蕤呬耶經卷中
蕤呬耶経 巻中
大唐大興善寺開府儀同三司試鴻臚卿三藏和尚奉 詔譯
摩訶曼荼羅品第七
第七章 大曼荼羅
「次於晨朝時,自應念誦,著新淨衣,於曼荼羅所用真言先須熟誦,詣於彼處。先以辦事真言持誦香水散灑,還以此真言持誦五色繩,得好瑞相方可合繩。其五色者,謂白、赤、黃、青、黑,如其繩色,彩色亦然。
朝の時間になったら、自ら心を込めて真言を唱えましょう。新しい清らかな衣をまとい、マンダラに用いる真言はあらかじめよく暗唱しておき、その場に赴きます。まずは「事を成す真言」で香水に唱えて撒き清め、この同じ真言で五色の糸に唱え、良い瑞相が現れてから糸をより合わせます。その五色とは、白、赤、黄、青、黒のことです。糸の色がそうであるように、彩色もまた同様です。
「先應歸命三寶一切諸尊及與供養,然後絣繩,從東起首,其阿闍梨於東南角手執其繩,面向北住;其執繩者於東北角而面向南,記取分量。復令彼人右遶往西南角,面向東住;其阿闍梨不移本處,但右迴身,面向西住,亦取分量。其阿闍梨自亦右遶,往於西北角面向南住;其弟子者不移本處,但右迴身面向北住,亦取分量。又,其弟子亦應右遶,往東北角面向西住;其阿闍梨不移本處,但右迴身,面向東住,亦取分量。其阿闍梨住東南角及西北角而量二方,其東北角及西南角是彼弟子所住之處。
まず、仏・法・僧の三宝とすべての諸尊に帰依し、供養を捧げなさい。その後、縄を張り、東側から始めます。阿闍梨は南東の角に立ち、縄を手に持って北を向きます。縄を持つ者は北東の角で南を向き、寸法を測ります。次に、その者に右回りで南西の角へ移動させ、東を向かせます。阿闍梨はその場を動かず、右に体を向けて西を向き、寸法を測ります。阿闍梨自身も右回りで北西の角へ移動し、南を向きます。弟子はその場を動かず、右に体を向けて北を向き、寸法を測ります。さらに、弟子も右回りで北東の角へ移動し、西を向きます。阿闍梨はその場を動かず、右に体を向けて東を向き、寸法を測ります。阿闍梨は南東の角と北西の角に立ち、二方向を測ります。北東の角と南西の角は、弟子が立つ場所です。
「四方定已,又角絡量;等量正已,復中心量。其中心上打一橛子,於外四角各置一橛;其第二院及最內院,各於四角亦置一橛。從內院量至於外院,半半而減,其繞院但用白色而界一道。
四方に境界を定めたら、次に角を測り、等しく測り終えたら、中心も測ります。その中心に一本の杭を打ち、外側の四隅にもそれぞれ一本ずつ杭を置きます。第二の区画と最も内側の区画にも、それぞれ四隅に一本ずつ杭を置きます。内側の区画から外側の区画に向けて、半分ずつ縮めていきます。その周囲には白い線で一重の境界を引きます。
「夫曼荼羅,又有其三重、亦有四重、亦有多重。其最外院廣開一門,亦有如是開四門者,并有門曲。凡曼荼羅多分唯開一門,然其中院定開四門。凡出入者用其西門,或依本法隨說出入。縱有如是開四門者,要以白色圍其三門。如是三重之院,一切曼荼羅應如是作,餘圍繞院准此應知。
「さて、曼荼羅には三重の区画があるものもあれば、四重のもの、あるいはさらに多くの区画を持つものもあります。 最も外側の区画には広く一つ門が開かれているものや、四つの門が開かれているもの、さらに門の脇に透かし壁を設けたものもあります。 一般に、曼荼羅は多くが一つの門だけを開けます。しかし、その内側の区画には必ず四つの門を開けます。 出入りは西の門を用いるか、あるいは儀軌(テキスト)の指示に従って、出入りに適した門を使います。 たとえ四つの門が開かれている場合でも、三つの門は白い色で塗り固めなければなりません。 このように三重の区画は、すべての曼荼羅において同じように作るべきです。その他の周囲の区画についても、これに準じて理解しなさい。」
「一切本尊置於內院,其次諸尊置第二院,其諸護世天當置外院。此為是都說曼荼羅法,或如本法依彼安置。
一切の本尊は内院に安置し、次に諸の尊を第二院に置き、諸の護世天は外院に置くべし。これは曼荼羅の法を統べて説くものであり、あるいは各々の本則に従ってそれに依りて安置する。
「其界道繩令童女搓,圓牢淨潔及以堅密,其繩五色,而用白㲲及麻等作。取有乳木而作橛子,頭如金剛,真言持誦,向上小出頭,打下入地,於曼荼羅隨方應釘,次第應知。放繩之時,若惡相現,即不成就;其繩若斷,尊者必死;其繩麁細不圓,即有病患;忽若迷方而作法時,弟子皆狂。是故,應當善知方所如法界道,如安宅法所說次第依彼作法。
その境界線の縄は、少女に搓らせ、丸く堅く清らかに、かつ密に作らせる。その縄は五色とし、白い木綿布や麻などで作る。乳を出す木で杭を作り、その頭は金剛のようにし、真言を唱えながら、少し頭を出して地面に打ち込む。曼荼羅の各方位に順に打ち込むべきである。縄を張るとき、もし悪い兆しが現れたならば、成就しない。もしその縄が切れたならば、尊者は必ず死ぬ。その縄が粗かったり細かったり丸くなかったならば、病いが起こる。もし誤って方向を違えて作法を行うならば、弟子たちは皆、狂ってしまう。それゆえ、方位をよく知り、法の如き界道を、『安宅法』に説かれた次第の通りに作法を行うべきである。
「其阿闍梨先請僧眾隨力供養,又復處分令諸弟子供養僧眾、或請僧次而作供養、及供如來施物大眾。然後過午用菴摩勒等尊及弟子持誦軍荼利真言,如法澡浴。澡浴畢已,著新淨衣,心念軍荼利尊,將諸供養具以大慈心往曼荼羅其所弁供,如法具足,應諸要見。
その阿闍梨は、まず僧侶の皆さんを招いて、できる範囲で供養を行います。さらに、弟子たちに僧侶への供養を命じ、順番に僧侶を招いて供養したり、如来への供物や大衆への施しも行います。
その後、昼を過ぎてからアーマラ(菴摩勒)などを用いて、尊像と弟子たちは軍荼利(くんだり)の真言を唱え、作法に従って沐浴します。沐浴が終わったら、新しい清らかな衣を着て、心に軍荼利尊を念じ、供養具を携えて大いなる慈しみの心をもって曼荼羅の場所へ向かいます。そこで供養を整え、作法通りに備え、必要なものをすべて見えるように整えます。
「其阿闍梨緣曼荼羅所有法事,先須純熟,以牛糞及尿塗曼荼羅,次以香水灑四面地,亦塗牛糞及以灑水,極令欣悅,散諸名花。次以其帳幕圍繞其所,建竪幢幡遍圍作幔,及以種種吉祥資具莊嚴其處。漫荼羅北面一處,先以軍荼利真言辟除諸難,置諸供具持誦而護及以灑淨,自作護身及護四方。
その阿闍梨が曼荼羅に関して行うすべての作法は、まず十分に習熟しなければならない。牛糞と牛の尿で曼荼羅の地を塗り、次に香水を四方の地面にまく。さらに牛糞を塗り、水をまいて、心から喜びをもってさまざまな名高い花を散らす。次に、その場所を幕で囲み、幢幡を建てて周囲に幔を張り巡らせ、また様々な吉祥の道具をもってその場所を荘厳する。曼荼羅の北側の一か所には、まず軍荼利の真言で諸々の障りを除き、供え物を安置して、真言を唱えて護り、水をまいて清める。自ら身を護り、四方を護るのである。
「正日沒時,頂戴其繩,若得好相,歡喜之心起首作法;或若不得善惡之相,以無疑心皈命三部諸尊,徐徐作法;或若數數不善相現,必不成就,勿須起首。若強作者,以除難故,當作息災護摩之法——以蘇及柴各以百遍而作護摩,於佛部中用佛眼真言、於蓮花部用耶輸末底真言、於金剛部用莽摩計真言,皆作息災護摩,然其莽摩計通三部母,是故三部用通。
日が完全に沈む時、その縄を頭の上に頂きます。もし良い相が現れたなら、喜びの心を持って作法を始めなさい。あるいは、善悪いずれの相も得られなかった場合は、疑いの心なく三部の諸尊に帰命し、ゆっくりと作法を行いなさい。また、何度も悪い相が現れたなら、必ず成就しないので、作法を始めてはなりません。もし無理に行おうとするなら、災いを除くために、息災の護摩の法を行うべきです——酥と薪をそれぞれ百回ずつ用いて護摩を修し、仏部では仏眼真言を用い、蓮華部では耶輸末底真言を用い、金剛部では莽摩計真言を用います。これらすべてを息災の護摩とします。ただし、莽摩計真言は三部の母に通じるため、三部すべてに通用します。
「護摩畢已,即獻閼伽,其器金作、或銀、熟銅、寶木、石、瓦,如法而作,盛滿香水及以白花,持誦真言,手執閼伽,以燒香薰,右膝著地,當心而執,以深恭敬誦根本真言而奉獻之。次獻白花及美好香,依於諸漫荼羅所用塗香、燒香,勿用有情身分及以紫鑛,但用美香,凡所用水皆須淨漉及以清淨。其所塗香及以燒香,用一色香將為最勝;其所獻花,用水及陸白色及香將為最勝。次,應呼弟子與彼作護及香水灑,皆令一處次第而坐。
護摩の修法が終わったならば、すぐに閼伽を捧げなさい。その器は金、銀、熟銅、宝木、石、瓦など、正しい作法に従って作り、香水を満たし白い花を浮かべなさい。真言を唱えながら閼伽の器を手に取り、焼香で薫き、右膝を地につけ、心の前に捧げ持ち、深い敬いの心で根本真言を唱えて捧げなさい。
次に、白い花と良い香りの香を捧げなさい。諸々の曼荼羅に用いる塗香や焼香は、生き物の体から取ったものや紫鑛を用いてはならず、良い香りのものだけを用いなさい。使う水はすべて漉して清めたものを用いなさい。塗香や焼香は、単一の香りのものが最も優れています。捧げる花は、水辺や陸に咲く白く香りの良いものが最も優れています。
次に、弟子を呼び寄せて、護摩の加護と香水の振りかけを行い、皆を一つの場所に順序よく座らせなさい。
「其阿闍梨先轉般若,至誠歸命一切諸尊及以心觀,然後方起而作畫之,用其五鐵以為彩色最為勝上、或用五寶。若無五鐵及五寶者,即用粳米粉,色數如前,極須微細;或用石末。
その阿闍梨は、まず般若経を読み、心から一切の諸尊に帰依し、心を集中して観想した後、立ち上がって絵を描き始める。 彩色には五種の鉄粉を用いるのが最も勝れた方法であり、あるいは五種の宝を用いてもよい。 もし五種の鉄や五種の宝が得られない場合は、粳米の粉を用い、前と同じように五色に染め、非常に細かく粉末にする。または石の粉末を用いてもよい。
「所用彩色總有四種,謂鐵、及寶、粳米、及石末。凡諸曼荼羅當用之色、或若不辨此等色者,應用燒土以為赤色、炭為黑色、大小麥末為作餘色。若作速急之時、及碎伏鬼魅、并作降伏法者,應用灰作曼荼羅;於諸彩色——五鐵、五寶、粳米粉三色——隨所用處各自為上。
使用する彩色は、全部で四種類あります。それは鉄、宝、粳米(うるち米)、そして石の粉末です。あらゆる曼荼羅(まんだら)に用いる色として、もしこれらの材料が用意できない場合は、焼き土を赤色に、炭を黒色に、大麦や小麦の粉末をその他の色に用いても構いません。急ぎの時や、鬼や魔物を砕き伏せるとき、そして調伏(ちょうぶく)の法を行うときは、灰で曼荼羅を作るべきです。彩色の中では、五鉄(五種の鉄)、五宝(五種の宝)、粳米の三色が、用いる場面ごとにそれぞれ最上のものとされます。
「若作三摩耶曼荼羅,應用五鐵;若作灌頂曼荼羅,應用五寶;若作息災,應用粳米粉;若作增益,當用石末色;若作降伏,當用其灰。此名彩色差別等相。
三昧耶曼荼羅(さんまやまんだら)を作るなら、五種の鉄を用いること。灌頂曼荼羅(かんじょうまんだら)を作るなら、五種の宝を用いること。息災(そくさい)のためには、粳米(うるちまい)の粉を用いること。增益(ぞうやく)のためには、石粉(いしこ)を用いること。降伏(ごうぶく)のためには、灰を用いること。これらを彩色の種類の違いと相(すがた)と呼ぶ。
「從東北角而下彩色,極令端直,右繞而布,勿令隔斷。其色界道若有麁細、或復斷絕、及不齊正,種種難起。是故,應當慇懃布色。
東北の角から色をつけ始め、それをまっすぐに、非常に端正に引いていき、右に回るようにして布きなさい。決して途切れさせてはいけません。この色の境界線に粗い部分や途切れ、不揃いがあると、さまざまな障りが生じます。ですから、丁寧に色を施すべきなのです。
「凡諸方門要當中開,謂量九分。其八分者,各取四分而為兩邊,取中一分而開為門。其出入門稍應闊作,自餘諸門以白色末而作畫閉,其所閉者稍向外曲、或置門印而閉其門、或置護方契印。
すべての方位の門は中央を開くべきであり、その幅を九分割とする。そのうち八分割については、それぞれ四分を両側に取り、中央の一分を開いて門とする。出入りする門はやや広めに作る。それ以外の門は白い粉で描いて閉じ、その閉じた部分はやや外側に曲げるか、あるいは門の印を置いて閉じるか、または護方の契印を置く。
「中台及內院應用五色而作界道,其第二院應用三色,第三外院唯用白色而作界道。其著食院及行道院但用白色而作界道;餘有用灰作曼荼羅,皆是一道。其三重院一一各分而作三道,縱廣分量極令平正。於三部中諸曼荼羅法皆當如是。
中台及び内院は五色を用いて界道を施すべきです。第二院は三色を用い、第三の外院は白色のみを用いて界道とします。食院及び行道院は白色のみを用いて界道とします。また、灰で曼荼羅を作る場合もすべて一重の界道とします。この三重の院はそれぞれ三重の道に分け、縦横の寸法は非常に平らで整っているようにします。三部の中での曼荼羅の法はすべてこのように行うべきです。
「或依本法所有分量當准彼作,應置諸尊等院,更塗牛糞及灑五淨,以明王真言持誦香水,亦復灑淨方可畫尊。
あるいは、この方法に基づいてその分量を定めて行うべきです。諸尊の院を設け、さらに牛糞を塗り、五浄を撒き、明王の真言で香水を誦持し、また清めてから尊像を描くべきです。
「其畫尊法總為三種,隨取一處作曼荼羅:一者、畫尊形像,二者、畫作其印,三者、但置其座。
その尊い法を描く方法は、大きく三つあります。その中のいずれか一箇所を選んで、曼荼羅を作ります。 一つ目は、尊い姿形を描くこと。 二つ目は、その印(手の形や象徴)を描くこと。 三つ目は、ただその座だけを置くこと。
「若畫像者,阿闍梨極須好能畫其形貌,一一如法,身分支節必應相稱,分明顯現與院相稱,隨其本法說形像,瞋、喜、坐、立一一相應,具足而作,勿令闕少。其諸聖尊像貌安置,此名畫形像法。
もし画像を描くならば、阿闍梨は大変優れた技量でその姿を描かねばならない。一つ一つの描き方を教えの通りにし、体の各部分のバランスが必ず釣り合い、はっきりと現れて寺院やお堂に調和するようにする。その教えに従って姿を描き、怒りの表情や喜びの表情、座った姿や立った姿の一つ一つを対応させ、十分に整えて描き、欠けたり足りなかったりしてはならない。諸々の聖なる尊い方々の姿や風格をしっかりと配置する。これを画像を描く方法という。
「若不絕妙畫者,應置契印。假使能畫一切諸相一一具足,難可得成。縱欲作者,淹滯時分,多作形像,亦復不善。相貌不具,即無靈驗及不成就。是故,應當置其契印,或當唯畫三部主尊形像而置,餘作契印。
もしも細密な絵を描ききることができないならば、印契(いんげい:象徴的な図形や文字)を安置するのがよい。たとえ一切の相(すがた)を一つ一つ完全に描き出そうとしても、それを成就するのは難しい。仮に描こうとしても、時間がかかるばかりで、多くの形像を描いても、やはり良い結果にはならない。姿かたちが整っていなければ、霊験(りょうけん:不思議な力)もなく、成就も得られない。それゆえ、印契を安置するか、あるいは三部(三部:仏・蓮華・金剛の三つの部類)の主となる尊い方々の形像だけを描いて安置し、残りは印契にすべきである。
「天尊契印即是佛頂,以心持誦彼真言;以白色畫觀世音自在契印即是蓮華;其執金剛契印即是五股跋折羅(二合);其諸餘尊各依本法自說契印。或若不獲彼本印者,應置部主契印,悉皆通用,隨其諸尊等所執持器杖即是彼印。
天尊の契印は、すなわち仏頂である。心に真言を唱えながら、白で観世音自在尊の契印を描く。これが蓮華である。執金剛神の契印は五鈷杵である。その他の尊については、それぞれの教えに従って自らの契印を示す。もしその本尊の印を得られない場合は、部主の契印を置けば、すべてに通用する。諸尊が持つ器物こそが、その印である。
「如是略說諸尊契印,勿須懷疑,決定如是。其嚕怛羅(二合)契印即是利三股叉、其妃契印即是鉢置娑鉶、其那羅延契印即是輪印、其摩訶斯那契印即是娑惡(二合)底、其梵天王契印即是蓮華、其帝釋契印即是跋折羅(二合)、其火天契印即是火爐、其閻摩契印即是單馱棒、其泥利羝契印即是橫大刀、其龍王契印即是羂索、其風神王契印是幢幡、其多聞天契印即是伽馱棒、摩醯首羅契印即是三股叉、其地神契印即是滿瓶、日月契印即是圓滿之相、諸尊契印即吉祥……等是也,隨所其印,一一而作。
「このように、諸尊の契印(手の印相)を簡潔に説いたので、疑うことなく、その通りと信じなさい。 ルドラ(註:二合と読む)の契印は三叉の戟(みつまたのほこ)、その妃の契印は鉢置娑鉶(はちすのうつわ)。 那羅延(ナーラーヤナ)の契印は輪の印。 摩訶斯那(マハーセーナ)の契印は娑悪底(さあくてい)。 梵天王(ブラフマー)の契印は蓮華(はちす)。 帝釋(インドラ)の契印は跋折羅(ばさら、金剛杵)。 火天(アグニ)の契印は火炉。 閻摩(ヤマ)の契印は単馱棒(たんだぼう)。 泥利羝(ニリティ)の契印は横大刀。 龍王(ナーガラージャ)の契印は羂索(けんじゃく、投げ縄)。 風神王(ヴァーユ)の契印は幢幡(どうばん、旗)。 多聞天(クベーラ)の契印は伽馱棒(かだぼう)。 摩醯首羅(マヘーシュヴァラ)の契印は三股叉(みつまたのほこ)。 地神(プリティヴィー)の契印は満瓶(みたるかめ)。 日月の契印は円満な姿である。 その他の諸尊の契印は吉祥……などである。これらの印に従って、一つ一つ行いなさい。」
「若畫形像者,契、印及座三種應具,諸曼荼羅縱使不說,准此應作,此名契印之法。
画像を描く時は、契、印、そして座の三つを必ず備えなければなりません。様々な曼荼羅はたとえ説明がなくとも、これを基準にして制作すべきです。これを契印の法と言います。
「但置座者,其三部尊座皆作圓形,與院相應,誦其真言,中置一點;自餘諸尊或圓及方,各誦彼等真言,中置一點;其外院尊,但呼名號唯置一點,亦無方圓。如是畢已,方作奉請,此名第三安座之法。
ただし、座を安置する場合、その三部の尊い方々の座はすべて円形に作り、院に対応させて、その真言を唱え、中央に一点を置きます。それ以外の尊い方々は円形または方形にし、それぞれの真言を唱えて中央に一点を置きます。外院の尊い方々については、ただ名号を呼んで一点だけ置き、方形や円形は用いません。このようにして終えたなら、はじめて奉請を行います。これを第三安座の法といいます。
「若作速急之事力不及者,應作座曼荼羅,或作一、及二、三曼荼羅法。其三部主畫其形像,餘諸尊等但置契印,外院諸尊唯置其座。准此應知一、二、三法,此名殊勝廣略曼荼羅法。
急ぎの事柄で、力を及ぼすことができない場合は、座の曼荼羅(まんだら)を作るべきです。あるいは一つ、二つ、三つの曼荼羅の作法を行います。その三部の主尊(ほんぞん)には形像を描き、残りの諸尊(しょそん)たちはただ契印(けいいん)を置くだけとし、外院(げいん)の諸尊はその座だけを置きます。これに従って、一、二、三の作法を知るべきです。これを殊勝(しゅしょう)なる広略(こうりゃく)の曼荼羅の作法と名づけます。
「其先所說形像之法,若不具足即有難起;最後第三處所總空亦不為吉。中間契印非過非空最是微妙,如法供養皆有靈驗,亦復易作能表其尊。是故,慇懃應用契印作曼荼羅。
先に述べた形像の方法は、不完全であれば困難が生じます。最後の第三の場所、つまり全くの空もまた、吉祥とはなりません。中間の契印は、過ぎることも空になることもなく、最も微妙です。法の通りに供養すれば、すべて霊験があり、また作りやすく、その尊格をよく表します。それゆえに、心を込めて契印を用いて曼荼羅を作るべきです。
「於佛座下置無能勝,右邊置本部母,假使於彼曼荼羅不說,必須安置;於中若有處空無尊位者,應置一瓶,瓶上置般若經甲及讀彼經;觀自在下置馬頭菩薩,右邊置本部母,縱彼不說亦須安置;於執金剛下置軍荼利,右邊置莽摩計母。
仏の座の下には無能勝(むのうしょう)を置き、右側にはその部の本尊の母となる尊を置くこと。たとえ曼荼羅の中でそのことが説かれていなくても、必ず安置しなければならない。
その中で、もし尊像を安置すべき場所が空いている場合は、一瓶を置き、その瓶の上に般若経典とその経を読誦するための経典を置くこと。
観自在菩薩の下には馬頭菩薩を置き、右側にはその部の本尊の母となる尊を安置すること。たとえ曼荼羅に説かれていなくても、必ず安置しなければならない。
執金剛菩薩の下には軍荼利(ぐんだり)を置き、右側には莽摩計母(まんもけいも)を安置すること。
「其西門邊置難陀跋難陀龍王,曼荼羅外西面一處對門廂當置訶利羝母,於一切門置跋折羅及置金剛羂索等,隨方契印極令可畏。
その西門のほとりには難陀跋難陀龍王を置く。曼荼羅の外、西側の一か所で、門に向かい合う場所には訶利羝母を置く。すべての門には跋折羅(金剛杵)を置き、さらに金剛羂索などを置く。それぞれの方角に合わせて印を結び、非常に恐ろしいものとする。
「於曼荼羅第三院北面安置摩尼跋多羅將等及諸敬信藥叉。
マンダラの第三院、北側の面に摩尼跋多羅将らと、敬い信じる諸々の夜叉を安置する。
「於曼荼羅外東面一處別置佛法僧寶,如法供養,縱使彼不說亦須安置。
曼荼羅の外、東側の一箇所に、別に仏・法・僧の三宝を安置し、正しく供養しなさい。たとえ相手がそれを言わなくても、必ず設けるべきです。
「於曼荼羅第三院東面置文殊師利菩薩、大勢至菩薩、佛長子菩薩、虛空藏菩薩、成就義菩薩、無垢行菩薩、彌勒菩薩等、賢劫千菩薩……如是等大菩薩,縱使不說亦須安置。
曼荼羅の第三院の東側には、文殊師利菩薩、大勢至菩薩、仏長子菩薩、虚空蔵菩薩、成就義菩薩、無垢行菩薩、弥勒菩薩などの賢劫の千菩薩を安置する。……このような大菩薩方は、たとえ説かれていなくとも、必ず安置しなければならない。
「其院南面置金剛將菩薩、及蘇磨呼菩薩、頂行菩薩、摩醯首羅及妃、梵王、及軍闍羅持明仙王、質怛羅(二合)迦陀持明仙王、枳利知持明仙王、皤摩尊慕梨持明仙王、蘇盧者那持明仙王、只怛羅(二合)婆努持明仙王、成就義持明仙王如是七仙,縱使不說亦須安置。
その院の南面には、金剛将菩薩、蘇磨呼菩薩、頂行菩薩、摩醯首羅天とその妃、梵天、そして軍闍羅持明仙王、質怛羅迦陀持明仙王、枳利知持明仙王、皤摩尊慕梨持明仙王、蘇盧者那持明仙王、只怛羅婆努持明仙王、成就義持明仙王という七人の仙王を安置せよ。たとえ経典に明記されていなくても、これらは必ず配置しなければならない。
「其院西面置諸摩怛羅神、佉那鉢底神、諸羯羅訶神、羅睺阿修羅王、婆致皤羅(二合)那陀、及遍照阿修羅、婆素枳等龍王……如是諸神,縱使不說亦須安置。
庭の西側には、摩怛羅神(マートリ神)、佉那鉢底神(カナパティ神)、諸々の羯羅訶神(グラハ神)、羅睺阿修羅王(ラーフ・アスラ王)、婆致皤羅那陀(ヴァーチスヴァラナータ)、遍照阿修羅(ヴァイローチャナ・アスラ)、婆素枳(ヴァースキ)などの竜王を安置しなさい。これらの神々は、たとえ特に説明しなくても、必ず安置しなければなりません。
「其院東面為其帝釋,置拔折羅印及與諸天眷屬并淨居天,其日月天東西二面安置其印相,作圓曼荼羅,其色日赤、月白;於東南方置火神印及諸仙、藥叉眾;於其南方置檀荼印,與諸餓鬼圍繞;於西南方置大刀印,與諸羅剎圍繞;於其西方置羂索印,與諸龍等圍繞;於西北方置旗幡印,與諸風神圍繞;於其北方置伽馱印,與諸藥叉圍繞;於東北方置輸羅印,與諸部哆眷屬圍繞;於西門北邊置其下方瓶印,與阿修羅圍繞。如是安置護方神已,各并眷屬,如法供養。
その院の東面には、帝釈天のために金剛杵の印を置き、諸々の天の眷属や浄居天と共に安置する。日月天は東西の二面に安置し、その印相は円形の曼荼羅とし、その色は日は赤、月は白とする。 東南の方角には火天の印を置き、諸仙や夜叉の衆と共にする。 その南方には檀荼の印を置き、諸々の餓鬼に囲まれる。 西南の方角には大刀の印を置き、諸々の羅刹に囲まれる。 その西方には羂索の印を置き、諸々の竜などに囲まれる。 西北の方角には旗幡の印を置き、諸々の風神に囲まれる。 その北方には伽馱の印を置き、諸々の薬叉に囲まれる。 東北の方角には輸羅の印を置き、諸々の部多の眷属に囲まれる。 西門の北側には、その下方の瓶の印を置き、阿修羅に囲まれる。 このようにして護方の神々を安置したならば、それぞれの眷属と共に、法のままに供養する。
「於第二院置如來毫相尊、如來舍惡(二合)底、輪王佛頂、超勝佛頂、如來眼尊、及置如意寶幢印、并諸使者及無能勝……如是等尊,皆悉安置於佛左右。
第二院には、如来の眉間白毫相の尊、如来の舎悪底(二合)、輪王仏頂、超勝仏頂、如来の眼の尊、そして如意宝幢の印、さらに諸使者および無能勝を安置する……これらの尊たちは、すべて仏の左右に並べて安置する。
「耶輸末底尊、大白尊、槃坦羅(二合)皤絲泥尊、馬頭尊、一髻尊、多羅尊、徹(去聲)㗚尊、大吉祥尊、圓滿尊……如是等尊,置於觀自在左右。
「金剛鉤尊、金剛拳尊、遜婆明王、軍荼利忿怒尊、般坦尼訖涅(二合)婆尊、金剛錛鉢尊、金剛棒尊、不淨忿怒尊……如是等尊置於執金剛左右邊。
金剛鉤尊、金剛拳尊、遜婆明王、軍荼利忿怒尊、般坦尼訖涅婆尊、金剛錛鉢尊、金剛棒尊、不淨忿怒尊……これらの尊い方々を、執金剛の左右に安置せよ。
「凡作一切曼荼羅者,皆須安置如是等尊。其處若不滿者,即當安置。自餘不說三部諸尊,復意所樂,諸尊隨意安置。
すべての曼荼羅(まんだら)を作る場合には、このように諸尊(しょそん)を安置しなければなりません。もしその場所が足りないならば、さらに安置してください。ここに述べなかった三部(さんぶ:金剛界・胎蔵界・蘇悉地)の諸尊は、あなたの意のままに、好みに応じて自由に安置してかまいません。
「其第三院亦復如是,於曼荼羅外東方及南、北方各置一座,以心觀察三部諸尊,各隨其方都請供養及用閼伽而奉獻之,各誦彼部部主真言。其東方座安置佛部、其北方座安置蓮華部、其南方座安置金剛部,如是三部一切諸尊并諸使者都而奉請,如法供養,皆生歡喜。於其西方亦置一座,奉請一切天神,如前供養。
第三の院もまた同様です。曼荼羅の外側、東方、南方、北方にそれぞれ一つの座を置き、心をもって三部の諸尊を観察します。それぞれの方角に従って、すべてを請じ、供養し、また閼伽(あか)を奉献します。そして、それぞれの部の部主の真言を唱えます。東方の座には仏部を安置し、北方の座には蓮華部を安置し、南方の座には金剛部を安置します。このように三部のすべての諸尊とその使者たちをことごとく請じ、法のままに供養すれば、皆が歓喜を生じます。またその西方にも一つの座を置き、すべての天神を奉請し、前と同じように供養します。
「若作息災曼荼羅者,當置三寶、及諸菩薩、淨居天等;若作增益曼荼羅者,當置明尊、及真言尊、諸大威德等敬信藥叉;若作降伏曼荼羅者,應置忿怒諸尊及使者等諸猛害尊。凡曼荼羅皆須應作三事法,是故應當置三種尊。
災いを鎮めるマンダラを作るなら、三宝や諸々の菩薩、浄居天などを安置すべきです。繁栄をもたらすマンダラを作るなら、明尊や真言尊、大いなる威徳を持つ諸尊、そして敬虔な薬叉などを安置すべきです。調伏するためのマンダラを作るなら、忿怒の諸尊やその使者たち、猛々しい尊格たちを安置すべきです。いかなるマンダラでも、三つの働き(息災・增益・降伏)に対応するために、かならず三種類の尊格を安置しなければなりません。
「其最內院若無主者,當置般若印像——於內院門右邊置一淨篋,於上置般若經甲。於外門左邊置護摩火爐,用淨好木而為燒柴,或東南方置其火爐、或隨事相應而置火爐。安置諸尊准此應知。若於佛堂、或於窟內、及以室內、及或迮處所作曼荼羅者,隨意安置;若作成就曼荼羅者不應窟內及與迮處而作,強作即損。
【最も内側の院に主となる尊がいない場合は、般若波羅蜜多の印像を安置すべきである。内院の門の右側に清らかな箱を一つ置き、その上に『般若経』の甲本を安置する。外門の左側には護摩の炉を設け、清らかで良い木を燃やし木として用いる。あるいは東南の方位に炉を設けてもよく、また作法に応じて炉を設置してもよい。諸尊の安置もこれに準じて行うべきである。】 【もし仏堂や洞窟の中、あるいは室内、また狭い場所で曼荼羅を作る場合は、随意に安置してよい。しかし成就のための曼荼羅を作る場合は、洞窟の中や狭い場所で行うべきではない。無理に行えば、かえって損害が生じるからである。】
「凡作曼荼羅,於露地為上。若於神廟及與大室,通許而作。其處若有短樹、及根、大石、及樹,要須除却;若除不得,當作息災之法而除其過。又,其樹、瓦、石等之物,若在第二、第三之院,許作法除。若當內院,應棄其處。凡曼荼羅地,以香水灑為淨。若山上作者,勿見不平之過;若平地作者,勿見右過。安置諸尊本位及方若差者,應作息災之法而除其過,然第二院必不得錯。是故,畫位畢已,安心普視,若有錯處即當復改。
「其自念誦之尊及與弟子念誦之尊,隨其本位任意安置。若有弟子堪灌頂者,應作方階,灌頂之處以其白色而階其道。又以五色作一蓮華,甚令圓滿,以萬字……等諸吉祥印圍繞其花,或作其形而安置之。其作食處以白色界道,所有食飲皆置一處,所有幢幡、瓶……等諸供養具亦以白色界道其處而安置。」