宮殿や家屋がすべて輝き、灯火を使う必要がなくなった。 十四、太陽と月と星々が動きを止めた。 十五、毘舎佉星が下界に現れ、太子の誕生を待った。 十六、梵天王たちが白い宝蓋を持ち、宮殿の上に並んで覆った。 十七、八方の仙人たちが宝を捧げて献上した。 十八、天の百味の食べ物が自然と前に現れた。 十九、無数の宝瓶に甘露が満たされた。 二十、天の美しい車が宝を載せてやって来た。 二十一、無数の白象の子が蓮華を頭に戴き、殿前に並んで立った。 二十二、天の紺碧の馬宝が自然と現れた。 二十三、五百の白獅子王が雪山から出て、悪しき心を静め、喜びに満ちて城門に並んだ。 二十四、天の伎女たちが虚空で妙なる音楽を奏でた。 二十五、天の玉女たちが孔雀の払子を持ち、宮殿の壁の上に現れた。 二十六、天の玉女たちがそれぞれ金瓶に香汁を満たして持ち、空中に並んで立った。 二十七、天女たちが歌を歌い太子の徳を讃えた。 二十八、地獄の苦しみが休み、痛みがなくなった。 二十九、毒虫は隠れ、悪鳥は善き心を持った。 三十、悪しき行いをしていた者たちが一時に慈悲の心を持った。 三十一、国内の妊婦はみな男子を産み、あらゆる病が自然に癒えた。 三十二、すべての樹木の神々が人形に化けて、礼拝に来た。 三十三、他の国々の王たちがそれぞれ名宝を持ち、共に来て臣従した。 三十四、すべての人々と天人が、時ならぬ言葉を発することはなかった。
「爾時諸婇女眾見此瑞相,極大歡喜,自相謂言:『太子今生,有如此等嘉祥之事,唯願長壽,無諸疾苦,勿令我等生大憂惱。』作此言已,以天細㲲裹抱太子,至夫人所。時四天王在虛空中,恭敬隨從;釋提桓因執蓋來覆;有二十八大鬼神王,在園四角,守衛奉護。爾時有一青衣,聰慧明了,從藍毘尼園,還入宮中,到白淨王所而白王言:『大王威德,轉更增進;摩耶夫人已生太子,顏貌端正,有三十二相、八十種好;墮蓮花上,自行七步,舉其右手而師子吼:「我於一切天人之中最尊最勝,無量生死於今盡矣,此生利益一切人天。」有如是等諸奇特事,非可具說。』時白淨王聞彼青衣說此語已,歡喜踊躍不能自勝,即脫身瓔珞而以賜之。
その時、侍女たちはこの吉祥の相を見て、大いに喜び、互いに言い合いました。「太子がお生まれになり、このようなめでたいしるしがありました。どうか長生きなさり、病苦もなく、私たちが大きな憂いに沈むことのないように」と。こう言い終えると、天の細布で太子を包んで抱き、夫人のもとへと参りました。その時、四天王が虚空の中にいて、恭しく従い、帝釈天が蓋を持って覆いかざしました。二十八の大鬼神王が園の四隅にいて、守り護りました。
その時、一人の侍女が、聡明で物わかりがよく、藍毘尼園から宮殿に戻り、浄飯王のもとに行って申し上げました。「大王の威徳はますます増し、摩耶夫人が太子をお産みになりました。お顔は端正で、三十二相八十種好を備え、蓮華の上にお立ちになり、七歩歩いて、右手を挙げて獅子吼のように宣言なさいました。『私は一切の天と人の中で最も尊く勝れており、無量の生死は今ここで終わり、この生は一切の人天を利益するものである』と。このような数々の奇特なことがあり、とても言い尽くせません」。
浄飯王はその侍女の言葉を聞くと、喜び躍り上がって我を忘れ、すぐに身に着けていた瓔珞を外して彼女に賜りました。
「爾時白淨王即嚴四兵眷屬圍繞,并與一億釋迦種姓,前後導從,入藍毘尼園,見彼園中天龍八部皆悉充滿;到夫人所,見太子身,相好殊異,歡喜踊躍,猶如江海諸大波浪;慮其短壽又懷悚惕,譬如須彌山王,難可動搖;大地動時,此山乃動。彼白淨王素性恬靜,常無歡慼,今見太子,一喜一懼,亦復如是。摩耶夫人,為性調和。既生太子,見諸奇瑞,倍增柔軟。爾時白淨王,叉手合掌,禮諸天神;前抱太子,置於七寶象輿之上,與諸群臣後宮婇女虛空諸天,作諸伎樂,隨從入城。時白淨王及諸釋子,未識三寶,即將太子,往詣天寺;太子既入,梵天形像,皆從座起,禮太子足而語王言:『大王!當知,今此太子天人中尊;虛空天神,皆悉禮敬;大王!豈不見如此耶?云何而今來此禮我?』時白淨王及諸釋子,群臣內外,聞見是已,歎未曾有。即將太子出於天寺,還入後宮。
その時、白浄王は四種の軍勢を整え、眷属に囲まれ、一億の釈迦族を従えて、前後に導かれ、藍毘尼園に入られた。園の中には天龍八部衆が満ち溢れているのをご覧になり、夫人のもとへ行き、太子の身に優れた相好を見て、喜び踊り上がった。それはまるで江や海の大きな波のようであった。しかし、太子の寿命が短いのではないかと心配し、また恐れも感じた。それは須弥山王が揺るがし難いように、大地が動く時、この山も動くかのようであった。白浄王は本来、穏やかで静かな性質で、常に喜びも憂いもなかったが、今、太子を見て、一つの喜びと一つの恐れを感じたのである。
摩耶夫人は調和のとれた性質で、太子を生み、さまざまな奇瑞を見て、ますます柔和になった。その時、白浄王は手を合わせ、諸天の神々に礼拝し、前に進んで太子を抱き、七宝で飾られた象の輿に乗せた。そして、群臣や後宮の侍女たち、虚空の諸天とともに、さまざまな音楽を奏でながら、都に入られた。
その時、白浄王と釈迦族の人々は、まだ三宝を知らなかったので、太子を連れて天寺へ行った。太子が中に入ると、梵天の形像が皆、座から立ち上がり、太子の足を礼拝して王に言った。「大王よ、知るがよい。この太子は天と人の中で最も尊い方である。虚空の天神たちも皆、礼拝している。大王よ、これを見ておられないのか。どうして今、私を礼拝しに来られたのか。」
白浄王と釈迦族の人々、群臣や内外の人々は、これを見聞きして、かつてないことに驚嘆した。そして、すぐに太子を天寺から連れ出し、後宮に戻った。
「當爾之時,諸釋種姓,亦同一日,生五百男;時王廐中,象生白子;馬生白駒;牛羊亦生五色羔犢;如是等類,數各五百。王家青衣,亦生五百蒼頭。爾時宮中,五百伏藏,自然發出;一一伏藏,有七寶藏,而圍繞之。又有諸大國商人,從海採寶,還迦毘羅斾兜國;彼諸商人,各齎奇寶,而來獻王。時白淨王,問諸商人:『汝等入海,採諸珍寶,悉皆吉利,無苦惱不?及諸伴侶,無遺落耶?』彼諸商人,答言:『大王!所經道路,極自安隱。』王聞此言,甚大歡喜,即遣請諸婆羅門等。婆羅門眾皆悉集已,設諸供養,或與象馬及以七寶,田宅僮僕。供養畢已,抱太子出,即便白諸婆羅門言:『當為太子作何等名?』諸婆羅門,即共論議,而答王言:『太子生時,一切寶藏皆悉發出,所有諸瑞莫非吉祥,以此義故,當名太子為薩婆悉達。』說此語時,虛空天神,即擊天鼓,燒香散花,唱言:『善哉!』諸天人民,即便稱曰:『薩婆悉達。』
その時、釈迦族の中でも、同じ日に五百人の男子が生まれました。王の厩舎では、白い子象が生まれ、白い子馬が生まれ、牛や羊も五色の子牛や子羊を生みました。このような出来事が、それぞれ五百ずつ起こりました。王家に仕える侍女たちも、五百人の元気な子供を産みました。その時、宮殿の中に五百の隠された宝が自然に現れ、一つの宝の周りには七つの宝物が囲んでいました。また、海で宝を探していた商人たちが、迦毘羅衛城に帰ってきました。彼ら商人たちは、それぞれ珍しい宝物を持って王に献上しました。
浄飯王は商人たちに尋ねました。「あなたたちは海に入って宝物を探し、すべて無事で、苦労もなく、仲間も一人も失わずに済んだのか?」商人たちは答えました。「大王、通った道はすべて安全でした。」王はこの言葉を聞いて大いに喜び、すぐにバラモンたちを招きました。バラモンたちが皆集まると、様々な供養をし、象や馬、七宝、田畑や家来などを与えました。供養が終わると、太子を抱いて出て、バラモンたちに言いました。「太子にどのような名前をつけるべきか。」バラモンたちは相談し、王に答えました。「太子が生まれた時、すべての宝が現れ、あらゆる吉兆が示されました。このことから、太子を『サルヴァールタ・シッダールタ(一切義成就)』と名付けるべきです。」
この言葉が語られた時、虚空の天神たちは天の太鼓を鳴らし、香を焚き、花を散らして、「善きかな!」と唱えました。諸天と人々はすぐに、「サルヴァールタ・シッダールタ」と称えました。
「爾時八王,亦於是日,與白淨王,同生太子。彼諸國王,各懷歡喜:『我今生子,有諸奇異。』而不知是薩婆悉達之瑞相也。皆集婆羅門,各為太子,制好名字,王舍城太子名曰頻毘娑羅;舍衛國太子名婆斯匿;偷羅拘吒國太子名拘臈婆;犢子國太子名優陀延;䟦羅國太子名欝陀羅延;盧羅國太子名曰疾光;德叉尸羅國太子名弗迦羅娑羅;拘羅婆國太子名拘羅婆。
その時、八人の王たちもまた同じ日に、浄飯王と共に太子を生んだ。それらの国々の王たちは、それぞれ喜びを抱き、「我が子には様々な不思議なことがある」と思ったが、それが釈迦族の悉達多太子の瑞相であるとは知らなかった。彼らは皆、バラモンを集め、それぞれの太子のために良い名前をつけた。王舎城の太子は頻毘娑羅と名付けられ、舎衛国の太子は波斯匿と名付けられ、偷羅拘吒国の太子は拘臈婆と名付けられ、犢子国の太子は優陀延と名付けられ、䟦羅国の太子は欝陀羅延と名付けられ、盧羅国の太子は疾光と名付けられ、徳叉尸羅国の太子は弗迦羅娑羅と名付けられ、拘羅婆国の太子は拘羅婆と名付けられた。
「爾時白淨王普勅群臣,令訪聰明多聞,智慧善知占相,為諸世人所知識者。群臣聞已,四方推覓。時王即便於後園中,起一大殿,窓牖欄楯,七寶莊飾。爾時群臣,得五百婆羅門聰明知相見諸奇瑞,欲來詣王,會王遣信疾速而至。諸臣白王:『知相婆羅門,今者已到。』王聞歡喜,即勅令前請入殿坐,設諸供養。彼婆羅門即白王言:『我聞大王,新生太子,有諸相好奇特之瑞,願令我等悉得見之。』時王即勅抱太子出。諸婆羅門既見太子相好威嚴,歎未曾有。王即問言:『今占太子,其相云何?』婆羅門言:『一切眾生皆欲子好;大王!今者所生太子,是大珍異,勿生憂怖。』即又白言:『所生太子,大王!雖言是王之子,乃是世間人天之眼。』王復問言:『云何得知?』婆羅門言:『我觀太子,身色光焰,猶如真金,有諸相好,極為明淨,若當出家,成一切種智;若在家者,為轉輪聖王,領四天下,譬如江河,海為第一;眾山之中,須彌最勝;凡諸光暉,日為無上;一切清涼,唯有明月;天人世,間太子為尊。』王聞此語,心大歡喜,離諸怵惕。彼婆羅門又白王言:『有一梵仙名阿私陀,具足五通,在於香山,彼能為王斷諸疑惑。』諸婆羅門說此語已,辭別而去。
その時、浄飯王は臣下たちに広く命じ、聡明で博識、智慧に優れ、占いや相見に通じ、世に知られた者を探し求めるよう命じた。臣下たちは命を受け、四方に探し求めた。
王はすぐに後園に大きな殿堂を建て、窓や欄干を七宝で飾り立てた。その時、臣下たちは五百人のバラモンを連れてきた。彼らは聡明で相見に通じ、様々な奇瑞を見て、王のもとへ参上しようとしていたところ、ちょうど王の使いが急ぎやって来た。臣下たちは王に申し上げた。「相見に通じるバラモンたちが、今、到着しました。」
王はこれを聞き、喜び、すぐに彼らを前に招き、殿堂に請じ入れて座らせ、様々な供養を設けた。バラモンたちは王に申し上げた。「大王が新たに太子を生まれたと聞き、様々な優れた相と奇特な瑞兆があると承りました。どうか私どもにも、ぜひ拝見させてください。」
王はすぐに命じて太子を抱いて出した。バラモンたちは太子の相好の威厳を見て、未だかつてないと嘆賞した。王は尋ねた。「今、太子の相を占ってみて、どうであろうか。」
バラモンたちは言った。「すべての衆生は子が立派であることを願うものです。大王よ、今お生まれになった太子は、大いなる珍しい宝であり、どうか憂いや恐れを抱かれませんように。」さらに申し上げた。「お生まれになった太子は、大王よ、たとえ王の子とおっしゃっても、これは世間の、人と天の眼なのです。」
王はまた尋ねた。「どうしてそれがわかるのか。」
バラモンたちは言った。「私どもが太子の御身の色と光の輝きを見ますと、まるで純金のようであり、様々な優れた相が極めて明らかで清らかです。もし出家なされば、一切種智を成し遂げられるでしょう。もし在家におられるならば、転輪聖王となって四天下を治められるでしょう。譬えるならば、江河の中では海が第一であり、衆山の中では須弥山が最も勝れ、すべての光輝の中では太陽が無上であり、すべての清涼の中ではただ明月のみであり、天と人の世の中では、太子が最も尊い方です。」
王はこの言葉を聞き、心に大いなる喜びを抱き、あらゆる不安から離れた。バラモンたちはまた王に申し上げた。「阿私陀という名の梵仙がおられます。五通を具足し、香山におられます。彼が大王のためにあらゆる疑惑を断ってくださるでしょう。」
バラモンたちはこの言葉を述べると、別れを告げて去っていった。
「爾時白淨王心自思惟:『阿私陀仙人,居在香山,途逕嶮絕,非人所到,當以何方請來至此。』王可作此心念之時,阿私陀仙人遙知王意;又復先見諸奇瑞相,深解菩薩為破生死故現受生;以神通力,騰虛而來,到王宮門。時守門者入白王言:『阿私陀仙人,乘虛空來,今在門外。』王聞歡喜,即勅令前,王至門上自奉迎之;既見仙人,恭敬禮拜,而即問言:『尊者既來,住門不進,為守門者不聽前耶?』仙人答言:『無見止者,既來相詣,宜須先白。』王便隨從,入於後宮,敬請令坐,而問訊言:『尊者!四大常安和不?』仙人答言:『蒙大王恩,幸得安樂。』時白淨王白仙人言:『尊者!今日能來下降,我等種族,方大熾盛,從今已去,日就吉祥,為是經過故來此耶?』仙人答言:『我在香山,見大光明諸奇特相,又知大王心之所念,以是因緣故來到此;我以神力,乘虛而來,聞上諸天說:「王太子必當得成一切種智,度脫天人;又王太子,從右脇生,墮於七寶蓮花之上而行七步,舉其右手而師子吼:『我於天人之中,最尊最勝;無量生死於今盡矣,此生利益一切天人。』」又復諸天圍繞恭敬,聞有如此大奇特事;快哉大王!宜應欣慶。太子今者可得見不?』即將仙人至太子所,王及夫人抱太子出,欲禮仙人;時彼仙人,即止王曰:『此是天人三界中尊,云何而令禮於我耶?』時彼仙人,即起合掌,禮太子足。
その時、浄飯王は心の中で思いました。「阿私陀仙人は香山に住んでおられるが、道は険しく絶え果て、人の行き着けるところではない。どうすればここへお招きできるだろうか」と。
王がこのように心に念じたその時、阿私陀仙人は遠くから王の思いを知りました。また、あらかじめ様々な不思議な瑞相を見て、菩薩が生死を破るために生を受けたことを深く理解していたのです。仙人は神通力によって虚空を飛び、王宮の門前に到着しました。
門番が中に入り王に申し上げました。「阿私陀仙人が虚空を飛んで来られ、今、門の外におられます」
王はこれを聞いて喜び、すぐにお招きするよう命じました。王自ら門の上まで出迎え、仙人と対面すると、恭しく礼拝して尋ねました。
「尊者がお越しになられたのに、門でお止まりになっているのは、門番が先へ進むことをお許ししなかったからでしょうか」
仙人は答えました。「止める者はおりません。ただ、お訪ねした以上、まずはご挨拶すべきだと思いました」
王は仙人に従い、奥の宮殿へと案内しました。敬意を表して席に着かせ、挨拶を述べます。
「尊者、お体の四大は常に安らかで調和しておられますか」
仙人は答えました。「大王のご恩により、幸い安楽でございます」
浄飯王は仙人に申し上げました。「尊者が今日、お降りいただいたことで、我が一族はますます栄え、これからは日々吉祥が訪れることでしょう。何かのご用事でお越しになったのですか」
仙人は答えました。「私は香山におりましたが、大いなる光明と様々な不思議な瑞相を見ました。また、大王の心に思われることも知りました。そのような因縁でここへ参ったのです。私は神力をもって虚空を飛び、天上の諸天がこう言うのを聞きました。『王の太子は必ずや一切種智を得て、天と人を度脱されるであろう』と。また、王の太子は右脇から生まれ、七宝の蓮華の上に落ちて七歩歩き、右手を挙げて獅子吼されました。『私は天と人の中で最も尊く、最も勝れている。無量の生死は今ここで終わり、この生は一切の天と人を利益する』と。さらに、諸天が周りを取り囲み恭敬しているのを見、このような大いなる不思議な出来事を聞きました。なんと素晴らしいことでしょう、大王。どうか喜び慶ばれてください。太子様は今、お目にかかれるでしょうか」
王はすぐに仙人を太子のもとへ連れて行きました。王と夫人は太子を抱いて出て、仙人に礼をしようとしました。すると、その仙人は王を止めて言いました。
「これは天と人、三界の中で最も尊い方です。どうして私に礼をさせようとなさるのですか」
その仙人はすぐに合掌し、太子の足を礼拝しました。
「王及夫人白仙人言:『唯願尊者為相太子。』仙人言:『善。』即便占相,具見相已;忽然悲泣,不能自勝;王及夫人見彼仙人悲泣流淚,舉身戰怖,生大憂惱,如大波浪動於小船,問仙人言:『我子初生,具諸瑞相,有何不祥而悲泣耶?』爾時仙人歔欷答言:『大王!太子相好具足,無有不祥。』王又問言:『願更為我占視太子,有長壽相不?得轉輪王位王四天下不?我年既暮,欲以國土皆悉付之,當隱山林出家學道,所可志願,唯在於此。尊者為觀,必定果耶?』
王と夫人は仙人に申し上げました。「どうか尊者、太子の相を見てください。」仙人は「承知しました」と答え、すぐに占いを始めました。太子の相を詳しく見た後、突然悲しみに打ちひしがれ、涙を流して我を忘れてしまいました。王と夫人は仙人が悲しみに暮れ涙を流す姿を見て、全身が震え、大きな憂いと苦しみに襲われました。まるで大波が小船を揺さぶるかのように。彼らは仙人に尋ねました。「我が子は生まれた時から様々な瑞相に恵まれていました。何か不吉なことがあるのでしょうか。なぜ悲しみの涙を流されるのですか?」その時、仙人はすすり泣きながら答えました。「大王、太子の相は完璧に整っており、不吉なことは何もありません。」王はさらに尋ねました。「どうかもう一度、太子の相を見てください。長寿の相はありますか?転輪王となって天下を治めることはできますか?私はすでに年老い、国をすべて太子に譲り、山林に隠れて出家し、道を学びたいと願っています。私の望みはただそれだけです。尊者、どうかよく見て、確かなことを教えてください。」
「爾時仙人又答王言:『大王!太子具三十二相,一者、足下安平平如奩底;二者、足下千輻網輪輪相具足;三者、手足相指長勝於餘人;四者、手足柔軟勝餘身分;五者、足跟廣具足滿好;六者、足指合縵網勝於餘人;七者、足趺高平好與跟相稱;八者、伊泥延鹿腨纖好如伊泥延鹿王;九者、平住兩手摩膝;十者、陰藏相如馬王象王;十一者、身縱廣等如尼拘類樹;十二者、一一孔一毛生青色柔軟右旋;十三者、毛上向靡,青色柔軟右旋;十四者、金色相其色微妙勝閻浮檀金;十五者、身光面一丈;十六者、皮薄細滑不受塵垢不停蚊蚋;十七者、七處滿,兩足下兩手中兩肩上項中皆滿,字相分明;十八者、兩腋下滿如摩尼珠;十九者、身如師子;二十者、身廣端直;二十一者、肩圓好;二十二者、口四十齒;二十三者、齒白齊密而根深;二十四者、四牙最白而大;二十五者、方頰車如師子;二十六者、味中得上味,咽中二處津液流出;二十七者、舌大軟薄能覆面至耳髮際;二十八者、梵音深遠如迦陵頻伽聲;二十九者、眼色如金精;三十者、眼睫如牛王;三十一者、眉間白毫相軟白如兜羅綿;三十二者、頂髻肉成。具有如此相好之身,若在家者,年二十九,為轉輪聖王;若出家者,成一切種智,廣濟天人。然王太子,必當學道得成阿耨多羅三藐三菩提,不久當轉清淨法輪,利益天人開世間眼。我今年壽,已百二十,不久命終,生無想天,不覩佛興,不聞經法,故自悲耳。』
その時、仙人はまた王に答えました。「大王よ、太子は三十二の相を備えておられます。
第一に、足の裏が平らで、箱の底のように安定している。 第二に、足の裏に千の輻を持つ網状の輪が、完全に具わっている。 第三に、手足の指が長く、他の人より優れている。 第四に、手足が柔らかく、他の身体の部分より優れている。 第五に、足のかかとが広く、満ち足りて美しい。 第六に、足の指の間に合わさった網状の膜が、他の人より優れている。 第七に、足の甲が高く平らで、かかとと調和している。 第八に、伊泥延鹿のようにふくらはぎが細く美しく、伊泥延鹿の王のようである。 第九に、まっすぐに立った時、両手が膝に届く。 第十に、陰部が隠れている相は、馬王や象王のようである。 第十一に、身の縦と横の長さが等しく、尼拘類樹のようである。 第十二に、一つの毛穴から一本の毛が生え、青く柔らかく右に巻いている。 第十三に、毛は上に向かってなびき、青く柔らかく右に巻いている。 第十四に、金色の相は、その色が微妙で閻浮檀金より優れている。 第十五に、身体から放たれる光は、一丈四方を照らす。 第十六に、皮膚は薄く滑らかで、塵や垢がつかず、蚊や蚋もとどまらない。 第十七に、七つの場所が満ちている。両足の裏、両手の平、両肩、首の付け根の七か所が満ち、文字の相がはっきりしている。 第十八に、両脇の下が満ちて、摩尼珠のようである。 第十九に、身体が獅子のようである。 第二十に、身体が広く端正で真っ直ぐである。 第二十一に、肩が丸く美しい。 第二十二に、口には四十本の歯がある。 第二十三に、歯は白く整って密生し、根が深い。 第二十四に、四本の牙が最も白く大きい。 第二十五に、頬骨が四角く、獅子のようである。 第二十六に、味覚の中で最上の味を得、喉の二か所から津液が流れ出る。 第二十七に、舌が大きく柔らかく薄く、顔全体を覆い耳の生え際まで届く。 第二十八に、梵音は深遠で、迦陵頻伽の声のようである。 第二十九に、眼の色は金の精(こがね)のようである。 第三十に、睫毛が牛王のようである。 第三十一に、眉間の白毫相が柔らかく白く、兜羅綿のようである。 第三十二に、頭頂に肉髻がある。
このような相好を備えたお身体であれば、もし在家であれば二十九歳で転輪聖王となられ、もし出家されれば一切種智を成し遂げ、天界と人間界を広く救済されます。しかし、王太子は必ずや道を学び、阿耨多羅三藐三菩提を得られ、間もなく清浄な法輪を転じ、天界と人間界に利益をもたらし、世間の眼を開かれるでしょう。私は今年、寿命がすでに百二十歳になり、間もなく命が尽き、無想天に生まれます。仏の出現を目にすることもなく、経や法を聞くこともできません。それゆえ、自ら悲しんでいるのです。」
「又問仙人:『尊者向占言,有二種:一當作王;二成正覺;而今云何言決定成一切種智。』時仙人言:『我相之法,若有眾生,具三十二相,或生非處,又不明顯,此人必為轉輪聖王;若三十二相,皆得其處,又復明顯,此人必成一切種智。我觀大王太子諸相,皆得其所,又極明顯,是以決定知成正覺。』仙人為王說此語已,辭別而退。
また仙人に問うた:「尊者、先ほど占いでおっしゃったことには、二つの可能性があると。一つは王となること、二つ目は正覚を成すこと。それなのに今、どうして必ず一切種智を成すとおっしゃるのですか。」
その時、仙人は言った:「私の相法によれば、もし衆生が三十二相を備えていても、その相が現れる場所が適切でなかったり、明らかでなかったりするならば、その人は必ず転輪聖王となる。しかし、もし三十二相がすべて適切な場所に現れ、しかも極めて明らかであるならば、その人は必ず一切種智を成す。私は大王の太子の諸相を観察しましたが、すべてが適切な場所に現れ、しかも極めて明らかです。ですから、必ず正覚を成すと確信するのです。」
仙人は王にこの言葉を伝えると、別れを告げて立ち去った。
「爾時白淨王既聞仙人決定之說,心懷愁惱,慮恐出家;即擇五百青衣賢明多智為作嬭母,養視太子,其中或有乳者,或有抱者,或有浴者,或有浣濯者;如是等比,供給太子,皆悉具足。又復別為起三時殿,溫涼寒暑,各自異處;其殿皆以七寶莊嚴,衣裳服飾,皆悉隨時;王恐太子棄家學道,使其城門開閉之聲聞四十里;又復擇取五百妓女,形容端正,不肥不瘦,不長不短,不白不黑,才能巧妙,各兼數技,皆以名寶,瓔珞其身,百人一番,迭代宿衛;於其殿前,列樹甘果,枝葉蔚映,花實繁茂;又有浴池,清淨澄潔,池邊香草,雜色蓮花,猗靡芬敷,不可稱計;異類之鳥,數百千種,光麗心目,趣悅太子。
その時、浄飯王は仙人の確定的な予言を聞き、心に憂いと悩みを抱え、太子が出家することを恐れた。そこで、五百人の聡明で知恵ある侍女を選び、乳母として太子の世話をさせた。その中には乳を与える者、抱く者、沐浴させる者、洗濯をする者などがおり、このような人々が太子に奉仕し、すべての世話が行き届いていた。
さらに、三つの季節に応じた宮殿を別々に建てた。温かい季節、涼しい季節、寒い季節、それぞれに異なる場所に設けられ、どの宮殿も七宝で飾り立てられ、衣服や装飾品も季節に合わせて用意された。王は太子が家を捨てて修行の道に入ることを恐れ、城門の開閉の音が四十里先まで聞こえないようにした。
また、五百人の芸妓を選び、容貌が端正で、太りも痩せもせず、長くも短くもなく、白くも黒くもなく、才能に優れ、数々の技を兼ね備えた者たちを集めた。彼女たちは皆、名宝で身を飾り、百人ずつ交代で宿衛に当たった。
宮殿の前には甘い果実の木が植えられ、枝葉は青々と茂り、花や実が豊かに繁っていた。また、浴池も設けられ、清らかで澄みきっており、池の辺りには香りのよい草や色とりどりの蓮の花が咲き乱れ、その美しさは言葉では言い表せないほどであった。さまざまな種類の鳥が数百、数千と飛び交い、その光景は目を楽しませ、太子の心を和ませた。
「太子既生,始滿七日,其母命終,以懷太子功德大故,上生忉利,封受自然。太子自知,福德威重,無有女人堪受禮者,故因將終,託之而生。爾時太子姨母摩訶波闍波提,乳養太子,如母無異。時白淨王,勅作七寶天冠及以瓔珞,而與太子。太子年漸長大,為辦象、馬、牛、羊之車,凡是童子所玩好具,無不給與。爾時舉國人民,皆行仁惠,五穀豐熟,風雨以時,又無盜賊,快樂安隱,皆是太子福德力故。時王又以青衣所生是車匿等五百蒼頭,給侍太子。至年七歲,父王心念:『太子已大,宜令學書。』訪覓國中聰明婆羅門善諸書藝,請使令來以教太子。爾時有一婆羅門,名跋陀羅尼,與五百婆羅門,以為眷屬,來受王請。即白婆羅門言:『欲屈尊者為太子師,此可爾不?』婆羅門言:『當隨所知,以授太子。』時白淨王,更為太子起大學堂,七寶莊嚴,床㯓學具,極令精麗;卜擇吉日,即以太子與婆羅門,而令教之。爾時婆羅門,以四十九書字之本,教令讀之。于時太子見此事已,問其師言:『此何等書?閻浮提中,一切諸書,凡有幾種?』師即默然不知所答。又復問言:『此阿一字,有何等義?』師又默然亦不能答;內懷慙愧,即從座起,禮太子足而讚歎言:『太子初生行七步時,自言天人之中最尊最勝,此言不虛,唯願為說閻浮提書凡有幾種。』太子答言:『閻浮提中,或有梵書,或佉樓書,或蓮花書,有如是等六十四種;此阿字者,是梵音聲,又此字義,是不可壞,亦是無上正真道義,凡如此義,無量無邊。』爾時婆羅門,深生慙愧。還至王所,而白王言:『大王!太子是天人中第一之師,云何而欲令我教耶?』爾時父王聞婆羅門言,倍生歡喜,歎未曾有,即厚供養彼婆羅門,隨意所之。凡諸技藝典籍議論,天文地理,算數射御,太子皆悉自然知之。
太子がお生まれになって、ちょうど七日が満ちたとき、その母は命を終えられました。太子を身ごもった功德が大きいため、忉利天に生まれ変わり、自然の楽しみを受けておられました。太子はご自身で、福德と威徳が重く、礼を受けるにふさわしい女はないと知っておられました。ですから母が命を終えるにあたり、その母に託して生まれたのです。そのとき太子の姨母である摩訶波闍波提が太子を乳養し、母と少しも変わりませんでした。ときに白淨王は、七宝の天冠と瓔珞を作らせて太子にお与えになりました。太子が年ごとに成長されるにつれ、象・馬・牛・羊の車を用意し、子どもが遊びに用いる道具で与えないものはありませんでした。そのとき国中の人民は皆、仁恵を行い、五穀は豊かに実り、風雨は時節に従い、盗賊もなく、楽しみ安らかでありました。これは皆、太子の福德の力によるものでした。ときに王はまた、青衣の者が生んだ車匿ら五百人の蒼頭を太子にお仕えさせました。七歳になると、父王は心に思いました。「太子はもう大きくなった。書を学ばせるのがよい。」国中で聡明な婆羅門で諸々の書芸に秀でた者を探し求め、招いて太子を教えさせようとしました。そのとき一人の婆羅門がいて、名を跋陀羅尼といい、五百人の婆羅門を眷属として伴い、王の招きを受けて参りました。王はすぐに婆羅門に申しました。「尊者に太子の師となっていただきたいのですが、よろしいでしょうか。」婆羅門は答えました。「私の知るところに従って、太子にお授けいたしましょう。」ときに白淨王は、さらに太子のために大きな学堂を建て、七宝で荘厳し、床や学習の道具を、この上なく精巧で美しく整えました。吉日を占い選び、太子を婆羅門に託して教えさせました。そのとき婆羅門は、四十九種の書字の根本を太子に読ませ教えました。そのとき太子はこの事を見て、その師に問いました。「これはどのような書ですか。閻浮提の中の一切の諸々の書は、およそ何種ありますか。」師はたちまち黙然として答えを知りませんでした。また重ねて問いました。「この阿という一字には、どのような意味がありますか。」師はまた黙然として答えることができませんでした。内心に恥じ入り、すぐに座から立ち、太子の足を礼して讃嘆して申しました。「太子はお生まれになって七歩を歩まれたとき、自ら天人の中にて最も尊く最も勝れているとおっしゃいました。この言葉は虚しくありません。どうか閻浮提の書に何種あるかを説いてください。」太子はお答えになりました。「閻浮提の中には、あるいは梵書、あるいは佉樓書、あるいは蓮花書など、このような六十四種があります。この阿という字は、梵の音声であり、またこの字の意味は、壊れることができないということであり、また無上正真の道の意味でもあります。およそこのような意味は、無量無辺です。」そのとき婆羅門は、深く恥じ入りました。王のもとに帰り、王に申しました。「大王よ、太子は天人の中の第一の師です。どうして私に教えさせようとなさるのですか。」そのとき父王は婆羅門の言葉を聞き、いっそう喜びを生じ、未曾有であると讃嘆し、すぐにその婆羅門を厚く供養し、心のままに赴かせました。およそ諸々の技芸・典籍・議論、天文・地理、算数・射御など、太子は皆ことごとく自然にご存じでした。
過去現在因果經卷第一
過去現在因果経 巻第一