仁王護國般若波羅蜜多經卷下
仁王護国般若波羅蜜多経 巻下
開府儀同三司特進試鴻臚卿肅國公食邑三千戶賜紫贈司空諡大鑒正號大廣智大興善寺三藏沙門不空奉詔譯
護國品第五
護国品 第五
爾時,世尊告波斯匿王等諸大國王:「諦聽,諦聽!我為汝等說護國法。一切國土若欲亂時,有諸災難,賊來破壞。汝等諸王,應當受持,讀誦此般若波羅蜜多,嚴飾道場,置百佛像、百菩薩像、百師子座,請百法師解說此經。於諸座前燃種種燈,燒種種香,散諸雜花,廣大供養衣服、臥具、飲食、湯藥、房舍、床座一切供事;每日二時講讀此經。若王、大臣,比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷,聽受、讀誦、如法修行,災難即滅。
その時、世尊は波斯匿王をはじめとする諸々の大国王に告げられた。「よく聞け、よく聞け。汝らのために、国を護る法を説こう。すべての国土に乱れが生じようとする時、様々な災難が起こり、賊が来て国を破壊することがある。汝ら諸王は、この般若波羅蜜多を受け持って読誦すべきである。道場を荘厳に飾り、百体の仏像、百体の菩薩像、百の師子座を安置し、百人の法師を請じてこの経を解説させなさい。諸々の座の前で種々の灯明を灯し、種々の香を焚き、様々な花を散らして、衣服、寝具、飲食、湯薬、房舎、座具など、あらゆる供養を広大に行いなさい。毎日二回、この経を講義し読誦しなさい。もし王や大臣、比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷が、この経を聴聞し受け持ち、読誦し、教えの通りに修行するならば、災難はたちまち消え去るであろう。」
「大王!諸國土中有無量鬼神,一一復有無量眷屬,若聞是經,護汝國土。若國欲亂,鬼神先亂;鬼神亂故,即萬人亂——當有賊起,百姓喪亡;國王、大子、王子、百官互相是非。天地變怪,日月眾星失時失度,大火、大水及大風等,是諸難起,皆應受持、講說此般若波羅蜜多。若於是經受持、讀誦,一切所求——官位、富饒、男女、慧解、行來隨意、人天果報——皆得滿足;疾疫厄難即得除愈;杻械枷鏁撿繫其身皆得解脫;破四重戒、作五逆罪及毀諸戒無量過咎悉得消滅。
「大王よ、諸々の国土の中には無数の鬼神がいて、それぞれにまた無数の眷属がいる。もしこの経を聞くならば、あなたの国土を守護するであろう。もし国が乱れようとするならば、鬼神が先に乱れる。鬼神が乱れるゆえに、すなわち万人が乱れる——そこには賊が起こり、百姓は喪失し滅びるであろう。国王、太子、王子、百官は互いに是非を争うであろう。天地に変異や怪異が起こり、日月や衆星は時を失い度を失い、大火、大水、そして大風などが起こる。これらの諸々の難が起きるならば、すべてこの般若波羅蜜多を受け持ち、説き示すべきである。もしこの経を受け持ち、読誦するならば、一切の求めるもの——官位、富饒、男女、慧解、行来の随意、人天の果報——はすべて満たされるであろう。疫病や厄難はすぐに除かれ癒えるであろう。手枷、足枷、鎖、拘束がその身を繋いでも、すべて解脱を得るであろう。四重の戒を破り、五逆の罪を犯し、および諸々の戒を毀り、無量の過失や咎があっても、すべて消え滅びるであろう。」
「大王!往昔過去釋提桓因為頂生王,領四軍眾來上天宮欲滅帝釋。時彼天主即依過去諸佛教法,敷百高座,請百法師講讀般若波羅蜜多經。頂生即退,天眾安樂。
大王よ。昔、釈提桓因は頂生王となり、四軍の兵を率いて天の宮殿にやって来て、帝釈天を滅ぼそうとしました。その時、天の主は過去の諸仏の教えに従い、百の高座を設け、百人の説法者を招いて般若波羅蜜多経を講じ読誦させました。すると頂生王は退き、天の人々は安らかになりました。
「大王!昔天羅國王,有一太子名曰斑足,登王位時,有外道師名為善施,與王灌頂,乃令斑足取千王頭,以祀塚間摩訶迦羅大黑天神。自登王位,已得九百九十九王,唯少一王。北行萬里,乃得一王名曰普明。其普明王白斑足言:『願聽一日禮敬三寶、飯食沙門。』斑足聞已即便許之。其王乃依過去諸佛所說教法,敷百高座,請百法師,一日二時講說般若波羅蜜多八千億偈。時彼眾中第一法師,為普明王而說偈言:
「大王よ。昔、天羅国に一人の王がおりました。その太子は斑足と申しました。王位に登った時、外道の師である善施という者がおり、王に灌頂を行い、斑足に千人の王の首を取らせ、塚の間にある摩訶迦羅大黒天神に供えさせました。王位に登ってから、すでに九百九十九人の王を得ていましたが、ただ一人の王が足りませんでした。北へ一万里行って、ようやく一人の王を得ました。その名は普明といいました。その普明王は斑足に申し上げました。『どうか一日だけ、三宝を敬い礼拝し、沙門に食事を施すことをお許しください。』斑足はこれを聞いて、すぐに許しました。その王は、過去の諸仏が説かれた教えに従って、百の高座を設け、百人の法師を招き、一日に二度、般若波羅蜜多八千億偈を説き聞かせました。その時、その集まりの中の第一の法師が、普明王のために偈を説きました。
「『劫火洞然, 大千俱壞, 須彌巨海, 磨滅無餘。
梵釋天龍, 諸有情等, 尚皆殄滅, 何況此身。
生老病死, 憂悲苦惱, 怨親逼迫, 能與願違。
愛欲結使, 自作瘡疣, 三界無安, 國有何樂?
有為不實, 從因緣起, 盛衰電轉, 暫有即無。
諸界趣生, 隨業緣現, 如影如響, 一切皆空。
識由業漂, 乘四大起, 無明愛縛, 我我所生。
識隨業遷, 身即無主; 應知國土, 幻化亦然。』
「劫の火が燃え盛り、大千世界がことごとく壊れ去るとき、須弥山も広大な海も、すべて滅び尽くして何も残らない。梵天や帝釈天、龍神たち、あらゆる生きとし生けるものも、すべて滅び去ってしまう。ましてやこの身など、どうして永く保てようか。生まれ、老い、病み、死ぬこと、憂い悲しみ苦しむこと、恨みや親しみに責め苛まれ、願いが叶わないこと。愛欲の煩悩は、自らが作った瘡蓋のようなもの。三界に安らぎはなく、国に何の楽しみがあろうか。この世の営みは実体がなく、因縁によって生じる。盛衰は稲妻のように瞬く間に移り変わり、しばし存在してもすぐに消え去る。あらゆる世界に生まれ変わるのも、業と縁によって現れるのであり、影や響きのように、すべては空である。識は業によって漂い、四大によって生じる。無明と愛欲の縛りによって、私と私のものという考えが生まれる。識は業に従って移り変わり、この身には本当の主体などない。国というものも、幻のようなものであると知るべきである。」
「爾時法師說此偈已,時普明王聞法悟解,證空三昧,王諸眷屬得法眼空。其王即便詣天羅國,諸王眾中而作是言:『仁等!今者就命時到。悉應誦持過去諸佛所說般若波羅蜜多偈。』諸王聞已亦皆悟解,得空三昧,各各誦持。時斑足王問諸王言:『汝等今者皆誦何法?』
その時、法師がこの偈を説き終えると、普明王は法を聞いて悟りを得、空の三昧を証得した。王の眷属たちもまた法眼の空を得た。王はすぐに天羅国へ赴き、諸王の集まりの中でこう言った。「皆さま、今まさに命の終わる時が来ました。どうか過去の諸仏が説かれた般若波羅蜜多の偈を誦えお覚えください。」諸王はこれを聞いて皆悟りを得て、空の三昧を証得し、それぞれが偈を誦えた。その時、斑足王が諸王に尋ねた。「あなたたちは今、何を誦えているのか。」
「爾時普明即以上偈答斑足王,王聞是法亦證空定,歡喜踊躍告諸王言:『我為外道邪師所誤,非汝等咎;汝各還國,當請法師解說般若波羅蜜多。』時斑足王以國付弟,出家為道,得無生法忍。
その時、普明王はただちにこの偈をもって斑足王に答えました。王はこの法を聞いて、空の定を証し、歓喜して踊りながら、諸王に告げました。「私は邪悪な外道の教師に遭って誤らされたのだ。お前たちの過ちではない。お前たちはそれぞれの国に帰りなさい。そして、必ず法師を招いて般若波羅蜜多を説いてもらいなさい。」その時、斑足王は国を弟に譲り、自ら出家して道を求め、無生法忍を得たのであります。
「大王!過去復有五千國王常誦此經,現生獲報;汝等十六諸大國王,修護國法,應當如是受持、讀誦、解說此經;若未來世諸國王等,為欲護國護自身者,亦應如是受持、讀誦、解說此經。」
「大王よ、過去にもまた五千の国王たちがこの経典を常に読誦し、現世でその報いを得ました。あなたがた十六の大国の王たちも、国を護る法を修めるにあたり、このようにこの経典を受け持ち、読誦し、解説すべきです。もし未来の世の諸王たちが、国と自らを護ろうと願うならば、同じくこの経典を受け持ち、読誦し、解説すべきなのです。」
說是法時,無量人眾得不退轉,阿修羅等得生天上,無量無數欲、色諸天得無生忍。
この教えが説かれたとき、無数の人々が退転しない境地を得ました。阿修羅たちは天上に生まれることができ、数えきれないほどの欲界と色界の天人たちは、無生法忍を得ました。