進官錄上表
進官録上表
沙門最澄言。最澄聞。六爻探𧷤局於生滅之場。百物正名未涉真如之境。豈若隨他權教開三乘於機門。隨自實教示一乘於道場哉。然則。圓教難說。演其義者天台。妙法難傳。暢其道者聖帝。伏惟陛下。纂靈出震。撫運登極。北蕃來朝請賀正於每年。東夷北首知歸德於先年。於是。屬想圓宗緬懷一乘。紹宣妙法以為大訓。由是。妙圓極教。應聖機而興顯。灌頂祕法。感皇緣而圓滿。最澄奉使求法。遠尋靈蹤。往登台嶺。躬寫教迹。所獲經并疏及記等。總二百三十部四百六十卷。且見進經一十卷。名曰金字妙法蓮華經七卷。金字金剛般若經一卷。金字菩薩戒經一卷。金字觀無量壽經一卷。及天台智者大師靈應圖一張。天台大師禪鎮一頭。天台山香爐峯送檉及柏木文釋四枚。說法白角如意一抦。謹遣弟子藏經奉進。但聖鑑照明二門圓滿。不任誠懇之至。奉表戰慄謹言。
僧・最澄が申し上げます。 最も澄み切った心をもってお聞きします。 易の六爻(六つの卦の形)で深い道理を探ろうとしても、それは生と死の領域にとどまっています。また、様々な物事に正しい名前をつけることで真理を明らかにしようとしても、それは真如の世界にまで達してはいません。 それにまさるものがあるでしょうか。 他者の機根に応じた方便の教えは、機に応じて三つの乗り物(声聞・縁覚・菩薩)を開き示す門です。 しかし、仏が自らの悟りに基づいて説かれた真実の教えは、修行の道場においてただ一つの乗り物(一乗)を明らかに示すのです。
このように考えると、円教(完全な教え)を説くことはむずかしく、その教えを広く説き明かしたのは天台大師です。また、妙法(素晴らしい教え)を伝えることは難しく、その教えの道を豊かに開いたのは聖なる帝王(中国・隋の煬帝)です。
謹んで申し上げますが、 陛下は、霊なる力を受けて東方(聖なる位)にお立ちになり、天下の運を掌って即位されました。 北の蕃国(外国)は朝貢に来て、毎年新年の祝賀を申し出ております。東の夷の民もまた、先年より高き御徳に心を向けて帰順していることを知っております。
このような御治世にあって、陛下は円教の宗(天台宗)に深く思いを寄せられ、一乗の教えを懐かしく思い召されました。そして、妙法を伝え弘められ、これを大いなる教えとされたのです。 それによって、妙なる円教の最高の教えが、聖なる御機縁に応じて現れ、栄え輝きました。また、灌頂の秘められた教えも、陛下の御縁に感じて完全に成就したのです。
最澄は、陛下の命を奉じて教えを求める旅に出、遠く霊場の跡を尋ねました。かつて天台山に登り、自らの手で教えの書跡を書き写しました。 その結果、収めた経典とその注釈書、覚書などは、全部で二百三十部、四百六十巻にのぼります。 その中で、ひとまず献上いたします経典は十巻です。 その内訳は、金字の『妙法蓮華経』が七巻。金字の『金剛般若経』が一巻。金字の『菩薩戒経』が一巻。金字の『観無量寿経』が一巻です。 併せて、天台智顗大師の御霊験の図像が一枚。天台大師の坐禅のための鎮(重し)が一つ。天台山香炉峯でいただいた、檉と柏の木の文様のある版木が四枚。説法の際に用いる、白角の如意(思いのままを表す仏具)が一振り。
これらを謹んで、弟子の蔵経に託して献上いたします。 どうか、聖なる御智慧でご照覧くださいますよう。二つの門(教えと修行)が完全に成就しますことを。 心からの誠実さの極みに堪えず、恐れおののきつつ、謹んで申し上げます。
延曆二十四年七月十五日 沙門最澄上表
延暦二十四年七月十五日 沙門最澄、上表す
傳教大師將來台州錄
伝教大師将来台州録