佛所行讚卷第一(亦云佛本行經)
仏所行讃 巻第一
馬鳴菩薩造
馬鳴菩薩作
北涼天竺三藏曇無讖譯
北涼天竺三蔵曇無讖訳
生品第一
生品第一
甘蔗之苗裔, 釋迦無勝王,
淨財德純備, 故名曰淨飯,
群生樂瞻仰, 猶如初生月。
王如天帝釋, 夫人猶舍脂,
執志安如地, 心淨若蓮花,
假譬名摩耶, 其實無倫比。
於彼象天后, 降神而處胎。
母悉離憂患, 不生幻偽心,
厭惡彼諠俗, 樂處空閑林。
藍毘尼勝園, 流泉花果茂,
寂靜順禪思, 啟王請遊彼。
王知其志願, 而生奇特想,
勅內外眷屬, 俱詣彼園林。
爾時摩耶后, 自知產時至,
偃寢安勝床, 百千婇女侍。
時四月八日, 清和氣調適,
齋戒修淨德, 菩薩右脇生,
大悲救世間, 不令母苦惱。
優留王股生, 卑偷王手生,
曼陀王頂生, 伽叉王腋生。
菩薩亦如是, 誕從右脇生,
漸漸從胎出, 光明普照耀,
如從虛空墮, 不由於生門。
修德無量劫, 自知生不死,
安諦不傾動, 明顯妙端嚴。
晃然後胎現, 猶如日初昇,
觀察極明耀, 而不害眼根。
縱視而不耀, 如觀空中月,
自身光照耀, 如日奪燈明,
菩薩真金身, 普照亦如是。
正真心不亂, 安庠行七步,
足下安平趾, 炳徹猶七星。
獸王師子步, 觀察於四方,
通達真實義, 堪能如是說。
此生為佛生, 則為後邊生,
我唯此一生, 當度於一切。
應時虛空中, 淨水雙流下,
一溫一清涼, 灌頂令身樂。
安處寶宮殿, 臥於琉璃床,
天王金華手, 奉持床四足。
諸天於空中, 執持寶蓋侍,
承威神讚歎, 勸發成佛道。
諸龍王歡喜, 渴仰殊勝法,
曾奉過去佛, 今得值菩薩。
散曼陀羅花, 專心樂供養,
如來出興世, 淨居天歡喜。
已除愛欲歡, 為法而欣悅,
眾生沒苦海, 令得解脫故。
須彌寶山王, 堅持此大地,
菩薩出興世, 功德風所飄,
普皆大震動, 如風鼓浪舟。
栴檀細末香, 眾寶蓮花藏,
風吹隨空流, 繽紛而亂墜,
天衣從空下, 觸身生妙樂。
日月如常度, 光耀倍增明,
世界諸火光, 無薪自炎熾,
淨水清涼井, 前後自然生。
中宮婇女眾, 怪歎未曾有,
競赴而飲浴, 皆起安樂想。
無量部多天, 樂法悉雲集,
於藍毘尼園, 遍滿林樹間。
奇特眾妙花, 非時而敷榮,
凶暴眾生類, 一時生慈心,
世間諸疾病, 不療自然除。
亂鳴諸禽獸, 恬默寂無聲,
萬川皆停流, 濁水悉澄清,
空中無雲翳, 天鼓自然鳴。
一切諸世間, 悉得安隱樂,
猶如荒難國, 忽得賢明主。
菩薩所以生, 為濟世眾苦,
唯彼魔天王, 震動大憂惱。
父王見生子, 奇特未曾有,
素性雖安重, 驚駭改常容,
二息交胸起, 一喜復一懼。
夫人見其子, 不由常道生,
女人性怯弱, 怵惕懷氷炭,
不別吉凶相, 反更生憂怖。
長宿諸母人, 互亂祈神明,
各請常所事, 願令太子安。
時彼林中有, 知相婆羅門,
威儀具多聞, 才辯高名稱,
見相心歡喜, 踊躍未曾有。
知王心驚怖, 白王以真實:
「人生於世間, 唯求殊勝子。
王今如滿月, 應生大歡喜,
今生奇特子, 必光顯宗族。
安心自欣慶, 莫生餘疑慮,
靈祥集家國, 從今轉休盛。
所生殊勝子, 必為世間救,
惟此上士身, 金色妙光明,
如是殊勝相, 必成等正覺;
若習樂世間, 必作轉輪王,
普為大地主, 勇猛正法治,
王領四天下, 統御一切王。
猶如世光明, 日光為最勝,
若處於山林, 專心求解脫。
成就實智慧, 普照於世間,
譬如須彌山, 普為諸山王。
眾寶金為最, 眾流海為最,
諸宿月為最, 諸明日為最,
如來處世間, 兩足中為最。
淨目脩且廣, 上下瞬長睫,
瞪矚紺青色, 明煥半月形,
此相云何非, 平等殊勝目?」
時王告二生: 「若如汝所說,
如此奇特相, 以何因緣故,
不應於先王, 乃現於我世?」
婆羅門白王: 「不應如是說。
多聞與智慧, 名稱及事業,
如是四事者, 不應顧先後。
物性之所生, 各從因緣起,
今當說諸譬, 王今且諦聽。
毘求央耆羅, 此二仙人族,
經歷久遠世, 各生殊異子。
毘利訶鉢低, 及與儵迦羅,
能造帝王論, 不從先族來。
薩羅薩仙人, 經論久斷絕,
而生婆羅婆, 續復明經論。
現在知見生, 不必由先胄,
毘耶娑仙人, 多造諸經論,
末後胤跋彌, 廣集偈章句。
阿低利仙人, 不解醫方論,
後生阿低離, 善能治百病。
二生駒尸仙, 不閑外道論,
後伽提那王, 悉解外道法。
甘蔗王始族, 不能制海潮,
至娑伽羅王, 生育千王子,
能制大海潮, 使不越常限。
闍那駒仙人, 無師得禪道。
凡得名稱者, 皆生於自力,
或先勝後劣, 或先劣後勝。
帝王諸神仙, 不必承本族,
是故諸世間, 不應顧先後。
大王今如是, 應生歡喜心,
以心歡喜故, 永離於疑惑。」
王聞仙人說, 歡喜增供養。
「我今生勝子, 當紹轉輪位,
我年已朽邁, 出家修梵行,
無令聖王子, 捨世遊山林。」
時近處園中, 有苦行仙人,
名曰阿私陀, 善解於相法,
來詣王宮門, 王謂梵天應。
苦行樂正法, 此二相俱現,
梵行相具足, 時王大歡喜。
即請入宮內, 恭敬設供養,
將入內宮中, 唯樂見王子。
雖有婇女眾, 如在空閑林,
安處正法座, 加敬尊奉事,
如安低牒王, 奉事波尸吒。
時王白仙人: 「我今得大利。
勞屈大仙人, 辱來攝受我,
諸有所應為, 唯願時教勅。」
如是勸請已, 仙人大歡喜:
「善哉常勝王, 眾德悉皆備。
愛樂來求者, 惠施崇正法,
仁智殊勝族, 謙恭善隨順。
宿殖眾妙因, 勝果現於今,
汝當聽我說, 今者來因緣。
我從日道來, 聞空中天說,
言王生太子, 當成正覺道。
并見先瑞相, 今故來到此,
欲觀釋迦王, 建立正法幢。」
王聞仙人說, 決定離疑網,
命持太子出, 以示於仙人。
仙人觀太子, 足下千輻輪,
手足網縵指, 眉間白毫跱,
馬藏隱密相, 容色炎光明,
見生未曾想, 流淚長歎息。
王見仙人泣, 念子心戰慄,
氣結盈心胸, 驚悸不自安。
不覺從坐起, 稽首仙人足,
而白仙人言: 「此子生奇特,
容貌極端嚴, 天人殆不異,
汝言人中上, 何故生憂悲?
將非短壽子, 生我憂悲乎?
久渴得甘露, 而反復失耶?
將非失財寶, 喪家亡國乎?
若有勝子存, 國嗣有所寄,
我死時心悅, 安樂生他世,
猶如人兩目, 一眠而一覺。
莫如秋霜花, 雖敷而無實,
人於親族中, 愛深無過子。
宜時為記說, 令我得蘇息。」
仙人知父王, 心懷大憂懼,
即告言大王: 「王今勿恐怖,
前已語大王, 慎勿自生疑,
今相猶如前, 不應懷異想;
自惟我年暮, 悲慨泣歎耳。
今我臨終時, 此子應世生,
為盡生故生, 斯人難得遇。
當捨聖王位, 不著五欲境,
精勤修苦行, 開覺得真實。
常為諸群生, 滅除癡冥障,
於世永熾燃, 智慧日光明。
眾生沒苦海, 眾病為聚沫,
衰老為巨浪, 死為海洪濤。
乘輕智慧舟, 渡此眾流難,
智慧泝流水, 淨戒為傍岸。
三昧清涼池, 正受眾奇鳥,
如此甚深廣, 正法之大河。
渴愛諸群生, 飲之以蘇息,
染著五欲境, 眾苦所驅迫,
迷生死曠野, 莫知所歸趣;
菩薩出世間, 為通解脫道。
世間貪欲火, 境界薪熾然;
興發大悲雲, 法雨雨令滅。
癡闇門重扇, 貪欲為關鑰,
閉塞諸群生, 出要解脫門;
金剛智慧鑷, 拔恩愛逆鑽。
愚癡網自纏, 窮苦無所依;
法王出世間, 能解眾生縛。
王莫以此子, 自生憂悲患,
當憂彼眾生, 著欲違正法。
我今老死壞, 遠離聖功德,
雖得諸禪定, 而不獲其利。
於此菩薩所, 竟不聞正法,
身壞命終後, 必生三難天。」
王及諸眷屬, 聞彼仙人說,
知其自憂歎, 恐怖悉以除。
「生此奇特子, 我心得大安。
出家捨世榮, 修習仙人道,
遂不紹國位, 復令我不悅。」
爾時彼仙人, 向王真實說:
「必如王所慮, 當成正覺道。」
於王眷屬中, 安慰眾心已,
自以己神力, 騰虛而遠逝。
爾時白淨王, 見子奇特相,
又聞阿私陀, 決定真實說。
於子心敬重, 珍護兼常念,
大赦於天下, 牢獄悉解脫。
世人生子法, 隨宜取捨事,
依諸經方論, 一切悉皆為。
生子滿十日, 安隱心已泰,
普祠諸天神, 廣施於有道。
沙門婆羅門, 呪願祈吉福,
嚫施諸群臣, 及國中貧乏。
村城婇女眾, 牛馬象財錢,
各隨彼所須, 一切皆給與。
卜擇選良時, 遷子還本宮,
二飯白淨牙, 七寶莊嚴輿。
雜色珠絞絡, 明焰極光澤,
夫人抱太子, 周匝禮天神。
然後昇寶輿, 婇女眾隨侍,
王與諸臣民, 一切俱導從。
猶如天帝釋, 諸天眾圍遶,
如摩醯首羅, 忽生六面子。
設種種眾具, 供給及請福,
今王生太子, 設眾具亦然。
毘沙門天王, 生那羅鳩婆,
一切諸天眾, 皆悉大歡喜。
王今生太子, 迦毘羅衛國,
一切諸人民, 歡喜亦如是。
甘蔗の苗裔、釈迦の無勝王、 浄財の徳純備、故に名づけて浄飯と曰う、 群生楽んで瞻仰す、初生の月の如し。
王は天帝釈の如く、夫人は舎脂の如し、 志を執りて安らかなること地の如く、心浄らかなること蓮華の如し、 仮に譬えて摩耶と名づく、その実に倫比無し。
かの象天の後に、神を降して胎に処す。 母は悉く憂患を離れ、幻偽の心を生ぜず、 かの諠俗を厭悪し、空閑の林に楽処す。
藍毘尼の勝園、流泉花果茂り、 寂静禅思に順い、王に請いて彼に遊ぶ。 王その志願を知り、奇特の想を生ず、 内外の眷属に勅し、俱にかの園林に詣る。
爾の時摩耶后、自ら産時至るを知り、 勝床に偃寝安し、百千の婇女侍す。
時に四月八日、清和の気調適し、 斎戒して浄徳を修め、菩薩右脇より生ず。 大悲世間を救い、母の苦悩せしめず。
優留王は股より生じ、卑偷王は手より生じ、 曼陀王は頂より生じ、伽叉王は腋より生ず。 菩薩も亦た是の如く、誕に右脇より生ず。 漸く胎より出で、光明普く照耀す、 虚空より堕つるが如く、生門に由らず。
徳を修むること無量劫、自ら生も死も無きを知り、 安諦として傾動せず、明らかに妙なる端厳を顕す。 晃然として胎に現ず、日の初めに昇るが如し。 極めて明耀を観察すれども、眼根を害せず。 縦視すれども耀かず、空中の月を観るが如し。 自身の光は照耀し、日の燈明を奪うが如し。 菩薩の真金の身、普く照らすも亦た是の如し。
正真の心乱れず、安庠として七歩を行く。 足下に平趾安し、炳徹すること七星の如し。 獣王師子の歩、四方を観察し、 真実の義に通達し、堪能して是の如く説く。 「此の生は仏生なり、則ち後辺の生なり。 我は唯だ此の一生、当に一切を度すべし。」
応時に虚空中、浄水双流下る。 一は温、一は清涼、灌頂して身を楽しましむ。 宝宮殿に安処し、琉璃の床に臥す。 天王の金華の手、奉持して床の四足を支う。 諸天空中に於て、宝蓋を執持して侍し、 威神を承けて讃歎し、成仏の道を勧発す。
諸龍王歓喜し、殊勝の法を渇仰し、 曾て過去仏に奉じ、今菩薩に値うことを得たり。 曼陀羅華を散じ、専心供養を楽む。 如来世に出興し、浄居天歓喜す。 已に愛欲の歓を除き、法の為に欣悦す。 衆生苦海に没し、解脱を得しむる故なり。
須弥の宝山王、此の大地を堅持す。 菩薩世に出興し、功徳の風に飄はれ、 普く皆大震動し、風の浪舟を鼓するが如し。 栴檀の細末香、衆宝の蓮華蔵、 風吹きて空に随い流れ、繽紛として乱墜す。 天衣空より下り、身に触れて妙楽を生ず。
日月は常の度の如く、光耀倍増して明らかなり。 世界の諸火光、薪無くして自ら炎熾す。 浄水清涼の井、前後自然に生ず。 中宮の婇女衆、怪歎して未曾有なり。 競いて赴きて飲浴し、皆安楽の想を起こす。
無量の部多天、法を楽み悉く雲集し、 藍毘尼園に於て、遍く林樹の間に満つ。 奇特の衆妙華、時に非ずして敷栄す。 凶暴の衆生類、一時に慈心を生ず。 世間の諸疾病、療せずして自然に除く。 乱鳴する諸禽獣、恬黙として寂として声無し。 万川皆流れを停め、濁水悉く澄み清し。 空中に雲翳無く、天鼓自然に鳴る。
一切の諸世間、悉く安隠楽を得たり、 荒難の国に賢明の主を得たるが如し。 菩薩の生まるる所以は、世の衆苦を済わんが為なり。 唯だかの魔天王、震動して大憂悩す。
父王、子の生まるるを見て、奇特未曾有なり。 素性は安重なれども、驚駭して常の容を改む。 二息胸に交わり起こり、一は喜び復た一は懼る。 夫人その子を見て、常の道に由らずして生まる。 女人の性怯弱、怵惕して氷炭を懐く。 吉凶の相を別たず、反って更に憂怖を生ず。
長宿の諸母人、互いに乱れて神明を祈り、 各おの常に事とする所を請い、太子の安からんことを願う。
時にかの林中に、相を知る婆羅門有り。 威儀具足し多聞、才弁高く名称す。 相を見て心歓喜し、踊躍して未曾有なり。 王の心驚怖するを知り、王に白して以って真実す。 「人生れて世間に在りては、唯だ殊勝の子を求む。 王今満月の如く、大歓喜を生ずべし。 今奇特の子を生めり、必ず宗族を光顕せん。 安心して自ら欣慶せよ、余の疑慮を生ずること莫かれ。 霊祥家国に集まり、今より転じて休盛せん。 生まるる所の殊勝の子、必ず世間の救い為さん。 惟れ此の上士の身、金色の妙光明、 是の如き殊勝の相、必ず等正覚を成ぜん。 若し世間の楽を習わば、必ず転輪王と作らん。 普く大地の主と為り、勇猛正法を以て治め、 王四天下を領し、一切の王を統御せん。 世の光明の如く、日光は最も勝れたるが如し。 若し山林に処して、専心解脱を求めば、 実の智慧を成就し、普く世間を照らさん。 須弥山の諸山王たるが如し。 衆宝は金を以て最も、衆流は海を以て最も、 諸宿は月を以て最も、諸明は日を以て最も、 如来世間に処しては、両足の中に最も為す。 浄目修くして且つ広く、上下瞬く長睫、 瞪矚すること紺青色、明煥として半月形、 此の相云何ぞ、平等殊勝の目に非ざらんや。」
時に王二生に告げて曰く、「若し汝の説く所の如くならば、 此の如き奇特の相、何の因縁の故に、 先王に応ぜずして、乃ち我が世に現ずるや。」 婆羅門王に白して曰く、「応に是の如く説くべからず。 多聞と智慧と、名称と事業と、 是の如き四事の者は、応に先後を顧みるべからず。 物性の生まるる所は、各おの因縁より起こる。 今当に諸の譬を説かん、王今且く諦聴せよ。 毘求央耆羅、此の二仙人の族、 久遠の世を経歴し、各おの殊異の子を生ず。 毘利訶鉢低、及び儵迦羅、 帝王の論を能く造り、先族より来らず。 薩羅薩仙人、経論久しく断絶すれども、 婆羅婆を生みて、復た経論を明らかにす。 現在の知見は生まるるも、必ずしも先胄に由らず。 毘耶娑仙人、多く諸の経論を造るも、 末後の胤跋弥、広く偈章句を集む。 阿低利仙人、医方論を解せず、 後に阿低離を生みて、善く百病を治む。 二生駒尸仙、外道論に閑けず、 後伽提那王、悉く外道法を解す。 甘蔗王始めの族、海潮を制すること能わず、 娑伽羅王に至りて、千の王子を生育し、 大海潮を能く制し、常限を越えしめず。 闍那駒仙人、師無くして禅道を得たり。 凡そ名称を得る者は、皆自力より生ず。 或いは先勝ち後劣り、或いは先劣り後勝つ。 帝王諸神仙、必ずしも本族を承けず。 是の故に諸の世間、応に先後を顧みるべからず。 大王今是の如し、応に歓喜の心を生ずべし。 心歓喜することを以ての故に、永く疑惑を離れん。」
王仙人の説を聞き、歓喜して供養を増す。 「我今勝れる子を生めり、当に転輪の位を紹がん。 我年已に朽邁す、出家して梵行を修せん。 聖王子をして世を捨て山林に遊ばしむること無からしめん。」
時に近き処の園中に、苦行の仙人有り。 名づけて阿私陀と曰い、相法に善く解す。 来たりて王宮の門に詣る。王梵天の応と謂う。 苦行正法を楽む、此の二相俱に現ず。 梵行の相具足し、時に王大いに歓喜す。 即ち請いて宮内に入れ、恭敬して供養を設け、 内宮中に将入するも、唯だ王子を見ることを楽む。 婇女衆有りと雖も、空閑の林に在るが如し。 正法の座に安処し、敬を加えて尊奉事す。 安低牒王の波尸吒を奉事するが如し。
時に王仙人に白して曰く、「我今大利を得たり。 大仙人を労屈し、辱くも来たりて我を摂受す。 諸に応に為すべき有るは、唯願わくは時に教勅せよ。」 是の如く勧請し已りて、仙人大いに歓喜す。 「善哉常勝王、衆徳悉く皆備わる。 来たり求める者を愛楽し、恵施して正法を崇ぶ。 仁智殊勝の族、謙恭善く随順す。 宿殖の衆妙の因、勝果今に現わる。 汝当に我が説くを聴け、今者来たる因縁を。 我は日道より来たり、空中の天の説を聞く。 王太子を生み、当に正覚の道を成すと。 并せて先の瑞相を見る。今故に此に来到し、 釈迦王を観んと欲し、正法の幢を建立せん。」
王仙人の説を聞き、決定して疑網を離れ、 太子を持ち出でしむることを命じ、以て仙人に示す。 仙人太子を観て、足下の千輻輪、 手足の網縵指、眉間の白毫跱し、 馬蔵の隠密相、容色炎光として明らかなり。 見て生ずる未曾の想、流涙して長く歎息す。
王仙人の泣くを見て、子を念う心戦慄し、 気結びて心胸に盈ち、驚悸して自ら安からず。 覚えず座より起こり、仙人の足に稽首し、 而して仙人に白して言く、「此の子生まるること奇特、 容貌極めて端厳、天人殆ど異ならず。 汝言う人中の上と、何の故に憂悲を生ずるや。 将に短寿の子に非ずや、我が憂悲を生ずるか。 久しく渇して甘露を得て、而も復た失うや。 将に財宝を失い、家を喪い国を亡ぼすに非ずや。 若し勝れる子存らば、国嗣寄る所有り。 我死する時心悦び、安楽して他世に生まるるも、 人の両目の如く、一は眠り一は覚ゆるが如し。 秋霜の花の如く、敷けども実無きこと莫かれ。 人親族の中に於て、愛深きこと子に過ぐるは無し。 宜しく時に記説して、我を得しめて蘇息せしめよ。」
仙人父王の、心に大憂懼を懐くを知り、 即ち告げて大王に言く、「王今恐怖すること無かれ。 前に已に大王に語り、慎んで自ら疑いを生ずること無かれと。 今の相猶前に如く、応に異なる想を懐くべからず。 惟れ我が年暮るるを自ら、悲慨して泣き歎くのみ。 今我が臨終の時、此の子応に世に生まる。 生を尽くさんが為に生まる、斯の人は遇い難し。 当に聖王の位を捨て、五欲の境に著かず、 精勤して苦行を修め、開覚して真実を得ん。 常に諸の群生の為に、癡冥の障を滅除し、 世に於て永く熾燃し、智慧の日光明ならん。 衆生苦海に没し、衆病は聚沫と為り、 衰老は巨浪と為り、死は海の洪濤と為る。 軽き智慧の舟に乗り、此の衆流の難を渡り、 智慧は流れに溯り、浄戒は傍岸と為る。 三昧の清涼池、正受の衆奇鳥、 此の如く甚深広大なる、正法の大河。 渇愛の諸群生、之を飲みて蘇息せん。 五欲の境に染著し、衆苦に駆迫せられ、 生死の曠野に迷い、帰趣する所を知ること莫きに、 菩薩世間に出で、解脱の道を通ぜん。 世間の貪欲の火、境界の薪熾然として然え、 大悲の雲を興発し、法雨雨らしめて滅せしめん。 癡闇の門重扇、貪欲は関鑰と為り、 諸の群生を閉塞し、出要解脱の門を出さず。 金剛の智慧の鑷、恩愛の逆鑽を抜かん。 愚癡の網自ら纏わり、窮苦して依る所無きに、 法王世間に出で、能く衆生の縛を解かん。 王此の子を以て、自ら憂悲患を生ずること莫かれ。 当に彼の衆生を憂えよ、欲に著きて正法に違うことを。 我今老死壊れ、聖功徳に遠離す。 諸の禅定を得ると雖も、而も其の利を獲ず。 此の菩薩の所に於て、竟に正法を聞かず。 身壊れ命終の後、必ず三難天に生ぜん。」
王及び諸の眷属、かの仙人の説を聞き、 其の自ら憂歎するを知り、恐怖悉く以て除かる。 「此の奇特の子を生めり、我が心大いに安んずることを得たり。 出家して世の栄を捨て、仙人の道を修習し、 遂に国位を紹がず、復た我をして悦ばしめず。」 爾の時かの仙人、王に向かって真実に説く。 「必ず王の慮る所の如く、当に正覚の道を成ぜん。」 王の眷属の中に於て、衆の心を安慰し已りて、 自ら己が神力を以て、騰虚して遠く逝く。
爾の時白浄王、子の奇特の相を見、 又阿私陀の、決定真実の説を聞き、 子の心に敬重し、珍護し兼ねて常に念う。 天下に大赦し、牢獄悉く解脱せしむ。 世間人の子を生む法、宜しきに随って取捨の事、 諸の経方論に依り、一切悉く皆為す。 子を生みて十日に満ち、安隠の心已に泰し、 普く諸の天神を祠り、広く有道に施す。 沙門婆羅門、呪願して吉福を祈り、 嚫施諸の群臣に及び、国中の貧乏に及ぶ。 村城の婇女衆、牛馬象財銭、 各おの彼の須いる所に随い、一切皆給与す。 卜択して良時を選び、子を遷して本宮に還す。 二飯白浄の牙、七宝荘厳の輿。 雑色の珠絞絡、明焰極めて光沢有り。 夫人太子を抱き、周匝して天神に礼し、 然る後に宝輿に昇り、婇女衆随侍す。 王と諸の臣民、一切俱に導従す。 天帝釈の諸天衆に囲繞せらるるが如く、 摩醯首羅の六面子を生むが如し。 種種の衆具を設け、供給及び請福す。 今王太子を生み、衆具を設くるも亦た然り。 毘沙門天王、那羅鳩婆を生み、 一切の諸天衆、皆悉く大歓喜す。 王今太子を生み、迦毘羅衛国、 一切の諸人民、