止觀輔行傳弘決序
止観輔行伝弘決の序
宗虛無者名教之道廢。遺文字者述作之義乖。古先梵皇乘時利見。聖賢道契德音莫違。尚假言詮寄諸結集。況時淹像季學鮮知幾。領會之賓十無一二。至有窮年默坐甘節於惛懵。白首論心遲回於半滿。人之多僻其若是乎。未階捫象各陳乳色。或謂即心是佛悟入之門。色不異空本末誰迹。將冥絕待章句何施。嗚呼大教陵夷若是。蓋由未辨文字之性離孰喻總持之功深。惟昔智者大師降生示世。誕敷玄德大拯橫流。咨覆簣於大思振絕維於龍猛。命家作古以中觀為師宗。立極建言以上乘為歸趣。爰付灌頂。頂公引而伸之。欽若弘持廣有記述。教門戶牖自此重明。繼之以法華威。威公宿植不愆于素。復次天宮威。威公敬承如水傳器。授之於左谿玄朗。朗公卓絕天機獨斷。相沿說釋遑恤我文。載揚於毘壇湛然。然公間生總角頴悟。左谿深相器異誓以傳燈。嘗言止觀二門乃統萬行。圓頓之設一以貫之。噫。纘承四世年將二百。魚魯斯訛不無同異。方將繹思津導玄流。遂廣斥邪疑旁薄今古。質而不野博而不繁。著輔行記凡十卷。備前聖廣略之旨允今人勝劣之機。豈唯錯綜所聞將以隱括所治。所治即行三多之妙運遽階。所聞唯解一真之玄覽斯㳷。夫行有岐路則始終天隔。解無方隅亦淺深隨類。建言輔行以舉其全。故自遠方來詢疑請益。擊蒙發覆孜孜日夕。庶幾幽贊欽若傳弘。道之將行不孤運矣。咨予末學輕議上乘。其猶爝火增輝二曜。君山除饉男普門子敬序。時永泰首元興唐八葉之四載。
「虚無を宗とする者は、名教の道が廃れる。文字を遺す者は、述作の義に乖く。古の先梵皇は時に乗りて利見し、聖賢は道に契い、徳音も違わず。尚お仮りに言詮を用いて、諸の結集に寄す。況んや時は像季に淹り、学は幾(き)を知ること鮮なし。領会の賓は十に一・二なし。至りては窮年黙坐して、甘んじて昏懵に節し、白首して心を論じて、半満に遲回する者有り。人の多く僻するや、其れ是の如きか。未だ象を扪(さぐ)る階に至らずして、各おの乳色を陳ぶ。或いは謂う、即心是仏は悟入の門、色不異空は、本末誰か迹せん。将に冥して待絶せんとす。章句何の用か施さん。」
呜呼、大教の陵夷すること是の如し。蓋、未だ文字の性を辨ぜず。離の孰(たれ)か喻えん、総持の功の深きを。惟うに昔、智者大師、世に降生して、玄徳を誕敷し、大いに横流を拯う。覆簣を大思に咨き、絶維を龍猛に振る。命家して古を作し、中観を以て師宗と為し、極を立て言を建て、上乗を以て帰趣と為す。爰に灌頂に付す。頂公、引きて之を伸ばし、欽んで弘持し、広く記述有り。教門の戸牖、此に因りて重ねて明らかなり。継いで法華威を以てす。威公、宿植して素に愆(あやま)たず。復た次に天宮威なり。威公、敬承すること水の器を伝うるが如し。之を左谿玄朗に授く。朗公、卓絶して天機独断、相沿いて説釈し、遑かに我が文を恤(うれ)えず。毘壇湛然に載揚す。然公、間生して総角に頴悟す。左谿、深く相の器異し、誓って以て伝燈とす。嘗て言う、止観の二門は、乃ち万行を統ぶ。円頓の設けは、一を以て之を貫く、と。噫、纘承すること四世、年、将に二百に到らんとす。魚魯、斯に訛りて、同じく異なる無きにしもあらず。方に将に思津を繹いて玄流を導かんとす。遂に広く邪疑を斥け、旁(あまね)く今古に薄(およ)ぼす。質(しつ)にして野ならず、博にして煩わず。輔行記を著わすこと、凡そ十巻。前聖の広略の旨を備え、今人の勝劣の機を允(まこと)にす。豈に唯、聞く所を錯綜するのみならん。将に以て治する所を隠括せんとす。治する所は、即ち行なり。三多の妙運、遽(にはか)に階(きざはし)す。聞く所は、唯だ一真の玄覧を解す。斯に㳷(あ)う。夫れ、行に岐路有れば則ち始終、天隔す。解に方隅無くんば、亦た浅深、類に随う。言を建て行を輔けて、以て其の全を挙ぐ。故に遠方より来たりて、疑いを詢(たず)ね、益を請う。蒙を撃ち、覆を発くこと、孜孜として日夕す。庶(ねがわ)くは幽賛し、欽んで伝弘せん。道の将に行なわるるや、孤運ならずんば已む。
咨、予が末学、軽々しく上乗を議す。其れ猶お、爝火(かがりび)の二曜に輝きを増すが如し。君山、除饉男、普門子、敬いて序す。時に永泰、首元の、興唐八葉の四載。