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  1. 六度集経 (六度集經)
  2. 第2巻 (第二)
  3. 1 布施度無極章
  4. 14 スダーナ経(スダーナ太子本生譚) (14 須大拏經〔須大拏太子本生〕)
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六度集経 (六度集經)


(一四)須大拏經

須大拏経

「昔者葉波國王號曰濕隨,其名薩闍,治國以正,黎庶無怨。王有太子,名須大拏,容儀光世,慈孝難齊,四等普護,言不傷人。王有一子寶之無量,太子事親同之於天。有知之來,『常願布施拯濟群生,令吾後世受福無窮。愚者不覩非常之變,謂之可保。有智之士照有五家,乃尚布施之士。十方諸佛、緣一覺、無所著尊,靡不歎施為世上寶。』太子遂隆普施,惠逮眾生。欲得衣食者應聲惠之,金銀眾珍、車馬田宅,無求不與。光馨遠被,四海咨嗟。父王有一白象,威猛武勢躃六十象,怨國來戰,象輙得勝。

昔々、葉波国という国に、湿随(しつずい)と名乗る王様がいました。名は薩闍(さしゃ)といい、政治を正しく行ったので、民に恨みはありませんでした。王には須大拏(すだいな)という名の王子がおり、その姿かたちは世にも美しく、親孝行で慈悲深く、誰に対しても平等に接し、言葉で人を傷つけることはありませんでした。王はこの一人息子を何よりも大切にし、王子もまた父母を天のごとく敬いました。

幼い頃から、王子はこう願っていました。「常に施しを行い、すべての命あるものを救い、来世において限りない幸福を得たい。愚かな者は、この世の移り変わりを見極められず、すべてが永遠に続くと思い込む。しかし、智慧ある者は、財産が五つの家(王・盗賊・水・火・不孝の子)に奪われるものと知り、それでもなお施しを尊ぶ。十方の諸仏、縁覚、執着なき尊い方々、いずれもが、施しこそ世の中の宝であると嘆賞されるのだ。」

そして太子は、惜しみなく施しを行い、すべての人々に恩恵を広げました。衣服や食べ物を求める者には、その声に応じて与え、金銀の宝、車馬、田んぼや家など、求めるものがないほどに施しました。その素晴らしい評判は遠くまで届き、国中の人々が敬嘆しました。

ところで、父王には一頭の白い象がいました。その威容と力は六十頭の象に匹敵するほどであり、敵国が攻めてくると、この象がたちまち勝利をもたらすのでした。

「諸王議曰:『太子賢聖無求不惠。遣梵志八人之太子所,令乞白象。若能得之,吾重謝子。』受命即行,著鹿皮衣履屣執瓶,𨱜杖遠涉,歷諸郡縣千有餘里,到葉波國,俱柱杖翹一脚向宮門立,謂衛士曰:『吾聞太子布施貧乏潤逮群生,故自遠涉乞吾所乏。』衛士即入,如事表聞。太子聞之欣然馳迎,猶子覩親,稽首接足慰勞之曰:『所由來乎苦體如何?欲所求索以一脚住乎?』對曰:『太子德光周聞八方,上達蒼天下至黃泉,巍巍如太山,靡不歎仰。卿為天人之子,吐言必信。審尚布施不違眾願者,今欲乞匃行蓮華上白象,象名羅闍惒大檀。』太子曰:『大善!唯上諸君金銀雜寶恣心所求,無以自難。』即勅侍者,疾被白象金銀鞍勒牽之來矣。左持象勒,右持金甕,澡梵志手,慈歡授象。梵志大喜,即呪願竟,俱升騎象含笑而去。

諸王たちが話し合いました。「太子は賢く聖者であり、望みがあれば施しを惜しまない。そこで、バラモン八人を太子の許に遣わし、白象を乞わせよ。もし手に入れられるなら、お前たちに厚く報いるであろう。」命を受けたバラモンたちは、すぐに出発しました。鹿の皮の衣をまとい、履物を履き、瓶を手に、杖をついて遠くへと旅立ちました。多くの国々や町を経て千余里を進み、ようやくヤシュバ国に到着しました。彼らは皆杖をつき、片足で立ち、宮殿の門に向かって立ち、衛兵に言いました。「私は太子が貧しい人々に施しを与え、全ての命あるものを慈しんでいると聞きました。ですから、遠くからはるばるやって来て、自分に足りないものを乞うのです。」衛兵はすぐに入り、その状況を太子に報告しました。太子はこれを聞いて喜び、急いで迎えに出ました。まるで子どもが親に会うかのように、地に頭を伏せて礼拝し、足に触れ、労りの言葉をかけました。「どこから来られたのですか。旅のご様子は?片足で立っておられるのは、何かお求めがあるからですか?」バラモンたちは答えました。「太子の徳の光は、八方に広く届き、上は天に、下は黄泉にまで及び、その偉大さは太山のようです。あなたは天と人の子であり、言葉にすれば必ずそれを実行なさいます。もし本当に施しを惜しまず、人々の願いを叶えるならば、今お願いしたいのは、蓮の花に乗った白象です。その名はラージャ・ヘータダナと言います。」太子は言いました。「大変良い!金や銀、様々な宝は、どうぞ心のままにお求めください。遠慮はいりません。」そしてすぐに侍者に命じ、白象に金と銀の鞍と手綱を付けて連れて来させました。太子は左手で象の手綱をとり、右手で金の瓶を持ち、バラモンの手に水を注いで清め、慈しみと喜びをもって象を授けました。バラモンたちは大いに喜び、祝福の言葉を唱え終えると、皆で象に乗り、笑顔のまま去っていきました。

「相國百揆靡不悵然,僉曰:『斯象猛力之雄,國恃以寧,敵仇交戰,輙為震奔。而今惠讎國,將何恃?』俱現陳曰:『夫白象者,勢力能躃六十象,斯國却敵之寶。而太子以惠重怨,中藏日虛,太子自恣布施不休,數年之間,臣等懼舉國妻子必為施惠之物矣。』王聞其言,慘然久而曰:『太子好喜佛道,以賙窮濟乏慈育群生,為行之元首。縱得禁止假使拘罰,斯為無道矣。』百揆僉曰:『切磋之教儀無失矣,拘罰為虐臣敢聞之?逐令出國置于田野,十年之間令慙自悔,臣等之願也。』王即遣使者就誥之曰:『象是國寶,惠怨胡為?不忍加罰,疾出國去。』使者奉命誥之如斯。太子對曰:『不敢違天命。願乞布施濟乏七日,出國無恨。』使者以聞,王曰:『疾去,不聽汝也。』使者反曰:『王命不從。』太子重曰:『不敢違天命。吾有私財,不敢侵國。』使者又聞,王即聽之。

「宰相たちは皆、深く嘆き悲しみました。そして言いました。 『この白象は、国の中でも特に力強い獣であり、国はこれに頼って平和を保ち、敵と戦う時も、いつもこの象で敵を震え上がらせ追い散らしてきました。それなのに今、太子はこれを怨みのある国に与えてしまいました。これから国は何に頼ればよいのでしょうか。』 彼らは皆、王にこう申し上げました。 『この白象は、その力で60頭の象を倒すほどの力があり、我が国にとって敵を退ける宝です。ところが太子は、深い怨みを持つ国にこれを与え、国内の宝を日に日に空しくしています。太子は思いのままに布施をしてやめず、このまま数年も経てば、我々臣下は国の妻や子までも太子の施しの品にされてしまうのではないかと恐れています。』 王はこの言葉を聞いて、しばらく悲しみに沈み、やがて言いました。 『太子は仏道を深く喜び、貧しい人を助け、困っている人を救い、すべての生きとし生けるものを慈しみ育てることを、行いの根本としている。たとえその施しを禁じようとしても、また罰しようとしても、それは道理に反することである。』 宰相たちは皆、声をそろえて言いました。 『諫めるのも教育の一つであり、誤りはありません。罰することが無慈悲だなどと、臣たちがどうして申し上げられましょう。ただ、太子を国外に追い払い、田舎に置いて、10年の間、恥じて自ら悔いるようにさせることこそ、我々の願いでございます。』 王はすぐに使いを遣わし、太子にこう告げさせました。 『象は国の宝である。なぜ怨みのある国に与えたのか。お前に罰を下すのは忍びないが、すぐに国を出て行きなさい。』 使いは王命を奉じ、その通りに伝えました。 太子は答えて言いました。 『王の命令に背くことはできません。どうか7日間だけ、貧しい人々に施しをしてから出国することをお許しください。そうすれば、恨みはありません。』 使いはこのことを王に伝えました。王は言いました。 『すぐに去れ。お前の願いを聞くわけにはいかない。』 使いは戻って伝えました。 『王の命令はお聞き入れになりません。』 太子は重ねて言いました。 『王の命令に背くことはできません。しかし、私には私自身の財産があります。国の財産には手をつけておりません。』 使いが再びこのことを伝えると、王はようやくそれを許しました。」

「太子欣然勅侍者:『國中黎庶有窮乏者,勸之疾來,從其所欲恣之無違。國土官爵、田宅財寶,幻夢之類,靡不磨滅。』兆民巨細奔詣宮門,太子以飲食衣被、七寶諸珍,恣民所欲布施訖竟,貧者皆富。妻名曼坻,諸王之女,顏華韑耀,一國無雙,自首至足皆以七寶瓔珞。謂其妻曰:『起聽吾言,大王徙吾著檀特山,十年為限。汝知之乎?』妻驚而起,視太子淚出,且云:『將有何罪乃見迸逐,捐國尊榮處深山乎?』答其妻曰:『以吾布施虛耗國內,名象戰寶以施怨家。王逮群臣恚逐我耳。』妻即稱願:『使國豐熟,王臣兆民富壽無極,惟當建志於彼山澤成道弘誓矣。』

太子は喜んで従者に命じた。「国中の民で貧しく困っている者があれば、早く来るように勧めよ。望むままに与え、妨げてはならない。国や官職、田畑や家屋、財宝といったものは、幻や夢のようなものであり、やがてはすべて滅びてしまうものだからだ。」老若を問わず大勢の人々が宮殿の門に集まった。太子は衣服や食べ物、寝具、七宝の珍宝を惜しみなく与え、民の望むままに施し終えると、貧しかった者は皆、豊かになった。

太子の妻はマンチ(曼坻)といい、諸王の娘で、その美しさは国中で比類なく、頭の先から足の先まで七宝の瓔珞で飾られていた。太子は妻に言った。「起きて私の言葉を聞きなさい。父王は私を檀特山に移し、十年間を期限とされた。あなたはそれを知っているか。」妻は驚いて起き上がり、太子を見て涙を流しながら言った。「いったい何の罪があって追放され、国を捨てて尊い栄華を離れ、深山に入らねばならないのですか。」太子は妻に答えた。「私が国中の財を施し与え、名高い象や戦いに用いる宝まで怨みを持つ者に施したため、王や群臣が怒って私を追い出そうとしているのだ。」妻はすぐに祈りを捧げた。「どうか国を豊かにし、王や臣下、民が富み長寿で限りなくありますように。そして私たちは、あの山や沢で志を立て、悟りを開くという大いなる誓いを成就しましょう。」

「太子曰:『惟彼山澤恐怖之處,虎狼害獸難為止矣。又有毒蟲魍魎斃鬼、雷電霹靂風雨雲霧,其甚可畏。寒暑過度,樹木難依,蒺䔧礫石非卿所堪。爾王者之子,生於榮樂、長於中宮,衣則細軟,飲食甘美,臥則帷帳,眾樂聒耳,願則恣心。今處山澤,臥則草蓐、食則果蓏,非人所忍,何以堪之乎?』妻曰:『細靡眾寶帷帳甘美,何益於己?而與太子生離居乎?大王出時以幡為幟,火以煙為幟,婦人以夫為幟,吾恃太子猶孩恃親,太子在國布施四遠,吾輙同願。今當歷嶮而猶留守榮,豈仁道哉?儻有來乞不覩所天,心之感絕,必死無疑。』太子曰:『遠國之人來乞妻子,吾無逆心。爾為情戀,儻違惠道都絕洪潤,壞吾重任也。』妻曰:『太子布施覩世希有,當卒弘誓慎無倦矣。百千萬世,無人如卿逮佛重任,吾不敢違也。』太子曰:『善!』即將妻子詣母辭別,稽首于地愍然辭曰:『願捐重思,保寧玉體,國事鞅掌願數慈諫,無以自由枉彼天民。當忍不可忍,含忍為寶。』母聞訣辭顧謂侍曰:『吾身如石、心猶剛鐵,今有一子而見迸逐,吾何心哉?未有子時結願求嗣,懷妊之日如樹含華,日須其成,天不奪願令吾有子,今育成就而當生離乎?』夫人嬪妾,嫉者快喜不復相敬。

太子は言った。「あの山や沢は恐ろしい場所だ。虎や狼などの猛獣がいて、近づくことは難しい。さらに毒虫や化け物、怨霊、雷鳴や稲妻、風雨や雲霧もあり、非常に恐ろしい。寒さや暑さは厳しく、木々に頼ることも難しく、茨や砂利の道はあなたに耐えられるものではない。あなたは王の子として、栄華と楽しみの中で生まれ、宮中で育った。着るものは柔らかく、食べ物は美味しく、寝る時は帳の中で、様々な楽しみが耳を満たし、願えば思いのままになる。今、山や沢に住み、寝る時は草の上、食べ物は木の実だけというのは、普通の人の忍ぶところではない。どうして耐えられようか。」

妻は言った。「豪華な宝物や帳や美味しいものは、自分にとって何の役に立ちましょう。それで太子と生き別れになるのでしょうか。王様が出られる時は旗を目印とし、火は煙を目印とし、女は夫を頼りとします。私は太子を頼り、まるで幼子が親を頼るようにしております。太子が国にいて、遠くの方々に施しをすれば、私はいつも同じ願いを持っておりました。今、困難に直面して、なおも残って栄華に留まるというのは、仁道と言えるでしょうか。もし施しを乞う人が来て、頼りとする方がいなければ、心は絶望し、必ず死んでしまうでしょう。」

太子は言った。「遠くの国の人が妻や子を乞うなら、私は拒む心はない。しかし、あなたが情に執着すれば、施しの道に背き、大きな潤いを絶ち、私の大切な務めを壊してしまうことになる。」

妻は言った。「太子の施しは、世にも稀なことです。どうか大きな誓いを全うされ、決して怠らないでください。百千万の世にも、あなたのように仏の大切な務めに至る人はおりません。私は決して背きません。」

太子は言った。「よろしい。」そしてすぐに妻と子を連れて、母に別れを告げに参った。地に頭を下げ、哀れんで別れの言葉を述べた。「どうか大きな慈しみをお捨てになり、お体を大切に守ってください。国務は多忙でしょうが、どうかしばしば慈しみをもってお諫めください。身勝手に誤って国の民を苦しめることのないように。耐え難きを耐え、忍ぶことを宝とされてください。」

母は別れの言葉を聞き、側女たちに向かって言った。「私の体は石のように、心は鋼鉄のように堅い。今、たった一人の子を追い出されて、私はどうすればよいのか。子のいない時には、子宝を願い、祈った。身ごもった時は、木が花を咲かせるかのように、毎日その成長を待ち望んだ。天が願いを奪わず、私に子を授けてくれた。今、育て上げたのに、生き別れにならねばならないのか。」夫人や側女たちの中で、妬む者は喜び、互いに敬わなくなった。

「大子妻兒稽首拜退,宮內巨細靡不哽噎,出與百揆吏民哀訣,俱出城去,靡不竊云:『大子國之聖靈、眾寶之尊,二親何心而逐之乎?』大子坐城外謝諸送者,遣之還居。兆民拜伏,僉然舉哀,或有躃踊呼天,音響振國。與妻進道,自知去本國遠,坐一樹下。有梵志自遠來乞,解身寶服、妻子珠璣,盡以惠之,令妻子昇車執轡而去。始欲就道,又逢梵志來從乞馬,以馬惠之;自於轅中挽車進道。又逢梵志來匃其車,即下妻子,以車惠之。太子車馬衣裘身寶雜物,都盡無餘,令妻嬰女,己自抱男。處國之時,施彼名象眾寶車馬,至見毀逐,未曾恚悔,和心相隨,歡喜入山。三七二十一日乃到檀特山中。

太子は妻と子に礼を尽くさせ、自ら城を後にした。宮中では身分の上下を問わず、誰もが泣き咽んだ。王は百官や民と別れを惜しみ、城を出ると、人々は皆ひそかに言い合った。「太子こそ国の聖なる宝であり、尊いお方であるのに、父母はどうして心を鬼にして追い立てるのか」と。

太子は城外で見送りの者たちに礼を述べ、それぞれ帰るよう促した。民は皆ひれ伏して泣き叫び、中には地を打ち叫んで天に向かって嘆き、その声は国中に響き渡った。太子は妻と共に道を進み、故国が遠く離れたことを知り、一本の木の下に座った。そこへ遠方から修行者がやって来て物乞いをしたので、太子は身につけていた宝飾や衣服、妻と子の宝飾までも全て施し、妻と子に車に乗って手綱を握らせ、自らは歩き出した。道中、また修行者が来て馬を乞うたため、馬を与え、自らは車の轅を引いて進んだ。さらにまた修行者が来て車を乞うたので、妻と子を降ろし、車を施した。

太子はこうして、車や馬、衣服、身につけていた宝飾や所有物のすべてを無一物になるまで施し尽くした。妻には幼い娘を抱かせ、自らは幼い息子を抱いた。国にいたころ、有名な象や数多くの宝、車や馬を施し、今や追い立てられるに至っても、一度も怒りや後悔をせず、和やかな心で互いに寄り添い、喜びのうちに山へと入った。三七二十一日かけて、ようやく檀特山に到着した。

「太子覩山樹木茂盛,流泉美水甘果備焉,鳧鴈鴛鴦遊戲其間,百鳥嚶嚶相和悲鳴。太子覩之謂其妻曰:『爾觀斯山,樹木參天尠有折傷,群鳥悲鳴,每處有泉,眾果甚多以為飲食;唯道是務,無以違誓。』山中道士皆守節好學,有一道士名阿周陀,久處山間有玄妙之德。即與妻子詣之稽首,却叉手立,向道士曰:『吾將妻子來斯學道,願垂洪慈,誨成吾志也。』道士誨之,太子則焉,柴草為屋,結髮葌服,食果飲泉。男名耶利,衣小草服,從父出入;女名罽拏延,著鹿皮衣,從母出入。處山一宿,天為增泉其味重甘,生藥樹木名果茂盛。

太子は山の景色をご覧になりました。木々は生い茂り、清らかな泉が流れ、美味しい果物がたくさん実っていました。水辺では鴨や雁、鴛鴦が遊び戯れ、百もの鳥たちが美しい声でさえずり合っています。

太子は妻にこう言われました。「この山をご覧なさい。木々は天を突くほど高く、折れたり傷ついたりしているものはほとんどありません。鳥たちは声を合わせて鳴き、あちこちに泉があり、たくさんの果物が食べ物として実っています。私はただ悟りの道に励むのみで、誓いを破ることはありません。」

山中の道士たちは皆、節度を守り、学問に励んでいました。その中に阿周陀という名の道士がいて、長年山中に住み、奥深い優れた徳を持っていました。太子はすぐに妻と共に彼のもとを訪ね、額を地につけて礼をし、両手を合わせて立ち、道士に向かってこう言いました。「私は妻を連れて、ここで道を学びに参りました。どうか大きな慈悲をおかけください。私の志が成就するようお導きください。」

道士が教えを授けると、太子はそれに従いました。柴や草で小屋を作り、髪を結い、草の衣をまとい、果物を食べ、泉の水を飲みました。男の子の名は耶利といい、小さな草の衣を着て父に従って出入りしました。女の子の名は罽拏延といい、鹿の皮の衣を着て母に従って出入りしました。

山に一夜を過ごすと、天は泉の水を増やし、その味はさらに甘くなりました。薬草の木々や美味しい果物も、豊かに茂りました。

「後有鳩留縣老貧梵志,其妻年豐,顏華端正,提瓶行汲。道逢年少遮要,調曰:『爾居貧乎無以自全,貪彼老財庶以歸居。彼翁學道內否不通,教化之紀,希成一人。專愚𢤱悷,爾將所貪乎?顏狀醜黑,鼻正匾𠥶,身體繚戾,面皺脣䫂(丁可反),言語蹇吃,兩目又青,狀類若鬼,舉身無好,孰不僫憎?爾為室家,將無愧厭乎?』婦聞調婿,流淚而云:『吾覩彼翁鬢鬚正白,猶霜著樹。朝夕希心,欲其早喪。未即從願,無如之何?』歸向其婿,如事具云,曰:『子有奴使,妾不行汲。若其如今,吾去子矣。』婿曰:『吾貧,緣獲給使乎?』妻曰:『吾聞布施上士名須大拏,洪慈濟眾虛耗其國。王逮群臣,徙著山中。其有兩兒,乞則惠卿。』

その後、鳩留県に年老いた貧しいバラモンがおりました。彼の妻は若く、顔立ちは美しく整っていました。ある日、彼女が瓶を手に水を汲みに行くと、道中で若い男に呼び止められ、からかわれました。 「お前は貧しくて暮らしていけないのか?あの老いぼれの財産にすがって、せめて家に落ち着こうと思っているのだろう。あのじいさんは道を学んではいるが、心が通じず、教えの道筋もおぼつかなく、一人前になる見込みもない。愚かに固執し、頑なで、お前が欲しがるようなものなど何もない。顔は醜く黒く、鼻はぺしゃんこで体は曲がりくねり、顔には皺が寄り、唇はたれ下がっている。言葉はどもり、両目は濁り、姿は鬼のようで、全身に一つとして良いところがない。誰が嫌わず憎まずにいられようか?お前が妻となるなど、恥ずかしく嫌にならないのか?」 妻は夫をけなすこの言葉を聞いて、涙を流しながら言いました。 「あのじいさんを見ると、もみあげも髭も真っ白で、まるで霜が木にかかったようだ。朝から晩まで、あの人が早く死んでくれないかと願っている。その願いが叶わないのが、本当に辛いわ。」 家に帰ると、彼女は夫にそのことをそのまま話し、こう言い足しました。 「あなたには召使いがいるでしょう。私が水汲みに行かなくてもいいように。もしこのままなら、私はあなたの元を去ります。」 夫は言いました。 「私は貧しいのだ。どうやって召使いを得られるというのか?」 妻は言いました。 「噂によると、布施に優れた人、須大拏という方がいると聞きました。その方は大きな慈悲で人々を救い、そのために国を傾けてしまいました。王や家来たちは彼を山中に追いやりました。彼にはふたりの子どもがいて、乞えばお与えになるそうです。」

「妻數有言,愛婦難違,即用其言,到葉波國,詣宮門曰:『太子安之乎?』衛士上聞。王聞斯言,心結內塞,涕泣交流,有頃而曰:『太子見逐,惟為斯輩;而今復來乎?』請現勞倈,問其所以。對曰:『太子潤馨,遐邇詠歌,故遠歸命,庶自穌息。』王曰:『太子眾寶布施都盡,今處深山,衣食不充,何以惠子?』對曰:『德徽巍巍,遠自竭慕,貴覩光顏,沒齒無恨也。』王使人示其徑路。

妻が度々「あの女には逆らいにくい」と言うので、その言葉に従い、葉波国へと向かった。宮殿の門に至り、「太子はお元気でいらっしゃいますか?」と問うた。卫士が王に知らせた。これを聞いた王は胸が詰まり、涙を流してしばらくしてから言った。「太子は追放された。あの人々のせいだ。そして今、また戻ってくるというのか?」彼を労わり、その理由を尋ねるように命じた。役人が答えた。「太子の徳はかぐわしく、遠く近くで称賛されております。ですから遠くから心を寄せ、どうかお救いいただきたいと願っております。」王が言った。「太子は数々の宝を全て布施し尽くし、今は深い山に暮らし、衣食も十分ではない。どうしてお前に施しをすることができようか?」役人が答えた。「その徳の輝きは高く、遠くからも慕って参りました。そのお顔を一目見ることが叶えば、一生の思い出に何の悔いもございません。」王は人に太子のもとへの道を示させた。

「道逢獵士,曰:『子經歷諸山,寧覩太子不?』獵士素知太子迸逐所由,勃然罵曰:『吾斬爾首,問太子為乎?』梵志恧然而懼曰:『吾必為子所殺矣!當權而詭之耳。』曰:『王逮群臣令呼太子還國為王。』答曰:『大善!』喜示其處。

「道で猟師に出会い、こう言った。『あなたは諸々の山を巡ってこられたが、太子をご覧にならなかったか?』猟師は以前から太子が逃亡した事情を知っていたので、激怒して罵った。『お前の首をはねてやる。太子のことを尋ねるとは何事だ!』梵志は気後れして恐れ、『これではあなたに殺されてしまいそうだ。ここは上手くごまかすよりほかない』と思った。そして言った。『王様と家来たちが、太子に帰国して王になるようお召しをかけているのです。』猟師は答えた。『それは大変結構な話だ!』と喜んで、その場所を教えた。」

「遙見小屋,太子亦覩其來。兩兒覩之中心怛懼,兄弟俱曰:『吾父尚施,而斯子來,財盡無副,必以吾兄弟惠與之。』擕手俱逃。母故掘蔭其埳容人,二兒入中以柴覆上,自相誡曰:『父呼無應也。』

遠くに小さな家が見え、太子も彼らが来るのに気づいた。二人の子どもはそれを見て心に恐怖を抱き、兄弟で言い合った。「お父様はいつも施しをされるけれど、この男が来て、もう財産は尽きて残っていない。きっと私たち兄弟を施しとして差し出すに違いない。」そう言って手を取り合って逃げ出した。母親は以前、人が隠れられる大きさの穴を掘っておいたので、二人の子どもはその中に入り、上から柴をかぶせて、互いに「お父様が呼んでも返事をしてはいけないよ」と戒め合った。

「太子仰問,請其前坐,果漿置前。食果飲畢,慰勞之曰:『歷遠疲倦矣!』對曰:『吾自彼來,舉身惱痛,又大飢渴。太子光馨,八方歎懿,巍巍遠照。有如太山,天神地祇,孰不甚善,今故遠歸窮,庶延微命。』太子惻然曰:『財盡無惜矣。』梵志曰:『可以二兒給養吾老矣。』答曰:『子遠來求兒,吾無違心。』太子呼焉,兄弟懼矣。又相謂曰:『吾父呼求,必以惠鬼也。』違命無應。太子隱其在埳,發柴覩之,兒出抱父戰慄涕泣,呼號且言:『彼是鬼也!非梵志矣!吾數覩梵志,顏類未有若茲,無以吾等為鬼作食。吾母採果來歸何遲?今日定死,為鬼所噉。母歸索吾,當如牛母索其犢子,狂走哀慟。父必悔矣。』太子曰:『自生布施未甞微悔,吾以許焉,爾無違矣。』梵志曰:『子以普慈相惠,兒母歸者即敗子洪潤違吾本願,不如早去。』太子曰:『卿願求兒,故自遠來,終不敢違,便可速邁。』

太子は頭を上げて尋ね、彼に前に座るよう勧め、果物と飲み物を前に置いた。果物を食べ終えて飲み物を飲み終えると、ねぎらいの言葉をかけた。「遠くから来て、さぞかし疲れたでしょう。」相手は答えた。「私はあちらの国から参りました。体中が痛み、また非常に飢えと渇きを覚えております。太子様のお光り輝く徳は、八方に称賛され、高く遠くまで照らしております。それはまるで泰山のように尊く、天の神々も地の精霊も、誰が善くないでしょうか。今、遠くからこのように貧しい者が帰依した次第でございます。どうかか弱い命をお助けくださいませ。」太子は心を痛めて言った。「財は尽きて惜しむべきものは何もない。」梵志(バラモン)は言った。「二人の子供を差し出して、私の年老いた養いとしていただきたい。」太子は答えた。「あなたが遠くから子供を求めに来たことを、私は拒む心はない。」太子が呼ぶと、兄弟はおののいた。そして互いに言い合った。「父上が呼んでいるのは、きっと我々を鬼に施すためだ。」命に背いて応じなかった。太子は彼らが穴に隠れているのを見て、薪をどけて覗くと、子供たちは飛び出して父に抱きつき、震えながら涙を流し、大声で叫んで言った。「あれは鬼です!梵志ではありません!私たちはこれまで梵志を何度も見てきましたが、あのような顔つきの者はいませんでした。私たちを鬼の餌にしないでください。母が果物を採って帰るのが、どうしてこんなに遅いのでしょう。今日は必ず死に、鬼に食われてしまうのです。母が帰って私達を探す時は、まるで雌牛が子牛を探すかのように、狂い走り、悲しみ叫ぶでしょう。父上は必ず後悔されます。」太子は言った。「生まれてから施しをして、一度もわずかに後悔したことはない。私はすでに約束したのだ。お前たちは逆らってはならない。」梵志は言った。「あなたは広大な慈しみで子供を恵んでくださる。ところが、もし子供たちの母親が帰ってきたならば、あなたの大きな慈愛が台無しになり、私の本来の願いも妨げられましょう。ですから、早く立ち去りたく存じます。」太子は言った。「あなたは子供を求めることを願っているのだから、遠くから自らやって来た以上、決して拒むことはしない。すぐに出発してよい。」

「太子右手沃澡,左手持兒,授彼梵志。梵志曰:『吾老氣微,兒捨遁邁之其母所,吾緣獲之乎?太子弘惠,縛以相付。』太子持兒令梵志縛,自手執繩端,兩兒躃身宛轉父前,哀號呼母曰:『天神地祇山樹諸神一哀,告吾母意云:「兩兒以惠人,宜急捨彼菓,可一相見。」』哀感二儀,山神愴然,為作大響有若雷震。母時採果,心為忪忪,仰看蒼天不覩雲雨,右目瞤左腋痒,兩乳湩流出相屬,母惟之曰:『斯怪甚大!吾用菓為?急歸視兒,將有他乎?』委菓旋歸,惶惶如狂。

太子は右手で水をかけ、左手で子供を抱き、そのバラモンに差し出した。バラモンは言った。「私は年老いて気力も衰えております。子供たちが逃げて母親のもとへ行ってしまったら、私はどうして彼らを得られましょうか。太子さまはお慈悲深い。どうか縛ってお渡しください。」太子は子供たちを連れて、バラモンに縛らせ、自ら綱の端を握った。二人の子は父の前でのたうち回り、泣き叫んで母を呼んだ。「天の神々よ、地の精霊よ、山や木々の神々よ、どうか哀れんで、母に知らせてください。『二人の子は人に施されてしまいました。すぐに、その果物を置いて、一目会いに来てください』と。」その哀れな叫びは天地に響き、山の神も悲しみ、大きな音を雷のように轟かせた。母はその時、果物を採っていたが、心がどきどきしてきた。空を見上げても雨雲はないのに、右の目がぴくぴく動き、左の脇の下が痒くなり、両方の乳房から乳が次々と噴き出した。母は思った。「これはとても不思議なことだ。何のために果物を採っているのだろう。急いで帰って子供たちを見よう。何かあったのだろうか?」果物を投げ捨てて、狂ったように慌てて家へと帰った。

「帝釋念曰:『菩薩志隆,欲成其弘誓之重任,妻到壞其高志也。』化為師子,當道而蹲。婦曰:『卿是獸中之王,吾亦人中王子,俱止斯山,吾有兩兒皆尚微細,朝來未食須望我耳。』師子避之,婦得進路。迴復於前化作白狼,婦辭如前,狼又避焉。又化為虎,適梵志遠,乃遂退矣。

帝釈天はこう思いました。「菩薩の志は高く、その大いなる誓いの重責を果たそうとしている。妻が来て、その高い志を壊してしまうかもしれない。」 そこで帝釈天は獅子に姿を変え、道の真ん中にうずくまりました。妻が言いました。「あなたは獣の王です。私もまた、人間の王の子。ともにこの山に住み、私にはまだ幼い子が二人います。朝からまだ食べておらず、私を待っているのです。」 獅子は道を譲り、妻は先へ進むことができました。 すると帝釈天はまた前に回り、白い狼に姿を変えました。妻は先ほどと同じことを言い、狼もまた道を譲りました。 さらに虎に姿を変えましたが、ちょうどその時、梵志(修行者)が遠くへ去ったため、ついに帝釈天は姿を消しました。

「婦還,覩太子獨坐,慘然怖曰:『吾兒如之而今獨坐,兒常望覩吾以菓歸,奔走趣吾,躃地復起,跳踉喜笑,曰:「母歸矣,飢兒飽矣。」今不覩之,將以惠人乎?吾坐兒立各在左右,覩身有塵,競共拂拭。今兒不來,又不覩處,卿以惠誰?可早相語。禱祀乾坤,情實難云,乃致良嗣。今兒戲具,泥象泥牛、泥馬泥猪,雜巧諸物縱橫于地,覩之心感,吾且發狂,將為虎狼鬼𩲐盜賊吞乎?疾釋斯結,吾必死矣!』太子久而乃言:『有一梵志來索兩兒云:「年盡命微欲以自濟。」吾以惠之。』婦聞斯言,感踊躃地,宛轉哀慟流淚且云:『審如所夢,一夜之中夢覩老𥥧貧窶梵志,割吾兩乳執之疾馳;正為今也。』哀慟呼天,動一山間。云:『吾子如之,當如行求乎?』

妻が帰宅すると、太子がひとり座っているのを見て、青ざめて恐れながら言いました。 「どうして私の子があなただけで座っているのです? 子はいつも私が果物を持って帰るのを見ると、走って私のもとに駆け寄り、転んでは起き上がり、飛び跳ねて喜び笑いながら、『母が帰ってきた! 飢えた子は満腹だ!』と言いました。今、子の姿が見えません。まさか人に与えてしまったのですか? 私は座り、子は立ち、それぞれ左右にいました。身に埃があるのを見れば、競って拭き合いました。今、子は来ず、その姿もありません。一体、誰に与えたのですか? 早く教えてください。天地に祈り、子を得るのは本当に難しいこと。ようやく良い後継ぎを得たのに。今、子の遊び道具、泥の象、泥の牛、泥の馬、泥の豚、様々な細工物が地面に散らばっています。それを見ると心が痛み、私は発狂しそうです。虎や狼、鬼神、盗賊にでも飲み込まれたのですか? この苦しみを早く解いてください。さもなければ私は必ず死ぬでしょう!」 太子は長い間いてから言いました。 「一人の梵志が来て二人の子を乞い、『年の限りが近づき、命が儚いので、自らを救いたい』と言った。私は子を与えた。」 妻はこの言葉を聞き、衝撃で地に伏し、のたうち回って悲しみ、涙を流しながら言いました。 「まさに私の夢の通りだ。昨夜、老いて貧しい梵志が、私の両方の乳房を切り取って、素早く走り去る夢を見た。まさにこれが今、現実になったのだ。」 彼女は天に向かって悲しみ泣き叫び、山一つが揺れるほどでした。 「私の子はどうしてしまったの? 探しに行くべきでしょうか?」

「太子覩妻哀慟尤甚,而謂之曰:『吾本盟爾隆孝奉遵,吾志大道,尚濟眾生,無求不惠,言誓甚明。而今哀慟,以亂我心?』妻曰:『太子求道,厥勞何甚?夫士家尊在于妻子之間,靡不自由,豈況人尊乎?願曰:「所索必獲,如一切智。」』

太子は妻がひときわ激しく悲しみ嘆くのを見て、こう言いました。「我々が初めて共に誓った時、お前は深い孝行を尽くし、戒律を守り従うと約束した。我が志は大道にある。あまねく衆生を救済し、求めるものには施しを惜しまない。その誓いの言葉は極めて明確であった。それなのに今、なぜ激しく悲しみ嘆き、我が心を乱すのか?」 妻は答えました。「太子よ、あなたが道を求める辛苦は、何と甚だしいことでしょう。そもそも士大夫の家における尊厳は、妻と子の間柄にこそあります。そこから自由でない者はなく、ましてや人間の尊い立場にある者がそうでありましょうか。かつてあなたはこう願われました。『求めるものは必ず得られるであろう。あたかも一切智者のように』と。」

「帝釋諸天僉然議曰:『太子弘道普施無蓋,試之以妻觀心如何。』釋化為梵志來之其前,曰:『吾聞子懷以乾坤之仁,普濟群生布施無逆,故來歸情,子妻賢貞德馨遠聞,故來乞匃,儻肯相惠乎?』答曰:『大善!』以右手持水澡梵志手,左手提妻適欲授之。諸天稱壽莫不歎善,天地卒然大動,人鬼靡不驚焉。梵志曰:『止!吾不取也。』答曰:『斯婦豈有惡耶?婦人之惡斯都無有,婦人之禮斯為備首矣。然其父王唯有斯女,盡禮事婿不避塗炭,衣食趣可不求細甘,勤力精健顏華踰輩。卿取吾喜,除患最善。』梵志曰:『婦之賢快誠如子言,敬諾受之。吾以寄子,無以惠人。』又曰:『吾是天帝釋,非世庸人也,故來試子。子尚佛慧影,範難雙矣,今欲何願,恣求必從。』太子曰:『願獲大富,常好布施無貪踰今;令吾父王及國臣民思得相見。』天帝釋曰:『善!』應時不現。

帝釈天や諸天の神々は、皆で話し合って言いました。「太子は道を広め、限りなく施しを行っている。妻を与えて試してみて、その心がどうなるか見てみよう。」そこで帝釈天は修行者の姿に変わり、太子の前に現れてこう言いました。「私は、あなたが天と地を包み込むような慈悲の心で、すべての生きとし生けるものを救い、施しを拒まないと聞きました。それで心を寄せて参りました。あなたの妻は貞淑で、その徳は遠くまで香るように知られています。どうか、その妻を施していただけないでしょうか?」太子は答えました。「それは良いことです!」そして右手で水を汲み、修行者の手を洗い、左手で妻を抱き寄せ、差し出そうとしました。すると、諸天の神々は皆、寿命を祝い、素晴らしいと称賛しました。天地は突然大きく揺れ動き、人々も鬼神も驚かない者はありませんでした。修行者は言いました。「やめなさい。私は受け取りません。」太子は答えました。「この女に、どこか悪いところがあるのでしょうか?女のあらゆる欠点は、この妻には一つもありません。女としての美徳は、この妻が最も備えています。しかし、彼女の父王には一人娘であり、真心を尽くして夫に仕え、どんな苦難も厭いません。衣服や食物は質素で構わず、贅沢を求めません。勤勉で力強く、その美しさは並ぶ者がないのです。あなたが妻を受け取ってくだされば、私も喜び、最も良い悩みが除かれます。」修行者は言いました。「あなたの妻の素晴らしさは、確かにあなたの言う通りです。ありがたくお受けします。しかし、あなたのもとに預けます。他の人には施さないでください。」さらに言いました。「私は天帝釈天であり、この世の凡人ではありません。あなたを試そうとして来たのです。あなたの仏の智慧への憧れは、比類のない模範です。今、どんな願いでも、思いのままに叶えましょう。」太子は言いました。「願わくは、大いなる富を得て、常に施しを喜び、貪ることなく、今以上に施しを行いたいのです。そして、私の父王や国の臣民が、互いに再会できることを願います。」天帝釈天は「良いでしょう」と言うと、たちまち姿を消しました。

「梵志喜獲其志,行不覺疲,連牽兩兒欲得望使。兒王者之孫,榮樂自由,去其二親為繩所縛,結處皆傷,哀號呼母,鞭而走之。梵志晝寢,二兒迸逃,自沈池中,荷蒻覆上,水蟲編身。寤行尋求,又得兒矣;捶杖縱橫,血流丹地。天神愍念,解縛愈傷,為生甘果,令地柔軟。兄弟摘果,更相授噉,曰:『斯果之甘猶苑中果,斯地柔軟如王邊縕綖矣。』兄弟相扶仰天呼母,涕泣流身。梵志所行,其地岑巖,礫石刺棘,身及足蹠,其瘡毒痛,若覩樹果,或苦且辛,梵志皮骨相連,兩兒肌膚光澤,顏色復故。

梵志は願いを叶え、意気揚々として疲れも感じず、二人の子を連れて歩かせ、望みを叶えようとした。子らは王者の孫であり、栄華と楽しみの中で自由に育ったが、今や両親と離れ、縄で縛られ、縄の結び目は全身の傷に食い込み、悲しみの声を上げて母を呼んだが、鞭で打たれて進まされた。梵志が昼寝をしている隙に、二人の子は逃げ出し、池の中に身を沈め、蓮の葉を被って隠れたが、水虫が全身にまとわりついた。梵志が目覚めて探し求め、再び子らを見つけ出した。杖で激しく打ち据え、血が流れて地面を赤く染めた。天神が哀れに思い、縄を解き、傷を癒し、甘い果実を生じさせ、地面を柔らかくした。兄弟は果実を摘み、互いに与え合いながら言った。「この果実の甘さは苑の中の果実のようだ。この地面の柔らかさは王の側の敷き物のようだ。」兄弟は互いに支え合い、天を仰いで母を呼び、涙が体を濡らした。梵志が歩いた土地は岩がごつごつとし、砂利や棘が多く、全身や足の裏にできた傷は毒のように痛み、木の実を見れば苦く辛いものが多かった。梵志は皮と骨が張り付くようにやせ細っていたが、二人の子の肌はつややかで、元の色を取り戻していた。

「歸到其家,喜笑且云:『吾為爾得奴婢二人,自從所使。』妻覩兒曰:『奴婢不爾,斯兒端正,手足悅澤不任作勞,孚行衒賣,更買所使。』又為妻使,欲之異國。天惑其路,乃之本土。兆民識焉,僉曰:『斯太子兒也!大王孫矣!』哽噎詣門上聞。王呼梵志將兒入宮,宮人巨細靡不噓唏!王呼欲抱,兩兒不就。王曰:『何以?』兒曰:『昔為王孫,今為奴婢。奴婢之賤,緣坐王膝乎?』問梵志曰:『緣得斯兒?』對之如事。曰:『賣兒幾錢?』梵志未答,男孫勦曰:『男直銀錢一千,特牛百頭;女直金錢二千,牸牛二百頭。』王曰:『男長而賤,女幼而貴。其有緣乎?』對曰:『太子既聖且仁,潤齊二儀天下喜附,猶孩依親,斯獲天下之明圖,而見遠逐捐處山澤,虎狼毒蟲與之為隣,食菓衣草,雷雨震人,夫財幣草芥之類耳,坐見迸棄,故知男賤也。黎庶之女,苟以華色處在深宮,臥即縕綖,蓋以寶帳,衣天下之名服,食天下之貢獻,故女貴也。』王曰:『年八孩童,有高士之論,豈況其父乎?』宮人巨細聞其諷諫莫不舉哀。梵志曰:『直銀錢一千,特牛、牸牛各百頭。惠爾者善,不者自已。』王曰:『諾。』即雇如數,梵志退矣。

家に帰ると、彼は喜び笑いながら言った。「君のために二人の奴婢を手に入れた。好きなように使うがいい。」妻は子供たちを見て言った。「これは奴婢ではない。この子たちは端正で、手足はなめらかで働きには適さない。すぐに市場で売り、別の使い手を買いなさい。」そこで彼は妻に命じられ、よその国へ行こうとした。しかし天がその道を惑わせ、結局は故国にたどり着いた。人々は彼を見て言った。「あれこそ太子の子だ。大王の孫だ!」と。人々は泣きながら門まで行き、そのことを上聞に達した。王は梵志を呼び、子供たちを連れて宮中に入らせた。宮中の者たちは皆、涙を流した。王は子供たちを抱こうとしたが、二人は応じなかった。王が「なぜだ?」と尋ねると、子供たちは言った。「昔は王の孫でしたが、今は奴婢です。奴婢の身分で、どうして王の膝の上に座ることができましょうか。」王は梵志に尋ねた。「どうしてこの子たちを手に入れたのか?」梵志は事の次第を語った。王は「この子たちをいくらで売ったのか?」と尋ねた。梵志が答える前に、男の子がすばやく言った。「男は銀貨千枚と雄牛百頭、女は金貨二千枚と雌牛二百頭です。」王は「男は年を取って賤しく、女は幼くして尊い。その理由は何か?」と尋ねた。子供は答えた。「太子は聖にして仁、その徳は天地を潤し、天下の人々は子供が親にすがるように慕い、天下の明るい計画を得ておりました。ところが遠くに追放され、山や沢に捨てられ、虎や狼や毒虫を隣とし、果実を食べ草を衣とし、雷雨に震える有様です。財貨や幣帛は草の芥のようなものでございますが、このように追放されるのを見て、男が賤しいことが分かります。一方、平民の娘は、たとえ華やかな色香があれば、深い宮中に置かれ、寝れば柔らかな敷物、宝の帳で覆われ、天下の名衣をまとい、天下の貢物を食べます。ゆえに女が尊いのです。」王は言った。「年は八歳の子供でありながら、高士の論を述べるとは、ましてその父はなおさらであろう。」宮中の者たちは皆、その諷諫を聞いて涙を流した。梵志は言った。「銀貨千枚、雄牛と雌牛それぞれ百頭。それをお恵みいただければ結構、そうでなければこのままに致します。」王は「よし。」と言い、その数だけ支払い、梵志は退いた。

「王抱兩孫坐之于膝,王曰:『屬不就抱,今來何疾乎?』對曰:『屬是奴婢,今為王孫。』曰:『汝父處山,何食自供?』兩兒俱曰:『薇菜樹果以自給耳。日與禽獸百鳥相娛,亦無愁心。』王遣使者迎焉。使者就道,山中樹木俯仰屈伸,似有跪起之禮,百鳥悲鳴哀音感情。太子曰:『斯者何瑞?』妻臥地曰:『父意解釋,使者來迎,神祇助喜,故興此瑞。』妻自亡兒臥地,使者到乃起拜王命矣。使者曰:『王逮皇后捐食銜泣,身命日衰,思覩太子。』太子左右顧望,戀慕山中樹木流泉,收淚昇車。

王は二人の孫を抱き上げ、膝の上に座らせて尋ねた。「先ほどは抱かせようとしなかったのに、今はどうしてこんなに早く来たのか。」彼らは答えた。「先ほどは私たちはただの召使いでしたが、今は王の孫です。」王は言った。「お前たちの父は山の中で、何を食べて暮らしているのか。」二人の子は口をそろえて言った。「山菜や果物を採って食べています。昼は鳥や獣と遊び、心配事もありません。」王は使いを遣わして太子を迎えに行かせた。使いが山道を進むと、山中の木々がまるで跪いたり立ち上がったりするかのように、屈んだり伸びたりし、百の鳥たちが悲しげに鳴き、その声は心を打った。太子は言った。「これは何の瑞兆だろうか。」妻は地に伏しながら答えた。「父王のお心が解け、使いが迎えに来られたのです。神々も喜びを助けたため、この瑞兆が現れたのです。」妻は子を失ってからずっと地に伏していたが、使いが来ると起き上がり、王の命令を拝した。使いは言った。「王と皇后は食事ものどを通らず、涙を流して日々衰弱し、太子にお会いしたいと願っておられます。」太子は周囲を見渡し、山中の木々や流れを恋しく思いながらも、涙を拭いて車に乗った。

「自使者發,舉國歡喜,治道掃除豫施帳幔,燒香散華伎樂幢蓋,舉國趍蹌,稱壽無量。大子入城頓首謝過,退勞起居。王復以國藏珍寶都付太子,勸令布施。隣國困民歸化首尾,猶眾川之歸海。宿怨都然,拜表稱臣,貢獻相銜。賊寇尚仁,偷賊競施,干戈戢藏,囹圄毀矣。群生永康,十方稱善。積德不休,遂獲如來、無所著、正真道、最正覺、道法御、天人師,獨步三界為眾聖王矣。」

御使いが出発してから、国中が喜びにあふれました。道路を整え掃除し、あらかじめ天幕を張り、香を焚き花をまき、音楽や踊り、旗や蓋で飾り立て、人々はこぞって走り寄り、限りない長寿を祝いました。太子が都に入ると、皆さんは頭を下げて謝罪し、疲れをねぎらい、その後、日常の様子を尋ねました。王はさらに国の宝庫にある珍宝のすべてを太子に譲り、布施を行うように勧めました。隣国の困窮した民も相次いで帰順し、それはまるで多くの川が海に流れ込むかのようでした。かつての怨恨はすべて消え去り、国書を捧げて臣下の礼をとり、貢物が相次いで送られました。盗賊さえも仁徳を尊び、こそこそと盗む者たちが競って施しを行い、戦の道具はしまわれ、牢獄は壊されました。生きとし生けるものは永遠の安らぎを得て、十方の人々が皆、善いことだと称えました。こうして絶えず功徳を積み重ね、ついに如来、応供、正等覚、明行足、善逝、世間解、無上士、調御丈夫、天人師、仏世尊となり、三界の中を独自に歩み、すべての聖者たちの王となられたのです。

佛告諸比丘:「吾受諸佛重任誓濟群生,雖嬰極苦,今為無蓋尊矣。太子後終,生兜術天;自天來下,由白淨王生,今吾身是也。父王者,阿難是。妻者,俱夷是。子男羅云是,女者羅漢朱遲母是。天帝釋者,彌勒是。射獵者,優陀耶是。阿周陀者,大迦葉是。賣兒梵志者,調達是。妻者,今調達妻旃遮是。吾宿命來勤苦無數,終不恐懼而違弘誓矣。以布施法為弟子說之,菩薩慈惠度無極行布施如是。」

仏は比丘たちに告げられた。 「私は諸仏から重い使命を授かり、誓って全ての人々を救済しようと願った。たとえ極めて厳しい苦しみを受けようとも、今や比類なき尊き者となった。 太子は後に亡くなり、兜率天に生まれた。やがて天から降り立ち、白浄王のもとに生まれた。それが今の私の身である。父王は阿難であり、妻は俱夷である。息子の羅雲(らうん)、娘の羅漢朱遅の母である。天帝釈は弥勒であり、狩人であったのは優陀耶である。阿周陀は大迦葉である。子どもを売った梵志(バラモン)は調達であり、その妻は調達の妻・旃遮である。 私は前世より限りなく苦しみを重ねてきたが、決して恐れて壮大な誓いを違えることはなかった。布施の教えを弟子たちに説き、菩薩の慈しみと施しの功徳は限りなく、このように布施の行を実践するのである。」

六度集經卷第二

六度集経 巻第二


13 薩和檀王經〔薩和檀王本生〕
15 〔和默王本生〕

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