(一)
(一)
「昔者菩薩,其心通真,覩世無常,榮命難保,盡財布施。天帝釋覩菩薩慈育群生布施濟眾,功勳巍巍,德重十方,懼奪己位,因化為地獄,現于其前曰:『布施濟眾,命終魂靈入于太山地獄,燒煮萬毒。為施受害也,爾惠為乎?』菩薩報曰:『豈有施德而入太山地獄者乎?』釋曰:『爾其不信,可問辜者。』菩薩問曰:『爾以何緣處地獄乎?』罪人曰:『吾昔處世,空家濟窮,拯拔眾厄,今受重辜處太山獄。』菩薩問曰:『仁惠獲殃,受施者如之乎?』釋曰:『受惠者,命終昇天。』菩薩報曰:『吾之拯濟,唯為眾生;假如子云,誠吾願矣。慈惠受罪,吾必為之。危己濟眾,菩薩上志也。』釋曰:『爾何志願,尚斯高行?』答曰:『吾欲求佛,擢濟眾生,令得泥洹不復生死。』釋聞聖趣,因却叩頭曰:『實無布施慈濟眾生,遠福受禍入太山獄者也。子德動乾坤,懼奪吾位,故示地獄以惑子志耳。愚欺聖人,原其重尤。』既悔過畢,稽首而退。菩薩慈惠度無極行布施如是。」
昔、ある菩薩は心が真理に通じ、世の中の無常や栄光や寿命が頼りないことを悟り、財産の全てを施し尽くしました。すると天帝釋(たいていしゃく)が、菩薩が慈しみをもって生きとし生けるものを育て、施しによって人々を救い、その功績が偉大で、徳が十方に重んじられているのを見て、自分の地位を奪われるのを恐れました。そこで、化身となって地獄を現し、菩薩の前に現れて言いました。「施しによって人々を救うと、命終わった後に魂は太山地獄に入り、焼かれたり煮られたり、様々な苦しみを受ける。施しによって害を受けるのだ。あなたはそれでも施しを行うつもりか?」
菩薩は答えました。「施しの徳を積んで、どうして太山地獄に入ることがありえようか?」
天帝釋は言いました。「あなたが信じないなら、罪人に尋ねてみなさい。」
菩薩は罪人に尋ねました。「あなたは何が原因で地獄にいるのか?」
罪人は言いました。「私はかつて世にいたとき、家財を全て使い果たして貧しい人を救い、多くの苦難から人々を助け出しました。今、重い罰を受けて太山地獄にいるのです。」
菩薩は問いました。「慈しみの施しが災いを受けるのなら、施しを受ける側はどうなるのか?」
天帝釋は答えました。「施しを受けた者は、命終わった後に天に昇る。」
菩薩は答えました。「私が救い助けるのは、ただ衆生のためである。もしあなたの言う通りなら、それはまさに私の願いである。慈しみによって罪を受けるなら、私は必ずそれを行おう。自らの危険を顧みずに衆生を救う、それが菩薩の最高の志である。」
天帝釋は言いました。「あなたはどのような誓願を立てて、そんな高邁な行いを志すのか?」
菩薩は答えました。「私は仏陀になり、衆生を救い出し、涅槃(ねはん)に至らせて生死を繰り返さないようにしたいのだ。」
天帝釋は菩薩の聖なる志を聞くと、ひれ伏して頭を下げて言いました。「実際には、施しや慈しみによって衆生を救いながら、遠い将来の幸福を逃れて災いを受け、太山地獄に入るなどということは決してありません。あなたの徳は天地を揺るがし、自分の地位を奪われるのを恐れて、地獄を現してあなたの志を惑わせようとしたのです。愚かな私が聖なる方を欺きました。この重い罪をお許しください。」
天帝釋は悔い改め終えると、礼をして去っていきました。
菩薩の慈しみと施しの行いは、このように限りがなかったのである。